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「よし、じゃあ行こうか。つくし、運転するか?」
「…うん!今日は総に楽してもらうために来たんだもん、私が運転するね♥」


楽して……これまでの事を思い出しても全然楽してねぇと思うんだけど。
むしろいつもよりすげぇドタバタして逃げまくってる気もするんだけど?

俺がそう思ってつくしを見ても、本人はわかってんのか、もう忘れたのかニコニコして「どうかした?」なんて言ってる。
これを笑って許せるんだから「惚れた弱み」なのか「慣れ」なのか…。


俺に代わってつくしが運転席に座るとブレーキに足が届かない。
「なんでこんなに違うの?!」って怒鳴りながら、シートを1番前にずらしてるのには笑った。


「それじゃ宿までは俺が道案内するから。まずはこの道を左折だ……左だからな」
「そのぐらいわかるわよ、行っきまーす!」

「だからっ!!左だって言ったろうっ!!」
「きゃあああーっ!大声出さないでぇ!」

ウインカーを左折で出しときながら予想通り右に曲がって危うく事故るところだった……誕生日にそんなの、絶対に嫌だからな!


さっきのオルゴール館を出てから何の気なしに走って河口湖大橋を南方面に来たが、実は旅館はその反対側。オルゴール館の前をもう1度通ってその向こう側に行かなきゃいけなかった。
その方が近かったから左折と言ったんだけどまさかの右折……まぁ、これもつくしの事だから仕方ねぇと河口湖を一周することにした。


「まぁ、いいさ。そんなに時間はかかんねぇからのんびりこのまま行こうぜ」
「……ごめん、頭ではわかってるんだけどなぁ…」

「……それよかつくし、免許取ってから今まで何回運転したんだ?」
「ん?今日で3回目。おかしいなぁ、花沢類を乗せた時は上手だったのに」


「…………帰りは俺が運転するわ」



旅館に着いたら美魔女で有名な女将が玄関で出迎えてくれて、予約をした特別室に案内してもらった。

「それではお食事は18時からとなっておりますのでお時間になりましたらこちらにお運び致しますわ。
西門様はご存じでしょうけど、こちらのお部屋は専用露天風呂のあるお部屋ですのでいつでもご利用下さいませ。
でもあまりお酒を召し上がってからのお風呂はお止めくださいね……総二郎様」

そこ、念押ししなくてもよくね?
別につくしを酔わせて…なんて考えてねぇし。


「急に無理言って申し訳ない。助かったよ」
「あら…そのような事はお気になさらずに。本日は総二郎様のお誕生日でしたわね?うふふ……」

「まぁね。だから休みもらってこいつとこっちに来てるんだけど」


そう……色々ハプニングはあるけど誕生日だから来てることに間違いはない。
これはつくしからの誕生日祝いのドライブのはず…すげぇ疲れるけど。


「これは当旅館からのお祝いの品でございますわ。どうぞ……後でご覧になってくださいませね」

「は?あぁ……ありがと」
「それでは失礼致します」


なんだ?その意味深な笑い方。
とんでもねぇもんが入ってるんじゃねぇだろうな……ってもらった包みを睨んでいたら

「きゃああぁーっ!総、見て見てぇ!富士山が湖に映ってる~!綺麗~!
逆さ富士って言うんでしょ?うわあぁ……あの貸別荘だったら見られなかったねぇ!」

「…そうだな。お前、どっちが良かったんだよ」

「凄いっ!ねぇ、あの光はなんだろうねぇ!あっ、さっき通った大橋かなぁ?!……あっ、総?」


窓際で景色を見ながら大はしゃぎのつくしを後ろから抱き締めた。

急な俺の行動にドキッとしたみたいで肩を竦めたけど、すぐに安心して身体を預けてくる…その耳元にキスするように唇を近づけると途端にそこが熱を持つ。
つくしの胸元を抱き締めてる俺の腕を少し強く握って、何処に向けていいかわかんねぇ目線はあちこちに動きまくる。

くくっ、何度こんな事しても毎回こんな反応で面白い。


「な……あそこ、なんだと思う?」
「あ、あ、あそこ?ってどこ?」

「お前の斜め右側の庭……竹垣が見えるだろ?」
「あっ、あれ……あれはねぇ、ははは!今は12月だから」

「関係ねぇな。今からどうよ?飯まで時間あるぜ?」
「えええっーーっ!そ、そんな!」

「今日、何の日だ?」
「うっ……」


「ダメだ」「行くぞ」を何度も繰り返したか…最後は俺が勝ってつくしは溜息つきながら着替えを準備した。



ちゃぷん……


つくしの希望で先に湯に浸かってたら、身体にタオル巻き付けたつくしが俺の後ろからゆっくりと入ってきた。
そして恥ずかしそうに座ったまま少しずつ近づいてきて、腕が触れあうところまで来たらそこに腰掛けた。

「そこまで寒くねぇだろ?」
「うん…気持ちいい…」


結い上げた髪から溢れる後れ毛がマジ色っぽい……こういう時、急にガキっぽさが抜けて「女」になる。
そのギャップが堪んなく俺を煽る…こいつは気付いてねぇだろうけど。

自分の中に火がつく瞬間、胸を掻き毟られるような想いを我慢してその腕だけを引き寄せる…まだこいつの腹が満たされてねぇから無茶はしねぇけど。

「あっ、ちょ…ちょっと、総、まだダメだって」
「なんで?善処するんじゃなかったのかよ。朝、お前言ったよな?」

「そ、そうだけど、それ、夜だもん。まだ夜じゃないもん」
「今日、何の日だ?」

「何回言うのよ!わかった…わかったけど、ちょっと待ってよ…あっ、ん…!」


ダメとかまだとか、ましてや待ってとかそんなの知らねぇ。

つくしを抱き寄せて唇を重ねる…舌をねじ込んだら必死になって受け止めて、そのうち湯の中でタオルを握り締めていた手は自然と俺の背中に回った。

わざと音を立てるようなキス…それを繰り返してると背中にある指にだんだん力が入って俺を引き寄せる。
しっかり結んでたはずのタオルなんてすぐに解けて、つくしの白い肌が露わになった。


「あっ…やっ、あんっ…、総」
「つくし…やっぱお前、可愛いな……くくっ、ここ、俺を欲しがってね?」

「やあぁ…ん!」

曝け出した胸の先を指で弄くるとこれまでとは違った甘い声が俺の耳に届く…そこをつくしの顔を見ながらペロッと舐めて、ニヤリと笑ったその時……。


「失礼致します!間もなく18時になりますのでお食事のご準備をさせていただきますね!」
「「……!!」」


慌ててつくしが俺から飛び退き、湯の中に沈んでるタオルを持つとすげぇ勢いで露天風呂から出て行った。
ここからやっと見える壁の時計が17:30・・・流石老舗旅館、時間には遅れねぇよな。


「それではごゆっくりお召し上がりくださいませ。本日は食前酒に柘榴酒をご用意しております。
先附にはキノコの紅葉卸し和えと無花果豆乳寄せ、お椀は黒平茸と海老真丈の土瓶蒸しとなっております。
お造りには本鮪、忍野鱒、赤海老を盛っておりまして、ワイン豚しゃぶしゃぶ鍋をご用意致しました」

「美味しそう!……お腹空かせて良かったぁ!」
「…………良かったな」

「後ほど牛ステーキもお持ちしますね。あとは地元のお野菜の胡麻だれ和えと鯛と秋の野菜包み焼き、銀杏茶巾と菊花あん掛け。大石蒟蒻の酢味噌でございます。最後にはデザートもございますので」

「嬉しいっ!色々あったけど最後はこんなに美味しいもの食べられるなんて幸せ~!」

「……そうだな」


おかしくねぇか?
幸せな気分になるのは俺だと思うんだけど。

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