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plumeria

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椿の間・・・今日の茶室の水屋で準備をしていたら、つくしが客を連れて来たのが判った。

本来なら奥にある庵を使ってその横の待合に案内するんだけど、今はそこを使ってないから直に部屋に案内する・・・そのように先代から言われていた。
だから廊下の会話は丸聞こえ・・・つくしが案内してきたらすぐに先代もやってきて、そこで3人の爺さんが挨拶を交わしていた。

その後でスッと水屋の扉が開いて、つくしが申し訳なさそうに顔を出した。


「若宗匠・・・あの、昨日は・・・」
「つくし!・・・いや、今は話してる時間はない。どうだ?気分は悪くないか?」

「気分は大丈夫ですけど、若宗匠は・・・?随分酔ったみたいですけど・・・」
「あそこまで酔ったのは初めてだな。でも、もう大丈夫だから気にするな。薄着で寝たから風邪引いたかもしれねぇけど」

「・・・・・・確かにあれじゃ風邪引くわ・・・」
「は?何だって?」

「いえ、何でもありません。ではお手伝い出来なくて申し訳ありませんが、頑張って下さいね」
「あぁ、任せとけ。お前は身体を冷やすなよ?」

「・・・・・・?はい、ありがとうございます」


・・・・・・あれ?
なんか、照れてるって言うよりも機嫌が悪かったような気がするけど。
一晩中吐き気が酷かったからなのか・・・・・・はっ!それともまだ子供は欲しくなかったって事か?!

それなのに俺が避妊しなかったから怒ってんのか・・・いや、でもそれはその時の空気ってもんがあるし、つくしだってノってたと思うんだけど?
『ゴム着けて!』なんて頼まれなかったし、『中に出さないで!』とも言われなかったし・・・ってか、そんな経験ないから言わなかっただけかもしれないけど。


でも判ってるよな?
判ってて、それからもずーーーーっとそうだよな?


・・・・・・・・・やっぱキチンと言わなかったからなのかな。
でもそう言うのって男の方から『子供が出来るかもしれねぇけど出すぞ!』、とかわざわざ言わねぇし、寧ろそれを怖がるヤツは絶対に着けるし。

俺はそうなっても問題ないと判断した上で、直に感じたいからそうするだけで・・・でも、確かにつくしの気持ちを確かめたことはない。

マズい・・・それで怒ってんのか。
てか、怒るの遅くね?


悶々と考えていたら、いきなり茶道口の襖が開いて、先代が鬼の形相で睨みつけた!


「総二郎、さっきから揃ったと呼んでおるのに何故無視をする!ボケッとせんで茶事を始めんか!」
「はっ?!あぁ、お呼びになっていたのですね?」

「何度もな!」
「・・・昨日の疲れが残っておりました。申し訳ございません・・・」


言われて気を取り直し、今日の茶事を始めた。
催促されたもんだから少々格好悪かったが茶道口から茶室に入って本日の客に挨拶、その後は順調に、穏やかに点前を進めて行った。

呆れ顔の先代に、何故かこいつも機嫌が悪そうだった間島支部長、そしてただ1人ご機嫌だった京極氏。
茶事が進んで行けばそれなりに和やかな時間になって、終わる頃には先代の機嫌も良くなっていた。


「流石、アメリカで評判になったのが判りますねぇ、若宗匠」
「京極様、畏れ入ります。それでもまだまだでございます故、これからも精進して参ります」

「ははは、頼もしい後継者ですな、ご隠居様」
「・・・まぁ、多少腕は良くなりましたが、まだ独り身ですのでな。後は落ち着いてくれれば言う事はありませんが」

「・・・まだお遊びも派手なようですなぁ、若宗匠」
「間島支部長、そのような事はありませんのでご心配なく・・・今は真面目に稽古に励んでおりますから」


やっと口を開いたかと思えば嫌味な言葉・・・気に入らぬのならここに来なければいいのに!と表には出さずに胸の内で毒突いていた。




************************




「身体を冷やすなよ」・・・だって。
寧ろ毎日のように素肌にさせてんの、そっちでしょうよ!と頬を赤くしながら部屋に戻っていた。

それにしても全然悪びれてないし、気不味い雰囲気もなかった・・・?
少し顔色が悪いとは思ったけど、いつもと変わらない表情だった。千香さんの事なんて微塵も感じさせないのは総二郎が慣れてるから?それとも本当に何でもないから?

いやいや、これは悩まずに信じるんだった!ってもう1度自分の頬をパンパンと叩きながら廊下を進んでいくと、私の正面には高木さんが立っていた。

一瞬驚いた・・・高木さんが凄く怖い顔をしていたから。



私が足を止めると彼の表情も急に優しくなって、初めて会った時みたいにニコッと笑った。その変わり身の早さに驚いて、ポカンと口を開けてしまうぐらい・・・でも、すぐにさっきの事を思い出して彼の前に進んだ。


「高木さん、本日のお部屋のことですけど」
「はい?どうかしましたか?」

「・・・私にこのお屋敷の中庭を挟んで右側の奥の部屋で茶事をするって言いましたよね?そこ、今の季節には使用しない部屋じゃないんですか?」

「私がそんな事を言いました?ははは、確かに今は冬ですから左側の椿の間がお茶室です。言い間違えるはずはありませんよ。牧野さんが聞き間違いをされたのではありませんか?実際にはちゃんと椿の間にご案内したのでしょう?」

「昨日こちらに来た時に若宗匠が教えて下さいましたから。危うく右側にお連れするところでしたわ」

「だから聞き間違いですって。でも兎に角何事もなく茶事が始まって良かったじゃないですか。間違えて何の支度もしていない部屋でお待たせすれば、若宗匠にも大変な恥だったでしょうからね・・・本当に良かったですね」

「・・・・・・えぇ、そうですね」


最後の「良かったですね」の時にはその言葉と真逆の表情をチラッと見せた高木さん。
私も少しだけ睨み返したけど、そうするとまた優しい笑顔を見せる・・・何を考えてるのか、その笑顔で誤魔化されてるみたいで腹が立った。


「茶事が終われば西門の菩提寺に出向きます。お着物をお召し替えになるでしょうから準備をお願いしますね」
「判りました。それでは若宗匠のお部屋に入らせていただきます」

「今は茶事の最中ですから誰も居ません。どうぞご自由にされて下さい」
「ありがとうございます」


フイッと顔を横に向けたらそのまま何処かに消えて行った。

それを見送ってから、念の為に右側にある「牡丹の間」「萩の間」に行ってみた。


そこには暖を取るものもなければ炉も開かれてない。
床の間も綺麗なままで何1つ飾りはないし、冷え冷えとして味気ない部屋だった。それに総二郎が言った通り、この部屋から見える庭は手入れはされてるけど彩りもなく、殺風景だった。


「・・・やっぱりそうよね。この部屋に案内してたら大変だったんじゃないの?聞き間違い?ううん、そんな事ない。あの人、ちゃんと右側って言ったもの・・・」

ブツブツ言いながらクルッと向きを変えたらサッと隠れた人影があった。
それにも驚いて後を追ったけど、その気配はもうない・・・でも、少しキツめのフレグランスの残り香があった。


この匂い・・・何処かで嗅いだ事がある。
でも、この時にはそれが誰のものなのか思い出せなかった。





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Comments 4

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2020/01/14 (Tue) 23:12 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

生粋娘様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

つくしちゃん、頑張っております♡
でも堤さんじゃなくて、ここはやはり総ちゃんに抱き締めてもらいたいっ!(笑)

と言いつつ、お惚け総ちゃんの妄想は止まらず・・・。
いつもと正反対の2人です♡

あはは!高木に暖めてもらうというのは如何ですか?(笑)

2020/01/15 (Wed) 00:12 | EDIT | REPLY |   
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2020/01/17 (Fri) 13:20 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんにちは。

コメントありがとうございます。

あっはは!
身体冷やしたの、あんただよ!って言いたいですよね(笑)
騙されて脱がされた総ちゃん💦

もう誰の声も総ちゃんの耳には届かない様子・・・ははは!こんな総ちゃんでごめんねぇ~💦

2020/01/18 (Sat) 15:05 | EDIT | REPLY |   

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