紫陽花の恋物語 (後編)

家元夫人は私をたった今、譲って下さった着物に着替えさせてくれた。
薄紫の紫陽花の花模様の着物・・・夏物の帯までいただいて涼しい感じになった。

「まぁ・・・やっぱりいいわね!遅くなったから総二郎さんが怒るかしら?・・・私のせいにしておきなさいね」

「そんな・・・。ありがとうございます。大切にしますね・・・」

志乃さんと家元夫人は笑顔でこの部屋を出て行った・・・やっぱり結構待たせてるよね?行くのが怖いんだけど・・・!
この向こうにある西門さん専用の部屋に眼を向けたけど・・・汗が出ちゃう!


早足でお茶室に行くともの凄く不機嫌な西門さんが腕組みをして座っていた。
私が来たのがわかると怒った顔のまま道具を出し始めた。

「随分と遅かったな・・・それならそうと言えばいいのに!師匠である俺よりも後に来るなんて・・・」

そう言って私を見るなり、びっくりしたような眼でその手を止めてしまった。
着物のせいかしら・・・?見たことがないものだから?

「これね、たった今家元夫人がくださって・・・それで着せてもらってね・・・それで遅くなったの。ごめん・・・」

「いいよ。お袋がそれ、譲ってくれたんだ・・・」

「うん。いらないって言ったんだけどね・・・実は他にも色々と・・・」

そうか・・・って言ってこの日西門さんはとても優しかった。そしてお稽古なのに笑っていた。
何故かはわからないけど・・・西門さんはずっと穏やかで一つ一つ丁寧に教えてくれた。しかもお説教無しで!

そしてお稽古が終わったときこの着物はここで脱いで帰るように言われた。

「多分、お袋からしまう場所も聞いただろう?そこに入れておけよ・・・お前は今日、着物で来たのか?」

「うん。いつもの着物で来たの。またそれに着替えるの?時間かかりそう・・・」

「んじゃ、俺のを貸してやるからそれに着替えろ。どうせ車で送っていくなら誰にも見られないだろ?」

西門さんはそう言うと自分お部屋から白いサマーセーターと短パンを持ってきて私に渡してくれた。
うそ・・・こんな男物の服着て大丈夫なの?み・・・見えない?
ちょっと不安だったけど彼の服を握りしめて着物の部屋に1人で向かった。
そして着物を脱いでキチンと畳んで・・・言われた場所にしまおうとその箪笥を開けた。

そこにあるのは西門さんの着物・・・いつもの西門さんの香りがする。
その一枚をそっと手に取った・・・。

何だろう。凄く落ち着く・・・。

そしてよく見たらその一つ下の引き出しには女物の着物が数枚しまわれていた。そこに今着ていたものを入れた。
本当はすぐに入れないんだけど・・・今度来たときにキチンと干さないとね・・・。

そして西門さんの服を着て彼の部屋に戻った。
私を見るなりクスクス笑ってる・・・そうでしょうよ!大きすぎて半袖が七分袖になってるし短ぱんは膝下・・・。

「そんなに笑わないでよ!私だって恥ずかしいのよ?西門さんの服が合うわけないんだから!」

「悪ぃ・・・!そんなに違うとは思わなかったよ。でも・・・可愛いじゃん!そういうの!」

可愛い?・・・いま、西門さんが可愛いって言ったの?


なんだかよくわからないまま今日もアパートまで送ってもらう。

「明日は稽古の日じゃないけどうちに来ないか?話があるんだけど・・・仕事が終わってすぐだと何時になる?」

「6時くらいかな・・・なんで?何の話し?」

聞いても笑うだけで答えてはくれなかった。
そして今日も玄関まで送ってくれたから今日はお茶でもって言おうとしたら・・・やっぱり先に断られた。

「ここまででいいから。明日は必ず来いよ?それとこのドアはこの先絶対に開けないこと・・・いいな!」

「うん。おやすみなさい・・・」

そう言って見送ろうとしたら睨まれた。

「だから!俺がここにいる間に部屋に入れ!・・・すぐに鍵をかけろよ?」

見送りも禁止なのね?・・・言われたとおりに今日も部屋から足音と車のエンジンを聞いていた。
もしかして・・・?でも、そうならはっきり言えばいいのに・・・わかりにくいったら!
着ているサマーセーターを脱いで思いっきり抱きしめたらやっぱり西門さんの香りがする・・・。

さっきの私の予想が当たっていたら・・・そう思うだけで胸が一杯になった。


*******


次の日、会社を出てから急いで西門に向かった。
時間は5時50分・・・思ったより早かったじゃない?・・・って息が上がってるけど。

そして中に入るとお弟子さんから裏の庭に行くように言われた。
裏庭は西門さんが茶花を育てている場所であの紫陽花の庭を通っていく、その先にあった。

そこに行くと西門さんは紫陽花の花の前に立っていた。


「来たな・・・牧野。お前、紫陽花が好きなんだろ?見せてやろうかと思ってさ」

側に行くと白い紫陽花がそこに咲いていた。
他の紫陽花よりも少し小さめの手鞠紫陽花・・・真っ白な花はとても美しくて光っているかのようだった。
そしてその一枝を切り取って・・・私に差しだした。

「青い紫陽花もピンクの紫陽花も土を変えたら色を変えるって言っただろ?少しでも植え替えたら色が変わるし
日にちが経つと色を変えてしまう。でも、この白い紫陽花は色を変えないんだ。なんにも染まらずに白いままだ」

「白い紫陽花って・・・そう言えばあんまり見ないわね。すごく綺麗・・・」


「俺は紫陽花の中じゃこの花が一番好きなんだよ。お前みたいだから・・・」

「・・・え?」

私みたいだから好きって言ったの?・・・その好きは紫陽花?それとも・・・


「何にも染まらないしどんな場所でも白いままだし・・・しぶとくて長持ちで・・・」
「それ・・・褒めてないんじゃないの?」


西門さんは今度は真面目な顔で話してきた。

「昨日お袋がお前に譲った着物・・・模様が紫陽花だっただろ?あれはお袋が婆さまから譲られたものだ。
この西門にずっと伝わってきた着物だよ」

私は白い紫陽花を持ったまま固まってしまった。西門さんの言ってる言葉の意味がわからなくて・・・。

「お前に厳しくしたのもいずれは俺の横で仕事をして欲しかったからだ。お袋の着物を着てもらったのも
新しいものではなくてこの西門に伝わるものを感じて欲しかったからだ。1人で稽古させたのはただそうしたかっただけだ。
お前1人だけしか見なくてすむから・・・俺があんまりにも言葉にしないからお袋が先に動いたんだよ!」

少し赤い顔してまた紫陽花の方に顔を向けられてしまった。


「やっぱり・・・ちゃんと言って欲しいよ?」

「言わねぇよっ!・・・これで、いいだろ!」


その手で両方の頬を押さえられて・・・西門さんが私に優しいキスをくれた。

真っ赤になった私と、苦笑いの西門さんを見たのは・・・そこで咲く白い紫陽花の花だけ。




秋・・・私は西門さんが作ってくれた新しい着物を着て、初めて彼の横に立った。
それは野点の席でもなく・・・沢山の招待客に囲まれて。

司会者の声が会場中に響いた。


「ご紹介いたします。こちらが西門総二郎様の・・・」


yjimage1O0NXWX7.jpg
総二郎、久しぶりのSSでした。
本当は総二郎はこんな照れ屋というか
わかりにくいなんてキャラじゃなさそうですけどね。
ド直球で攻めまくりっ!みたいなことが多いのでイメージ変えてみました!

照れる総二郎は、いかがですか?

花より男子

8 Comments

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2017/07/16 (Sun) 13:10 | EDIT | REPLY |   

plumeria  

Re: こんにちは

えみりん様、こんにちは~!

そうなんですよ!わかりました?
白い紫陽花!・・・コメント読んだときにぞくっとしましたよ。
どこでバラしたかと思って・・・。

うちには白い額紫陽花がありまして今年はイマイチでした。
あんまり花芽がつかなくて・・・ちょっと残念!
その代わり真っ青な紫陽花が今年も綺麗に咲きました。

もうすぐ・・・っていうかすでに真夏ですね!

私はエアコンレスを続けております・・・死ぬかもしれない。

2017/07/16 (Sun) 14:20 | EDIT | REPLY |   

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2017/07/16 (Sun) 15:53 | EDIT | REPLY |   

plumeria  

Re: タイトルなし

わんこ様、こんにちは‼

珍しいでしょう?照れる総二郎🎵( *´艸`)
書いてみたかったんですよ~。

しっとりと梅雨時に出したかったのに、空梅雨ですものね。降るときはものすごいのに。

エアコンは滅多につけないですね。
自慢じゃないですが、真夏の電気代が普通じゃないです。
ワンルームに住む学生のほうが高いかもしれません。
びっくりされますもん。
多分熱中症はそのせいなので、みなさんにはすすめませんけどね。
だから、やる気はなくなってしまう。残念ながら❗(笑)

2017/07/16 (Sun) 16:41 | EDIT | REPLY |   

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2017/07/16 (Sun) 17:54 | EDIT | REPLY |   

plumeria  

Re: タイトルなし

花さま、こんにちは🎵

鬼畜はやめましょうよ!(笑)
ね、照れ屋なんて可愛くないですか?
1回書いてみたかったんですよ❗全然がっつかないのよ?
そんなの総二郎じゃないんだけどねーっ!


絶対総二郎じゃあり得ないわ。
キス1回で終わるとは情けなかったか?

反省❗(笑)

2017/07/16 (Sun) 18:09 | EDIT | REPLY |   

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2017/07/16 (Sun) 18:30 | EDIT | REPLY |   

plumeria  

Re: タイトルなし

さとぴょん様!今晩は!

クンクンしたいですよねっ!抱き締めたいですぅ!総二郎の来てた服とかっ!
いや、洗えないでしょう?ホントにあったら・・・。
想像しちゃうなぁっ・・・。

よく考えたら一度も好きって言ってないSSなんですよ?総二郎が・・・。
なのにここまで甘々で終わるとは・・・似合わない設定もたまにはいいかも?


今日もありがとうございました~!!

2017/07/16 (Sun) 20:53 | EDIT | REPLY |   

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