10月の向日葵 (16)

つくしを後ろから抱き締めたまま、「帰さない」と言葉を出した。つくしは驚いて振り返ろうとしたけど、すぐ横には俺の顔がある・・・向けようとした顔を元に戻した。「つくし、話があるんだ。聞いてくれないか・・・俺、多分今じゃないとこの話をお前に出来ないと思う・・・」「総ちゃん?どうかしたの・・・と、取り敢えず、この腕を離してくれないかな・・・」「嫌だね・・・このままにしとけ。つくしは俺の方を見なくてもいいから」面と向かってな...

10月の向日葵 (15)

弟子の1人が告げてきたのは類の訪問だった。しかも俺宛じゃない。つくしに会いに来たと言われて驚いた。あいつらはこの家を敬遠してる。それもそうだろう、いるだけで息が詰まるような空気に包まれてるんだ。それなのに何年も来なかった類がつくしを訪ねてきたなんて・・・何の用事で来たのかと思って様子を見に行ったら、もうつくしは茶道会館に戻っていくところだった。その表情はこの前と同じく悲しげで辛そうだった。そして、足...

10月の向日葵 (14)

つくしに持ってこられた話の相手が考だと聞かされた瞬間、お袋に対して異常なほど怒りを感じた。そんなことを言われたらつくしは断れない。違うヤツだったら何とでも言えるが、考だと嫌だと言えないのがわかんなかったのか!そう思った時、つくしはもう俺の部屋を出て行った後だった。しばらくドアの外で止まっていた足音・・・少し泣き声が聞こえるような気がしてドアの前まで行ったけど開けることが出来なかった。すぐそこにいるの...

10月の向日葵 (13)

「それでは今日はこの辺で終わりましょうか。お疲れ様でした・・・すこし、雨が降っておりますからお帰りはお気をつけて」「総二郎様、今度是非、我が家にお越しいただけませんかしら」稽古が終わってからそう声をかけてきたのは、旧華族のお嬢様、九条清香という女だった。いかにも名家のお嬢らしく、完璧な所作に美しい顔立ちの女だ。おそらく彼女の申し出を断わる男なんて存在しないだろう。本人もそれを自覚していると思われるほ...

10月の向日葵 (12)

「返事は次に会うときでいいよ。今までだって20年近く待ってるんだから急がないからね」「で・・・でもさ、私はそんな・・・」花沢類は人差指で私の唇を塞いだ・・・彼の指が私の口に当たってるかと思うと流石に顔が熱くなる!慌てて後ろに下がって指を離したら少し寂しそうに笑った。「今日はこの後予定があるんだ。悪いけど、うちの車で送るからそれで我慢してくれる?本当は俺が送りたかったんだけど」「ありがとう。類も大変なんだね...