桜散る日の優しい雨・6
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桜散る日の優しい雨・6

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その日の夜、俺はただ夢中で牧野を抱いていた。この3年間の空白を埋めるように、この狭い部屋の小さなベッドであの頃と同じように。雨に濡れたせいで少し熱があるのかもしれない・・・牧野の身体は熱くて自分の手が冷たく感じるほどだった。それでも離すことなんて出来ない。今住んでいる所へ帰るって言うのを、許すことなんて出来ないよ。少し赤くなっている牧野の顔を俺の両手が包み込んだら、一粒だけ涙を流した。その涙を唇で吸...
桜散る日の優しい雨・5
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桜散る日の優しい雨・5

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今日も少し雨が降っている。土曜日だから1人、アパートのベッドの上でぼんやりとしていた。窓ガラスに当たる微かな雨の音を聞いていた。それはまるで牧野の声のように小さくて優しい・・・そして悲しそうな声に似ていてずっと聞いていた。何となく・・・本当に何となくだけど外を見ようと窓の側に立った。このところ降り続く雨が気になって、目の前に並んで咲く桜の花を見ようと・・・。そしてそこを歩く1人の女性を見かけた。こんな時期...
桜散る日の優しい雨・4
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桜散る日の優しい雨・4

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類と別れた後に私が住んだのは山口県だった。特に意味はなく、お金がないから飛行機も新幹線も乗れなくて、当てもなく乗り継いで終点だったと言うだけ。そこで小さな民宿をやっている老夫婦に住み込みで働かせてもらっていた。そこは夏だけが忙しくて、後は本当にのんびりしたところだった。自分の部屋に置くものなんて何もなくて、小さなカバンに入れて持ってきた類との写真が数枚あるだけ。それを毎日眺めながら、その写真の中の...
桜散る日の優しい雨・3
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桜散る日の優しい雨・3

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小さなアパートの郵便受けに領収書が入ってる。今月分だね。牧野がいなくなった後に自分で色々な手続きをした。ねぇ、牧野。今の俺って結構すごいんだよ?今までしたことないって事を随分とやったんだ。牧野の名義だったのを俺の名義に変えたんだ。電気も水道もガスも・・・家賃も自分で払ってるよ。すごいだろ?大変なんだね。牧野がいつもやってくれてたから甘えてたけど。口座の振替依頼書なんて初めて見たよ。いかに自分が人に任...
桜散る日の優しい雨・2
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桜散る日の優しい雨・2

2
3年前に類の所から黙って姿を消してしまった。その頃、類は大きなお屋敷を出て私の小さなアパートに住んでいた。何も言わなかったけれど、私のことで両親と対立したんだろうということは何となく感じていた。それがわかっていても、私は類と離れることは出来なくて・・・毎日私の所に帰ってきてくれるまで不安が消えなかった。もしかしたら、今日は戻ってはこないのかと・・・遅くなる日は心が震えた。信用していないわけじゃない。類は...