ヴィーナスの涙をあなたに・7 LastStory

「1人で行きなさい・・・わかるでしょう?」おば様にそう言われて私は温室の中に眼を向けた・・・もちろん全部は見えないんだけど。 おば様はもう背中を向けて部屋の方に戻っていった・・・私はこの時、もう心臓が飛び出そうなくらいドキドキして しばらくこの前にある温室の扉を開ける勇気が出なかった。でも、思い切ってその扉を開けてみた。 ゆっくりと中を歩いていく・・・もうすぐベンチが見えるはず。 沢山の試験品種のバラの株を通り抜...

ヴィーナスの涙をあなたに・6 

「あら・・・もう見えなくなったわねぇ。つくしちゃん、ほら・・・もう消えちゃうわ」「そうですね・・・行っちゃいましたね・・・」夢子おば様と2人であきらを見送る。青い空に飛行機雲を見ながら、その先の機体が小さくなるのを眼を細めていつまでも見ていた。今日、あきらはイギリスへ行ってしまった・・・。結局・・・私はここに残ってあきらを1人でイギリスへ行かせた。でも、この決断を彼は笑って受け入れてくれた。あの日・・・あきらにこれか...

ヴィーナスの涙をあなたに・5

アパートの階段を急いで駆け降りて美作さんの所へ走って行った。あと少し・・・あと少しって所で思いっきり駐車ブロックに躓いて・・・転けるって思った瞬間、私の身体はふわっと宙に浮いた。私の身体を支えてくれているのは・・・美作さんの腕だった。見た目はこんなにも優しそうで中性的な美しい人なのに・・・意外と力強いその腕に心臓が高鳴る・・・。抱き上げられた私の目線は彼と同じ高さにあった。「ほら!走ったりするから・・・転けて怪我で...

ヴィーナスの涙をあなたに・4

「おば様・・・色々とありがとうございました。それと、我儘を言ってすみませんでした」この施設で願いを叶えた私はおば様にお部屋をお返しして自分の場所に帰ることにした。もちろんなにも持って来てないから荷物なんてないんだけど、ここにいた記念にとおば様から花の種とハートホヤの苗をもらった。とても可愛いハート型の葉が今の私には嬉しかったな・・・。「いいのよ。どうだった?バラの花が開く瞬間・・・あれはいい香りがしたでし...

ヴィーナスの涙をあなたに・3

牧野がくれた四つ葉のクローバー・・・この施設の人間に頼んで一番綺麗に残るように特殊加工をしてもらった。俺はそれをクリスタルのフォトフレームの中に・・・そのフレームの隅に入れてもらった。このフォトフレームの中に入れる写真はきっと随分先になるだろうけど・・・。その中にずっとこのクローバーも残しておきたかったから。数日後、大学にいる時にお袋からの電話が鳴った。俺には滅多に電話なんかしないのに・・・いま連絡することと...