紫陽花の恋物語 (後編)

家元夫人は私をたった今、譲って下さった着物に着替えさせてくれた。薄紫の紫陽花の花模様の着物・・・夏物の帯までいただいて涼しい感じになった。「まぁ・・・やっぱりいいわね!遅くなったから総二郎さんが怒るかしら?・・・私のせいにしておきなさいね」「そんな・・・。ありがとうございます。大切にしますね・・・」志乃さんと家元夫人は笑顔でこの部屋を出て行った・・・やっぱり結構待たせてるよね?行くのが怖いんだけど・・・!この向こうに...

紫陽花の恋物語 (中編)

「紫陽花の青とピンク・・・何で色が変わるか知ってるか?」「ううん。土のせいって言うぐらいかな・・・詳しくは知らない」「土の酸度によるものなんだ。酸性にすれば青、アルカリ性にすればピンクになるんだ。日本に青が多いのは酸性の土が多いからで、ヨーロッパに行くと断然ピンクが多い。土の中のアルミニウムと紫陽花のアントシアニンが結合して綺麗な青になるんだ。アルミニウムは酸性土で解けやすいからな。その色は花が終わりか...

紫陽花の恋物語 (前編)

西門さんのところに・・・西門流に入門してもうすぐ3年になる。大学からの知り合いだから特別に西門さんが指導してくれていたけど、本当は次期家元と呼ばれる彼に直接教えてもらえるのは本当に特別な・・・大事な生徒さんだけだった。家元からのご命令か、重臣の娘さん、お孫さん・・・大企業のお嬢様とかね・・・。いつもそういう人達は毎回違うお着物で綺麗に着飾って現われた。それを遠くのお部屋から見ている私・・・お稽古が始まる前は西門さ...