10月の向日葵 (39)

次の日、地方支部から帰った時、もうつくしは茶道会館を退職していたから当然西門にはいなかった。だからだろうか、本邸がシーンと静まりかえっているような気がした。しかもお袋がいつもは形式的に出迎えるくせに今日は来ない。それはそれで気が楽だ・・・弟子達だけに出迎えられてそのまま自室に戻った。昨日は支部後援会の接待に付き合わされてつくしに連絡を取ることが出来なかったから、部屋に戻ってすぐに電話をかけた。いつも...

10月の向日葵 (38)

考ちゃんのマンションについてきたのはやっぱり間違いだった。どうしても話がしたくて、この話を白紙に戻したくて・・・例え総二郎の婚約話が消えなくても私だけは誰の所にも行かなくていいようにしたかった。それなのに考ちゃんを怒らせて、撤回どころか私はベッドの上に乱暴に投げ捨てられた!「いやぁあっ!やめて!考ちゃんっ・・・そんなことをしても私は考ちゃんのものになんてならないんだよ!やめてぇっ!」「そんなことわかんな...

10月の向日葵 (37)

あっという間に私が茶道会館を退職する日が来て、午後からは簡単に荷物を片付けていた。そうは言ってもほとんど私のものなんてないから、次に業務を引き継ぐ人に全部残していくだけ。あと1時間になったところで今までお世話になった各教室の講師や業者さんにお礼の電話を入れた。退職の理由を聞かれることが一番困る・・・適当に誤魔化しながら挨拶を済ませていった。「短い間ですけどお世話になりました。事務長のお気遣い嬉しかっ...

10月の向日葵 (36)

つくしが西門を出ていくのを見かけたとき、何故かすごく落ち込んでいるように見えた。また何かあいつを苦しめる出来事でもあったのか・・・確かに今は追い詰められた状態だから明るくなんてのは無理だろうが何度も気持ちを確かめ合っている。それでもまたあんなに顔を暗くする出来事があったのか?妙な胸騒ぎがした。俺は慌てて着物を脱いで普段着に着替えて、それをたたみもせずにつくしのアパートに向かおうと部屋を飛び出した。正...

10月の向日葵 (35)

あれから数日後・・・いつものように仕事を済ませた私は定時にあがって、今日は買い物をしなくちゃ!と時計と睨めっこをしていた。最近は少し料理もサボり気味・・・こんなんじゃいけないって今朝から作るものまで決めていた。「お疲れ様でした。お先に失礼します」「あぁ、お疲れ様でした・・・あ!牧野さん、ちょっと待って」帰ろうとした時に事務長が私を呼び止めた。何かやり残したことがあっただろうかと、今日の仕事の内容を思いだし...