続・茶と華と (10)

総二郎さんが福岡に行った次の日、私は西門のお弟子さん達に華道を教えていた。本当はこのこじんまりした生け方は得意じゃないんだけど、これでも牧野流の師範免状持ってるんだもの・・・その家の娘だから免状を持ってるだけだなんて思われたくないわ。足が痺れて動けなくなるわけにもいかない。もう必死で足を動かしながらお弟子さん達に教えていた。「ここのバランスを考えるといいですよ。少しここを短くした方が全体的に綺麗です・...

Sister Complex (19)

しばらくは何事もなく平和に過ぎていった。静お姉様は類が言うとおり、あの時だけ大学に来ていたみたいでその後は会わなかった。相変わらず類と一緒に登校して毎朝の騒動も同じ・・・私は類に定期テストの話をしていた。ホントはそんな話はどうでもいいんだけど、どんなことでもいいから類と話していたかった。「今度の数学の先生がね、類と私の頭を比べるのよ?どう思う?いくら兄妹でもそこは同じじゃないんだから比べないで欲しい...

続・茶と華と (9)

本邸の廊下で大声で怒鳴り合ったのは当然大勢の弟子や使用人に聞かれていた。しかし、これが始めてじゃないから大して驚かれもしないんだけど!ただ叫んだ内容がとんでもなかった・・・「やる気満々」・・・よく言うぜ!「総二郎様、なかなか手強いようですね。奥様は・・・」「ある意味、ものすげー頑丈な箱に入ってた娘だからな」付き人にそんな事を言われながら今日からの仕事の準備をしていた。今日からは福岡で4日間、九州の支部会と講...

ヴィーナスの涙をあなたに・7 LastStory

「1人で行きなさい・・・わかるでしょう?」おば様にそう言われて私は温室の中に眼を向けた・・・もちろん全部は見えないんだけど。 おば様はもう背中を向けて部屋の方に戻っていった・・・私はこの時、もう心臓が飛び出そうなくらいドキドキして しばらくこの前にある温室の扉を開ける勇気が出なかった。でも、思い切ってその扉を開けてみた。 ゆっくりと中を歩いていく・・・もうすぐベンチが見えるはず。 沢山の試験品種のバラの株を通り抜...

Sister Complex (18)

自宅に戻ったつくしはしょんぼりしたまま自分の部屋に戻った。いつもならその日のことを話すつくしが何も言わないことを加代は随分と心配している。「類様・・・つくし様に何かあったのですか?あのように沈んで帰られるなんて・・・今までにはないことですけど」「何でもないよ。ちょっとね・・・静が大学に顔を出したから、俺が静と話したことが何か嫌だったみたいだね。おかしいよね・・・昔から静とは会ってたのに今更そんなふうに言うなん...

続・茶と華と (8)

昨日私たちの結婚披露パーティーをしたホテルのスウィートに眩しい朝が来た・・・。白いレースのカーテンから漏れる朝日が清々しい・・・のは確かなんだけどね。「あの・・・おはようございます」ベッドで隣に寝ている総二郎さんにさりげなく声をかけてみたけど返事がない。当たり前かもね・・・昨日は疲れ過ぎてワインまで飲んでいい気分になって・・・その後のことは覚えていない。いや、正確に言うとあまりに緊張してなにを口走ったかを覚えて...

ヴィーナスの涙をあなたに・6 

「あら・・・もう見えなくなったわねぇ。つくしちゃん、ほら・・・もう消えちゃうわ」「そうですね・・・行っちゃいましたね・・・」夢子おば様と2人であきらを見送る。青い空に飛行機雲を見ながら、その先の機体が小さくなるのを眼を細めていつまでも見ていた。今日、あきらはイギリスへ行ってしまった・・・。結局・・・私はここに残ってあきらを1人でイギリスへ行かせた。でも、この決断を彼は笑って受け入れてくれた。あの日・・・あきらにこれか...

Sister Complex (17)

西門さんが類と静お姉様が一緒にいるんじゃないかって言った瞬間、心臓がドクンとひとつ大きな音をたてた。どうしたんだろう・・・手が震えてしまう。「でも、類はそんな事一言も言わなかったわよ?静お姉様が帰ってきてるなんて・・・」私の動揺がわかったのか道明寺がいきなり私の片腕を掴んだ!「なにっ?!痛いじゃないの!何するのよ・・・離してっ!」「自分のその眼で確かめたらいいんじゃねぇか?連れて行ってやるよ・・・来いっ!」「...

続・茶と華と (7)

「よくもまぁ、あんなに怒鳴っちゃって・・・。相変わらずだよね・・・司は。せっかくの披露パーティーだったのに残念だったね、つくし!」「類・・・何回も言うがお前が呼び捨てにするのはおかしいんだよ!フランスじゃあるまいし・・・馴れ馴れしいんだよ!」「ホントに心狭いんだね総二郎って!フランスじゃなくても外国は名前の後にちゃんはつけないでしょ?」心が狭いとかの話じゃねぇよ!絶対俺で遊んでるだろう。こう言っちゃなんだがつ...

ヴィーナスの涙をあなたに・5

アパートの階段を急いで駆け降りて美作さんの所へ走って行った。あと少し・・・あと少しって所で思いっきり駐車ブロックに躓いて・・・転けるって思った瞬間、私の身体はふわっと宙に浮いた。私の身体を支えてくれているのは・・・美作さんの腕だった。見た目はこんなにも優しそうで中性的な美しい人なのに・・・意外と力強いその腕に心臓が高鳴る・・・。抱き上げられた私の目線は彼と同じ高さにあった。「ほら!走ったりするから・・・転けて怪我で...