片恋の行方(5)
フランスがどうしたのか・・・なんて聞かれても花沢類の名前なんて出してない。だからどうにでも誤魔化せる。一瞬焦ったけど何食わぬ顔して「行ってみたい国ですから」なんて返事してお弁当を片付けた。そうしたら副社長はクスクス笑ってる・・・それを見たら1人で怒ってる自分が馬鹿馬鹿しくなって力が抜けた。「そんなに尖らなくてもいいだろう?別に襲うつもりなんてないし」「あ、当たり前です!何言ってるんですか!」「あっはは!...
indecisive・2
牧野が英徳大学に来る、それを聞いた時には驚いた。あいつはもう「英徳」って世界から逃げ出したいんだろうと・・・そう思っていたから。司との事が終わってから少しは攻撃も減ったようだった。でも類やあきらが何かと構っていたから、それが為に少しは嫌がらせを受けていたはず。それも無視して3年目を過ごした事は知っていたが、てっきり他の大学を選ぶか、就職するもんだと勝手に思い込んでいた。特待生なんて大変なだけ・・・少しで...
片恋の行方(4)
7年ぶりに戻って来た東京・・・何か変わったのかと思うけど、見ても全然判らない。フランスとどこが違うのかって言えば黒髪の人が多いぐらいの感覚で、羽田の人混みの中を何も考えずに歩いていた。「失礼、花沢類様ですか?」聞き覚えのない声が後ろから聞こえて足を止めた。振り向けばそこには初めて見る男が立っていた。そいつは小柄で痩せていて、歳は35ぐらいだろうか。ビジネススーツに眼鏡、短髪で目が細い・・・一瞬、気が合う...
片恋の行方(3)
就職して3回目の春が来た。今年の新入社員もみんなお洒落で綺麗だな・・・なんて思うけど、よく考えたら殆どの人が2歳下なだけ。如何に自分が地味なのかを思い知らされてガッカリした。それも仕方ない・・・これが私なんだもん!と開き直る日々。「牧野さん、今日は社食行く?それともお弁当?」そう声を掛けてくれたのは同じ課の先輩達で、お財布片手に部屋を出ていくところだった。でも私は車を買いたくてお金を貯めていたからギリギ...
片恋の行方(2)
幼い頃から大人に囲まれて暮らして来た。そのせいなのか、生来こんな性格なのか・・・あまり感情というものがない、それは何となく判ってた。どうやって人に甘えていいのか、どうやって笑っていいのか、どうやって嫌だと言えばいいのか・・・凄く簡単な事なのに俺にはその方法が判らなかった。でも好きだとか嫌いだとか、綺麗だとか面白いとかは人並みにあった。それを上手く伝えられないだけ・・・。俺の容貌から大人達はその状況を「物静...