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それからしばらく家元夫人に付いて修行とやらをした後、あいつは牧野家へ帰って行った。
誰も居なくなったゲストルームを見て、なぜかため息がでる。

「なーーんか、静かになったな」

「そうですね。若宗匠も随分と楽しそうにお過ごしでしたからね。お寂しいでしょう?」

「・・・別に寂しかねーよ」

弟子の一人が変なこと言うから、柄にもなく少し顔が火照る。楽しそうにみえたのか?いや、楽しかったかもしれねーな。
ま、幸い仕事は山のようにあって忙しかったから、遊ぶこともなく日が過ぎていった。
あきらとも飲みには行ったが女は寄せ付けず、びっくりされたな。

家元も牧野家も何にも言ってこなかったから、あいつがどうしてるのかも聞かなかった。

****

ある日、ホテルで茶会の打ち合わせをすることになり出向いて行ったとき、そのホテルの正面ロビーに巨大な花が生けてあるのが目にとまった。思わずその美しさに見とれて足を止めた。
白と黄と緑を中心に、まるで小さな宇宙のように上下に伸ばされた何かの植物の形がとても生命力に溢れていて、暫くその花を眺めていた。


そうしたら、その花の後ろからあいつがひょいと顔を出した。

「あら?総二郎さん?」

巨大なアレンジメントだから脚立の上から声をかけてきた。

「え?つくし?・・・ってことはこれがお前の作品?」

「そうよ、言ったでしょ?こんなだから正座なんかしないって!」

ふふっと笑ってまた仕事をしている。確かによく見たら<作・牧野つくし>ってなってる。驚いたな、こいつらしいアレンジだ。
打ち合わせの時間が迫ってきた。でも、せっかく会えたんだし・・・

「いつ終わるんだ?俺、今から打ち合わせあるんだけど」

「んー、あたしは後一時間かな?」

「じゃさ、後で飯行こうぜ?」

「了解!この辺で待ってるね?」

久しぶりの会話だ。自分でもなんとなくワクワクしてるのがわかる・・・まぁ、いっか!

****

仕事が終わって二人で食事に行った。今日の俺はスーツでこいつはニットとジーンズ、いわゆる作業着ってやつだから
気軽な店に入った。すごく旨そうに豪快に食べて、今日の仕事の話や花の話で盛り上がっている。

やっぱり、いい女だ。豪華な着物やドレスでなくても、内からあふれ出る美しさっていうのか・・・
まぁ、色気があれば最高だが、それはこれからってことか・・・?


「元気そうで良かったよ。連絡もないからどうしたのかと思ってた」

「まぁ、元気よ、いつも。・・・でもやっぱり病気だったかも」

「そうなのか?でも良くなったんだろ?仕事してたし」

「う~ん・・・今日からまた再発したかもしれない・・・」

うそだろ?こんだけ食って飲んでどこが病気だぁ?

「生まれて初めてだから治療法がね・・・わかんないんだよね」


はぁぁ・・・そうきたか。頑張って遠回しに伝えてきたワケね。また、真っ赤になって下向いちゃって。
ほんと、わかりやすいね。でも、こいつにしちゃ上出来かもな。そういう俺も・・・もう認めないとな。

店を出て二人で少し歩いた。
たいした会話もせず、ただぶらぶら歩いてたら段差に躓いてつくしがこけそうになった。とっさに片腕をだして受け止めたら、
いつかみたいに至近距離で目が合った。

「ごっごめんなさい!ぼーっと歩いてたからっ」

って思いっきり振りほどかれた。傷つくってわかんねーかな?!

「別に謝ることなんかじゃねーよ。大事なヤツが怪我とかすんの、嫌だからな」
「へっ?」

「へっじゃねーよ。相変わらずだな!お前、もうちょっと素直になった方が女は可愛いぞ!」
「素直って・・・別に何にもごまかしてなんかないもん」

ほぅ・・・そーか!俺のやり方で伝えてもいいんだな?この西門総二郎、場所は選ばねぇからな。
この通行人が大勢行き交うなかでも全然平気だから。


「さっきのお前の病気の話だけどさ」

さて、墜ちてもらおうか。フェロモン全開でその眼を見つめてやる。目をそらすなんて許さねーよ。


「病名・・・あててやろうか?」
「いやだ、いい」


「・・・じゃあ、薬出しといてやろうか?」
「え?」


片手をこいつの頬にあてて、ゆっくり顔を近づける。ほら、案の定固まった。もう片方の手で腰を抱き寄せる。
そして、耳朶ぎりぎりのところで低く囁く・・・

「愛してるよ・・・」

そして、甘くて長くて・・・深いキスをする。
つくしの手が俺の背中に回り、俺の手はつくしの体を抱きしめる・・・。




その後、西門の正面玄関には毎日美しい花が生けられる。


fin

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Comments 2

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2017/03/27 (Mon) 17:45 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

S様、本当にありがとうございます!

これはサイトを立ち上げて一番初めのお話し・・・。
ものすごく緊張してPCに入力しました。今でこそ平気でキスとか書いてますけど
いやもう、このときは恥ずかしかったですね・・・!

初心忘るべからず・・・たまには見返して気持ちを新たに頑張ります!!

初めは確か差し込みの写真とか入れてなかったんですよ。
そんな所まで全然気が回らなくて。書くだけで必死だったので。
画面を新しくしたときに写真を付けましたね。そういえば・・・。

この作品へのコメント大変嬉しかったです。

2017/03/27 (Mon) 18:42 | EDIT | REPLY |   

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