plumeria

plumeria

「お式の準備が整いました」

係の人の声がしたら総二郎が「向こうで待ってるな!」って私を置いて何処に行ってしまった。

私はこれからどうしたらいいんだろうって思っていたら、部屋に1人の男性が入ってきた。その人の顔を見てもすぐにはわからなかった・・・でも、ニコッと笑った顔を見て私は涙が溢れた!

「やだ・・・!進?進なの?」
「あぁ、何年ぶりだろう!姉ちゃん、元気そうで・・・!それに凄く綺麗になったね、違う人かと思った!」

「なんて事言うの!そりゃ私だってすぐには気が付かなかったけど・・・!でも、どうしてあんたがここに?」
「そりゃ総ちゃんが教えてくれたからさ」

総ちゃん・・・懐かしい呼び方だな。そう言えばまだあんまり喋られないうちに西門を出たこの子は総二郎のことも渾名で呼ぶことはなかったもの。どう呼んでいいのかわからないよね。


「弟さんの腕をとって中に入って下さいね。そして新郎様の所までお進み下さい」

どうやら私のエスコート役は進らしい。
この子の腕をとるなんてちょっと恥ずかしかったし、進まで赤い顔してたけど二人で照れながら扉の前に立った。
列席者・・・中には誰がいるんだろう。身内だけって言ってもそんなに呼べる人なんていないのに。


パイプオルガンが鳴り響いてドアが開けられた。

一歩中に足を入れると正面には総二郎の姿が見えた。
もうそれだけで胸が一杯・・・涙で彼の姿が見えなくなった。総二郎、凄く笑ってるよね・・・それだけははっきりわかるよ。

そして少しずつ聖壇に近づくと両側に座っている人を見つけた。

祥兄ちゃんと千春さん、そして桜子の顔が見えた。参列者はそれだけ・・・蒼は桜子が抱いてくれていた。


総二郎の前まで行くと進から総二郎の腕に・・・彼の腕をとって神父さんの前まで行った。
すでに桜子まで泣き出して、このままだと蒼まで泣いてしまいそう。気になってそっちを見たけど私の事がわからないのかしら、蒼に知らん顔されてしまった!
よく見たら蒼までタキシード風の服に変えてもらってる。キョトンとした顔で周りをキョロキョロ見ていた。

「普段と違いすぎるからつくしのこと、探してんじゃねぇの?」
「うそっ・・・!なんだかショックかも!」

コホン!と咳払いをした真っ白な髪の毛の神父さん。


「それでは只今より結婚の儀式を始めます・・・」

その優しい声が式場内に響いた。


「西門総二郎さん、あなたはつくしさんを妻とし、神の導きによって夫婦になろうとしています。汝(なんじ)健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」

「はい。誓います」

「西門つくしさん、あなたは総二郎さんを夫とし、神の導きによって夫婦になろうとしています。汝健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」

「・・・はい。誓います」

神父さんが持って来たものは白いリングピローに置かれた対の指輪・・・それを総二郎が先にとって私の指にはめてくれた。その後に私が総二郎の左手薬指にはめた。


「それでは誓いのキスを・・・」

はっ!まさかここでとんでもない事しないよね?
一瞬そんな顔をしたのかもしれない。総二郎の方が「ここではしねぇよ」って小さい声で言った。
その言葉どおり、そっと触れるだけのキスをくれた。


「神の御前に置いて二人の結婚は認められました。この先の人生に多くの幸福が訪れますように・・・」


***


式が終ってからは蒼を入れて7人、一番景色がよく見える披露宴会場の隅っこで食事をした。
桜子は今日もド派手に胸の開いた真っ赤なミニのカクテルドレス、進は初めて見るスーツ姿。どうやら総二郎が用意してくれたみたい。この子が買えるようなものじゃなかったからこっそり聞いてみたら「まぁな!」って笑っていた。

祥兄も千春さんも、これが西門の結婚式なら和服なんだろうけどスーツとワンピース。
あの日から連絡なんてしてなかったと思うんだけど・・・総二郎と祥兄ちゃんの顔を交互に見ていたら祥兄ちゃんの方が説明してくれた。

「そんなに心配そうにみるなよ、つくし。総二郎からちゃんと電話もらったんだ。あの話とこれは別・・・家元達と志乃さんにも声をかけてくれって。だけど、家元達が遠慮してな、ここの式場だけ貸し切ってくれたんだ。志乃さんも来たかったみたいだけど家元達に遠慮して俺達2人だけが来たってわけ。ごめんな・・・連れてこれなくて」

「そうだったの・・・ううん、いいの。来てくれてありがとう・・・凄く嬉しいよ」

「式場の貸切ぐらい俺でも出来るんだから余計なお世話だってんだ!せっかく招待してやったのに・・・気を遣うところがおかしいんだよ!でもな、祥兄・・・俺はまだ許しちゃねぇからな!」

「・・・わかってるって。新郎のくせに怖い顔すんなよ。進が怖がるぞ?」


この2人も進も桜子も今日のうちに東京に戻らないといけないらしい。

「みんな、遠くまで来てくれてありがとう!ホントにびっくりしちゃった・・・総二郎ったら何も言わないから」
「そりゃサプライズってもんは普通言わねぇだろうよ!」

「言えば先輩が素直に聞かないからじゃないですか?西門さんがお相手なのにすぐお金の心配するから!西門流は追い出されなかったんでしょ?西門さん」
「追い出されるって・・・言い方がおかしいだろ!俺が自分から出るって言っただけだよ。それなのに追い出したくないからって引き留めたのは家の方だっての!」

「でもまた残り物送っていいかしら?まさか蒼ちゃん1人って事はないですよねぇ!先輩が産めるうちにどんどん家族が増えそうだわ。何人までいくかしら・・・あ、でもそれだと西門さんが困りますわね。いつも妊婦だったら」
「ば、馬鹿なこと言わないでよっ!そんなの身体が持たないじゃないの・・・ってか、残り物って何よ!」

「え?俺はいいぜ、妊婦でも・・・それはそれで楽しめるし」
「総二郎まで何言ってるのよ、やめてよ!進がいるのにっ!」

久しぶりに会った弟にこんな話聞かせるだなんて!
チラッと見たら真っ赤な顔して黙々と料理を食べてる・・・それを隣の桜子がからかってる。悩殺ドレスから溢れそうな胸を進に見せるのやめて欲しいんだけど!


進は大学で法律の勉強をしていたらしい。まだ司法試験には合格してないから都内の弁護士事務所で事務処理をしながら勉強を続けるんだと言っていた。
お世話になった親戚に恩返しをしたいんだと・・・。

「あぁ、それなら進君が弁護士の資格を取ったら、うちの顧問弁護士の事務所に入ってもらうってのはどうだろう。それか今からでもいいんじゃないかな。優秀な弁護士だし何かと彼も忙しそうだから補佐が欲しいって言ってたし」

祥兄ちゃんがそう言って進と話をし始めて、凄く正反対な2人、桜子と千春さんが最近流行のブランド物の話をしている。
今度一緒に銀座に行こう、なんて会話してるけど千春さんが桜子に合わせられるだなんて全然想像出来なくて大笑いしてしまった。


「総二郎の結婚式がこんな小さなものになるとは思わなかった。ごめんね、もっと盛大に祝ってもらえるはずなのに・・・」

4人が話し込んでるときに小さな声でそう言った。

「いいんじゃね?俺は自分の結婚式が自分の意思で出来ると思わなかった人間だから」


幸せだね・・・この日、何度も2人で言い合った言葉。



帰り際、式場の人が大きな花束を抱えて私の所にやってきた。ピンク色で纏められたすごく可愛い花束。
メッセージカードが添えられてて、その送り主は・・・花沢類だった。

「・・・類からだ。やだ、類ったらこんなことして」
「来ないって言うんだから仕方ねぇだろ。仕事が忙しいって・・・嘘ばっか言ってたよ」

「・・・ふふっ!本当に忙しいのよ。きっと・・・そうだよ」


メッセージカードに添えられた言葉は

Je vous souhaite beaucoup de bonheur・・・幸せにね、と一言だけ。



最後にこの花束をブーケの代わりに抱えて私たちの記念写真を撮った。
蒼を総二郎が抱っこして3人でも撮った。その後に進も桜子も祥兄ちゃんも千春さんも入ってもらって全員で。

この年の総二郎のお誕生日は、私にとっても総二郎にとっても一生忘れられない日になった。



そして4人共が明日からの仕事のために夕方早くに東京に向かって帰って行った。



***********



それから6年の月日が流れた。


その年の夏が終ろうとしている頃、庭の向日葵が少しお辞儀し始めていた。
蝉の声が響く庭から元気のいい声が部屋の中にまで聞こえてくる。


「お母さん!花衣(かえ)ちゃんが泣いてる!向こうの道で転けたんだって!」
「あら、怪我したの?蒼、悪いけど連れて来て?お母さん、今蓮のおむつ替えてるから!」

「はーい!僕、おんぶ出来るもん!すぐ連れてくるね!」
「頼んだわよ!」


蒼は6歳になった。

その後に産まれたのは女の子で、総二郎が花衣(かえ)と名付けた。
総二郎はこの子が産まれるとき、もちろん立ち会ってくれて私の身体を支えてくれた。蒼の時には出来なかった生まれたての我が子を抱いて嬉し涙を流して蒼にバカにされてたっけ。
そんなことも気にせずにいつまでも花衣を離さずに看護師さんに叱られていた。

その花衣は今3歳。私によく似たお転婆で少しもジッとしない悪戯っ子だった。
顔は嬉しいことにお父さん似で美人だ。そこだけは助かった。


そして、今私の目の前にいるのは今年産まれた次男の蓮(れん)。

まだ生後3ヶ月。私たちは今、5人で暮らしている。


「お母さーん!ほら、僕強いでしょう!」
「あらら!花衣ちゃん、膝から血が出てるじゃない!またお父さんに怒られちゃうよ?手当てしようね・・・おいで」

「うわーん!!お母ちゃま、これね、これね、蒼兄ちゃまが押したんだよー!」
「ち、違うよ!花衣が遅いから引っ張ったんだよ!」

「・・・どっちでもいいけどこれ以上女の子に傷作ったらお父さんが怒ります!ほら、もう泣かないで?」


もうすぐ総二郎が札幌でやっているお茶会から帰ってくる。
私は急いでご飯の支度だ。


「家族揃って」の夕食はもうあと数年かもしれない。だから、毎日がとても大切な時期だった。



main_photo.jpg
花衣ちゃん、蓮君はお名前募集でいただいたものです。
名付け親様は後書きにてご報告致します。
関連記事
Posted by

Comments 2

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/02/20 (Tue) 14:11 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、おはようございます。

でた、ここでも類!
花送っただけで読者さんがウルウルするとは(笑)
そうかぁ・・・私はこの話でそんなに類君を苛めたのね。

ごめん、類君・・・雪の結晶でも苦しめちゃうけど(笑)アッチでは最終的には
ラブラブさせるから許してね!

進くんを全然書いてなかったからここで登場!
実はいたんだ!って感じですけどね。
最初と最後だけみたいな(笑)


そうそう、いつの間にか家族が増えてるのよ。
今考えたらなんでここを次の日にずらさなかったんだろう・・・。
変な区切りになっちゃった!

早く終らせたい感満載(笑)

2018/02/21 (Wed) 08:47 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply