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plumeria

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<side樹>
急に呼び出したのは山城社長の娘、会長が溺愛する真莉愛だった。
春からここの秘書課に配属されるらしいがそれも名前だけ、出社など誰も考えていないという噂だったが、営業企画の俺には何の関係もない話で気にもしていなかった。

真莉愛のことで気になっているのは花沢類と今後どうするか・・・と、言うことだけだ。
それも、俺の口から聞けるはずもない。

そう思っていたときのこの呼び出し・・・何故か凄く嫌な予感がしながらも応接室に向かった。
そもそも何故応接室だ?客じゃあるまいし。そこがすでに一般常識から外れているお嬢さん・・・と、いうわけか。


応接室をノックするとどこから出てくるのか甘ったるい声が「どうぞ」と聞こえた。
中に入ったらそこにいたのは派手な服に年齢のわりには濃い化粧の女性。これが真莉愛か・・・と、いうぐらい俺には何の感情も湧かなかった。可愛らしいとか美しいとか・・・おそらく世間一般的には綺麗な部類に入るんだろうとは思うけど。

それよりもこの人があの男に惚れてるんならお似合いじゃないのか?なんて自分に都合のいいように考えた。


「すみません、えっと・・・お嬢さんの研修の講師って聞いたんですがどうして私なんでしょう?秘書課の方がいいのではないですか?私には新人の方を教えるなんてこと、出来ないんですけど・・・」

「あら、山本樹さんですよね?実はあなたにお話があって来ましたの。特に研修なんてしていただかなくて結構ですわ。どうぞ、お座りになって?」
「は?はぁ・・・それでは、失礼します」

研修をしなくていならそれこそここに座る理由もないんじゃないか?それを無碍に出来ない・・・サラリーマンの悲しい所だな。
俺が向い合って座るとさっそく始めたのは意外な話だった。


「お話しというのは牧野つくしさんの事ですの」
「・・・え?牧野さんの?彼女がどうかしたんですか?」

「ふふっ・・・ごめんなさい。少し彼女のことを調べていたらあなたのお名前が挙がってきましたの。それでね、山本さんは牧野さんの事をどう思っていらっしゃるのかと思って。失礼ですけど、離婚されて独身ですよね?」
「え?あ、はい、独身ですが、それは・・・」

真莉愛は怪しげな微笑みで俺の目をジッと見る。
ゾクッとする・・・この笑顔は何かを企んでいるということがわかるものだった。

「もうおわかりでしょう?実は牧野さんに私の婚約者の花沢類様が興味を示されてご自分のマンションに住まわせているんです。でもね、類様はお優しいから愛情っていうより親切・・・って感じじゃないかと思うんです。それに早く気が付いていただきたいの。だって牧野さん、ついこの前まで道明寺ホールディングスの後継者の婚約者だったんですもの。それはご存知でした?」

「えっ?あ、あの道明寺の・・・いや、ニュースとしては知っていますよ?一般人の婚約者がいるとかいないとか・・・」

「そう!それが牧野さんですわ。でもね、お別れになったの・・・理由はご存知じゃないって事ね?」

牧野さんが花沢物産の跡取りの恋人だって事だけでも驚いたのに、道明寺ホールディングスの跡取りの婚約者だっただなんて・・・真莉愛がなにかその続きを言おうとしていたけど耳に入らなかった。

確かに魅力的な女性だけど、そんな大物の相手になる女性なのか?


「あの・・・聞いていらっしゃるかしら?山本さん?」
「はっ・・・あぁ!すみません。聞いていませんでした、驚いてしまって・・・」

「うふふ!無理もないわ。それでね、別れた理由なんですけど、やっぱり身分違いというか家柄の問題というか・・・一般人の牧野さんは道明寺社長のお気に召さなくて随分と辛い思いをなさったそうなの。それで耐えられなくてお別れになったのよ?
それなのに今度は花沢物産でしょう?・・・同じ思いはしたくないでしょうに、類様が手を差し伸べられたからこんな事に・・・」

「・・・それで、その話を私に聞かせてどうしろと?私は確かに牧野さんの事が好き・・・ですが、あの2人の間には入れそうにないですよ?それこそ真莉愛さんの方が不安なのではないですか?・・・その、あなた達の婚約は正式に決まってるんですか?」

婚約が決まっているのか、と言う質問をすると少し機嫌を損ねたのか、今まで笑っていた顔が素に戻った。
そして斜めに揃えていた脚を崩して組み直し、ソファーの背にもたれ掛かるように身体を倒した。

「そうなの・・・実は結婚への話が上手く進まないのは牧野さんがいるからですの。この人が早く類様の所から出て行ってくれないと困るんです。いなくなったら類様は少し寂しく思うでしょうけど、その時に慰めて差し上げたいの。それで私の事も考えてくださるんじゃないかしら。お爺さまのお話だとフランスのご両親は賛成して下さってるって言うし。だからあなたには協力して欲しいんです・・・牧野つくしの気持ちをご自分に向けさせる努力をして欲しいの。告白・・・まだなんでしょ?」

告白はしている・・・みたいなもんだけど、彼女はそれを本気だと思ってくれているのかどうか。
何度か話しかけてはみたが全部はぐらかされた。嫌だとか、無理だっていう拒絶ではなかったけどはっきりと「彼がいる」、そう言われた時点で諦めるしかないんじゃないのか?

いや、諦めきれないからこうして悩んでるんだけど。


「告白してみませんこと?これはね、牧野さんのためですのよ?」
「牧野さんのため?ですか?」

「そうよ!さっきから言ってるでしょう?このままでは花沢家からも道明寺と同じ扱いをされて追い出されるんですのよ?今はお二人とも自分たちのことしか見えてないから燃え上がってますけど、これ以上長くなれば傷つくのは牧野さんです。
ね?助けてあげないと・・・息子さん、新しいお母様が欲しいのじゃないかしら?調査票によると息子さんが一番懐いているのは牧野さんらしいわね。チャンスじゃない?山本さん・・・よく、お考えになって?」

終りの方ではまた彼女は怪しい笑顔を俺に向けた。

牧野さんを助ける?
彼女が同じ苦しみを背負わないために?

確かに一樹にさりげなく聞いてしまった。
新しいママは欲しいか・・・一樹はすぐに欲しいと答えたけど、俺はそれ以上何も言えなかった。

「それでは私はこれで・・・。山本さん、私は自分の恋もだけどあなたの恋も応援してますの。頑張ってね」


頭を抱え込んだ俺の事を応接室に残したまま真莉愛は一人で出て行った。


*********


「凄くお洒落なお店ね。こんな所久しぶりで緊張する・・・」
「あはは!そう?でも、今日な牧野はどこから見てもお嬢様だよ?堂々としてていいよ」

コートを店に預けてドレス姿で予約席に向かうとそこには一輪だけ薔薇の花が挿してあった。
それも真っ赤じゃなくて可愛らしいピンク色の薔薇だ。

「見て、類・・・綺麗な薔薇がテーブルにあるわ!なんだかこれだけで照れちゃうよね!」

変な俺・・・真莉愛と食事したときにこんな事されてるのを見たらイラッとしたくせに、今日はこの薔薇に感謝したい気分。
これだけで牧野の顔が笑顔になるなら毎日でも花を買って帰りたいくらい・・・呆れられるからしないけどね。


本当は招待されたなんて嘘だった。
こうでもしないと牧野は遠慮して外で食べようなんて言わないから。たまには晩ご飯の支度をサボってもいいんだよって言っても「家で作りたい」って言葉を繰り返していた。

だけどね、牧野・・・こういう場所に慣れて欲しいんだよ?
これから先のことを考えてるから・・・こういう店での食事やパーティーの時、俺のパートナーはあんたしかいないんだから。

少しずつでいいよ。勇気を出してもう一度この世界に飛び込んできて欲しいんだ。

今度は俺が守るから。


「花沢様、いらっしゃいませ・・・本日のワインは何に致しましょうか」
「そうだな、このルフレーヴのモンラッシュ・・・これでいいよ」

「畏まりました」

今日のコースは魚料理をメインにしたからワインは白を選んだ。
綺麗に盛り付けられた前菜を前にして嬉しそうに笑ってる。本当はその笑顔ももう少し抑えて欲しいくらいだけど、見ている俺が幸せになるから黙っておくことにした。

「ホントに美味しそうに食べるよね!牧野見てたらこっちがお腹いっぱいになりそう!」
「え?そうかなぁ・・・だって美味しいんだもん!類こそ残しちゃダメだよ?作ってくれた人に失礼だよ?」

「そうだね。牧野の手がこっちに伸びちゃいけないから俺も頑張ろ!」
「・・・失礼しちゃう!こんなお店じゃそんなことはしません!」

「ははっ!やりそうだったんだもん!」


大好きな人との食事は最高の栄養だよね。
あんたと食べてるといつもそう思うよ・・・・おでんでも鍋焼きうどんでも、卵雑炊でも。


この店を出てほんの少し牧野と歩いた。
凍えるような寒い夜だったけど、すぐに車に乗るのが勿体ないって。
街路樹に付けられたイルミネーションが綺麗だって牧野が言うから、その下を腕を組んで歩きながら今日の料理の話をするんだ。

牧野の話が止まることなく続いてて内容なんて覚えられない。
俺はただ相槌を打つだけ・・・だけどこの時間が永遠に続けばいいって、そう願いながら甘い声に耳を傾けてた。


**********

<side真莉愛>

「え?どういう事だね、真莉愛」

山本樹と話した後、私はお爺さまの会長室にいた。ある”お願い事”をするために。

「ですからね、お爺さま。営業企画部の山本部長・・・海外に行きたいらしいですわ。その希望を叶えて差し上げたいの・・・そうですわね。カナダとかどうかしら!最近うちが新しく北米支社を起ち上げましたでしょ?そこだと喜ぶんじゃないかしら」

「カナダに?でもあの男は今度の花沢との事業の責任者の1人だし・・・」
「お爺さま?山城には他にもいい人材はいましてよ?彼じゃないとダメって事はないでしょう?」

そう・・・この際牧野つくしを自分のものにしてもらって、そのまま海外に行ってもらいたいわ。二度と日本に帰ってこないようにね。そのためにはまだ動かなきゃいけないけど。

先に彼を追い詰めなきゃね・・・焦ってくれなきゃ動きそうにないんだもの。


「それはいくら真莉愛の頼みでも儂1人では決められんよ?役員に聞いてみないと・・・」
「聞いてみて下さいな?でもね・・・そうしないと真莉愛、類様の傍に行けないんですの・・・お爺さま、真莉愛が泣くのは嫌でしょう?お願いしますわ」

「花沢君の?それはまた何でだね?」


理由はお爺さまが知らなくてもいいのよ・・・とにかく山本が牧野つくしを連れてここからいなくなればいいんだから。

「色々ありますのよ・・・お爺さまにご心配かけたくないの。今のお話し、ちゃんと考えて下さいね」


お爺さまにはこのくらいで十分・・・この私の言うことは絶対だから。


ごめんなさいね、牧野さん。
また遠いところに送ってしまうけど、その方がお幸せになると思うわ。



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Comments 6

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2018/02/22 (Thu) 00:14 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん、様おはようございます!

あはは!ごめんなさいっ!
すんなりと行かなくて。いやん、もうわかっておいでかと思ったのに♥

もう一回言いますね?(笑)言ったかどうかも覚えてないんですが・・・。
このお話は迷うつくしちゃんを何処までも追う類君・・・って設定です♥
で、plumeriaはハピエンの女です。
ただ、事件を起こすだけ(そこが問題だってのっ!)

思いついたラストシーンに向けて突っ走って行きます!

「向日葵」の類君(笑)番外編、用意します!読者泣かせ・・・(笑)
(ごめんね、類君!でも、私は「向日葵」の君が大好きだよ~!!)

今日もありがとうございました。

2018/02/22 (Thu) 08:01 | EDIT | REPLY |   
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2018/02/22 (Thu) 12:33 | EDIT | REPLY |   
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2018/02/22 (Thu) 12:34 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、今晩は!

いやいや、ご飯ぐらい食べさせてあげて(笑)
お腹空いてるから、つくしちゃんが。

確かに食べてる場合じゃないかもしれんけど・・・!なんかお腹痛い!
ここでそんな事言うの、さとぴょん様ぐらいでしょ!もうっ!

で、真莉愛ちゃん・・・まぁ、出番のあるときは思いっきり悪役で!(笑)

でも、確かに田舎の小さな会社の社長令嬢でも結構すごい人いますよ?
お客さんでいましたもん。

「私の父、社長ですから」

・・・で?って感じでしたけどね。

「頼めばしてくれますよね?」って言うのが口癖でした。

殴ろうかなぁ~って思ったことが数回あります。殴らなかったけど。大人の対応・・・大事だよね。

2018/02/22 (Thu) 21:21 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・ぷっ!了解!

2018/02/22 (Thu) 21:22 | EDIT | REPLY |   

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