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結局何も食べずに牧野は泣き疲れて寝てしまった。

こんな寒いところでいつから泣いてたんだろう。部屋の様子を見ても多分なにも片付けが進んでない。クローゼットの床に出されたままの服がその証拠。
これを片付けている最中に牧野に凄くショックなことがあったとしか思えない。

何があったんだろう・・・今日は休みで日頃出来ない事をするんだって朝はあんなに元気だったのに。

牧野を抱きかかえてベッドまで運んで、そのまま布団を掛けたけど少しも起きる気配がなかった。
俺の腕の中で安心したんなら嬉しいけど、こうなるまでの経緯がわからなくてもどかしい。


さっきは何も聞かないでおこうと思ったけど、急に不安になった・・・もしかして誰か来た?

ここに来る人間は限られてるけど、一部コソコソ調べてるヤツもいるし、前田の差し向けた人間が牧野に接触したのかもしれない。

誰かが牧野の耳に余計な情報を入れたのならあの反応も納得出来る。そうじゃなきゃ・・・また山本が動いたか?いや、山本ならここまで泣かないはずだ。
あの男は泣かせるような言葉を言わないような気がした。困らせることは十分考えられるけど。


牧野がよく寝ている事を確かめてからコンシェルジュの所に向かった。


***


コンシェルジュに頼んで今日の防犯カメラを見せてもらった。

「花沢のお部屋をお訪ねになったのは若いお嬢様でしたわ。同居されていらっしゃる方にお話しがあると言われて内線をお繋ぎしましたらお会いになると言われまして」

「若い女性?部屋にまであげたのかな」

「いいえ、女性の方が降りてこられました。お部屋には行っておられませんよ?えーと・・・あぁ、出ました。これですね」

俺と話しながらモニターの録画時間を戻していたコンシェルジュがその時間のエントランスを映した画像を見せてくれた。
若い女性と言えば一人しか思い当たらなかったが・・・やはりそこに映っていたのは山城真莉愛だった。

司の時と同じく、何を話しているのかはわからない。
牧野は後ろ向きで真莉愛の表情だけ見ることが出来た。凄く威圧的に話していると思われる目付きと、腕組みをしたままウロウロする真莉愛・・・それに比べて全然動かない牧野はおそらく一方的に何かを言われたんだと思う。

まさか、決まってもいない婚約者面して牧野にここを出て行けとでも言ったんだろうか。
それとももっと酷いことを・・・?真莉愛は英徳出身だから司の事も知っている。もしかしてそのことまで持ち出された?

その全部かもしれない。彼女ならやりそうなことだ。

「会話の内容は覚えてない?」

「そうですね、私どもは聞かないように心がけてますから・・・ただ、このお嬢様だけが怒ったように話されてて、ここは自分のために用意してもらったマンションだって言ったのは聞こえました。後は・・・自分の立場を考えろ・・・でしたかしら。申し訳ございません。私たちは聞き流してしまうので・・・」

「いや、いいよ。ありがとう。あ・・・うちの彼女は泣かなかった?」

「どうでしょう。泣き声は聞いておりませんわ。お嬢様が帰られたらすぐにお部屋に戻られましたから」


コンシェルジュには2度とこの女性が来ても取り次がないよう念を押して部屋に戻った。

録画が始まった時間は午後3時ぐらいだった。
と、言うことは俺が帰るまでの5時間近く牧野はあそこにいたんだろうか。さっき抱き締めた時も服が冷たかったよね。


ベッドに埋もれるようにして寝ている牧野の赤くなった瞼にそっとキスしたら、今度はくすぐったそうに目を開けた。


「あれ?・・・寝ちゃった?類・・・何か食べた?」
「うん、キッチンにあったもの少し食べたから大丈夫だよ。牧野・・・起きれる?お腹空いたでしょ?ホットココア飲む?」

「ん・・・飲む。ありがとう」

起き上がったけどまだ目を擦ってる。
こんな気分のまま眠らせるわけにはいかないからね。ちゃんと俺の口から言わなきゃまた消えちゃいそうだから。


ベッドから出られそうにないからホットココアをいれてそこまで持って行った。
俺はベッドサイドに座って、牧野はコクンとココアを口に入れて「美味しい・・・」って悲しそうな笑顔を見せた。


「あのさ・・・今日、真莉愛と会ったね?」

俺の言葉に口に運ぼうとしたマグカップが止まる。そのままカップに残ったココアに視線を落とすと口元が微かに震えた。

「飲みながら聞いて。頷いてくれればわかるからなにも言わなくてもいい・・・。彼女は自分が俺の婚約者だから牧野にここを出て行けって言わなかった?それとこれは花沢家が承諾してるって。もっと言えば牧野じゃ俺の邪魔・・・とか、足手まといとかそう言った感じの言葉をぶつけたんじゃないの?」

「・・・・・・うん。なんでわかったの?」
「さっきコンシェルジュの所でモニター見てきた。相変わらず凄い目付きだったね、彼女」

牧野にかかってた布団を退かして「おいで」と手招きしたら、カップを持ったまま俺の横に座った。その細い肩を抱き寄せて髪の毛を撫ででやるとコトン、と俺の肩に頭をくっつける。


「真莉愛は牧野と再会した日・・・あの日に初めて会った人だよ。山城商事と花沢で新事業に取り組むからさ、そこの社長令嬢だって。そう言ってただろ?」
「うん・・・でも最近知り合ったような言い方じゃなかったけど。そんなに最近だったの?前からの婚約者みたいに聞こえたよ?」

「そんなわけないでしょ。バカだね・・・怒るよ?」

ふざけて怒るよって言うとははっ!て笑ってる。
そんなに無理して笑わないでいいんだって。我慢出来なくなって頬を抱え込んでキスをした・・・。
「んっ・・・」って声が漏れて唇を離せなくなって・・・少しだけ強引なキス。

やっと離せたと思ったら今度は抱き締めてしまった。
「苦しいよ・・・」って牧野の囁くような声は聞こえないふりをした。


「あ・・・ここのマンション、話したと思うけど真莉愛とは無関係だからね?ここに住むのは最初から牧野とって・・・再会する前だったけど、そうできたらいいなって願望で買ったんだから!誰が真莉愛なんかと・・・結構ムカついたんだけど」

「・・・ちゃんと覚えてるよ。再会してないうちからなんて事考えてるんだろうって笑ったもん・・・」

抱き締めてるから牧野の声が俺の服で籠もって聞こえる・・・牧野の口元の辺りにある俺の身体が熱くなってゾクッとする。
こうしてる間もあんたの体温で俺の心臓がドキドキしてること、全然気が付いてないんだろうね。


「彼女と婚約なんてしないよ。勝手にそう言ってるだけで何も決まっていないんだ。無理矢理そういう方向に持って行こうとしてるみたいだけどね。うちの両親も何も知らないことだよ。だから牧野は何も心配しないでいいんだ」

「本当に?私・・・ここにいてもいいの?類の役に立たないよ?」
「いるだけで俺の力になってる。それだけで十分役に立ってるじゃない?」

「私、あの人みたいに奇麗じゃない。類・・・恥ずかしくない?」
「あんたは自分の事を知らなさすぎるんだよ。笑わなかったら、ん~って思うけど、笑った顔はすっごい奇麗だよ?」

「・・・ぷっ!何それ」
「ははっ!聞くから答えたんだよ。だから笑ってて?それだけでいい・・・ホントにそれだけで俺が頑張れる」


愛してる・・・何度言ってもあんたの不安が消えないなら、この命が終るまで言い続けてあげる。


この夜、俺は牧野を抱いた。

息が止まりそうなほど抱き締めて離せなかった。この身体が折れてしまうんじゃないかって思うぐらいの力で・・・。
苦しいぐらいのキスをして、牧野の肌に沢山の痕を残して、泣きながら延ばしてくる指を絡めて夢中で求め続けた。

どんなに汗で滑っても引き寄せてしまう背中と、何度も掴み直してる二人の指に小さな傷がついても、耳元で聞こえる牧野の声が掠れてきても・・・離す事なんて出来なかった。


最後は同時に二人で倒れ込んで、部屋の中には牧野の荒い息だけが響いてた。







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2018/02/25 (Sun) 00:39 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、おはようございます。

トラ!まさしくそのイメージですかねぇ!
虎柄のコートでも着せれば良かったか!

で、つくしちゃんはカピバラみたいなの?
悪役のお嬢様のイメージ・・・腕組みしてウロウロしながら話す。
これも2時間ドラマからなんですけどね(笑)

これはプチなのね?プチプチじゃなくて!

これで最後にしようかなぁ・・・やっぱダメかな(笑)

2018/02/25 (Sun) 09:18 | EDIT | REPLY |   
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2018/02/25 (Sun) 12:12 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・こんにちは!

あはは!ダメか!


え?父の一言?

あの続きはあるんですよ。

「こんな大柄な娘と歩きたくはありません」

うちね、兄が185,私が165、母が158、父が155なんです(笑)
可愛いでしょ?

仕方ないって!花嫁は頭だってデッカいんだから!ヒール履いたら175はあったでしょうよ!
だからって断わるか?

まぁ、最後にはやってくれましたけどね♥

2018/02/25 (Sun) 12:32 | EDIT | REPLY |   
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2018/02/25 (Sun) 17:48 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は!

あはは!そんなんじゃないでしょ、ただ天然なんですよ。

うちの兄・・・卓球でした(ぷぷぷ!)
強かったんですが高校からはバイク野郎になったので(所謂不良ってやつ)
スポーツはしなかったですね。

ジャニーズ受けて合格したんですよ(笑)
でも、母に怒鳴られて合格通知、破られました!

妹が言うのもなんですが憎たらしいほどモテてましたねぇ・・・。
性格は悪いんですが顔は良かったです。えっとね・・・私の中では貧乏な司みたいな感じ(笑)

暴れん坊で喧嘩ばっかりでした。私に赤紙貼ったんじゃないかって思うぐらい酷かったしね。

そんな兄ももうおじさん・・・今では牧野晴男のようです。

2018/02/25 (Sun) 17:57 | EDIT | REPLY |   
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2018/02/27 (Tue) 11:46 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は!

そうなのよねぇ・・・うちの家族のネタを話したら多分連載が出来ると思うのよ。

そんな暴走族の兄だけど子犬拾って来て18年間飼ったし、私が高校入学したときは50円くれたし(笑)
なんで50円か・・・明治とか大正とかそんな古い時代じゃないんだけど。チロルチョコしか買えんじゃん!みたいな。

お父さんは私の結納の時に緊張して家でボヤ騒ぎ起こしましたしね。
これは話せば長いから止めとくけど(笑)

確かに全員何処かおかしい家族かもしれません(笑)
いいのよ・・・幸せなら。

ね♥総ちゃん!

あれ?これどっちの話だ?(笑)

2018/02/27 (Tue) 19:51 | EDIT | REPLY |   

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