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plumeria

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昼の休憩時間、屋上に繋がってる階段を登っていた。

扉を開けたらここら一帯が見渡せる屋上、しかも花沢では屋上緑化計画により樹木が植えられている。その為に少しばかり複雑な造りになっていて、その人目につかない場所で会ったのは藤本だった。

「専務、お疲れ様です」
「あぁ、ご苦労様。どう?経理課には少し慣れた?」

「・・・慣れませんよ。アウェイ感で一杯です。それより、先日からの調査ですが、やはり巧みに裏工作ししているようでして金銭授受についても推測でしかありません。花沢もすべてデータ上は不審点は出てきませんし、資材課などの数量誤差も都合のいい理由をつけて決算報告はクリアしています。もう一つの山城の子会社と前田の身内の繋がり・・・その辺から探った方が早いようです」

「そうだね。とにかく早く前田をどうにかしたい。父さんも戦友である彼を出来るだけ外部に晒したくないようだしね。自分からここを出ていって欲しいって思ってるようだから。あのさ・・・誰か山城の人間に接触できない?」

「どういう事でしょうか?」

本当はしたくなかったけど、こうなったらこっちも裏金を使うしかないかも・・・という話だ。
ただし会社の金には手をつけない。個人的に金を準備して山城の人間から情報を得る。卑怯だと言われそうだが手段なんて選んでいられない。

「山城の経理課か秘書課・・・監査室でもいいけど裏に繋がってそうな人間で金で動きそうな人間を探してくれる?優秀な人材ならうちに引っ張りたいところだけど、自社を売るぐらいなら信用できないかもね。その辺は藤本に任せる・・・俺としては極秘に前田を潰したいだけだからね。悪いけど少し急ぎたいんだ、妙な動きしてるから」

「・・・牧野様ですか?何か接触を?」

「真莉愛が脅しをかけてきたみたい・・・とんだお嬢様だ」

「それでは真莉愛様の事も調べましょう。実は派手なお嬢様ですよ?おそらく何処かにそういう男性がいるでしょう」

チラッと藤本を見たら相変わらず飄々としてる。全体的に薄い顔で黒縁メガネ、開いてるのか確かめたくなるような目とへの字の口元・・・この男の何処にそんな能力があるんだろ?って思うような風貌なのに。


「何か変ですか?」
「いや・・・良い働きぶりで助かるなって思って」

「類様付きの秘書になるにはこのぐらい動かないとダメだと社長に言われてますから」
「・・・どういう意味?俺が動かないみたいじゃん」

「興味のある事しか動かないと聞いております。それではそろそろ戻りませんと午後の業務が始まりますので」

一礼して俺が上がってきた階段を先に降りる藤本。
興味のあることしか動かない、か。自分の親ながら言葉が悪いな。でも・・・当たってる。


藤本が降りて数分後、少しだけのんびり日向ぼっこした後で俺も執務室に戻った。


*********


部屋に戻るとそこには真莉愛がいた。

今日は何も予定を聞いてないのに?しかも、今は一番見たくない顔だ。
昨日、牧野の事を睨みつけていたこの顔が今日はまるで天使かと思うような作り笑顔で俺を出迎えた。

「ごめんなさい、類様・・・お昼休みだと思ってきましたの。何処かにお出掛けだとは知りませんでしたから少し待たせていただきました。今日はね、沖縄に行ったお友達から美味しいお菓子をいただきましたのでお持ちしましたの。どうぞ、休憩時間に召し上がって?」

「・・・それはどうも。森本に渡して下さい。後で秘書課の人間が食べると思いますから」

「あら!私は類様にお持ちしたんですのよ?宜しかったら今から私とどうかしら?」

どこから出るのかわかんないような声で甘ったるく喋ってくる真莉愛にゾッとする・・・顔もろくに見ずに椅子に座ると腰をくねらせて俺の真横まで近寄ってきた。
その派手なネイルの指が俺のスーツに触れようとした時に、傍にいた森本に声をかけた。

「森本、悪いけど2人にしてくれる?少しの間席を外して・・・」
「は?あ、は、はい!気が利きませんで申し訳ございません!」

そうじゃないけど話しにくいだけ。
また余計なことを前田に言うんだろうから。


「類様ったら!真莉愛は別に恥ずかしくはありませんのよ?でも2人だけの方がいいって仰るなら嬉しいですわ!」
「・・・何か勘違いされてるようですけどね。どうぞ真莉愛さんは向こうのソファーにお戻り下さい。別に俺に触れないでくれるならそこでもいいですが」

「類様・・・?」

「申し訳ないが俺はそんなネイルが光るような爪は嫌いなんですよ」

触れるな、って言葉に真莉愛は手を引っ込めてソファーに座った。
少し不機嫌な顔になったようだけどそれすら確認したくない。俺は午後の会議資料をパソコンで見ながら言葉を出した。


「昨日、牧野に会いましたね?何を言ったか知りませんが、これ以上彼女と接触するのはやめてください。話はそれだけです」

真莉愛は急に俺から視線を外したみたい・・・だから、彼女の方を見た。
俺と反対側に視線を向けて美しく作りあげた眉を歪ませてる。真っ赤な口元をギュッと噛んで両手は硬く結ばれた。
何度も瞬きを繰り返す様は滑稽だ・・・俺にバレないとでも思ったんだろうか。


「牧野さんがお話しになったの?あれだけ釘を刺しましたのに・・・バカな人!」

「牧野は何も言いませんよ。様子がおかしかったのでマンションの防犯カメラで確認しました。あなたこそそのぐらいわかりませんでしたか?なんのためのセキュリティか・・・あなたのような人から大事な人を守るためなんですよ」

「大事な人・・・?あんな人が?類様、本気ですの?」

「もちろん。だから一緒にいるんですよ」


一気に青ざめてキッと俺の方を見た・・・今度は真莉愛の目を睨みながら言葉を続けた。

「あなたが何をしようが無駄です。俺の心は君には向かないし、牧野を傍から離したりしない。何処にも行かせない・・・その自信はあるんですよ。君とはそんな絆さえ持とうとは思わない。これ以上嫌な思いをしないうちに自分から手を引くことだ」

「随分と酷いお言葉ですわね・・・私は花沢家が認めてくれた人間ですのに!」

「万が一花沢家が認めても俺が認めない。そうだな・・・もし結婚しても指一本ですら触れることはない。それに耐えられる?」


真莉愛がスッと立ち上がってドアの方に向かった。
そこに手をかけて開ける手前で振り向いた。

「類様、私・・・結婚したらあなたのことを振り向かせる自信はありますわよ?牧野つくしなんかに負けませんわ。今日はこれで失礼します」


バタン!と音をたててドアが閉まると、すぐに慌てて森本が駆け込んできた。

「専務!どうしたんですか?真莉愛様が泣きながら帰っていかれましたが、また何か酷いことを言われたんですか!」
「・・・別に?真実を言ったまでだよ。森本、早く仕事に戻って」


また今日もアタフタして、「チッ!」と舌打ちして廊下に飛び出て行った。
これを前田にでも報告する気か?まぁ・・・どうでもいいけど。

俺を振り向かせる自信?
俺はそれを打ち砕く自信があるけどね。


そんなことよりも今日、牧野が作ってくれる夕食のほうが大事。
パソコンの画面には・・・クスッ!会議資料じゃなくて、今度作ってもらおうと思っている「煮込みラーメン」の画像が出てる。

『めっちゃ美味しいんだよ?野菜もたっぷり取れるし!類はとにかくもっと野菜をとらなきゃ!』
いつだったかな。牧野が元気良かったとき、そんな話をしたよね。

『笑って食べると心の栄養にもなるんだよ?』
そんなことも言ってたっけ。そのあんたが泣いてばかりじゃ俺達、2人とも栄養失調だよ?


今日、ドアを開けるのは俺だろうか、それとも牧野だろうか・・・。


いつも夢を見てしまうよ。
あんたの向日葵のような笑顔・・・俺の夢は雪のように溶けずにその形をちゃんと留めてるよ。



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2018/02/27 (Tue) 12:53 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は!

やっつけるのどっちかって言うと藤本かも(笑)
類君、自分では何もしてないって実はバレてる?あはは!

今回はひたすらつくしちゃんとイチャイチャしてるから。
陰で藤本がコソコソしてるから何とか事件が解決するんですよ。

ホント、いいことだけ持って行っちゃって!類君ったら♥

真莉愛ちゃん・・・どんどん最悪なキャラになっていますが最後は何処までいくんでしょうね。
こうなったら・・・最悪の嘘が出るかもよ?ふふふ。
キーボードがダダダダダダダダっ!と進みます♥

2018/02/27 (Tue) 20:21 | EDIT | REPLY |   

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