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「つくし先生、さようならーっ!」
「はーい、涼君、さようなら!」

「つくし先生、またあしたねーっ!」
「うん、美香ちゃん、またあしたね!風邪、早く治してね?」

親のお迎えが早い子供達が帰っていく午後4時。自分のクラスの子供が何人か帰ったあと、退社時間になって私も帰る支度をしていた。今日こそちゃんと晩ご飯、作らなきゃ・・・最近少しサボり気味だから類の身体のことも心配だし・・・。頭の中で買い物するものを思い出しながら鞄を手に持った。

先輩保育士に挨拶して花沢の車まで行こうとしたとき、門の前に立っている山本さんを見つけて一瞬足が止まる。

ちょっと予想外の対面に驚いたけど、今日はお迎えが早かったのかと思って一樹君を呼ぼうとした。
でも、それよりも早くに山本さんの方が声をかけてきた。

「牧野さん!君に用があって早く来たんだ。一樹は後で連れて帰るけど少し時間とれないかな・・・?」
「え?私に話・・・ですか?あの、前も言ったんですけど困るんです。ここの規則もあるって言ったでしょ?それに・・・」

「花沢さんのこと?花沢物産の跡取りの・・・花沢類さん、君の彼だよね?」

「・・・・・・はい、そうですけど何故知ってるんですか?私、お話ししましたっけ?」

急に山本さんから出た類の名前に驚いた。
私、この人に話した・・・?ううん、彼がいるとしか言わなかったわ。類のことをそんなに人に話したりしないもの。一樹君になら類って名前は話したけど、それだけで花沢物産ってわかるのかしら。類って・・・珍しいから?

まさかね・・・一樹君が覚えていたかどうかもわからないのに・・・。


「ごめん、そのことで話したいんだ。時間はとらせないから」
「・・・でも、ここで話す訳にはいきませんし、向こうには花沢の迎えが来てます。私が行かないと運転手さんが心配しますから」

山本さんの横を擦り抜けようとしたらバッと手を広げて行く手を塞がれた!それにビクッとして身を縮めると山本さんは慌てたように手を引っ込めた。
だけどここはまだ園庭・・・先輩達が見ているかもしれなから私の方が急いで山本さんの手を引っ張って門を出た。

「ホントに困ります!私、確かに花沢さんとお付き合いしてますけど、それがどうかしたんですか?山本さんには関係ないと思うんですけど。お願いします・・・もう放っておいていただけませんか?」
「花沢類には婚約者がいるって言っても?」


「・・・え?どうしてそれを・・・」


私は鞄を握り締めて山本さんの顔を見た。
なんて真剣な目で見てるの?・・・少し寄せた眉根がこの人の焦りを感じさせるけど、それよりも類の”婚約者”を知っていることに驚いて声が出なくなった。

「花沢類には家が決めた婚約者がいるんだ。本人は否定してるかもしれないけどね・・・山城真莉愛という女性で、うちの会社のお嬢さんなんだ」
「・・・山本さんの・・・会社?」

そう言えばあの時の茶封筒にそう書いてあったような・・・類の会社に近いんだとしか覚えてなかった。
まさかこんな所で繋がっているとは思わなかった。じゃあ、類は山本さんがそこの社員だって知ってるのかしら。

それよりも山本さんが知っているほどこの結婚話は噂になってるの?類は彼女が勝手に思い込んでるって・・・そう言ったのに?


「あの・・・その人のことは知っています。でも類は結婚なんかしないって言いましたし、それは真莉愛さんって人が勝手に言ってるんだって・・・私は類の言葉を信じますから」
「花沢さんが話したの?でも、君はわかってないよ。こういう話は彼だけの気持ちでは変えられない。あの人達はそういう世界の人達だよ?道明寺さんの時、わかったんじゃないの?」

「道明寺・・・そこまで知ってるんですか?」

そういう世界・・・道明寺のお母さんにも散々言われた。
自分たちと私では住んでる世界が違うのだと。

類はそんなことないって言ってくれたのに、山本さんからも言われるだなんて・・・。

茫然とそこに立っていたら私の腕を掴んで自分に引き寄せようとした。でも、それに抵抗することも出来ないほど私も自分を見失っていた。山本さんの両手が私の身体を包もうとしてる・・・その時、バタン!と音がして運転手さんが心配して車から降りてきた。


「牧野様、どうかされましたか?お帰りではないのですか?」

その声で我に返って、掴まれていた腕を振り払って身体の向きを変えた!


「す、すみません、すぐに行きます!・・・山本さん、ご心配していただいてるようですけど私は大丈夫ですから。もう失礼しますね。一樹君のこと、他の先生に頼んで下さい!」

まともに山本さんの顔も見ずに頭を下げて運転手さんの方に足を向けた。


「牧野さん、俺は君の事が好きだ!花沢よりいい暮らしはさせてあげられないけど君に似合う生活が出来るって思ってる・・・本気なんだ!君に話したいことがまだあるんだ・・・牧野さん、時間を取ってくれないか!」


後ろから叫ばれた山本さんからの告白・・・それに答えることなく私は急いで車に乗り込んだ。


まだ心臓がドキドキしてる。
口元を押えた手が震える・・・それは告白だけじゃなくて、真莉愛さんと類が並んだ姿を想像してしまったから。

絶対にそんな事はないってわかってるのに「そういう世界」が私をどこまでも不安にさせる。
何度首を振っても、何度耳を塞いでも・・・類じゃない声が私を苦しめる・・・!
とうとう手で顔を覆ってしまったから運転手さんがバックミラー越しに私を見て声を掛けてくれた。

「牧野様、何かあったんですか?類様にご報告した方が良くないですか?」
「類に?いいえ、大丈夫です!なんでもないんです・・・あの人はただの保護者ですから。時々いるんですよ、子どもの事で感情的になる人・・・」

「でも、そんな話じゃなかったでしょう?すみません、聞こえたものですから」
「・・・あぁ、そうですよね、山本さん、叫んじゃいましたもんね。でも、類には知られたくないです・・・黙っててもらえますか?」

「・・・わかりました。でも何かあったらいけませんからエスカレートするようなら類様にご自分で報告して下さいよ?」
「はい。わかりました。いつもありがとうございます」


今日も買い物をする気にならない。
車を真っ直ぐマンションに向けてもらって部屋に戻った。


********

♪~~

牧野につけている運転手の井上、実は花沢のボディガードだけど、彼からの電話が入った。
目の前には森本がいる・・・知らんふりして電話に出た。

「俺だけど・・・なにかあった?」
『お話しは出来ますか?お一人でしょうか?』

「いや、違うな」
『それでは報告だけ致します。』

何も喋らずに耳に電話を当てて報告を聞いた。
山本が予定の時間より早く保育園に現われて牧野に何か話したらしい。牧野は拒否したようだけどその帰り際に告白されていたと。

『車内ではかなり動揺されておられて買い物にも行かれませんでした。告白のことを類様には報告しないで欲しいとの事でしたが、その前に何を言われたのかはわかりません。』

「そう、色々ありがとう。話は合わせとくよ。これからも頼むね」

さりげなく森本が俺の会話を聞いている。
この電話の最中、1回もペンが動かなかったからね。


この男の事は無視してパソコンを開くと藤本からメールが来ていた。
どうやら頼んでいた内通者が決まったらしい・・・山城と前田を追い詰めるのも時間の問題かな。

メールの受信履歴を削除して何食わぬ顔で仕事のフリを続けた。


****


マンションに帰る時、花沢の駐車場から牧野に電話を入れた。

『もしもし・・・類?』

わかりやすいね・・・そんなに小さな声出して。
またベンチに座って考え事でもしてたのかな・・・声が掠れてる。

「あのさ、今日の晩ご飯なに?」
『・・・あ、あのね、今日お財布忘れてお買い物行けなかったの。えっと・・・あるもので何とか・・・』

「じゃあさ、前に言ってた煮込みラーメン食べたいんだけど、今から帰るから一緒に買い物行こうよ!そうだな・・・15分後、マンションの前に出てて?」

『えぇっ?ホントに類がラーメン食べるの?』
「食べるよ?牧野が好きなもの、食べてみたいもん。ね、下に降りててよ?」

途端に大笑いになって「わかった!」って電話を切った。


前にも言ったでしょ?少しずつ、お互いの世界を近づけようって。



「でも、どんな味なんだろ、煮込みラーメン・・・」

食べてみたい・・・そうは言ってみたものの、俺は首を傾げながらフェラーリを発進させた。



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Comments 8

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2018/02/28 (Wed) 07:33 | EDIT | REPLY |   
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2018/02/28 (Wed) 08:56 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おはようございます!

えみりん様、おはようございます。

もう山本さんには保育園だろうが交差点の真ん中だろうが花沢物産のホールだろうが何処でもいいんだと思います。
とにかく気持ちを伝えたい・・・で、その後どーすんの?ってことですよね(笑)

あらら!これまたいいところにお気付きですね。
そうなのよ・・・迂闊なことしてると何が起きるかわかんないのが私のお話しですから。

山本さんになんの悪気がなくても・・・(あはは!凄いヒント!)


で、藤本(笑)
イケメンなのは森本です。これまた残念ですが、藤本は書いたとおりで、森本は私の中ではイケメンです。
特に好きなわけではありません。
悪いヤツは意外と格好いい方が好き・・・なだけです。

悪いヤツなのに不細工だったら最悪でしょ?書く気になりません(そんな理由か!)

今日は昼から雨?らしいです。
しばらく天気が良くないみたいですねぇ・・・曇ってきましたし。

もう・・・雪は降らないですね(笑)
また季節感のない題名に1人で困っております・・・。

2018/02/28 (Wed) 09:48 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: あ!そうそう

えみりん様~!おはようございます。

あら?私は好きですよ。味噌味でね・・・凄い量の野菜を入れてます。
麺は食べずに野菜だけ食べてる気もするけど(笑)

実はラーメン屋さんに入ったことがほとんどないので、ラーメンと言えばこれです(笑)

2018/02/28 (Wed) 09:51 | EDIT | REPLY |   
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2018/02/28 (Wed) 10:29 | EDIT | REPLY |   
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2018/02/28 (Wed) 12:02 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

わんこ様、こんにちは。

コメントありがとうございます。

そうですね。山本さんは悪く言えばストーカーですよね(笑)
そういう気で書いてなかったので驚きましたが・・・言われてみれば立派なストーカーですね!

ヤバい、いつの間にかそんな人になってる(笑)
でも、ごめんなさい!私はこの人好きなんです。最後は・・・幸せにはなれないか(笑)
なったら類つくじゃなくなっちゃう!

真莉愛ちゃんはもう書いてて気持ちがいいほど悪役ですね。
最後はあっさりばっさり消えてもらおうと思ってはいますが(笑)

この人はまだまだやってくれます。お楽しみに~♥


で、長編?どうだろう・・・もう、何話からが長編かがわからなくなりました。
70話はいきそう・・・。長編でしょうかねぇ?
でも、もう後半に入ってますよ。もう少しかかりそうだけど。

これは3月には終ると・・・思います。多分・・・。

2018/02/28 (Wed) 15:49 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・こんにちは。

あはは!これでこの話の類君庶民の味は終りです。

中々いいもの食べさせてるでしょ?
やっぱり味噌よねっ!もう類君には味噌しか思いつかないもん!

でもね、山本さん、実はここでしかつくしちゃんに会えないんですよ。
こんなとこでするな!と言っても(他の方も言われているが)「さくら」とここでしか会ってないという。
なのにこんなに恋に落ちちゃって!余程・・・我慢してるんでしょうねぇ(不正コメントになるかと思った)


で、この後、向日葵に行って爆笑したのね?(笑)
私も早くにコメント確認できて良かった(笑)

昨日忙しかったの~💦色々あって大変だったのに、それでも頑張ってチェックしたのに~!!
なんでこんな人なんだろう・・・マジ、落ち込む(笑)

色んな意味で本日もありがとうございました。チーン・・・。

2018/02/28 (Wed) 16:11 | EDIT | REPLY |   

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