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牧野は山本のことを何も言わず、むしろ元気そうに振る舞っていた。
俺がリクエストしたものを作ってくれて、それを一生懸命説明してくれて、無理したのかもしれないけど結構頬張って食べていた。

もちろんこっちも知らんふりで何があったかなんて聞かない。

聞かなくてもわかる。おそらく真莉愛のことを報告したんだろう。「婚約者がいることを知っているのか?」そんなセリフなんか簡単に想像出来る。だけど、なぜ急にそれを話した?
この前花沢で話したときにはそんな焦りは感じなかった。俺の行動に納得がいかなかったら、そんな言葉だったのに何故急いで告白するような手段に出た?

山本の動きが読めない・・・山城で何かあったのか?それとも、ただ感情的になったのか?

どちらにしても、それをぶつけても牧野が驚かなかった、もしくはそれは違うと反論したか。
だから余計焦って運転手がいるのに大声を出した、そういう所だろう。


「類、先にシャワーしてくるね」
「うん、ゆっくり入っておいで。子供相手だから疲れるんでしょ?」

「あはは!もう慣れたと思ってるのにダメだよね。時々倒れるかと思うほど疲れるの!」
「あの子達からみたらおばさんだからね」

「あー!酷い!」なんて言ってるけど気分は随分良くなったみたい。後片づけが済んだら着替えを持ってバスルームへ向かったから、俺は手にスマホを持った。
相手はもちろん藤本・・・昼間のメールのことを確認しないといけなかったけど、牧野の事が心配で後回しになっていたから。

「もしもし、藤本?今大丈夫?」
『はい、もうとっくに自宅ですから。例の件ですね?少し待って下さい。何枚か画像を送ります』

少し待ったら藤本から画像が届いた。
それは都内の料亭に入る前田と山城会長、それに知らない女性だ。そのほかにも同日に予約されている京都の有名ホテルの宿泊名簿や大阪の料亭での写真・・・そんなものが何枚か送られてきた。

「この女性は誰?」
『それが前田常務の妹です。例の山城の子会社の代表取締役をしている岩本という人物です』

「そう、これの情報提供者は?」
『山城の秘書課の男性です。会長秘書をしている人で佐々木と言いますが、会長の佐々木に対する扱いがどうも酷いようで恨み、とまではいかないんでしょうが忠誠心はないのでしょう。うんざりしているようだったので少し近づいてみたら上手く乗ってきましたので』

「信用できそう?花沢に入れる約束をしたの?」
『そこまではしておりませんが、佐々木自身は悪い人間ではなさそうです。まぁ、裏切り行為をしている自覚もあるようでしたのでかなり溜まっていたものがあったんでしょう。花沢に入れるかどうかはもう少し様子をみてからにします。専務のお名前は一切出しておりません』

「ふぅん・・・後はデータとしての証拠が欲しいね」
『秘書課の人間ですからすぐに手に入るかはわかりませんが探ってみるそうです。万が一これが山城上層部にバレたとしても、花沢の人間からの依頼であることは口にするなと言ってあります。それが後々うちに入れるかどうかの判断材料ですし、頭の悪い人間ではありません。喋ったらどうなるかぐらいはわかっているでしょう』

「どうやって佐々木を見つけたの?まさか知り合い?」
『・・・お忘れかもしれませんが私は元々秘書課です。役員秘書というのはそれなりに他企業の役員秘書とネットワークのようなものがあるのですよ。詳しくはお話し出来ませんけどね。こう見えても専務の前は花沢社長秘書ですので』

「いつもながら仕事が早いね。もうすぐ俺の秘書に戻れそうじゃん」
『・・・経理でもいいですけどね』

どういう意味さ・・・まるで俺の秘書はイヤだとでも言いたそうだね。
確かに何もしないからね。基本、興味持ったことしか動かないから。

電話口でクスクス笑う藤本に少しだけ今後の事を話していたら、牧野がシャワーを終えて戻ってきた。
今日も全身をピンク色に染めてスゴく可愛い。真剣な話をしていたのに思わず口元が緩んだ。

「類、シャワーどうぞ・・・って、電話だったの?ごめんね!」
「ううん、いいよ。大した用事じゃないから。すぐに入ってくるね、今日も映画観る?」

「ううん、今日はもう寝ちゃう。疲れちゃったから。先に休むね」
「あ、すぐに行くからまだ寝ないで?」

藤本の電話を切ってなかったのにそんな話をしたら、少し耳から離していたスマホから「コホン!」と咳払いが聞こえた。


「・・・ごめん。もう忘れてた。お前の事」
『・・・でしょうね。だから経理課でいいって言ったでしょ?』


ご機嫌斜めになった藤本と電話を切って、俺も急いでシャワーを済ませて牧野の所に向かった。
寝たふりなんかして・・・布団を剥いで顔を向けさせたら、ほんの少し目を開けた。

瞼にキスしたらくすぐったそうに手で眼を擦る・・・「ホントに眠いの?」って聞いたらコクンと頷いた。

可哀想に・・・どうしてこんなに苦しいことばかりがあんたを襲うんだろう。


でもここに俺がいるよ。

ほら、目を閉じてないで俺の事を見て・・・?


「牧野・・・愛してるよ。ね・・・牧野も言って?」
「クスッ、変なの・・・類、愛してる・・・」


伸びてくる手は俺を抱き締める。
俺は牧野に引き寄せられるようにその身体を抱き締めた・・・。


***********


数日間は何事もなく過ぎていった。

井上には車の外でわざわざ姿を見せた状態で待つように指示したけど、あくまでも運転手の自主的な行動だと牧野は思っているみたいだった。
ただ、山本の方もあれ以来姿は見せてないようで、牧野とは接触していなかった。

真莉愛の方も何も言ってこない。
それは嬉しいことだけど素直に引き下がったとも思えない。両方が静かなことにかえって不安を感じた。


そんな時、俺にフランス出張の話が出た。
社長である父さんからの命令で、半年前まで一緒に事業をやっていたフランス企業の社長が病死し、その葬儀に参列するようにと。ついでにフランスでやり残してきたいくつかの業務進捗状況を確認しろと言われ、10日間程度日本を離れることになった。

抵抗したものの聞いてもらえるはずもなく、出張の準備は進んだ。


「はぁ・・・俺が行っても死んだ社長が生き返るわけじゃないのに」
「そんな事言うの類ぐらいじゃないの?お仕事だから仕方ないわ。10日間かぁ・・・ちょっと寂しいな」

「えっ!ちょっとなの?俺には一大事なんだけど!10日間だよ?」
「はっ?あ、あぁ、そうね、一大事だよね!ごめん・・・」

「牧野、やっぱり一緒に行かない?保育園、やめてもいいんじゃない?牧野はイヤかもしれないけど、働きたいなら俺が探すから。なんなら花沢でもいいよ?」

「類ったら・・・それは何度も断わったでしょ?私はあんな大きな企業や類のお仕事に関係するところではまだ無理。保育士ぐらいが自分に合ってるの。大丈夫だよ、誰にも会わなくても10日間なら平気・・・それに類なら電話、くれるでしょ?」


マンションのセキュリティ対策は万全だけど、牧野自身が心配なんだって。
誰にも会わなくってもあんた、自分から会ってしまう状況を作ってるでしょ?・・・言葉には出せない俺の本音だ。


「じゃあ、運転手の送り迎えをここのエレベーター前までにするね。買い物にも同行させていい?そうじゃないと俺、心配で行けないからさ」

「うん、わかった。でも過保護だなぁ!いい大人なのに」
「過保護でもいいんだって!俺の手で守ってやれないんならこうするしかないじゃん」


今はまだ危険人物が多すぎるから。

少しずつ近づいてくる「あいつら」が、俺のいない間に牧野を狙いそうで恐ろしかった。


*********

<side樹>
カナダに行くことを両親と一樹の揃った時に伝えると、両親は流石についてはいけないと即答した。もちろんそんなことは望んではいなかったけど、問題は一樹の方だった。

「一樹、どうする?おばあちゃんの家で暮らすか?父さんはもう少ししたらカナダって国に行かなきゃいけないんだ。会社の仕事が今度からそこに変わるんだよ。行ったらそこではお父さんと2人になる。当たり前だけど、1人で留守番しなきゃいけないときが多くなるんだ」

「カナダ?それって遠いの?」
「まぁな・・・飛行機で13時間かな?地図見てわかるかなぁ」

世界地図を広げて見せたけど、その大きさはどうも理解出来ないようだ。仕方ない、4歳なんだからな。

「言葉も日本語じゃなくて英語になるから勉強しないといけないけど、日本人学校があると思うから心配ないかな。後はとにかく寒いんだ。雪の量がこことは全然違う。住みにくいとは思うけど・・・やっぱりやめるか?」

「・・・パパ、いつまでカナダなの?」
「どうだろう。すぐには帰ってこないと思う。何年かは向こうだろうね。日本に帰るのも年に2回ぐらいかな。夏に1回と冬に1回ぐらいだ」

「そんなに会えないの?イヤだよ!そんなの!」

一樹は半泣きで俺の服の袖口を掴んだ。
こんなに小さいうちに母親とは大人の都合で引き離されて、今度は俺と・・・。この子の気持ちを考えたら置いていくことは出来ないが、向こうの事情もまだわからない。じゃあ一緒に行こう!と強くは言えなかったが、一樹の方が離れるのを最後まで嫌がった。

結局、両親の反対を押し切る形で一樹を連れてカナダに行くことにした。


頭の中では彼女の姿もそこに加えてしまう・・・そんなことが出来るわけがないと思う反面、もう一度話してみようかと焦る自分がいる。

もう時間がない・・・諦めきれない想いを抱えて寝られない日が続いた。





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またまた空色様からお写真が!
雪国・・・じゃなくて北国にお住まいだけあって今でも雪が降るんですねぇ・・・。
毎回キチンと撮影して下さって速攻送ってくださる空色様♥感謝してます!

もう降らないかな?もし降ったら・・・空色様、スタンバイ宜しくです!(笑)
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Comments 7

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2018/03/01 (Thu) 06:12 | EDIT | REPLY |   
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2018/03/01 (Thu) 10:07 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おはようございます!

えみりん様、こんにちは。

なんかクイズ番組みたいになってますね(笑)
えーと、私なら類を追いかけますっ!!飛行機代・・・誰か下さい。

山本さん、この人も大変っ!4歳の子供を連れて行くなんて・・・。
ここで設定を間違えたと思いました。せめて5歳か6歳・・・小学校目前の子にすればよかった(笑)
いくら何でも4歳の子に留守番させたらヤバいですよね。こういうところの詰めが甘いのよねぇ~💦
幼児虐待になってしまうわ・・・でも、連れて行くんですけどね(笑)

これからがこの話の最大の爆弾です。
でも、終りに近いと思うので(もう言うな?笑)あらら!と思ってもサラリと読んでいただけたら嬉しいです。

今日はありがとうございました。

2018/03/01 (Thu) 12:22 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・こんにちは!

ありがとうございます。
大丈夫ですよ・・・多分、薬飲んでるからそのうち総ちゃんからの熱で・・・(笑)

ってか、とんでもないお見舞いありがとうございました!
涙が出るって!!お腹痛いって!

想像するからやめてください~!!ニヤニヤしちゃうじゃないですかっ!!
余計に熱が出るって!

むっちゃ赤面したじゃないですか!
どんだけ汗かいた?私・・・マジヤバいっ!
ペアコーデより恥ずかしかったっ!!

はぁはぁ・・・目が覚めましたよ。
明日から元気になれそうです。本当にありがとうございました。

2018/03/01 (Thu) 13:29 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・忘れるとこだった!空色様からでーす!

『さとぴょんさまへ
3月に入りましたので、もう、結晶ありの雪は降らないかも( ´△`)
折角付けて頂いた別名も返上時期に来たもよう、楽しかったです(*´∀`)♪🍀』

2018/03/01 (Thu) 13:31 | EDIT | REPLY |   
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2018/03/01 (Thu) 13:53 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: ドキドキ

キャン様 今晩は!

お気遣いいただきありがとうございます。
熱が上がったり下がったり・・・薬が効いてるうちにパソコン叩いています。

でもまぁ、薬があるんで日にちが経てば治ります。大丈夫です。頭の中に類君と総ちゃんがいますから。
こんな時に寝てお話し考えるといいんだろうなぁ・・・って思って考えたら、起きてすぐに忘れてます(笑)

ふふふ、この10日間(笑)
ここで何が起きるかですよね。じわじわと・・・責めさせていただきます。
どうぞ悲鳴をあげずについてきて下さいね♥

今日もありがとうございました・・・早く良くなりますのでご心配なく。
温かいコメント嬉しかったです。

2018/03/01 (Thu) 21:06 | EDIT | REPLY |   

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