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plumeria

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「牧野、本当に一緒に行かない?今からでも手配できるよ?保育園に言いにくいなら俺からでも・・・」
「類ったら、本当に大丈夫だって。信用してよね!ほら、下に車待たせてるんでしょう?早く行かなきゃ」

「・・・行ってきます。ね、もう一回キスして?」
「・・・・・・」

時間が迫ってるのに私を抱き締めて離さない・・・「やっぱり行きたくない」って耳元で言われても・・・。

「類、ごめんね。きっとすぐだよ。私は卒園式の準備とかで忙しいし、バタバタしてたらあっという間だよ?類だって色んな行事があるんでしょ?それを片付けてたらすぐに10日ぐらい経っちゃうよ。それにね、私・・・一緒にフランスに行っても何も出来ないでしょ?ホテルとかで一人で待たないといけないでしょ?それがイヤなの。どうせ待つなら仕事しながらがいい」

「・・・わかってる。俺も向こうだとジッとしてるわけじゃないからね。パリには少ししかいないし・・・牧野が良かったら全部同行してもいいけど・・・イヤなんだよね?」

「ん・・・まだね。もう少し待って?早く慣れるように頑張る。ね、着いたら遅くてもいいから電話してね」


玄関前から中々動かなかった類はホントに悲しそうにドアを閉めた。

空港まで見送りに行きたかったけど、もし誰かに見られたらと思うと気になって決心がつかなかった。
花沢の警護の人が付くだけで他に誰も来ないって言ってたけど、もし真莉愛さんが来ていたらと思うと・・・類を前にして争うようなことだけはしたくなかったから。


今日は土曜日で私はバイトは休み。

買い物も昨日沢山したから今日は何処にも行かなくていい。一人で部屋の掃除をして時間を潰そうと思っていた。誰かが来ても会わないって約束したし、不必要な外出はしない。類に心配かけないように10日間、無事に過ごせばまた会える。
アメリカで過ごしたのとは全然違うんだから大丈夫。

胸元で光るクリスタルの結晶を握り締めて窓から下を見た。
類の車・・・もうここを出たのかしら。

どの車かなんて全然わからないのに、何処を走るのかもわからないのに「行ってらっしゃい・・・」って呟いた。


**********


「井上、牧野の事頼んだよ。必ずエレベーターに乗るまで付き添ってて。保育園の迎えは必ず車から出て姿を見せておくようにね。山本が来なくてもだよ。悪いけど俺が帰るまで牧野のガード、しっかりね」

「畏まりました。土日はいかが致しましょう・・・ガードしますか?」

「うん、頼む・・・牧野が気にするから離れた場所からでいいよ。もし、外出するならついていってガードして。真莉愛の顔わかる?もしまたマンションに来ても会わないとは思うけど来たらすぐに止めて。何かあったらすぐに電話かメールを」

「はい、類様」


司の事が終ってすぐの真莉愛と山本の行動に牧野はまだきっと立ち直っていない。

山本はいいんだ・・・あいつの一方的な思いからだから。牧野がそれに乗らない限り何も起こらないはず・・・問題は真莉愛だ。
早く彼女の裏情報も手に入れるように藤本にメールを入れた。

マンションのコンシェルジュにも牧野の外出と帰宅の記録を控えるように頼んだ。もし、牧野がいつもの時刻に帰らなければ報告が来るようになっている。

まるで監視してるみたいに思われたらアメリカでの事を思い出すだろうから何も伝えてはいないけど。
ごめんね・・・このぐらいしないとあんたの事が心配なんだよ。

「ホント・・・手錠かけて俺と繋げときたいぐらい」

「はい?何か仰いましたか?」
「・・・何でもないよ。行きたくないだけ」


しばらくの間、目を瞑ってうたた寝してしまった。
昨日、牧野を離せなくてほとんど寝てない・・・牧野は俺の腕の中で寝ちゃったけど、その顔をずっと見てたら寝られなくなってしまった。

よくこんなので去年1年間、フランスにいたよね・・・俺。

もう無理だよ、そんなこと・・・。
牧野と離れるなんてこれが最後だからね・・・眠ってる彼女に何度もそう話しかけてた。


**


「類様、着きましたよ、大丈夫ですか?」
「ん・・・あれ、俺、寝てた?」

「ははっ!よく寝ていらっしゃいましたよ。お疲れなんでしょう?飛行機でどうぞごゆっくりされて下さいね」
「・・・あぁ、飛行機。やっぱり乗るんだね」

「類様・・・まだそのような・・・」

井上に付き添われて空港内に入ると、凄い人混みの中、出国手続きのデスク付近で森本を見つけた。相変わらずニコリともしない無愛想な男。いや、笑って欲しいわけじゃないけど、何処か俺に対して挑戦的な視線を送るのをみると溜息が出た。

俺と目が合うと深々と礼をしたが、その後ろにいたのは・・・真莉愛だ。
今日も見た目はとても上品に、派手な化粧は相変わらずだけど俺を見ると目を細めて微笑んだ。触れて欲しくなくて言った「ネイルは嫌いだ」に答えようとしたのか、いつも真っ赤だった爪には何も塗られていなかった。

「類様、おはようございます。本当は真莉愛もご一緒して花沢のご両親にお会いしたかったですわ。残念です・・・でも、お帰りを待ってますわ」
「・・・あなたに待っていただかなくても結構です。私を待っている人は1人しかいません・・・失礼」

何故、予定にもないのに真莉愛をここに連れてくる?しかも俺には何の連絡もなく・・・言えば反対することがわかっているからだろうけど。森本を睨みつけて書類を受け取り、出国ゲートに向かおうとしたら俺の後ろから真莉愛の声が響いた。

「随分酷いお言葉ですこと。あなたを待っているその方、お見送りにも来ないのですか?それこそ自分の立場がわかってるんじゃありませんの?」

「思慮深いのですよ。空港で揉め事を起こしそうな人がいると困りますからね」

わざわざ振り向いてまで返事をする気にもならない。
ほんの少しだけ顔を向けてそう言ったけど、視界の端に真莉愛の姿が見えた。彼女も俺の方を見ていない。真っ直ぐに前を見てさっきとは違う恐ろしい顔をしているようだった。


「牧野さんにはどなたかお似合いの人が他にいるんじゃないかしら。それもすごく身近に・・・そう思いません?類様。やはり、あなたにあの人は似合わないわ」
「・・・どういう意味です?」

「彼女、意外とモテるんですのね・・・不思議ですわ。それではお気を付けて行ってらっしゃいませ。またお迎えに来ますわね」

牧野の名前を出されたから、つい真莉愛の方に身体を向けてしまった。
彼女はチラッと俺を見てニコッと笑ったけど、意味深な言葉を残して向きを変え、俺よりも先に空港を出て行った。


牧野に似合う人?もしかして真莉愛と山本が何か企んでる?
ヒールの音をカツカツと響かせて小さくなっていく真莉愛の後ろ姿に不気味なものを感じた。森本もどっちの人間だかわかりゃしない。真莉愛の後を小走りでついていき、やがて2人は人混みに紛れて見えなくなった。

「類様、ご心配ありませんよ。牧野様のガードはお任せ下さい。さぁ、急ぎませんと」
「あぁ・・・井上、頼んだよ。何かあったらすぐに連絡を」


なんだろう・・・胸騒ぎがして仕方ないけど時間になって俺は機内に向かった。


**********


その日の夜、たった1人の晩ご飯。
全然作る気もしなくてお茶漬けみたいなもので済ませた。

その後に入れるコーヒーも1人分だけ・・・つまんないから買い置きしていたインスタントにした。
1人で見るテレビは何を言ってるのかわかんない。1人で入るお風呂はあったかいかどうかもわかんない。

広い部屋に1人は久しぶり過ぎて怖い・・・シーンとした部屋はアメリカを思い出させるから嫌いだ。大きなベッドに1人で寝るのも何となくイヤで、ソファーに毛布を持ってきて包まっていた。ふと見ると目の前は類がいつも座るソファー・・・。

彼が座る指定席に移動してそこで寝転んだ・・・そんなわけないのに類の香りがするような気がして。


真夜中の1時・・・ウトウトしていたらやっと電話が鳴った!
慌てて起きてテーブルの上に置いていたスマホをとって通話をタップする・・・ドキドキして持ってる手が震えた。

『・・・あふっ・・・牧野?・・・起きてる?今さ、自宅に着いたとこなんだけど・・・』
「あはは!類ったらどうしたの?そんなに眠いの?飛行機の中で眠らなかったの?」

『・・・ふぁ・・・うん、寝過ぎちゃったんだよ。12時間だよ?でも、こっちは今から夜に入るからまた寝るけど』

類が家を出てから15時間後、やっと向こうの自宅に着いたらしい。

「類・・・もしかして昨日寝てないの?」
「ん、寝てなかった。牧野だけぐっすりでさ・・・何度キスしても起きてくれなかったじゃん・・・」

うわっ・・・類のそんな声、電話で聞いたらドキッとしちゃう!
そう言えば昨日は類がいつもより激しかったような・・・思い出したら恥ずかしくて真っ赤になって・・・誰もいないのにキョロキョロしちゃう!


『今日はあれから何してたの?』
「そうねぇ・・・春物の服を出したり、お洗濯したり・・・それとね・・・」


「明日は日曜日だから少し話に付き合って」って言う類に「仕方ないなぁ!」って答える私はすごい笑顔だ。

この後、眠たいのを我慢して彼の声を聞き続けた。


甘くて少し低い類の声・・・私の耳を擽る声は「愛してる」を繰り返してくれた。



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2018/03/03 (Sat) 08:49 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は!

何だか最初のイメージよりかなり類が子供になっているような気もしますけど(笑)
書いてて「ただの駄々っ子じゃねぇか!」(by総ちゃん風)と思いました。

早く行けよ!みたいなね!
これが恋人時代だからいいのよ・・・夫婦でやられたらドン引き。
私なんて今では「行ってらっしゃい~」って言うのは顔も見ずに遠くの方から叫ぶだけ。

「ただいま~」と言われ「早かったね」って言ったら喧嘩になりました(笑)

私が交通事故に遭ったときはね、第一声が「車は大丈夫?」だったんですよ?どう思います?
だから私がこんなに二次にハマるんだと思うんですよ!
実生活がスカスカだからっ!!(本気モード)

はぁ、すみません。
インフルエンザになってもご飯は作らなきゃいけなくて本日も死んでおりました。


真莉愛ちゃん、どんどんみんなに嫌われていくのが非常に面白い(笑)
何だか上野明日香に近づいて来たように思います。

どっちの方が上かな(笑)
でも、こいつらの成敗は全部類であることに笑ってしまった。必殺仕事人みたい(笑)

2018/03/03 (Sat) 19:32 | EDIT | REPLY |   

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