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「家元夫人ではございませんか!どうなさったのです!」

いつも厳めしい顔で私を見る守衛さん?が慌てて私の所に走ってきて、背負ってるおばさんに声をかけた。
”家元夫人”って・・・なんの家元なんだろ。

「大きな声を出さないでちょうだい。お耳に入ったらお家元が心配するわ。少し足を痛めて歩けなかったのをこちらのお嬢さんが助けてくださったの。郷原、重いでしょうから早く交代してちょうだい」

「畏まりました!どうぞわたくしの背中に!」

おばさんは1度私の背中から降りると今度はその男の人に背負われた。やれやれ、これで私はアパートに帰れると思って手を振って立ち去ろうとしたら「ちょっと待って!」と呼び止められた。

「あなた、申し訳ないけど少し家の中まで付き合って下さらない?お礼もしたいし、このままお返しするわけにはいかないわ。お茶でも飲んでいって?ね、そうしてちょうだい?」
「え?でも・・・私はほんの少ししか背負ってませんし、それにここは帰り道ですから遠回りしたわけでもないので・・・」

「いいえ!私の気が治まらないわ。お願い、一緒に付いてきて?何か急ぎの用でもあるの?」
「・・・いえ、残念ながら何もなくて」

バイト、クビになりましたとか言う必要もないしね。初めて会う人だし。
私がどうしようかと迷っていたら、その守衛さんがジロッと睨んだ。ホントに目付きの悪い人だよね・・・。

「家元夫人がここまで仰るので一緒に来てもらえますか・・・」
「・・・わかりました。もう少し愛想良くしなさいよ。こ、怖いじゃないの!」

「守衛が愛想良くてどうするんです。このくらいでいいんです」

そんなに低い声で話しかけなくてもよくない?
結局このおばさんの後について、この大きなお屋敷の中に入って行くことになった。さっきの質問はどうなったのかしら・・・「正門はどこですか?」・・・なんでおばさんはキョトンとしたの?


**


中に入ったけど、ここから家の中に入るまでが思ったより遠かった!何処まで庭があるのかってぐらい広い日本庭園を両サイドに見ながら進んで行ったら立派な玄関が見えた。
初めて見るような豪華な引き戸の玄関・・・その横幅が私の部屋よりも広いんじゃないかしら!大体玄関にこんな広いスペースが必要なの?柱の1つ1つが何かの作品みたいに手が込んでて、しかも磨き上げられてて光ってる。

テレビで見るような高級旅館ってこんな感じ?一体ここはなんの家なの?普通の家じゃないよね?

玄関に入るとこれまたすごく長い上がり框があって、豪華な花が正面にドーン!と生けられてる。
そのうち奥の方から数人の着物を着た女性が小走りで来て、私たちを見て悲鳴をあげた!

「まぁっ!家元夫人、どうなさったのです?誰か、誰か主治医の佐々木先生をお呼びして!」
「お具合が悪いのですか?すぐにお床を準備しますから!郷原さん、このまま家元夫人を奥に!」
「家元は離れの奥にいらっしゃるわ、誰かお家元をお呼びして!総二郎様も・・・早く!」

ん?そうじろう・・・何処かで聞いたことがあるような、ないような・・・?

私はこの大騒動の中、どうしていいかわからずに郷原さんという守衛さんの後を恐る恐るついていった。家元夫人と呼ばれているこのおばさんも笑って頷いてるし。

それにしてもなんて広い家なの?この廊下、すっごく気をつけないと滑りそう・・・あの人達はよくこの廊下を小走りできるわね!
ゆっくり進んで行くと美術の本か歴史の教科書で見たような小石の庭があって、反対側をみたら鹿威しっていうの?そんなものまであって、遠くまで奇麗な植木があって・・・あの白壁の塀の中は日本昔話の世界だったわけね?

キョロキョロしながらまだ続いてる廊下を歩いていたら上品なおばさんが走ってきた。この人は着ている着物がみんなと違う。
ちょっと偉い人なのかな?その人を見て郷原さんも足を止めた。


「家元夫人、お床の準備が出来ましたのでどうぞお部屋に!で・・・こちらのお嬢様は・・・?」

「あぁ、志乃さん、この方は動けなかった私を背負って運んで下さったの。お礼をしたくて来ていただいたのよ。すぐにお茶とお菓子の準備をしてちょうだい。えっと・・・お名前は・・・」

「あっ!私は牧野つくしと申します。あの・・・お礼とか特にいいですけど・・・」
「何を仰います!この度は家元夫人をお助けいただいてありがとうございます!このまま家元夫人のお側でお待ち下さいな。すぐにお茶の支度を・・・」

「あっ、志乃さん。総二郎さんはいるの?」
「はい、お呼びしましたのですぐに来られると思います!」

郷原さんとおばさんはまだ奥に歩いて行くし、志乃さんと呼ばれた女の人は何処かに小走りで行くし。
仕方ないからやっぱり郷原さんの後をついて行ったら、少し感じが変わってきて豪華な旅館風から高級な個人宅みたいな感じになった。
廊下もほんの少し小さくなって壁や障子の質も今までよりは落ち着いた感じ?

でも、やっぱり着物姿の女性が廊下に座っていて、私たちを見たらサッと障子を開けてくれた。


「こちらです。すぐに佐々木先生がいらっしゃいますから」
「あら、佐々木先生はお呼びしなくて大丈夫よ。具合が悪いんじゃなくて足をくじいてしまったの。湿布薬を持ってきてくれない?」

「まぁ、そうでしたの?すぐにお持ちしますわ」

入った部屋はすごく広い和室の続き間・・・その真ん中にお布団が敷かれててそこに郷原さんはおばさんを静かに降ろした。
私はついてきたお手伝いさんのような女の人にその横で待つように言われてチョコンと座ったけど落ち着かない。おばさんは着ていたコートをその人に渡して、痛めた足を投げ出して座ってる。

「はぁ!痛かった・・・。本当にありがとう。私ね、ちょっとした外出だと携帯電話も持たないもんだから・・・。家にばかりいると運動不足になると思って、ぐるっと回った先の門の横にある郵便ポストにたまに自分でお手紙出しにいくのよ。そしたらこんな事に・・・」

「そうだったんですか、災難でしたねぇ・・・」

っていうか、この家をぐるっと回った向こう側って結構離れてると思うんだけど。いや、まぁ散歩にはいいと思うわよ?でも、それなら着物じゃなくて洋服でいいんじゃないかしら・・・?

「ごめんなさいねぇ、こんな所まで来てもらって。少し他の家とは造りが違うから驚いたでしょう?ほほ・・・初めての人は大抵驚くの。たまに迷子になる人もいるわ。昔からの家だからややこしいのよね」

「確かに迷子になりそうですよね。ははっ・・・」


その後、さっきの志乃さんという人がお茶とお菓子を持ってきてくれて、本当にそこでティータイムが始まった。
志乃さんはおばさんの足に湿布薬を貼って、やはり外科のお医者様を呼んで来ると言ってまた出ていく。これ以上私がいても何も出来ないし、仕事探しにも行きたかったからそのことをこのおばさんに伝えた。

「あの、実は私、これから仕事探しに行かなきゃいけないんです。今まで働いてたバイト先を辞めたばかりで・・・なので、もう失礼します。ご馳走様でした。おば様、これからは近場のお散歩でも気をつけて下さいね?」

「あら!そうなの?お仕事探してるの?」
「はは!お恥ずかしいですが、前の会社が倒産してからバイトばっかりなんです。そろそろちゃんとした職場見つけないと、私1人暮らしなので・・・」

「えぇ?!お一人で住んでるの?お年頃の娘さんが?」
「はい、両親と弟は田舎で暮らしてます。気ままな1人暮らしですが、生活費は自分で稼がなきゃ!と、いうわけなのでこれで失礼します!」

私はスッと立って布団の上のおばさんにペコッと頭を下げて障子の方に向かった。


開けようとして手を伸ばしたら、先にサッとその障子が開いて入ってきた一人の男性がいた。


「お袋、どうしたんだよ!何があったって?転んだのかよ・・・・・・は?」
「・・・・・・あ!」


このおばさんを「お袋」と呼んだその人は、黒い髪の毛がサラサラの超美形・・・切れ長の瞳で、仕草が色っぽくてモデルと間違えそうな格好いい人・・・それなのに着物!
この人も私を見てびっくりしてる・・・って事はやっぱりそうなの?!


「・・・お前、なんでここにいるんだよっ!何しに来やがった!」
「何しに来やがったですって?私はこの人を助けてここまで運んだのよっ!何か文句あるのっ!」

「嘘つけ、お前がそんなことをするとは思えねぇ!なんの目的でうちにまで入りやがった!」
「馬鹿言わないでよ!目的なんかあるわけないじゃないの!いいって言うのに入れって言われたから来ただけよっ!」


私は昨日殴ったこの人と今度は家のド真ん中で怒鳴り合いになってしまった。

見た目は凄く格好いいのになんでこんなに喧嘩っ早いの?
後ろでポカンと口を開けているおばさんを無視して仁王立ちで睨み合いをする私たち。


これが西門総二郎と私の再会だった。


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2018/03/10 (Sat) 16:23 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は!

コメントありがとうございます。
家元夫人は総ちゃんが殴られた場面は見てるけどつくしちゃんは覚えてなかったって感じですね。

この話は「そんなバカな!」って事だらけのお話しです。
基本、脱向日葵用のComedyですので・・・(笑)

今でも向日葵の総ちゃんに会いたくて堪らんのです~💦
蒼や蓮が心配で・・・(何処の小姑や)


さとぴょん様、私はすごく嬉しいけど無理しちゃダメですよ?遊びたい時だけでいいですよ?(笑)
画像は探すの好きだから・・って誰がかんざし持ってますのん!自撮りじゃないし(笑)

ボチボチ楽しみましょうね♥

2018/03/10 (Sat) 18:26 | EDIT | REPLY |   

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