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何故か私は今「労働契約書」っていうものにサインをしている。
目の前には西村さんという事務長が座っていて、隣には志乃さんがいて・・・何故か西門総二郎までがそこにいる。

「書きました・・・でも、私がここで何をするんでしょう。急に働けと言われても茶道っていうものを知らないんですけど・・・」

「そうですね。茶道と知らなくても出来ることもありますから、まずは事務所でこの西門について勉強してもらって適性を見ましょうね。もし茶道が出来そうなら茶事の準備や茶道教室のお手伝いをしてもらって、茶道が難しいようなら完全に事務所勤務でもいいでしょうし、調理が出来るのでしたら調理場でもいいです。ここは人手が足りないので助かるんですが、長く働ける人がいないのですよ」

「はぁ・・・労働環境が過酷なんでしょうか」
「ははっ!過酷と言えばそうかも知れません。ねぇ、総二郎様」

「・・・根性がねぇヤツは3日持たないんだよ!面倒な決まり事が多いから」

相変わらず・・・って言うほどこの人のことは知らないけど、もう少し柔らかい口調で話せないのかしら。


志乃さんが時計を見て急に慌て始めた。

「あら!いけないわ、そろそろ婦人会の会合が始まります。私、本日は家元夫人のご名代で出なければいけませんの!失礼しますね、総二郎様、この後何かございます?」
「は?いや、今日はもうなにもないけど・・・道具の手入れぐらいかな」

「じゃあ、申し訳ないのですが彼女のこと、お願い致しますわ」
「はぁ?!俺がこいつを?・・・ちょっと待って!志乃さん!」

そこまで露骨に嫌がらなくても良くない?
私だってあなたに説明してもらわなくても全然構わないんだけど!何か説明してもらってもムカついて頭に入りそうにないし。

事務所を急いで出ていった志乃さんを廊下まで追いかけたけど、また事務所に戻ってきて頭をかきながら事務長に話しかけてた。

「事務長が説明してくれますよね?俺、なに言っていいかわかんねぇし」

「あぁ、それが私も5時までに揃えなきゃいけない資料があって時間がないんですよ。総二郎様、明日も忙しいので今日中に本邸内だけ教えてやっていただけませんか?入社の手続きはこっちでしますからいいんですけど、一番困るのが場所の説明なんですよ、こればっかりは誰かが付かなきゃいけないでしょう?明日は時間が取れそうにないので・・・申し訳ないですねぇ」

「・・・マジかよ」

だから!何回も言うけどその如何にも面倒だっていう態度・・・ホントに失礼しちゃう!
説明って今度じゃダメなのかしら。私、まだここで働いてないし、どうせ説明聞くならこの人じゃなくていいし。そう思って何か帰る理由を考えたけど・・・なにも思いつかなかった。独り暮らしでバイト帰り・・・そりゃ暇だもの。

そのうち溜息付きながら彼が「来いよ」って言ったから急いで立ち上がって後についていった。


****


また歩き出したこの長い廊下・・・今度はこの人と並んで歩くだなんて想像もしなかった。
私の半歩前を歩いている彼の横顔。何回見てもすごく綺麗・・・睫毛ながっ!肌もすべすべだし、髪はさらさらだし・・・腹が立つんだけど!私の周りの男性は汗臭くて色黒でゴツゴツしてたわよ?こんな人、見たこともなかったけど。

そんな事を考えながら歩いていたら、顔も向けられないまま話しかけられた。


「まず・・・って言うかお前の事なんて呼べばいいんだ?名前なんだっけ」
「牧野つくし。さっきから言ってるのに」

「俺に直接じゃねぇだろうが!じゃあ牧野でいいな」
「じゃあ私はなんて呼んだらいいの?西門?総二郎?どっちがいい?」

「ちょっと待て・・・なんで俺がお前に呼び捨てされなきゃいけねぇんだよ!おかしいだろう、雇い主だぞ!」
「・・・そうか。じゃあ西門さんでいいや。様とか付けたくないし」

「・・・お前いくつだ」
「失礼ね、女性に歳を聞くの?・・・24だけど。西門さんは?」

「25・・・1つしか違わねぇの?見た目がそんなにガキなのに?」

余計なお世話!言われなくてもわかってるわよ。いまだに中学生かって言われるぐらいだから。
これには反論しても負けることがわかっているからやめた。

西門さんは入ってきた玄関に近いところまで来たらやっと私の顔を見た。至近距離で見たらドキッ!とする・・・そんな目で見られたら何故か恥ずかしくなって顔が熱くなってしまった!

「なに赤くなってんだよ・・・今更見とれるな。アホ!」
「・・・アホとはなによ!み、見とれてなんかないわよ、びっくりしたのよ!今までこっち見なかったから」

「お前見ながら歩くほど女に飢えてねぇし。じゃあ説明するからよく聞いとけよ。同じ質問は受けねぇからな。さっきはこっから入って来たけどここは本邸の玄関。茶会の時の出入り口は別だ。茶会の時はここを出てから左側の・・・」


2人になったら途端にドキドキし始めた。
この人の声が聞こえる度に心臓がバクバクして、なに言ってるんだか全然覚えられない。耳に届くその声は少し低めだけど色っぽいのかな、甘くてくすぐったい声だ・・・女の人が勘違いするよね、こんな喋り方。これが普通なのかしら・・・?

「・・・で、この奥に待合があって先に進むと蹲踞(つくばい)があるから・・・聞いてんのか?」
「はっ!えぇ、聞いてるわよ、もちろん!ただ、その言葉の意味がわからないだけで。専門用語並べても素人にはわかんないわよ」

「・・・はっ!そりゃそうだな。しかもお前が茶道するかどうかなんてわかんなかったっけ。じゃあ、この先の説明はその時でいいか。ほんじゃ別のところの説明か・・・面倒くせぇな!」

また向きを変えてもう1度玄関から入って今度は違う廊下を行く・・・こりゃ、迷子になるわよ!この家の案内図を廊下に貼ることを薦めるわ!


今度向かったのは和室だらけの建物。いや、洋間なんて何処にもないんだけどね。
もう一番初めに通った廊下が何処だったのかがわかんない。西門さんの後ろを小走りでついて行きながら、やっぱり専門用語で庭の説明や部屋の説明を聞いたけどなんの事やら!
足が長いのかもしれないけど追いつくのがやっと・・・しかもつるつるの廊下だから滑りそうで怖くて下ばっかり見て歩いていた。

「ここが家元の稽古に使う茶室、で、隣が俺用、その奥がお袋用。ここで特別な生徒の稽古してるから。使ってる時はこの前は基本通らないように。で、大広間ってのがこの向こうでそこでよく後援会の行事するから。後は客間が10部屋ぐらいあるからどの部屋かはよく確認しろよ?部屋にそれぞれ名前があるから。・・・聞いてんだろうな!」

「はいっ!聞いてるわよ、でも今度は廊下が滑りそうで怖いんだもん!よくこんな廊下毎日歩いてるわね、転けないの?」
「住んでる人間が転けてどうすんだよ!ホント、アホだな!」

「あの・・・もう少しゆっくり歩いてくれないかな、私慣れてなくて・・・!」

「馬鹿言え!こんな事に時間かけてられるかっての!次行くぞ!」

全然うしろの人間のことを考えないだなんて!やっぱり女性に酷くない?
そんなんじゃいくら格好よくってもモテないんじゃないの?見た目も大事だけどやっぱり優しさって大事だと思うわよ?


「この渡り廊下の向こう側は茶道会館だから。色んな資料や展示品もあるし、たまには報道関係の取材とかも入るし政府関係者もくるから説明しとくわ、来い!」

「えぇっ!まだこの奥にもあるの?何処まで広いのよ!」

「なに言ってんだよ。まだ半分も説明してねぇよ。まぁ、お前が出向く所ってのは限られてるかもしれねぇから全部覚える必要はないかもな。・・・マジで足が遅いな。急げよ!短いんだからフル回転させてついて来いよ!」

「なんですって・・・!ホント、ムカつく男だよね!この・・・!」


私の言葉でビクッとしたのか西門さんは足を止めて振り向いた!
私はつい、いつもの癖でこの人に向かって一発蹴りでも入れてやろうかと一歩踏込んだら・・・!

磨き上げられた廊下に滑って勢いよく自分の足が空を切って・・・思いっきり彼の目の前で転けてしまったっ!!

「きゃあぁーっ!いったーーーいっ!!」
「・・・・・・」

尻餅をついて腰を強打してその場に座り込んだ!でも、一向に手も差し出さないこの男にムカッとして、自分で転けておきながら怒鳴ってしまったわよ!

「助け起こすぐらいしなさいよ!あいたたたたたた・・・!腰、打ったぁ・・・っ!」
「バカか!自分でやっといてなんで俺が助けるんだよ。しかもお前、今、俺を蹴ろうとしただろ?」

「当たり前よ!女性に優しくない男はサイテーなんだって!もうっ・・・はぁ!痛い・・・」
「・・・やっぱ子供だな。今時真っ白か?」

「・・・は?」


何が真っ白?何が・・・ハッとして自分を見たら、スカートの後ろが半分捲れ上がって腰に乗っかってて、見事にパンツが・・・!

慌ててバサッ!と降ろしたけどもう遅かった。
西門総二郎・・・この私のパンツを見た初めての男っ!


ニヤリと笑ったその顔・・・・・・許せないっ!



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2018/03/12 (Mon) 23:53 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は!

そうそう、めっちゃ広いんですよ!私のお話の西門邸!!
一応今までのお話しは全部同じ間取りで考えてます。
西門流本邸と母屋、職人さんの宿舎と庭があちこちにあって、茶道会館と本格的な茶室がある場所と、西門家のお稽古用の茶室がある場所。事務所は別棟です。裏庭には総ちゃんの花畑があって1番奥には少し高いところに桜が咲いてる裏山と呼ぶ場所がある。
自分で見取り図画いてそれ見ながら作っています。

あ!ニシカランド観覧車とスパリゾート西門と子供部屋は・・・ないです(笑)

えっとね・・・そのうちしっとりした部分も出てくる予定(笑)
つくしちゃん、ここで沢山恋するんです♥さて・・・誰にかな?

2018/03/13 (Tue) 01:25 | EDIT | REPLY |   

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