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plumeria

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教室に戻ったらすでに他の保育士さん達は私の事を知っていたようで、同情の目を向ける人、呆れた顔をする人と様々だった。
それでも子供達には関係ないこと、私は何もなかったかのように1日子供達と遊んだ。
サッカーボールを蹴って、縄跳びの縄を回して、クレヨンを手に持って・・・泣きたいのを我慢して遊んだ。

どうしてもこの保育園にいたいと拘るわけでもないし、辞めたってそんなこと大した問題じゃない。だけど自分の意思じゃなく、誰かの手によって動かされていく自分の人生が嫌なだけ。

「つくし先生、今度はかくれんぼしようよ!先生、鬼ねー!」
「よーし!いいわよ?全員すぐに見つけちゃうんだから!」

「つくし先生、あやとりってした事ある?ママがね、見せてくれたんだけど美和、全然出来ないの。教えて?」
「はいはい!何がいいかな・・・ハシゴ作ろうか!難しいかな?」

「つくし先生、つくし先生!こっちでも遊んで!」
「はいはい、待ってよー。先生の身体は1つだから順番だってば!」


子供達と遊ぶのは楽しかった。昔の元気のいい私が戻ってくるような気がして、ここにいたら幸せだったなぁ・・・!
ちょっとだけ園庭で流れた涙は子供達にバレないうちに袖口で拭き取った。


類が帰ってきたら話そう。
そして、自分の為にまた仕事を探そう・・・沢山笑って心に栄養をもらえるような、そんな仕事がいいな。

その日の帰り、ここに置いていた物を少しずつ持って帰ろうと紙袋に入れていった。
1度に持って帰ったら運転手さんが何かあったのかと思って心配する。そうしたら類に報告がいくかもしれない。
離れた所で仕事をしている彼にわざわざ心配をかけたくない。

運転手さんには悪いけど、類が帰って来るまでの間、上手く誤魔化して内緒にしておこうと思った。

そうでもしないとフランスから帰ってくるかもしれない。辞めさせられた理由が山本さんだと、真莉愛さんの仕組んだことだと知られたら彼はきっと大急ぎで帰って来る。そう思うから自分の口で言いたかった。

電話じゃなくて、ちゃんと目を見ながら言いたかった。


門から少し離れた所で運転手さんが車の横に立って待っててくれている。この前の山本さんのことがあるから気にしてくれているのは気が付いていた。

「牧野様、お疲れ様です。今日はお買い物は行かれますか?もしそうでしたらご一緒しますので」
「あはは!それも類の指示ですか?私ったらホントに心配かけてるんですね。そうですねぇ、土日行ってないから行きます。宜しくお願いします」


頑張って笑顔を作った。
そしていつものスーパーで私のうしろをガードするみたいについてきてくれる運転手さん・・・話しかけたら普通に返事をしてくれるし、類の話しもしたりして和やかに買い物を終えた。

今朝言われた通りエレベーター前まで送ってくれて、乗り込んでドアが閉まるまで頭を下げた。


そのまま静かに動き出しても私の頭は下がったまま・・・あげることが出来なかった。

「はぁ・・・なんでかなぁ。なんでいつもこうなっちゃうんだろ・・・ただ、幸せになりたいだけなのにな・・・」

自分の足元を見てそんな言葉が口から出ちゃう。
最上階に着いてからやっと頭を上げることが出来たけど、その時に流れた涙は拭うことも出来なかった。


**********

<フランス・花沢邸>
フランスについてすぐに教会での葬儀に参列したりしてドタバタし、やっと両親と一緒に食事をすることが出来た。
相変わらず2人とも忙しくて、同じ場所に勤務しているくせにバラバラの生活をしているらしい。

俺が戻ってきたから久しぶりに予定を合わせたと言っていた。
やはり気になるのは前田の動き・・・父さんは食事が始まってすぐにそれを聞いてきた。

「どうだ?何か掴めたか?」
「藤本から連絡は来てるんでしょう?今は証拠を手に入れるために彼に動いてもらっていますが、やはり俺が日本にいることが気に入らないのでしょう、何かと小細工してきますよ」

「ははっ!例の山城か?そんなものにお前が引っ掛かりはしないだろう?上手く交わすんだな」

「すでに両親の許可までもらったかのように話を進めていますよ。おまけに本人までが信じ込んで花沢に乗り込んで来ています。一言ぐらい止めてくれてもいいんじゃないですか?」

「そのぐらい自分でどうにかしろ。これも組織の上に立つ人間の試練のようなものだ。言うことを真に受けて話しに乗っかると本当に嫁にもらう羽目になるぞ?相手がもっと仕掛けて来る前に前田の事を片付ければいい。向こうもお前がいることで多少は焦っているんだろう、私の所にはお前までがその気だと報告が来ているぐらいだからな。私の返事はいつでも同じ。結婚は本人の意思で決めればいい、親としては反社会的な人間じゃないなら反対はしないと言っているだけだ」

何を暢気な・・・社内の不正調査はいいとしてそんなところは俺に協力して一言止めてくれてもいいのに・・・!
父さんも母さんもむしろそっちは面白がっているようにしか見えない。憮然とした顔で食事を続ける俺に母さんが声をかけてきた。


「山城の孫娘さん、写真だけは見させてもらったわ。奇麗なお嬢さんだけど仲良く出来そうにないわねぇ・・・一緒に笑ってお喋りできて、類の悪口でも言い合えそうなぐらい気さくな人がいいわ!ね・・・彼女はどうなの?そんな感じ?いつになったらここに連れてくるの?」

「まだ臆病になっていますからもう少しこの世界に慣れてからにしようと思っています。今回も散々言いましたけど勇気が出なかったみたいですね。仕方ないかな、道明寺で怖い思いをしていますから。それと俺の悪口は言いませんよ。もしここに来たとしても母さんとは二人っきりにさせませんから。なにを言われるかわかったもんじゃない」

「あら!類がフランスでどんな1年間を過ごしたか教えてあげるだけよ?知ってるんだから!類がさりげなくデスクのパソコンに彼女のデータ入れてたの。それも現在じゃなくて過去のものばかりだったでしょ?やっと息子の恋が現在で動き始めたんですもの、母親としては興味もあるけど応援してるのよ?」

「・・・それはどうも」
「うふっ!せっかくフランスに来たんだもの、少しずつ準備しなさいよ?ただし仕事の合間にしてね」

「・・・ん、近いうちに会わせるから」



日本でのことは藤本に任せっきりで悪いけど、母さんの言う通り・・・そして牧野の言ったように俺が彼女にプレゼントしたい物を選んでこよう。

そして日本に戻ったら話さなきゃ・・・気持ちの準備が出来たらうちの親に会って欲しいって。


***


その日の夜、フランス時間の11時に牧野に電話をかけた。
日本だと今は朝の7時のはず・・・もうすぐ牧野は出勤時間だから忙しいかも。そう思うけど寝る前に声が聞きたかった。

「牧野?おはよう。忙しいのにごめんね」
『おはよう、類・・・えっとフランスは夜かな?もう寝るところ?』

「ううん、まだ寝ないけど牧野の方が話せなくなるでしょ?こっちは夜の11時・・・1人で退屈して死にそうだよ。牧野は?夜、寝られてる?」
『・・・どうだろ。あんまり寝てないかな・・・ベッドが冷たいから』

「くすっ!意外と大胆な事言うんだね。じゃあ、早く帰らなきゃね・・・そうしたら抱き締めて寝てあげるね?」
『あああっ!!そんな意味じゃなかったから!違うって、あの、そのね・・・あっ、もう支度するから!また夜にね!』

慌てた牧野の声が面白い!
きっと誰もいないのに真っ赤になって走り回ってるね?

でも、きっと1人だからって朝ご飯は食べてないんだろうね。


この時、牧野になにが起きているかなんて何も知らずに暢気にこれからの買い物のことを考えていた。


牧野を笑顔にしたいから・・・

俺からのプレゼントは・・・純白のウエディングドレス。




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2018/03/04 (Sun) 01:32 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは~!

この私がすんなりとこのままエンドに持って行くかどうか・・・(笑)
最大級の爆弾は最高の幸せに繋がると思っていただければ嬉しいです。

ほんと、ごめんね。つくしちゃん(笑)
こんな暢気な類君にしてしまって。この後もフランスと日本での温度差を楽しんでいただくと笑えるかも。

いや、笑っている場合ではなかったかも(笑)

どんどん春になってきて、雪の結晶というタイトルが浮いている・・・。
ま、いいかっ!(笑)

2018/03/04 (Sun) 14:16 | EDIT | REPLY |   

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