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山本さんは真莉愛さんの妊娠を知っている。直感でそう思った。

この人は山城商事の人・・・噂を知っていてもおかしくはない。
あの妊婦さんを見て、私に「知っているの?」と聞くならそういう事なんだろう。だけど、その質問に答えることは出来なかった。
山本さんは一樹君に「身を乗り出さずに遊ぶように」と、もう一度注意してから私の所に戻ってきた。

「可哀想に・・・誰かから聞いてしまったんだね?真莉愛さんと花沢さんのこと・・・」
「可哀想にってなんですか?私は全然可哀想とか、そんなんじゃありませんけど」

「じゃあなぜあの人を見て泣いたの?それって知ってるからだよね?」
「・・・何も知りません。私は類が帰ってきたら彼から聞きます。他の人からの言葉は信じません。それだけですから」


「もし、それが真実だったら?君は花沢さんとその後も上手くやっていけるの?」


それが真実だったら?
そんなことは考えたことがなかった。類から返ってくる言葉は「バカだな、信じたの?」って・・・その一言だけだと思ってるから。

山本さんは目を背ける私に言葉を続けた。

「もし仮に花沢さんがその気がなくて関係を持ったとして、その1度で子供が出来たとしよう。それでも彼は牧野さんを選ぶと思うけど、君は一生何処かに花沢さんの子供がいるんだって思いながら暮らさなきゃいけないんだよ?それに耐えられるの?
真莉愛さんは見かけと違って恐ろしい人だよ。将来、その子供に花沢家の財産分与を求めてきたらスキャンダルになる。その時、君たちにも子供がいたらその子も傷つくよね・・・それって、何処に幸せな未来があるんだろう」

「やめてください・・・類はそんな人じゃないです。真莉愛さんの子供は類の子供じゃない!絶対に違います!」

「そんなの生まれてきて親子鑑定したらすぐにわかってしまうだろ?そんな見え透いた嘘・・・つくと思うの?」


山本さんの喋り方は責めるような感じでもなく、優しく穏やかなものだったけど、私には刃物のように鋭く突き刺さった。
真莉愛さんのような立場の人がそんな嘘をつくはずがないという言葉も、内心自分もそう思っていただけにグサッときた。

それでも類から聞くまでは信じない。
そうじゃなきゃ・・・私は粉々に崩れてしまう。


次に壊れてしまったら、私はもう立ち直れない・・・2度と笑えないよ。


「牧野さんには気の毒だと思うけど、これはもうすぐ公表される事だと思う。彼が戻ってきたら花沢も急いで準備をするだろう。牧野さんと花沢さんのことは世間はまだ何も知らないから、彼がここで騒げば間違いなくスキャンダルになる。もしかしたら、これを聞いた道明寺ホールディングスの御曹司が再び出てくるかもね・・・彼は君にまだ未練があるんだろう?」

「道明寺?そんな・・・そんなことはもうないですよ、ちゃんと別れたんですから!」

「それは花沢さんが君を守ると言ってたからだろ?その彼が別の女性を選んだら・・・取り戻しに来るのは当然だ」


頭に浮かんだのはアメリカでの生活。

一人っきりの部屋に冷めた寝室、何も作らない綺麗なままのキッチン、着もしない服が大量に並んだクローゼット、音のしない床、誰も帰ってこない・・・開かないドア。
色のない夜景、風の音が煩い窓・・・私の上に落ちてくる雪の結晶・・・。


山本さんは私に冷たいジュースを出してくれた。
向かい側に座って静かに私の手に自分の手を重ねて・・・私は茫然としていてそれを払い除けることさえしなかった。


「牧野さん、俺と一緒にカナダに行かないか?俺がこの先の牧野さんを守っていくから」

「・・・え?私が、山本さんと・・・カナダに?」


「そう・・・一樹の母親になって欲しい。本気だ・・・俺は本気で君に恋をしてる。一緒に暮らさないか?」



**********

<side樹>

牧野さんの涙を見た瞬間、それまで悩んでいたことを実行しようと思った。
真莉愛の嘘をそのまま利用して、花沢類から彼女を奪う・・・自分でも恐ろしいことだと思ったけど、こんなに悲しい思いをさせるぐらいなら俺の手で新しい幸せを与えてあげたくて・・・自分勝手だと知りつつ、言葉はスラスラと口から出ていった。

でも、半分は間違っていない。
このまま真莉愛が大人しく引き下がるわけはない。

この妊娠説が嘘だったとバレても、この2人には少なからず絆にヒビが入る。それはだんだん広がってやがて崩れ落ちるまで真莉愛の攻撃は続くだろう。
そんな中に牧野さんを置いたままカナダになんて行けない。山城の社員でいる限り、真莉愛の情報は入ってくるんだから。


「一樹の母親になって欲しい。本気だ・・・俺は本気で君に恋をしてる。一緒に暮らさないか?」

「一樹君の母親?私が・・・?」

「一樹は牧野さんの事を慕ってる。君があの子の新しい母親になっても上手くいくと思うんだ。それにカナダに行けば俺達は2人で暮らすだろ?そりゃお手伝いさんを雇う話は出てるけど言葉も通じないし、俺がその人を信用できないかもしれない。まだ会ったこともない人だからね。牧野さんをお手伝い代わりにしようなんて思ってるんじゃなくて、ちゃんと籍を入れて夫婦として、君に俺の留守を任せたいと持ってる。考えてくれないかな、もう日にちがないんだけど」

彼女の驚いた顔は変わらないまま、俺の事を見続けている。
なにを言ってるんだって顔で、花沢を裏切ることは出来ないという目をしていた。

「あ、あの・・・無理です。私は山本さんにそんな感情持ってないし、一樹君の事は可愛いと思うけど、自分の子供として育てることなんて考えられません!そんな無茶言わないで下さい!」

「俺の事をすぐに愛してくれなんて言わない・・・今がダメなら時間をかけてもいい。迷うのも当然だと思うから、ちゃんと花沢さんのことを忘れてからでいい。それでも東京を離れてしまわないか?必ず君に辛い話が出てくる。これはもう変わらないよ」

「類を・・・忘れる?」
「そうだよ。忘れてからでいい。それまでは待つつもりだ。でも、君をこの街に置いていきたくないんだ」


「パパーっ!そろそろキリンさんの所に行きたーい!」


一樹の叫び声で俺達はハッとして池の方に目をやった。
牧野さんもハンカチで1度目頭を押えてからテーブルを片付け始めて、それからは何もなかったかのようにまた園内を歩き始めた。ただ俺との会話はしてくれなくて、一樹とだけ手を繋いで笑顔で動物たちを見ていた。

俺も何も言えなかった。
その笑顔の裏で、君は何を考えてるの?

遠く離れた場所にいる恋人のことだけしか、その目には映らないの?
どんなに罠を仕掛けられても、その心は彼から離れないの?・・・君たちはそんなに強く結ばれてるの?

言葉に出来ない質問だけが頭の中に浮かんでしまう。


そして夕方、彼女をまたマンションの地下駐車場まで送ってフェラーリの前で降ろした。
この時、もう一樹は疲れてぐっすり眠っていて俺達に会話は全然なかった。


「それでは失礼します・・・山本さん。気をつけてカナダに行って下さいね。今日はありがとうございました、楽しかったです」
「牧野さん・・・また電話します。もう一度考えてくれないか?」

「・・・私には類がいます。彼と話し合ってからじゃないと先のことは何も決められません。ごめんなさい・・・さようなら」


バタンと閉められたドア・・・振り向くこともなくエレベーターに乗ってそのまま扉は閉まった。


なんて酷い話をしたんだろう。
この2人を引き離すことはやっぱり出来なかったかな・・・一樹の無邪気な寝顔を見ると、この先寂しい生活をさせてしまうことを可哀相に思った。


**********


夕方、部屋に戻ってからスマホの電源を入れた。
やっぱり・・・類から朝、電話が入ってる。

今は何時かしら。ここが午後4時って事はフランスは朝の7時?類はもしかしたらまだ寝てるのかもね・・・。


部屋着に着替えて髪をくくった。そしてお弁当を作って散らかしたままのキッチンを片付けた。

その後は早めに入りたくてお風呂の準備をした。廊下をモップで拭いてトイレ掃除をして、シューズクロークも綺麗にした。
育ててる観葉植物の水やりを忘れていたから水をあげて、洗濯物をたたんだ。テーブルを拭いてシーツの交換をして・・・こんな時間なのに洗濯機を回した。

身体を動かさないと山本さんの言葉が思い出されるから。


一通り掃除が終ったらバスルームに行って、頭からシャワーを浴びたあと湯船で温まった。


そして1日の終りは私たちのベッドに潜り込んで・・・・・・声を出さずに泣いた。


どれだけ言われても、何を言われても、私は類を愛してるし信じてる。
それだけは一生変わらないんだと、何度も自分に言い聞かせて・・・。



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2018/03/16 (Fri) 00:25 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: お知らせです

ないない様、今晩は♥

おおおおっ~!!!それはそれは!!
なんとっ!素晴らしいっ!

了解しました!ふふふ・・・勇気がいったでしょう?(笑)
ドキドキしますよね!うんうん・・・。

私のアレがきっかけですか?(笑)
私もまだ闘ってる最中ですけど、なんとか少しずつ進んでます。
ないない様のコメントは本当に励まされました・・・嬉しかったです。


で、お話しは・・・どんどん暗ーくなってて「類はどうしたーっ!」ってコメントもらうんですけどね(笑)
いやいや、まだ帰ってきたらダメ!じゃないと話が進まないのよって思いながらつくしちゃんを追い詰めてます。

ここまで切なくしたら・・・最後の盛り上げどうするよ?って悩み中(笑)
まぁ、思うように書き進めています!

お知らせありがとうございました♥
楽しみにしてます!!

2018/03/16 (Fri) 01:09 | EDIT | REPLY |   
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2018/03/16 (Fri) 14:55 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・こんにちは。

山本、さすが営業マン!口が上手い!って感じですね。
巧みにつくしちゃんをフラフラさせてるんですよね・・・でも、悪い人じゃないの(笑)
まだ言うか!!(笑)

樹のこと好きなんだもん。

ここからがつくしちゃんの困ったところなのよ・・・。
どんどん迷路にハマっていきます。

結構この類君不在期間を長く書いてるような気がするんですが。実はお話上、一週間しか経ってないですからね。
どんだけ長引かせてるんだ?ホントにごめんなさいねぇ!面倒くさくしちゃって。

間もなく類君のご帰還ですから・・・もう少し待ってね♥

2018/03/16 (Fri) 17:42 | EDIT | REPLY |   

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