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机の上に並んだのは藤本が集めてくれた資料の数々。これだけあれば本人達は納得してここを出ていくはず。
もしそうしないなら特捜に情報を流し、この花沢に多少被害が出ても山城に捜査のメスを入れてやる。そうすればあとはこれ以上の不正が暴かれて、大打撃を受けるだろう。

本当は潰したいぐらいの気持ちはあったけど、前田の事がある・・・花沢への影響は最小限にする必要もあるから話し合いで解決するならこの程度で終らせても仕方なかった。

「あとは何かありますか?」
「真莉愛の方だけど、この今川勝って議員と、中国企業の社長、小沢建設の次男、全員明日の朝ここに来るように伝えてくれ。少々手荒な言葉を使ってもいいから。写真を撮った男もわかった?」

「はい。探偵と称してヤバい依頼を受けている人間の中から見つけました。その男のアパートには花沢のSPが張り付いていて、証言するように話もしています。それなりの報酬はやるからと」
「そいつも連れてきてくれ。この部屋にはあげないで3人と一緒にロビー横で待たせておいて」

「真莉愛さんに突きつけますか」
「当然。こんな密室でなんてやらないよ。やるなら牧野がされたように社員の前でやるさ」


そして4時になって前田常務が専務室にやってきた。
何故かすごく嬉しそうに・・・真莉愛のことを勘違いしたままなのか、山城からこれからも裏金が回ってくると確信でもしてるのか。

「やぁ、専務、お疲れでしたな。社長はお元気でしたかな?フランスで終らせてきたというプロジェクトは順調に稼働していましたか?懐かしくて戻りたくなったんじゃないのかな?はははっ!」

「・・・父は元気でしたよ。しばらく日本は私が見るようにと発破かけられましてね、フランスには戻れそうにないですが」

「いやいや、社長もお孫さんが生まれたら毎日会いたくて側に呼ぶんじゃないのかね?山城の会長も真莉愛さんの事は溺愛してるからねぇ・・・そんなものなんだよ、いや、目出度いことだねぇ!」

「・・・将来のことなんてまだわかりませんけどね。それよりも今日来ていただいたのはお願いがあったんですよ、常務」

今まで高笑いだったのが、俺からの頼みと聞いて怪訝な顔になった。
それに部屋に森本じゃなくて藤本がいることも不思議だったようで、俺達2人を交互に見てる。どうせわかることだからついでにそれも伝えておいた。

「今日からは藤本が私の秘書になりました。森本には専務付を解任して秘書室で待機するように伝えたんですよ」
「藤本と申します。前田常務、今度とも宜しくお願い致します」

「・・・急な話じゃないか。森本に何か不満でもあったのかね?あいつはよく働く男だろうに。いや、藤本君がどうだというわけではないが・・・役員秘書をそんなに簡単に移動とかさせるものじゃないよ?専務」

「ご忠告ありがとうございます。そうですね、秘書というのもは細かいことまで言わなくてもやってくれる人間が良いですよね。ただし、踏み込み過ぎると信頼関係は築けませんけどね。その枠さえはみ出さなければ森本でも良かったんですよ」

「・・・何のことだね?」

「いえ、何でもないですよ。お願いなんですが、明日の午前10時に時間を作っていただけますか?もし、他の予定があればこちらを優先させていただきたい。そのぐらい重要で内密なお話しがあります。宜しいですか?」

「たったそれだけのことを言うためにわざわざ私を4時にここに呼んだのか?」
「そうです。帰国のご挨拶を兼ねてね・・・」

俺の態度が気に入らなかったのだろう、前田は憮然とした顔で何も言わずに部屋を出ていった。
内密・・・そう言えば山城にも連絡をしないかもしれない。連絡したとしても別に構わないが、偶然ここで会う方がいい・・・もう逃げられないだろうけど、下手な小細工をされない方が助かる。


「藤本・・・俺からだといって山城会長、山城社長夫妻、秘書の佐々木、それと前田の妹の岩本和恵、こいつらに連絡とって同じように内密な話があるから明日の10時にここに来るようにと伝えてくれる?」

「畏まりました」

「そして森本には仕事をあげようかな。明日の11時、森本が迎えに行って真莉愛を花沢に連れてくるようにってね。明日は藤本も忙しいね。今日はゆっくり休んで、これが終ったら休暇とってよ。俺も少し休みもらうから・・・」


「カナダに行かれますか?牧野様を迎えに?」

「雪が解けないうちにね」
「雪・・・ですか?」


大丈夫、牧野は誰のものにもならずに心の底では俺を待ってるから。

まだ少し雪が残ってる場所で、また手の平に乗せてるんだろう・・・解けてしまう雪の結晶をね・・・。


**********

<カナダ>

エドモントンで迎えの車に揺られながら自分たちの住む街に向かっていた。
どうやら私たちはエドモントンから少し離れた、自然の多い場所にあるジャスパーという街に住むみたい。そこで新しく作られる観光施設の建設に山城商事が関わっているらしい。

エドモントンそのものは想像よりも現代的で雪も少なく緑も多かったけど、ジャスパーに近づいたらまだその山頂に雪を積もらせてるカナディアンロッキーが大迫力で私の目の前に現われた。

「ここはね、広大なジャスパー国立公園になっててスキーや、スケートはもちろん星空の観測も出来るんだって。いつか行ってみたいね。乗馬も出来るらしいぞ?」

「じょうば?えっと・・・馬だっけ?馬に乗れるの?」
「あぁ、お父さんもわからないけど野生動物にも出会えるらしい。どんな動物がいるんだろうな」

山本さん親子の会話は何となく旅行の延長みたいで楽しそう。
でも、こんなに自然が多いなら子供が育つのには良さそうね・・・大らかに延び延びと真っ直ぐに、そんな風に育ちそう。


私は車の窓から遠くに見える雪山だけを目で追っていた。そしてやっぱり小さな雪が降り出した。窓ガラスに当たっては流れていくから結晶なんて見えないけど。


そして3時間もかけて移動して、やっと着いたのはジャスパーの街中にある可愛らしい一軒家だった。
アパートだと思っていた私はその家を見て、あまりの大きさに驚いた。日本じゃ社宅なんて小さくて狭いイメージなのに、さすがに広大な土地を持つカナダ・・・どこの家も大きくて、豪華じゃないけどドンとした構えだった。

「うわぁ!大きな家だね、パパ。荷物ってもう来てるの?」
「あぁ、確か昨日には運ばれてるって聞いたけど。鍵とかもらってこないといけないな・・・牧野さん、まだ入れなくて申し訳ないけど、少し一樹の事見ててくれる?大家さんがすぐ近くにいるはずだから鍵をもらいに行ってくるから」

「はい、わかりました。お気をつけて!」

山本さんは地図のようなものを見ながら私たちの家の奥の方へと向かった。
一樹君は庭の方に入ってまだ積もってる雪を掻き集めてる。日本じゃここまで積もることがないから珍しいんだろう、夢中になって遊んでいた。

「一樹君、ほら、少し向こうには湖みたいなのがあるよ?今度行ってみようね。大きいのかな?」
「どこ?向こう?・・・あっ!ホントだ!お魚いるかなぁ・・・ぼくね、お魚好きなんだ」

「そうなの?生き物が好きなんだね!一樹君」
「うん!だって1人だもん。ペット、飼いたかったんだ。ぼく、遊んでくれる人って保育園しかなかったでしょ?家では何も飼えなかったし、ばぁばの家は動物飼っちゃいけなかったの。じぃじが嫌いだから」

「そうなんだ。何を飼いたいの?犬?猫?」
「なんでもいい。ぼくが寂しい時に一緒にいてくれるんなら!」

小さな心は大人の都合でこんなに傷ついてるんだね。
可哀想・・・そう言ってはいけないのかもしれないけど、一樹君が少しでも寂しくならないように、しばらくは私が遊び相手になろう。
寂しいって気持ちはすごい速さで成長するの、私はよく知ってるから。


「お待たせ!鍵もらってきたよ!寒かったね、中に入ろうか」

「わーいっ!お家の中、どんなんだろうね。つくし先生!」
「一樹、もう先生は変えたらどうだ?牧野さんは保育園の先生じゃないんだから。そうだな・・・どう呼んだらいいんだろう」

「そっか!先生じゃないもんね!つくしちゃん?つくしちゃんって呼ぶ?」
「ははっ!つくしちゃんかぁ!可愛いね、なんだか恥ずかしいわ。一樹君の呼びやすい名前でいいよ?」

「じゃあつくしちゃんね。お姉ちゃんみたい!つくしちゃん!」

良かった・・・一瞬、「ママって呼んでいい?」って言われたらどうしようかと思った。
ホッとした私のことを山本さんは見逃さなかったみたい。肩を撫で下ろしたところを見られて慌てたら「無理しないで」って笑顔を向けられた。


部屋の中には日本からの荷物が届いていて、山本さんはそれを片付けていた。
私は自分の荷物がないからそれを手伝って、キッチン周りを見てみた。色んなものが既に揃えられてて、急いで買わないといけないものは自分たちの服と食料品ぐらいかな?

「それじゃあ、牧野さんはこの奥の部屋を使ってくれる?日当たりが良さそうだよ」

「ありがとうございます。お世話になります」


その小さくて可愛らしい部屋が私の「逃げ場」になった。


窓際にあったベッドに腰を下ろした。久しぶりに使うシングルベッド・・・暖房で部屋は暖かいけどこのベッドは冷たそう・・・。
小さなテーブルと椅子、それに可愛いタンスがあったけどそこに入れる服なんて僅かしかないのにね。

カーテンを少し開けたら日本とは違う街並が見える。・・・この街は優しいのかな。私を受け入れてくれるかな・・・。
ほんの少しでもいい。楽しい事がありますように、なんて呟いてしまった。

鞄の底から出した小さな箱・・・そこからクリスタルの雪の結晶を取りだして、両手で抱き締めた。
そしてそれにキスをした。


類・・・今、何してますか?


私は毎日この言葉を繰り返すだろう。

そして、この結晶を握り締めて彼の幸せを祈ろう・・・って思った。



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2018/03/29 (Thu) 12:19 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は!

爆笑っ!!そうか、似てるかな(笑)
そんな所に結びつけられるとは思わなかった!誰かー!酸素マスクーっ!!(笑)

じゃあ明日、類には赤い蝶ネクタイでもさせるか・・・(あ!あと4時間しかない!)
わたくし、どちらかというと怪盗の方が好きでして♥(ルパンじゃないわよ?)
あの人が出るときには見ます!必ずっ!西の名探偵も好きです。

もう一つの方は見てないんです。だから、残念だがわかんない(笑)

で、ここにいたとは(笑)
ジャスパー知ってる人!!

私が滅茶苦茶ネット検索してるのに、行った人がいたとは驚きです。
で、ダメじゃん!そんなところにまで行ってシ○ナー吸ってちゃ(笑)

ここでも爆笑なお姉さんの一言、ありがとうございます。
めっちゃ笑ってしまいました。面白い姉妹なのね!

2018/03/29 (Thu) 20:23 | EDIT | REPLY |   

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