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「牧野さんでしたっけ。どうかしたんですか?」

いきなり後ろから声をかけてきたのは和真さんだった。
西門さんからこの人がゲイだと聞いてから少し気持ち悪くなったけど、こうしてみるとホントに格好いいのよ・・・ショックだわ。

ホントに・・・ゲイなのよね?


「総二郎様はお部屋に戻られたんでしょうか?知ってます?」
「あっ!はい、あの何処かの出版社の女性が来られてお部屋に行かれましたよ。美作さんと一緒に」

「え?美作様が来ておられるのですか?あ、そうですか・・・お部屋にいらっしゃるんですね?和室の方かな、洋室の方?」
「えっ?はい、和室の方に3人で行きましたよ・・・って和真さんも行くんですか?」

まさか、この人・・・美作さんの事が好きなんじゃないでしょうね!今、すごく嬉しそうな顔しなかった?西門さんの腰とお尻じゃ満足せずに美作さんにまで手、出してんのかしら・・・冗談じゃないわ!
私がギロッと睨んだら瞬間ビクッとしたみたいだけど、すぐにその目は西門さんの部屋の方に向かった。

「えぇ、私も出版社の方に用があるんですよ。どうかしたんですか?そんなに睨んで・・・あの、もう時間じゃないんですか?」
「そうですけど・・・」

「じゃ、失礼します。お疲れ様でした、牧野さん」

和真さんはほとんど私の顔なんて見ずに話してるじゃないのっ!あれは絶対に美作さん狙いだわ・・・危ない人!
ゲイと聞いてしまったらどうも歩き方までイヤらしく見えてくるから不思議よね。
それに私には「早く帰れ!」と言わんばかりの言い方して。さっきまで格好いいと思ったけどやっぱりゲイは受付不可だわ!


私は和真さんの後を付けて西門さんの部屋の前まで行った。盗み聞きなんてする気はないけど、もし美作さんの悲鳴が聞こえたら飛び込まなきゃ!なんて事を考えながら、廊下の壁にへばり付くようにして立ってた。
少しだけ聞こえるみんなの声は何だか楽しそう・・・私1人が変態みたいに思えてきた。

そのうち誰かが歩いてくるような足音が聞こえて、慌てて何処かに隠れようとしたけど、こんな真っ直ぐでだだっ広い廊下に隠れる所なんてなかった!
ヤバいっ・・・って走ろうとしたら着物のせいで足が開かなくて、膝がガクン!ってなった瞬間その場に倒れ込んでしまった!

同時にガラッと障子が開いて誰かが出てきた!嘘でしょーーーっ!


「・・・何やってんだ?牧野・・・そんなとこで寝るなよ。風邪引くぞ?」

「違うわよっ!急いで走ろうとしたら転けたのよっ!着物だから、ほら!足が開かないから!」
「見たらわかるけど、なんでお前がここで急いで走らなきゃいけねぇんだよっ!・・・さては盗み聞きしやがったな?」

「してない・・・それはしてないわよ!私はただ、美作さんがっ・・・」

そう言ったら西門さんの後ろから「俺?」って言いながら美作さんが顔を出した。美作さんの後ろからはさっきの女の人が、最後にはゲイが顔を出した。

その女の人、私を見て口に手を当てて「プッ!」って笑ったの・・・それも、ちょっと小馬鹿にした感じで。
確かに可笑しいとは思うわよ?この西門邸の中で着物着た私が廊下のド真ん中で転げてるんですもの!だけど、ここは「大丈夫?」って声かけてくれてもいいじゃない・・・!

私が立ちにくくて片手をついて起き上がろうとしたら、手を差し出してくれたのは美作さんだった。

「大丈夫?ほら、掴まって。女の子がいつまでもそんな格好してちゃいけないよ?さ・・・おいで」

「・・・ありがとうございます」
「怪我、しなかった?ここの廊下、よく磨かれてるから気をつけなきゃね」


やっぱり優しい・・・。

私は美作さんの手を取って立ち上がったけど、その指先まで震えてるのが伝わらないかとすごくドキドキしてしまった。


どうしよう・・・本気で恋しちゃってるかも。年上が好きっていう・・・彼に。


*********


あきらの手を取って牧野が起き上がったとき、完全に墜ちたな・・・って思った。

あれだけ言ったのに。
あきらはお前みたいな妹タイプには優しくしたって絶対恋にはならないんだって。自分が甘えられる年上が好きで、しかもほとんどが既婚者、人妻なんだから!

確かにあきらにはまともな恋をして欲しいけど、俺にだけは言われたくないだろうからな。だから俺達の間ではこういう説教はしないってのが昔から暗黙のルールみたいにあるんだ。
「止めとけよ」ってお互いに言葉にする事はあってもそれ以上踏込むことはない。
あきらにもそれなりに逃げ場が必要だから・・・それがわかるから何も言わないんだ。

だけど牧野がそこに入ってきたら・・・マジ、ややこしくなりそうでイヤだ!


今は目の前であきらにうっとりしてるけど、これでこいつの行動を目の当たりにしたらどうなる?俺同様、ストレートパンチがあの顔に向けられんじゃねぇの?
そんな事になったら次はどうなる?・・・美作の逆襲は避けたい。本気でヤバい!
ここは望みのない恋心を早めに冷めさせて、あきらからは手を引いてもらった方がいいだろう。

「あきら、お前、暇になったって言うけど、この前アメリカから香織さんが帰ってくるって言ってなかったか?ほら、なんだっけ・・・化粧品メーカーの社長夫人。彼女が帰ってきたらまた付き合うんじゃなかった?」

「え、香織さん?・・・あぁ、彼女なら帰国が延びちゃってさ。まだ、日本にはいないんだ。よく覚えてるな!」
「まぁな。お前がすごく熱上げてたから覚えてたんだ。今回振られたのは何処の女?」

「美咲のこと?美咲は独身だったんだけどやっぱり年下は嫌だってさ。でも半年しか付き合わなかったからな・・・そこまでショックじゃないけど」

わざと牧野の前であきらの女関係の話を出した。
これを聞いたら流石に自分じゃ太刀打ち出来ねぇってわかるだろうし、男の経験ゼロのお前が相手に出来る男じゃないから。それにあきらも初めての女は面倒くさいっていつも言ってるしな。

少しはショック受けたか?なんて牧野を見たら、何故か俺の方にすげぇ怖い目を向けてやがった!

「なっ・・・なんだよ!なんで俺の方を睨むんだよ!」
「・・・西門さん、自分がまともな恋愛しないからって美作さんにそんな言い方しなくてもいいと思うんだけど」

「そんな言い方って・・俺はあきらが年上ばっかり手を出すから・・・」
「それって自由じゃない?それなのに傷ついてる美作さんに尚更追い打ちかけるようなこと、言う必要あるわけ?」

おい・・・ちょっと待て!
俺はお前がキズつく前に止めてやろうとしてるのに、なんでこんな責められるような事になってんだ!このままだと牧野の方が泣くんだぞ?だから、あきらの好みはお前と正反対だって教えてやってんのに!
しかも、あきらはこのくらいじゃ傷つかねぇし!

「あはは!つくしちゃん、庇ってくれてありがとう。大丈夫だよ、そんなに落ち込んでないから。俺の事なんかでそんなに眉間に皺なんて寄せないで?せっかくの可愛い顔が台無しだよ?」

「あっ・・・やだ、そんな可愛いなんて!」

・・・だから!そこであきらも必要以上に紳士になるな!その気になっても知らねぇぞ?


俺達のガキっぽい言い争いに笑い出したのは橘出版の望月だった。

「なぁに?随分と元気のいいお手伝いさんが入ったのね!若宗匠の口利きで入ったの?お歳が近いんでしょ?まさか・・・そういう人なの?」
「・・・バカ言ってないで原稿持って帰れば?また残業してデートする相手を見つける時間、なくなっちまうぞ?」

「あらぁ!いいわよ、それならあきら君誘うから。ねぇ、あきら君、今度私と飲みに行きません?いいお店、色々知ってるんでしょ?」

「あぁ、いいね!望月さんの時間が取れたら連絡してよ。俺が暇してるかどうかはわかんないけどさ」
「うふっ・・・そういう時は暇を作るものよ?無理矢理・・・ね!」

望月は牧野を完全無視してあきらの横に行くとその肩に片手をそっと乗せてウィンクなんてしてやがる。
それを目の前で見てる牧野は両手を固く握り締めて、ギュッと唇を噛んでた。俺はその拳が望月に飛んでいきそうな気がして超焦った!

こんな所で殴り合いなんて冗談じゃねぇ!さりげなく和真に目配せしたら軽く頷いて望月の横に行った。

「望月さん、若宗匠はこのあとも少しお仕事が残っていますので今日はここら辺で・・・玄関まで送りますのでどうぞ」
「あら!ごめんなさい、若宗匠。忙しいのに騒いでしまって。それではまた来月、宜しくお願いしますわ」

「じゃあね、あきら君!」なんて真っ赤なネイルの指であきらの口元を触って、そのまま和真の後をついて行った。
それをちょっと怒ったような顔で見送る牧野と、フッと笑ってるあきら。そこでイライラしたりニヤニヤすんの、止めろって!


「牧野も早く帰れ。もう随分時間過ぎてるぞ?事務長が帰れなくて困るから急げよ!」
「あっ!そうだった、事務室に戻らなきゃ!」

「で、総二郎、まだ仕事があったのか?これから飲みに行けるんじゃないのか?」
「さっきのは望月を帰すための嘘だ。着替えてくっから少し待っとけよ。青山に出来た新しい店、行こうぜ?」

牧野が何度も振り返ってるけど、無視してあきらを自分の部屋に入れてドアを閉めた。


本当は牧野があきらに恋をしても関係ない。
なのにどうして止めようとするんだ?泣き顔が見たくないから・・・それとも別の理由?それってなんだ・・・?


**********


美作さんと西門さんがまた部屋に戻って今度こそ一人になった。
今から飲みに行くって言ってたけど、そこには誰も女性はいないのかしら。前言ってたみたいにお店で出会った人と一緒に飲むの?そして・・・朝、帰ってくるの?誰かと過ごしたあとに?

それは西門さんの行動パターンであって、美作さんじゃないのに何故かこんがらがってモヤモヤした。


事務所に帰ったら事務長が心配していて、お稽古のあと少し西門さんと話していたことにして遅れたことを謝った。着物で帰ることも説明したら「大事にしなさいよ」とだけ言われ、自分の服と鞄を持って勝手口の方に向かった。

ちょうどその時、西門さんも着替えを済ませて美作さんと出かけるんだろう、駐車場の方に向かって歩いてるのを見かけた。


今日の西門さんは美作さんに合わせたのかジャケット姿。
黒いセーターに黒いズボンを合わせてグレーのジャケットを着ていた。今、光ったのはブレスレット?お洒落してるんだね。


廊下で立ち止まった私をチラッと見て・・・声をかけられないまま通り過ぎられた。

誘われても着物だもの。
行けないことはわかっていたけど、何故か寂しかった。



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2018/03/29 (Thu) 13:09 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は!

ふふふ・・・実はそうなのかも。
意外や意外、先に墜ちるとは・・・(笑)

いつになったらつくしが気付くかな?
しばらくはあきらの事を見てるのかな?
総ちゃん、認めちゃうかな?

あきらがこんな性格なのは初めて書くので難しいです・・・。
やっぱりつくしが好きなあきら君しか書いたことないのでね~💦

どうなることやら・・・。

でも、着物で転けるって結構痛そうじゃないですか?
私・・・実は想像出来ないんですけど、足ってそこまで開かないですよね・・・?
いや、無理矢理開けば動くんでしょうけど。(変な想像しちゃダメよ)

着物の事に詳しくないから、実はこういう場面は苦手です(笑)

今日もコメントありがとうございました。

2018/03/29 (Thu) 20:32 | EDIT | REPLY |   

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