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「美作さんの事、聞いてもいいですか?」
「どうぞ?何が聞きたいの?」

私たちはボックス席からカウンターに移動していた。その方が近くで話せるからって・・・。
確かに私の右腕のすぐ横に彼の左腕があってすごく近い。それに美作さんは右腕でカウンターに肘をついて私の方を見てるから視線の端に彼の瞳が映る。それを真っ直ぐに見ることは出来なかった。

美作さんはマティーニってカクテル、私にはミモザっていうカクテルを選んでくれた。

「美作さんって、どんなものか好きなんですか」
「どんなもの?例えば?」

「た、食べ物とか・・・」
「男のくせにって思われるかもだけどサラダとか野菜が好きかな。魚介類・・・エビが好きだよ。そんなこと聞きたいの?ついでに言えば変わったものはキライ・・・かな。あんまり変な組み合わせのものは口に入れない」

「好きな色は?」
「あはは!女の子の定番だね。黄色が好き・・・珍しいでしょ?」

「あとはですね・・・」
「好きな女性のタイプ・・・でしょ?」

ホントはこんな事を聞きたいんじゃなかったけど、あなたのことを教えてって言えばこの程度しか思いつかなかった。そして1番聞きたかったことは彼の口から出てきた。
どんな人が好きですか?・・・もう、西門さんから聞いていたから知ってるんだけど、この人の口からはまだ何も聞いてなかったから。


「大人の落ち着いた人が好き・・・そう言えば聞こえがいいかな。自分で言うのもなんだけど俺って穏やかな常識人だと思うんだよね。でもさ、ホントはスリリングなことが好き・・・危ない恋って燃える方なんだ。ははっ!イメージダウンかな?」

「い、いえ!そんなこと・・・恋愛は自由、ですから」

西門さんが言った通りの返事に何かが音を立てて崩れるような気がした。
危ない恋・・・それってこの前のパーティーでの事みたいな?あの人は誰かの奥さんでしょう?それでも・・・本気で恋してるっていうの?その恋が終ったらすぐ次にいけるの?そんなに本気って次から次へと生まれてくるの?


「好きな女性・・・どうして年上なんですか?そんな質問でも答えてくれますか?」

「別に構わないけど・・・聞きたい?」

「はい・・・美作さんはその、年下はキライなんですか?面倒・・・なんですか?」

「くすっ・・・面倒って総二郎が言ったんだろ?それってうちに双子の妹がいるからじゃない?結構歳が離れててさ、今ではもう年頃だから少しは落ち着いたけど、小さい頃は俺に纏わり付いて大変だったんだよ。俺と結婚するって2人が左右に分かれて飛びつくからさ、それで喧嘩になって宥めて寝かせて・・・で、次の日も同じ事の繰り返し。だから毎日の口癖が『面倒くせぇ!』だったんだ」

「そうなんですか?双子の妹さん・・・可愛いでしょうね」
「写真見る?」

双子の妹・・・こんな綺麗な人の妹さんなら綺麗なんだろうなって思ってスマホの中の写真を見せてもらったら、本当にモデルのような顔の妹さん!それも2人だから迫力も2倍で驚いた!
こんな妹さんから毎日抱き付かれてたら、そりゃ他の女の子なんて平凡に見えるだろうな・・・なんて。

「あ、お姉さんもいるんですか?もう1人後ろに可愛い人がいますけど・・・?」
「あぁ、それがお袋。美作商事の副社長だよ」

「・・・えっ?!」

美作さんとそっくりだけどお人形さんみたいな服を着た人がいて、てっきりお姉さんだと思った。もしかしたら美作さんはお姉さんのことが好きで、それで年上好きになったのかと一瞬考えたぐらいだけど、それにしても可愛すぎる!
この前の出版社の人やパーティーの人とは全然タイプが違うからおかしいな・・・とは思ったけど。

「お袋を見たらわかるだろ?少女漫画みたいでさ。そのせいでうちの妹たちも同じ趣味なわけ。だからすごくストレスでね。
わかった?俺が年上の人を好きなのは家族と反対の人を選んでるの。お袋や妹が嫌いなんじゃないよ?むしろ守ってやるのが当然だと思ってるから大事な人達なんだけどね。ほら・・・一日中俺に頼ってくるからさ、少し鬱陶しいんだ」

そう言ってクスクス笑いながらスマホをしまった。
確かに一日中こんな人に側にいられたらウンザリかも・・・って思うほど少女漫画の世界だった。
白いフリフリエプロンドレスだなんて漫画の中だけだと思ったけど、ホントに着てる人っているのね・・・ちょっと首を傾げてしまうわ。


「でも人の奥さんは・・・いけないと思います。幸せになれない・・・ですよ?」

「そうだね・・・わかってるよ」
「それなのに、危ない恋を選ぶんですか?」

今まで笑っていた顔が少し真面目な顔になって、私の方を見ていたのに視線を逸らされた。
余計なことを言ったんだろうとは思ったけど、本当にそう思ったから。
美作さんにはもっと明るくて幸せな恋愛が似合うって思ったんだもの。自分がその相手になれたらいいんだろうけど・・・なれなくてもいいから、真っ直ぐな恋をして欲しかった。


「俺が選ぶ人ってさ・・・彼女たちも自分の結婚に納得してない人ばっかりなんだよ。ほら、家の為ってヤツ?家や会社に決められた結婚の人なんだ。だから彼女たちは毎日嘘の笑顔を作って暮らしてる、似たもの同士ってわけ。俺もそのうち結婚するだろうけど家の事を無視できない。それなりの人を選ぶんだと思うよ・・・そりゃ、多少の恋愛感情はないと嫌だけどさ」

「自分の気持ちだけじゃ相手を選べないって事ですか?反対・・・されるの?」

「そうだね。両親が良くても美作が納得しないとか、親族が納得しないとか。100%喜ばれる結婚なんて有り得ないんだよ。で、俺にはそういう自由時間はもうあんまり残されてない・・・あと数年後には誰かと結婚してるんじゃない?わかんないでしょ?こういう世界・・・総二郎も同じだけどね。だから見合いとかいまだにしてるだろ?」

「西門さんも?」

「あいつの所は俺の家より大変じゃない?幸いおばさんもおじさんも気さくな人だけど、西門そのものが厄介だから。特別な組織だからね。守らなきゃいけない伝統ってものの重さが違うんだよ、あいつのとこ」

確かに伝統ってものは凄そう・・・始めて入った時には時代が違うのかと思ったし、仕事っていっても会社とは全然違うことばかり。しきたりや作法や決まり事の煩いのには驚いたもの。


だから、西門さんも息が出来ないのかな。お見合い・・・これからも続くのかな。


美作さんが年上の人に甘えるのも、西門さんが綺麗な女の人と夜遊びするのも同じような気持ちから来てるのかな。
自分の宿命みたいなものから逃れられないけど逃れたい・・・今だけ自由になりたいってこと?

そのうち縛られてしまうから?


「西門さんと仲がいいんですね。いつも2人で飲みに行くんですか?」

「総二郎?ははっ!もう子供の時からの腐れ縁ってヤツ?俺達、仲間っていうか幼馴染みは4人なんだけど、その中じゃいつも一緒にいたのは総二郎かな。趣味とかあんまり合わないのに気が合うっていうのかな、総二郎にはなんでも話せるし・・・あいつの方はどう思ってるかわかんないけどね」

「4人・・・4人グループなの?」

「グループなんて作ってないよ。みんな個人プレーなんだ。1人はもう世界中飛び回ってて大忙しの暴れん坊で誰の意見も聞かないヤツ。もう1人は一年中眠そうであんまり動かないけど頭の中はキレキレなヤツ。そして地元で遊びまくってる総二郎と俺・・・俺も今は日本だけどそのうち海外勤務になる予定だからそうなったらバラバラだね。でも、この中の誰かに何かがあったらすぐに駆けつける、そういう仲なの」

「あとの2人も・・・同じ境遇なんですか?」
「そうだね。誰が一番初めに『家』に縛られるんだろう・・・誰も口には出さないけどね」


美作さんがカクテルを飲み干してグラスを差し出したら、バーテンダーが軽く頷いて同じものを用意してる。
私も自分のものを飲み干して、同じようにグラスを戻した。

「違うものにしてみる?甘いもの・・・ベリーニにしようか。桃とザクロのカクテルだけど」
「・・・ありがとう」

「俺もカクテル作るの得意なの。今度うちに総二郎とおいでよ。作ってあげるよ?」


西門さんと?1人じゃ呼んでくれないんだ・・・それって私が年下だから?
でもさ・・・そんなに辛い恋の選択しなくてもよくない?絶対にダメなのかな・・・私じゃ何処にも入る場所・・・ないのかな。


「私・・・美作さんのこと、好きなんです。1人で行きたいな・・・ダメですか?」


勇気を出して言ってみた。
今日は初めてのことばっかりだから調子に乗っていたのかもしれない。

初めてのデート、初めてのカクテル、初めての告白・・・・・・美作さんの少し驚いた顔。



「ごめんね。俺・・・つくしちゃんの事、可愛い妹みたいにしか思えない。恋人としては考えられないタイプなんだよね」


そして初めての失恋・・・をした。



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2018/04/11 (Wed) 13:09 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、今晩は!

ここのシーンわりと自分では好きなんですよ、あきらが(笑)
なんか・・・ねぇ、こんな風に2人で飲んだことがないからかもしれないけど憧れます。

カウンターで隣に座っての恋バナ・・・。恋バナか?

どうしても大人数でワイワイやってどんちゃん騒ぎしかした事ないのでこんな大人っぽいお酒は知らないの・・・。
残念だなぁ・・・やってみたかったな、若いときに。

ちなみにお持ち帰りなんてされたこともありません。
「誰かこいつを送ってやってー」ってたらい回しにされたことなら何度もあるが(笑)

このあとに総二郎・・・どうなるんでしょ(笑)
ワクワク・・・ふふふ。

2018/04/11 (Wed) 18:36 | EDIT | REPLY |   

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