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plumeria

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牧野のマンションに着いたのは午前1時30分。
辺りは静まりかえっていて俺のベルリネッタの音は煩すぎた。だから一度エンジンを切ってから牧野を起こしてみたが反応がない。
さっきは一度起きたのに今度は完全に寝てしまったようだ。

前のパーティーの時のように西門が行かせたようなものなら母屋で寝かせてもいいけど、今日は俺が勝手に連れ出してるからそうもいかない。
そんなことしたらお袋がどんなことを言い出すかわかったもんじゃない。

「牧野!おい、起きねぇか!・・・おーい!牧野!」
「ん・・・」

俺の声に反対側を向いてしまって起きる気配がない。
どうしようかと思ったら車に牧野の通勤鞄があった。悪いとは思ったけどその中を探ったらマンションのカードキーと思われるものがあって、それを取りだして車を降りた。
そして助手席に回ってドアを開け、もう一度抱きかかえると通勤鞄を背負ってエレベーターに向かった。

「確か7階の一番左側の部屋って言ったよな・・・。ったく、どれだけ飲んだんだ?前は確か2杯ぐらいで倒れたけど」

膝までのドレスだから抱えていたら少し捲れて膝が丸見えになった。エレベーターの中の照明がオレンジっぽかったからなのか妙に色っぽくてドキッとした。別に俺が捲ってるわけじゃねぇからな!って誰に言ってるんだか・・・。

抱きかかえてる腕を少し動かしたら今度は牧野の頭がガクンと俺の方に倒れて来て、左腕の外側にこいつの顔が当たった。
照明に光るルージュ・・・ヌードカラーだからなのか艶めかしくて半開きの口元を思わず見てしまった。

それに・・・微妙にある胸が俺の心臓辺りに当たってる・・・よな?
はっきりとわかんねぇところが牧野らしいけど。


そうしてやけに騒々しい胸を鎮めようとしてたら7階に着いて、一番左奥の部屋に向かった。そしてカードキーを翳してみると「カチャ」って音がして開いたからドアを開け、部屋の中に入った。
さすが最近のマンション、ちゃんと自動施錠のドアだった。

「言っとくけどお前が寝てるからだからな。俺が好きで女の部屋に入るんじゃねぇからな!」

眠ってる牧野の横顔に向かって小さく声に出して、照明のスイッチを探して灯りを付けた。
部屋の照明が顔に当たって一瞬眉を歪めたけど、それでも起きそうになかったからベッドルームを探して奥の方に入ってみた。
そして1番奥の部屋にあったベッドに寝かせて、こいつの荷物はすぐ側のテーブルに置いた。

志乃さんを呼んで着替えさせるわけにもいかないし、俺が脱がせたらもっととんでもない事になる。
仕方ないからドレスのまま上から布団を掛けてやった。


部屋の中は思ったより綺麗にしてる。特に可愛らしいものも何もないけど、整頓ってことだけで言えばきちんとしてるんだな。
置きっ放しのものや脱ぎっ放しのものもなく、キッチンも片付いてる。チラッと見えた洗濯物。プッ!・・・ホントに白ばっか!

それじゃあ帰るか・・・ってもう一度牧野のベッドの横まで行ってみたら、すぅすぅと寝息が聞こえてる。
明日、こいつがどうなってるのかわかんねぇけどな。いつもみたいに元気になってればいいけど・・・無理かもな。

「・・・このままよく寝て、みんな忘れちまえ・・・。じゃあな」

聞いてるだなんて思わなかったけどそんな言葉を呟いて、スッと立ち上がって踵を返したら牧野の声が聞こえた。


「・・・・・・さん、ごめ・・・」

今、どっちのことを言ったんだ?あきらの事?でも・・・ごめんって・・・俺の事?
振り返って牧野の顔を見たけど起きたわけじゃない。泣いたあとがある瞼は閉じたままだった。

でも微かに動く口元が誰かを呼んでる。
跪いて顔を近づけたけど、「・・・・・・さん」しか聞こえなかった。


何でだろう・・・それが自分のような気がしたんだ。

だからだろうか、こいつの唇にそっと自分のそれを重ねた・・・触れるだけ、だけどすげぇ柔らかい。
少し離したら首を反対側に向けようとしたから思わず両手で顔を戻した。

そして、もう一度キスをした。今度は・・・少し長めのキス。


でも、牧野は起きなかったからそのまま部屋を出た。「カチャ」ってドアが施錠されたあとしばらくそのドアに寄り掛かっていた。
ヤバい・・・自分で自分の唇を押えてる。そこに残るあいつの唇の感触と少しだけ香る甘さを思い出していた。


***********


♪~♪~♪~♪~

「煩いなぁ・・・もう・・・もう少し寝かせて・・・頭痛いんだから・・・あれ?」


布団の中で自分の耳に手を当てたら何かがチャリって音を立てた。
何だろうと思って耳朶を触ったらピアスだ・・・私、何でピアスしてるんだっけ?

そんな事を考えていたら・・・バチッと目が覚めて、ガバッと布団を剥いだ!

自分の部屋だ・・・。ここ、自分のマンションの部屋だ!なんで、どうして?どうやって帰ったっけっ!?
ハッと自分の姿を見たらピンクのドレスのまま。そして、ここに帰ったってことは・・・・・・西門さん?

「うそっ!ここ知ってるのって西門さんだよね?じゃ・・・やっぱり西門さんに送ってもらったの?で、何で全然覚えてないの?!」

ベッドから降りようとしたけどズキン!と頭に痛みが走って思わず抱え込んだ。
うわぁ・・・これが二日酔いかぁ・・・初めてじゃないけど頭痛い!せっかく買ってもらったドレスも皺だらけにして、鏡を見たらお化粧もすごいことになってる。マスカラ・・・こんなに無残になっちゃって!

時計を見たら7時半。急いでシャワーして着替えて準備しなきゃ仕事に間に合わなくなっちゃう。
そう思うけど身体が動かなかった。

しわくちゃのドレスを見て思いだした。


あぁ・・・昨日、美作さんに振られちゃったんだっけ、私。
恋人としてはみられないってはっきりと言われて・・・

*

『あ、あはは!そうですよね!うん、わかってました。でも伝えたかったんです。こんなに気になる男の人初めてだったから!ごめんなさい、忘れて下さい!』

『ううん、忘れないよ。勇気だして伝えてくれたんだろ?嬉しいよ・・・ありがとう。でも、ごめんね』

『謝らないで下さい!いいんです・・・私が勝手に想ってるだけだし、あの・・・黙っておこうと思ったんですけど、西門さんに言われたから、つい言葉にしたんです』

『総二郎が?なんて?』

『ちゃんと自分の気持ち、伝えたらいいじゃん、あきらには黙ってても何も伝わらねぇと思うぞ・・・って。勇気が出たら告ってこいって。背中押されたような気になって、私ったら!ホントごめんなさい。さ、飲みましょう!うん、今日は飲んじゃお!』

*

なんかそんな会話をしたっけ。
そして種類の違うカクテルを飲めないくせにガンガン飲んで、確かそのあと寝てしまったのよ。どうやってお店を出たのかもよく覚えてない。男の人の会話が少し聞こえていたような気もするけど。

そうだ・・・頭の中で何となく呼んでしまったのよ・・・「西門さん」・・・って。
そうしたら本当に西門さんの車に乗ってて、何処かで星を見たような気がする!すごく泣いて・・・その時に背中にあった温もりって西門さんだった?何度も「泣いてていいぞ」って・・・声がしてた。


「でも、ここまでどうやって上がってきたっけ?歩いた記憶がないって事はまさか・・・?」

急いで双眼鏡で西門さんの部屋を見てみたけど、そんなに都合良く現われるはずもなかった。


でも、なんでだろう。
少し私の周りに西門さんの香りが残ってる気がする。



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2018/04/13 (Fri) 15:06 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は!

あら!好きだったんですか?それは知りませんでした。
意識がないと嫌かと思っていました(笑)

で、戻しちゃいけないの?(笑)
「おいおいおいおい!逃げんなって!おい!」って感じじゃないのよ?

なんというか・・・反対側にコトンといった顔をさ、優しく持ってそっとするのよ?

でも、起きないか?普通(笑)


そうそう!そこ好きでしょ?自分でしておきながらねぇ!
こんな総ちゃん滅多に見れない!(笑)純情物語だよねー!(笑)
それ以上の事、ナンボでもしてるくせに・・・。

もうあきらの影も形もなくなった・・・。ごめんね、あきら。

2018/04/13 (Fri) 20:47 | EDIT | REPLY |   

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