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次の日の朝、この日は土曜日で学校は休み。
だから午前中は一樹君の誕生日パーティーで、お昼ご飯をみんなで食べるまでの時間、私は大忙しだった。

朝早くに起きてみんなの朝食と今日の料理の準備、山本さんは部屋の片付け。
類は一樹君に何かを話しかけたあと「用事があるから」って家を出ていった。

こんな初めての場所で何の用事があるの?
類に何を言われたのか一樹君に聞いても「知らない」を連発された。昨日の夜のスマホと何か関係があるのかしら?

「教えてよ、一樹君。さっき類とお話ししてたよね?類、なんて言ったの?何処に行くって?」
「ん?ぼく、何も知らない。えっとね、つくしちゃんにあとで電話するって言ってた。だから電話を使えるようにしておいてって言ってたよ」

「え?電話するって?」
「うん!お昼過ぎてから。そのほかは知らない!」


・・・なんで?それなら私に直接言えばいいじゃない?何で一樹君に伝言なんて形をとるの?

よくわからない類の行動だけど、お友だちが来始めるとそんな事も言ってられずに大忙し!こういう時は同じ日本人だから助け合うんだって言って、各家庭のお母さん達も集まってすごく賑やかなパーティーになった。

私の事はどうやら親戚のお姉さんになっていたようで誰も一樹君のお母さんのことは話さなかった。
山本さんがわざわざそう言って回ったのかもしれない。その事について問われる事もなく、手伝いに来ている「親戚のつくしちゃん」になっていた。


この日、15人の日本人生徒のうち7人も集まって家の中は大騒ぎ。
作った料理はあっという間になくなって、キッチンで追加を作りながらみんなで食べて、お喋りして笑っていた。

「せっかくこの土地に来たのに会社の都合でおそらくすぐに帰国です。短い間でしたが仲良くして下さってありがとう!」

山本さんがみんなに握手をして回る。一樹君も両手から溢れるほど友だちからプレゼントをもらって大喜び。
それでも一番嬉しかったのは庭の隅に置いてある類からの自転車だって言ってみんなに自慢していた。


「じゃあ、またね!」
「うん、来週もまだ学校に行くかもしれないからね」

「雪が降ったら雪合戦しような!」
「うん!こうすけ君には負けないからね!」

「山本さん、今日はご馳走様。色々大変だけど何かあったらいつでも言ってきて?」
「ありがとうございます。頼りにしてます。帰国が決まったらご挨拶に伺います」


お客さん達はみんなにこやかに帰って行った。それが午後1時30分。そのあと片付けをしていたら私のスマホが久しぶりに鳴った。
画面には「類」の文字。あぁ、やっとこれに出ることが出来るんだなぁ・・・って思ったけど、通話をタップしたらすぐに類の行き先の方を心配する自分に戻っていた。

「もしもし、類?ねぇ、何処にいるの?お昼ご飯どうしたの?」
『牧野、今から言う所に来てくれる?あのね・・・』


そのあと聞いた場所は思いもしなかった場所・・・・・・このジャスパーにある大きな古い教会だった。


*************


午後2時・・・いつか私が泣いてしまったあの教会の前に来ていた。

大きな扉が見える道をゆっくり進んで行く。今日も雪が降っててお昼からは少し強くなっていた。
私の髪にも雪がかかってコートにも・・・手の平にも。

すこしドキドキする・・・ほんのちょっとだけ期待してる、今から起きる事。


そして扉を開けたら聖堂の扉は閉められていて、すぐ近くの部屋からこの教会の人と思われる女性が私に近寄ってきた。

『牧野さんですか?花沢さんから頼まれています。どうぞこちらの部屋に』
『あの!彼は何処にいるんですか?今日はどうしてここに呼ばれたんでしょう?』

『・・・すぐにわかるでしょう。さぁ、どうぞ。支度をしましょう?』

優しそうなその人は私の背中をそっと押してくれて控え室のような場所の扉を開けて中に入れてくれた。



そこにあったのは純白のウエディングドレス・・・。


『これ・・・は?』
『花沢さんから頼まれています。あなたにこれを着せて欲しいと。彼は聖堂で待っていますよ。さぁ、準備をしましょう』

すごく綺麗でフワフワで・・・豪華なレースが裾を飾っていて長めのベールにまですごいレースが施されてて・・・。
溜息が出そうなドレスが私の目の前に置かれた。


『昨日、フランスからここに届いたのですよ。あなたの婚約者から連絡をもらったときは、そんなことをする人が本当にいるのかと耳を疑ったわ。でも本当に届いたし、このドレス・・・素晴らしいわ。とても綺麗ね』

『・・・はい。すごく綺麗で私に似合うかしら』

『大丈夫よ。幸せな人には絶対に似合うように出来てるのよ?ウエディングドレスですもの。それに迎えてくれるのは愛する人でしょう?きっと喜んでくれるわ』


そのドレスに着替えて髪を結ってもらって、真っ白な薔薇の生花で飾ってもらった。
その上からベールをかけてもらって・・・鏡で見たら夢にまで見た花嫁さんに変わっていた。

涙が出てきて前が見えない・・・。
幸せなはずの私の姿が歪んで、何も見えなくなったら「泣いちゃダメ!」って慌ててハンカチで拭かれてお化粧直し・・・でも、何度やっても涙が止まらなくて係の人を困らせた。


『時間ですよ。花嫁さんはこちらに・・・』

そう言われてドレスを持ち上げ控え室を出たら、そこにいたのはタキシード姿の一樹君だった!


「え?!どうして・・・何で、一樹君がここにいるの?しかもその服・・・」
「だって、類がここに来てつくしちゃんと歩いて欲しいって言うんだもん。でね、その時間まで内緒っていうから朝は言わなかったんだよ?え、えす・・・なんだっけ」

「エスコート?」
「そうそう!それが今日のぼくの役目なんだって!類がね、大事な役目だから頑張ってって言ってくれたんだ!」

「お父さんはどうしたの?」
「わかんないけど、パパは別の部屋で持ってる。ここには来ないって」

私が出て行った後で一樹君が山本さんに話したか、類が話したか・・・それはわからなかったけど、相手が一樹君だと言うこともあってそれ以上は聞かなかった。
辛い思いをさせてるんだ・・・そう思うと少し顔が曇ってしまう。

「どうかしたの?つくしちゃん。パパがね、良かったねって言ってたよ?泣いちゃダメだよ?」
「・・・うん、泣かない。ありがとう、一樹君」

「はい!じゃあね、さっきぼく練習したんだから!こうやって・・・手を繋ぐんだよ!」

くすっ・・・本当なら花嫁の父親がするのにね。
そして本来はその腕を持つのに、背が小さいから手を繋ぐことになっていたみたい。握手するみたいに差し出された手を掴んだ。


「宜しくね、一樹君」
「うん!つくしちゃん、すごく綺麗にしたんだね。驚いちゃった!」

「ふふっ!ありがとう・・・」

ちょっと赤くなってる一樹君の手を持って聖堂の扉の前に立った。


『それでは行ってらっしゃいませ。新郎の元に・・・』

その言葉と同時に扉が開かれて、すごく広くて綺麗な聖堂が私たちの目の前に現われた。鳴り響くパイプオルガンの音・・・。
その音に誘われるように足を踏み入れたら・・・


私の歩く道の一番向こうに愛する人の姿が見えた。


真っ白なタキシードに身を包んだ類・・・。

幸せそうに笑ってる類が私の事を待っててくれた。




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ジャスパーの教会です。素敵♥でしょ?
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2018/04/13 (Fri) 23:51 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・おはようございます。

そうなのです。
類は既に日本にいるときから2人で式を挙げる計画を立てていたって事です。
ナイスタイミングでフランスから電話が入ってドレスが出来上がったって聞いた時にですね。

二度と離したくないっていう気持ちが余程強かったのね。
(というより、意外と私がロマンチストなのよ?ふふふ)

一樹が可愛くなって仕方ないのでここぞとばかりに使いまくる(笑)
エスコートと言うよりただの引率になってるとは思うけど、そこが可愛い。

書きたかった所が書けて幸せです。
今日もありがとうございました。

2018/04/14 (Sat) 09:34 | EDIT | REPLY |   

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