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目が覚めたのはもう随分外が明るくなってから・・・少し横を見たらまだ牧野は俺の腕の中でぐっすり寝ていた。
安心しきった子供みたい・・・その瞼にキスしたら擽ったそうに指で擦って少し向きを変えた。

「牧野・・・ね、起きて?」
「う・・・ん・・・」

「牧野、朝だよ。今日ここを発つんだよ?もう起きなきゃ・・・」
「ん・・・類?」

まだ寝ぼけてるみたい・・・だからその唇を塞いだ。そしたら昨日と同じように牧野の腕が俺を抱き寄せるんだ。
そのお返しに俺まで牧野の背中に腕を回して抱き締める・・・お互いに何も身につけてないから余計に刺激的なんだけど、まだしっかり覚めてない牧野は無意識にその足を絡ませてくる。

「あは・・・俺はいいけど、あんた大丈夫なの?身体、痛いんじゃないの?」
「・・・ん・・・あれ?・・・類、おはよ・・・あっ!どうしてこんなことになってるの?・・・いやだ!もうっ・・・類ったら!」

「俺じゃないよ、牧野が絡みついてきたんだよ?くすっ・・・大胆だなぁって思ってたとこ」
「そっ、そんなわけないでしょう!あっ・・・服、服がない!類・・・服どこ?」

「あそこ・・・取ってくる?」
「・・・え?」

俺が窓の方を指さしたら、その結構離れた距離に戸惑ってシーツを身体に巻き付けた。
そして上目使いで俺に「取って来て」って強請ってる。その仕草が可愛かったから鼻の頭にキスしてから取りに行った。

でも、昨日かなり汗をかいたからそのまま2人でシャワーを浴びて、ちょっとだけ楽しんでから帰国の準備。
牧野は「明るいところでなんてことすんの!」なんて怒鳴ってたけど、結構大胆だったよ?さっきみたいに・・・って言葉は出さなかった。


「あ・・・牧野、見て?ほら・・・」
「ん?なあに?」

まだ2人ともバスローブのままで髪の毛も乾かしてなかったけど、そのまま手招きして窓辺に呼んだ。
俺の真横にまで来てピッタリと寄り添った牧野は首にかけたタオルで顔を拭きながら外を見た。


「わぁ!綺麗だね。雪で真っ白・・・」
「うん、何もかも真っ白だね。山も道も家も・・・みんな真っ白・・・」

昨日から降った雪が静かに・・・静かに積もってこの街全体を雪で覆っていた。
それはすごく幻想的で美しくて、2人でその光景をしばらく見ていた。そして目の前の窓ガラスにピタッとくっついた雪・・・そこには今までで一番綺麗な結晶が見えた。

「見て・・・綺麗な結晶だね」
「うん、ホント・・・綺麗な形してるね」

「・・・触らないの?もう解けても気にならないんでしょ?」

いつもなら窓越しでも触ろうとするのに牧野は手を出さなかった。顔だけ近づけて微笑んで、しばらく形を留めていた結晶を見てる。やがて自然とその形が消えて、また新しい雪がそこにくっついた。


「もう触らないよ。もうこの結晶は私の夢とは重ならないから。夢は解けずに心の中にあるの。類、あなたの隣にいればこの夢は叶うでしょ?もう逃げずに前に進むって決めたから」

「そう?じゃ、真っ白なこの世界は俺達の始まりだね・・・この先の未来に色んな色、重ねていこう・・・」


「ね・・・私、いつまで牧野?」
「・・・ほんとだ!ごめん、もう奥さんだった!じゃあつくし、だね?」

「ちょっと悲しかったんだけど。さっきから牧野、牧野って・・・」
「ごめんって!これで許して?つくし・・・」

拗ねた顔をわざと見せてる。それってホントはお強請りしてるよね?
だからその尖ってる唇に・・・そっとキスをした。


その日のうちにジャスパーを出てエドモントンへ向かった。
そして翌日1番早い便で日本に帰国したのは藤本と約束した1週間ギリギリだった。



************


帰国して10日後、つくしに黙って来ていたのは成田だった。

ある飛行機の到着時間、そして入国ゲートから来る乗客の中にあの親子を見つけた。

「あーっ!類だ!類ーっ!!ただいま!」
「あはは!一樹、お帰り。時間が長くて退屈だったろ?」

「うん!もうずーっと寝てたよ。パパもぐっすりだったよ?ぼく、飛行機、キライになりそうだよ」
「そう?しばらく乗らないだろうからそのうちまた好きになるよ」

密かに帰国の時は連絡するようにって、あれからもう一度話していたから律儀に山本が教えてくれたこの時間。俺は「小さなライバル」の出迎えに来た。もちろんこれだけが理由じゃない。
山本は山城を退職する決心をしたらしい・・・そのことで話があった。


「これ、渡しておく。話がついてるから行ってみたら?転勤は国内限定・・・悪くないと思うけど」
「・・・いきなりすごい会社への招待状だな。しかも花沢の紹介で?俺にそんな価値があるかな」

「さぁ?やってみないとわかんないけど。策士だから重宝されるんじゃないの?でも忠告しとくけど花沢に仕掛けないでよ?」
「ははっ・・・あんたみたいな人間に牙向けないよ。自分が怪我するからな」

渡した書類は道明寺ホールディングスの系列会社の資料。
俺の名刺と共に差し出すだけで採用は確実。司を通じて下話も済ませてあるから、この先山本が困ることはないだろう。


「それにしてもなんで俺にここまでするんだ?憎いだろ・・・?」
「前にも言ったじゃん。あんたの事は絶対に許さない。でも一樹がいるからね、それだけ」

何のことかわかんない一樹は俺の片腕にぶら下がって遊んでる。
それは5歳の子供の無邪気な笑顔だった。

「一樹、つくしが喜ぶからたまに遊びにおいで。でもその時はパパは留守番だよ?それか、また動物園に連れてってやるよ」
「ホント?つくしちゃんのお弁当食べられる?」

「ははっ!つくしがいいの?お弁当がいいの?そんな言い方したら拗ねちゃうぞ?」
「だって両方大好きだもん!」


苦笑いの山本とはここで別れた。
「またねー!類」・・・一樹の声がロビーに響き渡った。


************


そして2ヶ月が経った。


つくしは花沢から来る使用人頭の加代と数人の教師に毎日語学と経営学を習い、少しずつパーティーなどにも顔を出して正式発表の下準備は着々と進められた。

両親が帰国した時には一緒に食事をして、父さんにもつくしを会わせた。
初めこそ緊張したようだけどそのうち笑い声が絶えなくなり、母さんとつくしはそれこそ親子みたいに会話が盛り上がって、最後の方はほとんどが俺の悪口だった。

「もう入籍だけ済ませてるけど、絶対に披露宴は日本とフランスでやりますからね!つくしちゃん、もっとお肌に磨きをかけるわよ?いいわね?」
「え?いや、そんなことまで・・・類はこのままでいいって言ってくれてますから」

「何言ってるの!ダメよ、油断は禁物よ?いつだって類をドキドキさせるぐらいじゃないと長続きしないわよ?」
「えぇっ!そ、そうなんですか?」

すっかり姑気分の母さんがつくしに変な事ばかり言って困らせて、真面目に考えてるつくしはアタフタして落ち着かない。それを見て父さんまでが笑い出した。

「父さんは今でも母さんにドキドキしてんの?」
「そりゃそうさ。母さんは毎日違う一面を見せてくれるぞ?俺の中では太陽だから輝きを失うことはないな」

「あら!あなたがいてくださるから輝けるのよ?1人で輝いたって何も育たないもの。まぁ・・・うちにはちょっと変わった子が育っちゃったけどね。だからつくしちゃんももっと輝きましょうね!」

「は!はい、頑張ります!」
「ぷっ!意味分かってんの?つくし」


花沢家に新しい太陽がもう一つ増えた日・・・笑いが絶えない夕食は遅い時間まで続いた。


*


今日もマンションに帰るとつくしの料理と笑顔が待ってる・・・そう思うとエレベーターのなかで既に顔が笑ってる。

最上階についたらすぐにドアを開け、まずはいい香りを楽しむんだ。
そして聞こえてくるパタパタというスリッパの音、そして弾けるような笑顔の彼女がエプロン姿で迎えに来てくれる。

「ただいま、つくし。今日もいい匂いがするね。お腹が空いてたんだってここで思っちゃうよ」
「お帰りなさい、類。もう支度できてるよ。今日はね、お赤飯だよ?」

「赤飯?なんで今頃?いいことあったの?」

「うん・・・まぁ、ね!」


その言い方で・・・あれ?って思った。

まさか・・・まさか?うそっ・・・!ホントに?


「ね、つくし、もしかしてさ・・・」
「うん、もしかして、だよ。これはきっとね・・・」


つくしが言ったんだ。
俺達の間にやってきた天使・・・それはあの日の「雪の結晶」の生まれ変わりだと・・・。








fin.


WUHVX9G8.jpg
3ヶ月に渡りお届けしました「雪の結晶」、これで終了させていただきます。
明日は後書きとSS「LOVE LETTER」を予定しています。

暗いお話で申し訳ございませんでしたが、最後にほんわかしていただけたら嬉しいです。
応援、ありがとうございました。
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2018/04/17 (Tue) 00:24 | EDIT | REPLY |   
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2018/04/17 (Tue) 00:35 | EDIT | REPLY |   
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2018/04/17 (Tue) 00:35 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、今晩は。

はい、無事に終ることが出来て良かったです。途中どうしようかと思いましたが(笑)
こういうエンドだけは始めから決めていたのですが、当初は雪の中の結婚式で終りでした。
一樹の話がどんどん増えていったので、随分変わったんですけどね。

類と一樹の会話は元々一度も考えていませんでしたので、あの辺りから8話分ぐらいは全部変更でしたね(笑)
でも、意外とこの2人の会話は良かった・・・お気に入りです。

本当にいつも応援して下さってありがとうございます。
次回作はちょい類君がクールです。でも、やっぱりほんわかと終りたいので頑張ります!

良かったらまた遊びに来て下さいね!待ってまーす!

2018/04/17 (Tue) 01:16 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: お疲れ様でした

ないない様、今晩は。

終っちゃいましたねぇ・・・。なんやかんや言って95話(笑)

おっかしいなー?60話いくかな?って思って始めたのに・・・。これがプロット崩れまくりの結末(笑)
ま、私の記録は「向日葵」の”初期設定の2.5倍”ですからこのぐらいじゃ驚かなくなりましたけど。

道明寺にしたのはですね、何となく類君と司君ってやっぱり何処かで最後は繋がってそうな気がしてて。

嫌味の応酬しようが殴り合おうが、この2人は再会したら無言で飲んでそうなイメージがあるんですよ。なんでかなぁ?
それが総ちゃんだとあきらなんですが、原作がそんな感じだからかな・・・。いや、美作でもいいんですけどね(笑)
西門じゃないことだけは確かです。樹に出来る仕事がない(笑)

新しいお話しに移るときが一番緊張します。

今度の話も長くなりそうな予感・・・短編が超苦手です💦

お気に召すかどうかわかりませんが21日から連載開始です。宜しくお願いします。

2018/04/17 (Tue) 01:31 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: 違っていたらすみません

tc様、今晩は。

コメントありがとうございます。先日は現地のことも教えていただきまして嬉しかったです。

あはは!実はエドモントンを省略したのですが・・・マズいですか?さくっと直してきました。
エドモントンを経由するともう1日かかるようなので、それだとなにかしら説明が要りそうな気がして(笑)。
お話しが長引きそうな気がして手を抜いてしまったわ(笑)

そうそう、tc様にはわかりますよね。すみません・・・確信犯でした(笑)
大きな国は難しいわ・・・今度から日本限定にしよう・・・。

でも、ご指摘いただいてありがとうございます。
丁寧に読んで下さってて嬉しいです。

応援、ありがとうございました。

2018/04/17 (Tue) 01:33 | EDIT | REPLY |   
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2018/04/17 (Tue) 04:08 | EDIT | REPLY |   
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2018/04/17 (Tue) 07:58 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ミキッp様 こんにちは~!

コメントありがとうございます。
長い間悲しい部分が続いていたのでヤキモキされたんでしょうね。申し訳ございませんでした。
最後のほうのイチャイチャで少しは気分も上昇してもらえたかな?ふふふ!

この結婚式はずーっと書きたかった場面で、本当は二人っきりだったんですけどね。
それでもお気に入りのシーンになりました。

で・・・え?このあとですか?
今は終ったばかりで浮かんでこないんですけど、そのうち何か案が降りてきたら書きますね。

いつも素敵な詩をありがとうございます。
そう感じていただけたら私も嬉しいです。

次のお話しも頑張りますが、どうだろう(笑)最初の方の類君は暗いのでどう受け止められるかが心配です。
良かったらまた遊びに来て下さい。

今日はありがとうございました。

2018/04/17 (Tue) 11:54 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

みわちゃん様、こんにちは。

コメントありがとうございます。
はい!なんとか終りました~!明るいつくしちゃんに戻ってこれからは楽しく暮らしてくれると思います。

そうそう(笑)憎めないでしょ?
彼にも頑張っていただきたいです!新しい会社で一から出直し、いい人見つけて幸せになって、
一樹にも兄妹が出来て、それを類に見せに来る・・・そんな未来を想像しています。

え?書けって?(笑)

私のお部屋、番外編だらけですね!困ったなぁ(笑)

まだ、リクエストに答えてないものがあるので先にそっちかな?
頑張りますのでこれからも宜しくお願いします。

2018/04/17 (Tue) 12:02 | EDIT | REPLY |   
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2018/04/17 (Tue) 13:58 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は!

はい!何とか無事に終りました。
ぶっ飛んだ類君が多い私ですが、こんな類君もいるのよ?とわかっていただけたら嬉しいな♥

番外編で樹とつくしのデートを書こうか・・・と、いう計画は今の所ございませんが、
何かと気になっております。
一樹と類の闘いも面白そうだし、女の子を誕生させて一樹が妹のように可愛がるのもいいなぁ!
(本当は何も考えていません)

次の類君は無愛想ではありますが、エンドはほんわかとしたものにしたいと思っております。
そうね・・・無愛想なんですからさとぴょん様の好きなシーンはでてくるかどうか。
出ないと怒られるんでしょうから前向きに検討したいとは思っています。

これからも応援宜しくお願いします。

体調、気をつけてね?マジ、心配・・・。

2018/04/17 (Tue) 18:06 | EDIT | REPLY |   
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2018/04/17 (Tue) 23:32 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・こんにちは。

はい、前向きに頑張っております。
投入なしでいいのなら・・・非常に助かりますがそうもいかないようなので。


で、それって働いてた時、花粉症の子がしてました。
息苦しいんですよね~!でも、知らない人には見せたくないよね(笑)

もう治りかけですか?早く良くなるといいんだけど・・・。

私はこれからですかね(笑)
何となく昨日より酷い。治るのに時間がかかるからイヤなんですよね~💦

もしかしたら黄砂かも・・・私のいる場所、黄砂が酷いんです。外が黄色い・・・。
外に出るのが嫌な季節です。天気はいいのにねぇ・・・。

お互いに頑張りましょうねっ!

2018/04/18 (Wed) 10:42 | EDIT | REPLY |   

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