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武田家を出てから和真に断りを入れて青山の宝飾店に向かった。

「総二郎様、今度は何ですか?また何方かに贈り物ですか?・・・最近は少なくなったと思っていましたがまた遊び心が復活ですか・・・困りましたね!」

「何言ってんだよ。別に贈り物じゃねぇよ・・・約束してたの忘れてたから買いに行くだけだ。煩いから仕事中に立ち寄ったとか親父に言うなよ。まだ時間あるだろ?次何処だっけ?」
「次は仙台から支部長がお見えになるのでご一緒に昼食、その後はホテルで取材、それが終ってから本邸に戻ります。時間は20分ぐらいしか余裕がございません。お急ぎ下さいね」

「了解!」


店の前で車を待たせて店内に入った。着物で来るなんて始めてて、店員達はそれだけで大騒ぎだ。

ここの店は西門とは関係なく俺が個人的に利用しているところで自分のもの以外買ったことはない。和真が『贈り物』なんて言いやがったが女にアクセサリー買ったことなんて一度もなかった。
さっきの”円相”じゃねぇがリングやネックレスは”永遠”や”束縛”を意味する・・・そんなもの、まだ誰にも贈ってなんかなかった。

「まぁ、西門様・・・麗しいですわねぇ!初めてお着物でお越し下さいましたのね。写真で見るより素敵ですわ!」
「あぁ、ありがと。そんなことよりさ、急いでピアス見せてくれ。仕事中につけられるシンプルな物・・・あ!出来たら揃いのネックレスのある物がいいな」

店長がいくつか見せてくれた物の中からティファニーの1粒ダイヤモンドの「バイザヤード」を選んだ。そこまで派手じゃないし。
もう一つは薔薇を象ったピンクダイヤのピアス。どっちがいいかわかんないし時間がなかったから両方買った。

しかも、ネックレスも・・・なんて咄嗟に言葉に出してしまった。
束縛したいのか?俺があいつを?・・・マジで?いや、そういう訳でも・・・なんて店員が準備する間に1人で悶々としていた。

チラッと横目で見てしまったのは誕生石のコーナー。
何となく近寄って12月を見たら、そこにあったのはタンザナイトのチェ-ンピアス。髪をあげた時はやっぱり耳元で揺れるものがいい・・・そう思ったら今度は別の店員を呼んで尋ねた。

「これって男物ある?揃いの物が欲しいんだけど」
「ございますわよ。あら・・・!タンザナイトって・・・そういう事ですの?」

「・・・余計な詮索しないでくれ。そんなんじゃねぇよ」


別に牧野と俺が同じ12月生まれで誕生石が同じだからって・・・深い意味なんてねぇし。
ついでに入り口近くで展示ケースに飾ってあったものも買って、急いで車に戻ったら和真が痺れを切らして鬼のような顔で待っていた。

「3分の遅刻です!もうっ・・・遅れたら仙台市部長が東京駅でウロウロしてまた私が怒られます!時間厳守でお願いします!」
「・・・ホントにお前、こういう仕事が入ったら機嫌悪いよな。ほら、これやるから機嫌直せ!」

和真にさっき入り口で買ってやったクロムハーツのクロスボールをポンッ!と投げたら急に大騒ぎ!いい年した男が涙眼になってそれを握り締めてるからはっきり言って気持ち悪いっての!

「えっ!これを・・・これを私に?あの、これって1番人気のヤツじゃないですか!いいんでしょうか!」
「あぁ、だから約束どおり今の買い物は黙っとけよ?」

「総二郎様ーーっ!!」
「だからっ!俺はその気はねぇから抱き付くなっ!命令だ、離れろっ!それ以上近寄ると辞めさせるぞ!」

今度はものすごい勢いで飛び退いた。こっちは30過ぎのゲイに何の興味もないってんだ!
たかが50万ほどのネックレス・・・これで機嫌良く働いてくれるならそれでいいんだ。そこに愛なんてねぇからな!

このあと機嫌の良くなった和真が全部仕切ってくれてスムーズに仕事は進んで、牧野の稽古の時間に俺は本邸に戻ることが出来た。


「えっ!牧野が有休?今朝、出勤してきただろう?なにがあったんだ?志乃さん」

戻ってから着替えて稽古に行こうとしたら、志乃さんが伝えてきたのは牧野が有休を取って昼過ぎに帰ったって事だった。
さりげなく着物の袂にピアスの袋なんてものを入れていた俺は今までどうやって渡そうかと考えていたのに、一気にそれがぶっ飛んでしまった。

「何でも具合が悪いみたいで机に伏せたまま起きなかったらしいですわ。今までが元気すぎるから心配ですねぇ・・・。何があったのかしら。それとも身体の具合が悪いのかしら。総二郎様はご存じないんですか?」

「・・・いや、そこまで詳しくは知らないけど・・・。そっか・・・帰ったのか」

「総二郎様、そういう事ですから何かお仕事があればそちらをして下さいませね。明日、出てくればいいんですけどね」


志乃さんが牧野のマンションの方を見上げてる。
俺は急に空いてしまった時間、何もする気にならなかった。


**********


夜になっても牧野の事が気になって仕方ない。
マンションを見たら電気がついてるから部屋にはいるんだろうけど、失恋のショックで何も食えねぇとか?もしかして、あの牧野が泣いてるとか?まさか・・・西門を辞めるとか!

「・・・仕方ねぇな、行くか」

調理場に行ってそこにいた料理人に「残り物でいいから1人分包んでくれ」と頼んだ。
数人がかりですぐに弁当のような物が作られて綺麗に風呂敷に包まれ、それを受け取って牧野のマンションに向かった。

目の前だから正門から出て歩いて3分もかからない。片手に風呂敷を持ってエレベーターに乗り込んだ。


ここまで来たけどどう言えばいい?
具合悪いのか?って言えばいいのか・・・それにしてはこんな豪勢な弁当抱えて来てるけど大丈夫か?

あきらの事、やっぱり忘れられないって言われたらどうする?無理矢理忘れるのには新しい恋だろ?・・・そんなクサいセリフは死んでも言えねぇし!いや、牧野の方がそんな事言ってなかったっけ?

色んな事を考えながら牧野の部屋の前に立つ。
何でこんなにドキドキするんだかわかんねぇけどポケットの中に入れたピアスのケースをグッと握り閉めてインターホンを鳴らした。

「はーい!ちょっと待って下さーい!」


ん?何でそんなに元気なんだ?

俺は牧野がぐったりして出てくるものとばかり思っていたから、その元気のいい声に逆に驚いて慌てた。

え?何が起きたんだ?そんなに元気なのになんで昼で帰ったんだ?

カチャ・・・っと開いたドア。
その中から出てきた牧野を見て驚いた!


「なっ・・・どうしたんだ!お前・・・何だ、その髪!なんでそんなに切ったんだよっ!」
「え、何でって・・・気分転換?似合わない?」

今まで胸の辺りまであった髪が顎のラインでばっさり切られてて、まるで子供みたいな牧野が現われた!しかもいつものトレーナーと短パン!
綺麗な髪だったのに・・・昼間に小百合の長い黒髪を見て、牧野の方が綺麗だけどなって思ったばかりなのに!

「いや、似合うとか似合わないとかじゃなくて・・・なんて言うか、その・・・お前のいいところって髪ぐらいだったのに!」
「えっ!なんて失礼な事言うのよ!よく探しなさいよ!他にもあるわよ、いいとこぐらい!」

「なんでいきなり・・・まさか、髪切るために半日有休取ったのか!」
「そんなわけないでしょ?本当に具合が悪かったのよ。事務長に聞いたらいいじゃん。そんなところに立っててもなんだから入って?お茶ぐらい入れるわ・・・って、お茶ならもう飲みたくないか!あはは!」

やけに明るい牧野はそう言って俺に手招きして部屋に入れてくれた。
・・・入れてくれた?ここ社宅だったよな・・・西門名義じゃねぇか!


「適当に座ってて!ソファーあるけど私、慣れないからいつもラグに直接座ってるんだけど。ねぇ、西門さん、珈琲メーカー使える?ここの最新だからよくわかんないの。教えてくれない?」

「はぁ?お前、ここに住んで結構経つのにまだ使えねぇもんがあるのかよ!」
「あはは!珈琲自体あんまり飲まないもの。ごめんね、ほらほら!早く!」

仕方なくキッチンに行って珈琲メーカーの使い方を教えて、結局教えるって事を利用して俺が入れる羽目になった。

「カップ出せよ。牧野はどうすんだ?ミルク入れるならマグカップにしろよ」
「はーい!ミルク入れないと飲めないよ。ありがとう、西門さん」

「いいけどよ・・・」


そして2人でラグに座って珈琲を飲んだ。
ハッと気が付いて西門の弁当を出したらすっげぇ嬉しそうにしたけど、晩飯は済んだって事で明日の朝飯にするらしい。ニコニコしながらキッチンに運んでテーブルの上に置いて、また戻ってきた。


「で?西門さん、どうしたの?なんで来てくれたの?」
「・・・いや、牧野が飯作れないほど具合悪かったらいけないと思ってさ・・・料理長に頼んで作ってもらったんだ」

「えぇっ!病人が食べるような量でも中身でもなかったよ?あんなに豪華なのに病人食なの?」
「うるせぇよ!わかんなかったんだから仕方ねぇだろうが!」


お前が泣いてると思ったからだよ・・・いつものように元気にさせたかった。
ただそれだけだけど、その言葉は自分の中に呑み込んだ。




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2018/04/15 (Sun) 12:21 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

るいか様、こんにちは!

あっはは!和真・・・苦い思い出ね?
いいじゃないですか!なかなか味わえないことですから!

そうねぇ・・・どうやってくっつけましょうか。
楽しみに待ってて下さいね~まだ、もう少し先だけど。

一応全員出てくるけどあの2人にも恋しちゃう?あはは!終んないじゃーん!
それに総ちゃんが可哀想だよ~💦4人のうちラストに選ばれたらプライドがズタズタだよね(笑)

もう色々落ち着いたかしら?連載始まるのかな?
お仕事も大変そうだから無理せずに頑張って下さいね!

今日はコメントありがとうございました。

2018/04/15 (Sun) 16:34 | EDIT | REPLY |   
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2018/04/17 (Tue) 12:52 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は!

あはは!いくら使ったか?そうねぇ・・・でも調べながら書きましたけど、総額で200万でしょうか?
そんなに高くないです。
でも、渡してるのはピアスだけ・・・あとはどうしたいんでしょうねぇ(笑)

当然そうちゃんはネックレスの意味を知ってるけど、つくしちゃんはわかんないでしょうね。
いつ渡すのかなぁ・・・残りのもの!ふふふ!

でもいいなぁ・・・12月の誕生石ってトルコ石とかラピスラズリとかあるけど私はタンザナイトが好き。
で、私は1月生まれなんでガーネットなんですが・・・あんまり好きじゃない。
茶色っぽい赤なんだもん。もう少し爽やかな色が良かったなぁ・・・。

さとぴょん様はなんですか?

あ!双眼鏡はね・・・まだ先の話(笑)お楽しみに~!

2018/04/17 (Tue) 18:14 | EDIT | REPLY |   

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