plumeria

plumeria

週末、隼人さんと飲みに行くことにはしたけど、やっぱり服は必要だよね。
西門さんに買ってもらったドレスはあるけど、あれはあの日を思い出す・・・だからまだ着たくなかった。
あんな高級なお店には行けないけど何処かで適当に大人っぽい服を見つけようと思って仕事が終ってから表参道の方に出向いてみた。

「数ヶ月間のお給料で貯めたお金・・・これが服で消えてもいいのかしら。はぁ・・・返事なんかしなきゃ良かったなぁ」

ブツブツ言いながら歩いていたけど、私が買えそうなお店なんてない。外から見るだけでとても店内に入る気にはならなかった。
こんなお店、いつかみたいに私1人が入っても知らん顔するか迷惑そうな顔するんじゃないんだろうか。
あの時は西門さんが一緒だったから相手をしてくれただけでさ・・・卑屈な自分に溜息をつきながら進んでいたら、ドンッ!って誰かにぶつかって蹌踉けてしまった!

「きゃっ!ちょっと、何処見て歩いてるの!」
「あ・・・ごめんなさい!」

「あら?あなた・・・西門さんの・・・元お花屋さん?」

「・・・・・・はい?」

ぶつかった人はすごく派手で美人なお姉さん・・・上手な化粧に女らしいボディラインで、確かに何処かで見たことがあるような?
しかもお花屋さんって・・・いつの話よ!もう数ヶ月前だよ?

でも、その花屋ってフレーズでこの人のことを思い出した!

「あっ!あの、宝飾デザイナーのえっと・・・桜子さん!」
「あら、私の事、知ってて下さったの?ふふっ!そう、三条桜子って言います。こんな所でなにしてらっしゃるの?お買い物?」

「え?あ・・・そ、そうなんですけど、実は全然お店がわかんなくて、はは・・・」

ニコッと笑ったその顔・・・あの時も思ったけど本当に綺麗な子だよね。
これで私の1つ下・・・不公平って言葉を思いっきり感じる瞬間だった。足の長さなんて全然違うんじゃないの?それはヒールのせいなのかしら?
私がマジマジと見るもんだから今度は不思議そうな顔になって「何かついてます?」なんて言って腰を捻る。
その動きがいちいちセクシーで、真っ赤なルージュと真っ赤なネイルがツヤツヤと光っていた。

「なんのお店を探していらっしゃるの?一緒に見ましょうか?私、今日はもうお仕事終ったし」
「え?いいえ、大丈夫です。わかんないからもう帰ろうかと・・・慣れてないからダメですね、こんな場所は」

「あら、慣れてないなら尚更1人は無理でしょ?付き合いますわよ?西門さんには内緒なの?」
「えっ!え、えぇ、内緒です・・・」


だって西門さんには話してないんだもん。
ダメだって言われた隼人さんとのデート・・・言ったら怒られそうだし。

「もしかしたらお洋服でも選びに来たの?いいお店知ってますわよ?行きましょうか?」
「で、でも、予算があんまりないんです!高いところには・・・」

「あら、そんなに気にするようなお値段じゃございませんわ。行きましょう!」

いや、ちょっと待って!あなた達が気にしないって一体いくらなのっ!私の感覚とは0が3つぐらいは違うよね?
私の事は全く無視して、この桜子さんは腕を引っ張って何処かの高級ブティックに入っていった。
豪華なシャンデリア、美人の店員さん、ずらりと並んだ色とりどりの服。隅にはアクセサリーやバッグまで。その中でも新作ってコーナーに連れて行かれて私の身体にドレスを当てていった。


「これなんかどうかしら・・・でも、胸が合わないわね。じゃあこっちは?・・・あら?ウエストが無理?うーん・・・困ったわね」
「・・・あの、やっぱり私にこういうお店は・・・」

「あら!これは?ティーンズみたいだけど大人っぽいわ!」
「あっ!ほんとだ」

桜子さんが見つけてくれたのは鮮やかなブルーのワンピース。レースアップのリボンがついてて二重のフレアスカートだった。
可愛いんだけどどことなく大人っぽい部分もあって私も気に入った。でも、問題はお値段・・・チラッと見たけどこのお店の中では安い方なんだろうと思う。
桜子さんが言うにはティーンズドレスだからだそうだ。

これなら私のお財布からでも払える。今まで貯めたお金がすっ飛んで行くようだったけど思いきって買ってしまった。

「アクセサリーは?今しているのは小さいでしょ?見てみます?」
「ううん!西門さんが買ってくれたのが・・・!あ、いや、持ってるのがあるから・・・それで」

「・・・そうなの?ふふっ、わかりましたわ」

このドレスにも合うよね?
美作さんとのデートの時に買ってもらったもの・・・お揃いのネックレスもあるし。大体隼人さんとのデートにそこまで力入れなくてもいいんだし。
・・・っていいながら、こんな高いドレス買う自分の行動に頭を抱えてしまう。やっぱり背伸びしてるじゃん・・・って。


「牧野さん、でしたわね?お茶でもいかが?お時間はあるの?」
「時間はいいんだけど、もうお金がないの。だから今日は帰ります。また節約生活しなくちゃ!・・・桜子さん、ありがとう!」

「心配しなくてもお茶ぐらいご馳走するわ。さ、行きましょう!」
「は?え?・・・あの、ちょっと!」

家元夫人麗華さんもそうだけど、お金持ちっていうのは人の話をほとんど聞かない。疲れたから帰りたいんだってば!それなのに結局桜子さんに引っ張られて今度はお洒落な喫茶店に入った。

ここで桜子さんは珈琲、私はまたもケーキセットを用意された。今日のおすすめ、抹茶のロールケーキ・・・抹茶ね。


「西門さんに聞きましたのよ?西門流で働いていらっしゃるんですってね。どう?・・・西門さんは」
「は?西門さん?どうって?」

「あら!何とも思わないの?あんなにセクシーな男性が手の届くところにいるのに見てるだけなの?」

その一言にブハッ!とミルクティーを噴き出しそうになった!
「ちょっと!汚いわねぇ!」なんて言って仰け反るけど、あなたが変な言い方するからでしょう!

「見てるだけって・・・そりゃ見るだけでしょう?他に何するの?一応私のお師匠様だし、あの家の跡取りでしょう?セクシーかもしれないけど私の事は下着姿を見ても何とも思わない人だもの。手が届いたって何もありません!」

「下着姿?お見せになったの?」
「着物の長襦袢よ。初めは彼が着せてくれてたから」

えぇ、しかもノーブラの状態を見られてるけど顔を赤くもしなかったわよ?すごく冷静に「ブラしてていいぞ」って言ってくれたけど、それが何か?
心の中での独り言・・・聞こえてるわけでもないのに桜子さんはクスクス笑っていた。


「それに最近、お見合いしたもん。・・・ホテルで初めて会った時もお見合いだったけど、今回は西門で綺麗な女の人とお見合いしたのよ」
「あら、お見合いなんてお仲間うちでは西門さんが多分ダントツだと思うわ。私の知ってるだけでもう20回ぐらいはしてるわよ?そんなのは関係ないのよ。彼からしたらお見合いも仕事の一部みたいなもんじゃないのかしら?」

「仕事?・・・仕事だったら抱き合ったりもするの?」
「え?抱き合う?・・・西門さんがお見合いで?」

ここでもしまった!って思った。
なんでそんなことを知ってるのかって言われたら答えられない。でも、桜子さんは西門に来るわけじゃないからいいか・・・って思ってそれ以上は言わなかった。ただ、少し不思議そうな顔をしていた。


「へぇ・・・どういう事かしらね。西門さんがそんなことするなんて」
「・・・でも、普段も飲みに行ったらそういう事、してるんでしょ?そこにいる適当な女の子と・・・あ、朝までとか」

「最近は聞かないわね。みんな不思議がってるわ。西門さんが女遊びやめたって・・・私はてっきり・・・」


今度は桜子さんの方が口を塞いだ。てっきり?・・・てっきりってなに?


その場を2人ともが誤魔化すように彼女は珈琲を、私はケーキを口に中に入れて「美味しいわね」なんて言い合った。でも、珈琲カップを手に持ったまま桜子さんの方がボソッと言葉を続けた。

「西門さんってわかりにくい人なの。あの綺麗な笑顔の下に誰にも見せない本当の自分がいるんだと思うの。それはあの長い歴史に縛り付けられた茶道の家を継がなきゃいけないって重圧と、やたら多い決まり事と口煩いおじ様連中に従わなきゃいけないっていう息苦しさ・・・なのかなぁ?って思うんだけどね。自由な羽がないのよ・・・あの人達」

「あの人達?」

「えぇ・・・大企業のジュニアって呼ばれても、所詮は羽をもぎ取られた鳥みたいなものって・・・そう思うときがあるわ。西門さんはその中でも特に狭い籠に入れられてる気がするのよね。でも、それを隠すために夜の街では派手に遊んでるって感じ?天邪鬼だからね」

「でも、家元夫人やお家元にはそんな感じはないよ?明るくて・・・仲良しだよ?」

「後援会や分家筋、長老って人達がいるでしょう?そっちがすごいのよ。それに家元夫人は気さくな方だけど、元々家柄が申し分ないはずだから誰も何も言わないんじゃない?」

・・・そうなんだ。
桜子さんってよく人を見てるんだなぁ。こんなに見た目は派手で今時の子で、お洒落にしか興味がないみたいなのに。


「でも、西門さん・・・見つけたんだと思ったのに」
「え?なにを?」

「・・・いいえ、何でもないわ」


この後、少しだけ女同士の話をした。久しぶりに楽しかった。
桜子さんは時々お茶しましょうよ、なんて言って名刺をくれた。「代表取締役社長 三条桜子」・・・格好良すぎる。

このお店を出た時はもう暗くなっていて、桜子さんは三条家の車を呼んで、私をマンションまで送ってくれた。


「それではまた今度、楽しく飲みましょうね!」
「はーい!ありがとう!・・・・・え、また今度?」

私の最後の一言は彼女には聞こえなかったんだろう、車はマンションの前から走り去った。


桜子さんが言った「西門さんが見つけたもの」って・・・なんだろう。
随分前のその一言がずっと頭の中に引っ掛かっていた。



love3.jpg
関連記事
Posted by

Comments 2

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/04/23 (Mon) 23:41 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは。

桜子はそうなんですよ。完全にそう思ってるんです。
じゃあ一言ぐらいその日の話をすればいいじゃん!って思うところではありますが(笑)

決戦の土曜日・・・どうなるんでしょうね。
総ちゃん大ピンチ?いや、つくしちゃんが大ピンチ?もしかしたら初めて出てくる類が大ピンチ?(笑)

楽しみに待っててください。あははっ!

2018/04/24 (Tue) 11:50 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply