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学生寮の部屋は意外と広かった。
資料でも見ていたけど1人の部屋が15畳ぐらいあってキッチンも広い。バストイレはもちろんセパレートだけどそこも広くて普通のアパートよりずっと設備は良かった。
シャワーもあるし、トイレは自動洗浄機能付き、洗濯機も完備とあったけど乾燥機までついてる。

「はぁ・・・さすがセレブ大学だけどすごいなぁ!こんなとこ普通に住んだら10万超えじゃない?学生寮って確かまだ他にもあったよねぇ?ここだけなのかしら・・・?じゃあ、当たった私はラッキーなの?」

部屋の中央には先日送ってあった私の荷物がポツンと置かれていた。
その段ボールを開けて日用品とか洋服とかを出したけど、この部屋のクローゼットが埋まるわけもなく隙間だらけ。いかに自分が何も持ってないかって事を思い知った。

そして何故か2つずつ揃えた食器・・・。
別に彼氏が出来たら使おうなんて思ったわけじゃなくて、友だちが出来たら部屋に来るかもしれないじゃない?その時のために今から準備したんであって、変な意味は全然ないの。

「たとえ色がピンクと水色に綺麗に別れてても、それはわかりやすくするため。決して私がピンクで彼が水色とかって希望を持ったわけじゃないんだから!」

誰もいないのに茶碗に向かって喋る独り言のなんて虚しいこと・・・。


荷物の中にせっかく入れていたカーテン。
それなのにもう綺麗なカーテンが掛かっていて、上品なレースのカーテンもお揃いの模様で取り付けられていた。

「なんだ、私のよりよっぽど綺麗じゃん!本当に何も要らなかったのね。すごいなぁ・・・でも、助かっちゃう!」


そこの窓を開けて外を見たら、大学が少し離れた所に見えた。
歩いて10分くらいって書いてあったからこんなものか・・・って思いながら景色を眺めていた。結構緑も多くて素敵な場所・・・下を見たら車を持つ学生も多いのか駐車場があって、よくわかんないけど高級そうな車が並んでいた。
軽自動車なんて1台もない。少し離れた特別なガレージのような場所には白い綺麗な車が輝いてた。

「うそっ!あの車も学生のもの?じゃないよね・・・管理人さんのかな。外車?・・・私なんて免許ないから関係ないけど」


ベランダに出て手摺りに寄り掛かって、今度は空を見上げたら、すっごく天気が良くて気持ちいい・・・。

思わず手摺りから離れて両手を挙げて背伸びをした!

「うーーん!気持ちいいーーっ!いいことありそう・・・っ!太陽って最高っ!」


クスッ・・・


あれ?今、何処かから笑い声みたいなものが聞こえなかった?
キョロキョロっと周りを見たら、左隣のベランダから人が室内に入るのがチラッと見えた。

その後ろ姿・・・茶色の綺麗な髪が見えたけど背の高さと髪の長さからして男性?左隣は男性なのね?
笑ったのは今の人かしら。やだ!・・・声出して背伸びしたの、見られたのかな。

端っこまで行って身体を乗り出してみたけど、ここは隣とベランダが繋がってない。だから部屋の窓さえ見えなくて諦めて身体を戻した。

まぁ、いいや・・・見られたものは仕方ない、と自分も部屋に戻った。


**


荷物を片付けていたら挨拶用のお菓子が出てきた。
両親が「せめて両隣には挨拶しなさい」って持たせたもの。今時こんなことしないし、学生寮だって言ってるのに強引に荷物に入れられた。
でもその気持ちも無駄に出来なくて、仕方なく後で挨拶に行こうと思って玄関に置いた。

「さてと・・・とにかく買い物に行かなくちゃ!今日の晩ご飯の準備が出来ないしね。大学の入学式は来月の5日だから・・・スーツ出しとこ。えっと、スーツ・・・スーツは・・・あれ?」

どこを探しても入学式に着ていくスーツが見当たらない!まさか・・・実家に忘れた?
取りに帰ろうかと思ったけど部屋の片付けの方が先だ。入学式にはまだ日にちがあるし・・・カレンダーを見ながら考えていたら思い出した。

「あ!家を出る最後の方でスーツだけを別の紙袋に入れたんだっけ。じゃあ実家の玄関付近にあるはずだわ。よしっ、じゃあ買い物ね!」

念のため実家に電話してみたけど誰も出ない。
まぁ、捨てることもないだろうし慌てなくても大丈夫だろう。たいして気にもせずお財布を持って元気よく部屋を出た。


1階まで降りて門を出たら数人の女の子がウロウロしてる。
手にはスマホ持って、みんな上の方を見てソワソワしたりニヤニヤしたり・・・すごく異様な光景だった。

何が見えるんだろうと思って私も振り返ったけど何も見えない。普通にドアが並んでるだけだけど?
そんな彼女らを守衛さんが「ここで待たないように!移動して、ほら早く!」って怒ってる。それでも女の子達はそこを動かなかった。
こんな怖い顔のおじさん相手によく無視できるなぁ・・・そんなにいいものが見えるんだろうか?もう一回振り返ったけどやっぱり見えるのは寮の通路とドアだけ。私には騒ぐ原因がさっぱりだ。

「変なの・・・よく、わかんないや!」

私まで守衛さんに睨まれてるような気がして急いで買い物に走った。


**


そして買い物から帰って来たら守衛さんの努力なのか女の子達はいなくなってた。
でもまだ憮然とした顔で門の前に立ってて、私はその横を軽く頭を下げて通った。寮生なのになんで頭下げるのかわかんないけど、そのぐらい守衛さんの顔が不動明王の如く恐ろしかったから!

重たい荷物を持って階段を上がって、鍵鍵・・・なんて探したけど、よく考えたらここはカードキー。お財布に入れたんだったと、そこから出して玄関を開けた。
そしたらシューズボックスの上にさっきのお菓子の箱があるのが目に入って、それを先に済ませてしまおうと思って手に取った。

私は302号室だ・・・近づくなといわれた301号室を後回しにして303号室に行こうと思った。
だから私のすぐ横の端っこの部屋、そこが301号室だと思って反対側に行ったら・・・そこが301号室になってた。

「あれ?なんで?・・・ここって3階の真ん中だよね?なんでここが301号室?って事は・・・?」

端っこの部屋の前に行ったら303号室になってる。
ん?って思ったけど、深く考えずにインターホンを鳴らした。

でも、誰も出ない・・・つまりまだ入居してないのね?じゃあ、いいかって事で今度は問題の301号室の前に立った。

チラッと奥の方を見たら確かにドアはある・・・何となく気になって見に行ったらそこには何号室の表示はなかった。
その奥のドアにも同じように何も表示がない。


『決して301号室には入らないこと。訪ねて行くことも厳禁です。いいですか?』


事務長の言葉が何処かから聞こえてくる。
でも引っ越しの挨拶だし、お菓子渡して挨拶するぐらい怒らないよね?そう思って勇気をだしてインターホンを鳴らした。

ほんの少し待ってたら誰かの足音が聞こえて、ガチャとドアが開いた。


「あれ?君、さっきの・・・どうしたの?」
「あっ!ここ?・・・ここがお友だちのお部屋ですか?あの、ご挨拶にお菓子持ってきたんですけど」

「お菓子?ここのヤツに?・・・プッ!ちょっと待ってて」

出てきたのは私が来た時に出会った2人組のうちの1人、少し髪の長い優しそうな彼のほうだった!
何故か吹き出しながら笑って、そのまま奥に引っ込んだ・・・あれ?私、何か変なこと言ったっけ?


1度閉まったドアがもう1度開いて、出てきた人はびっくりするほど格好いい・・・日本人離れした顔の男の人だった!

その人は今まで見たことがないぐらい綺麗な目をした人。薄いグレーのセーターとジーンズで、細いネックレスが光ってた。
少し薄い色の瞳・・・柔らかそうな髪の毛、背が高くて脚が長くてモデルかと思うようなスタイル。

そして無表情なまま無言で私の前にスッと立った。


「隣の302に入った牧野つくしと言います。これから宜しくお願いします。これ、つまんないものですけど食べて下さい!」

そう言って両手で差し出したお菓子の箱、それをジッと見て彼は言った。


「ごめん・・・要らない」


そういってバタン・・・とドアは閉まった。


・・・・・・はい?なんだって?要らないって?
私は差し出したお菓子の箱を持ったまま、唖然としてその場に立ち尽くした。




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2018/04/23 (Mon) 09:18 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ゆきたろう様、こんにちは!

ほほほ、そうですね。拍手コメにもございました・・・。謝っただけでもマシ(笑)
イメージ的には一言「いらない」バタン!ですよね!

でも、一応類君のお話なんでこれからは喋るじゃないですか。
だからそこまでイメージ通りの反応してたら(笑)話が書けなくてですね。
もともと私の類はお喋りですからねぇ・・・。

ふふふ・・・意外な行動に出てくるのでお楽しみに!

2018/04/23 (Mon) 10:56 | EDIT | REPLY |   
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2018/04/23 (Mon) 23:50 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは。

あはは!一言でもインパクト大!
こんな冷めた類の登場初めてで笑えるんですけど!
(この前まで暴走してたから余計にっ!)

その部屋には・・・危険人物が後日来ます。
坊ちゃんじゃありませんけど(そりゃそうだ!)

この辺でももう引っ越しのご挨拶なんてないんですよね。
でも、娘がアパートに入るときには大家さんにお菓子を持って行きました。
引っ越しの日が大雨でお菓子の包装紙がずぶ濡れでねぇ(笑)
渡すときに恥ずかしかったです。

本当はつまらないモノですが・・・って言ってはいけないんですよね、確か。
だけど思いっきりテンパって、「つまらないモノですが!」って親の私が言いました。残念・・・。

2018/04/24 (Tue) 11:57 | EDIT | REPLY |   

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