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花沢さんから何故か怒ったような口調で説教されて、恵子から変わってもらったバイトはキャンセルすることになった。
そしてスーツを買いに行くって言って黙って車を走らせてる。

今からどこに行くのかわからないけど、どうやらこの先は青山?そんな場所で買えって言われてもお店なんて知らないしお金も持ってないし・・・でも、口を開いたらもっと怒られそうだったから私も黙って助手席のシートベルトに捕まっていた。

急に花沢さんはスマホを出してどこかに電話した。運転中なのに・・・って言いたかったけど言えない。
見て見ぬ振りして反対側の景色を見ることにした。でも、耳に意識が集中してる・・・塞ぐのも変だしなぁ、なんて考えていたら誰かと話し始めた。

「俺だけど、今そっちに向かってるんだよね。うん・・・そう、俺のじゃないけど。裏・・・開けてくれる?」

何の会話?すごく無愛想に言葉を出して、その一文だけで電話を切ってしまった。
まさか彼女のところ・・・とかじゃないよね?でもそのぐらい親しい人に話す言葉遣いだったけど・・・。あ!彼女がブティック勤務とか?そこでお買い物するから安く買えるとか?そうなのかも!

「あんた、なにブツブツ言ってんの?俺、彼女とかいないから」
「えっ!声に出てた?今のこと?」

「思いっきり聞こえたよ。彼女がブティック勤務とか・・・想像力豊かだね」

その後の気まずいこと・・・絶対に喋らないと心決して、出来るだけ息を止めていた。


滅多に来ないような街の中に入っていくと、車は一本中の道に入ったみたいで表通りから遠ざかった。そしてお洒落なビルの前に来ると減速して更に細い道へと入った。
その裏道に入った途端出てきたのは1人の上品な女の人。丁寧なお辞儀をして手を差し出して、花沢さんはその差し出された手の先のガレージに車を停めた。

何だろう・・・ここにはお店に入り口らしきものはなくて裏側みたいだけど?


「着いたよ。降りて」
「は、はいっ!・・・ってここどこ?」

「入ればわかる・・・いや、わかんないか」
「どっちなのよ・・・」

さっきの女の人が裏口みたいな扉の前に立っていて、私たちが向かうとそこの扉を開けてくれる。小さな声で「いらっしゃいませ」と、言われて中に入れられた。
そこはまるで従業員の通路みたいなところで売り場じゃないんだけど、花沢さんはスタスタと、まるでいつもそうしているかのように歩いて行った。
そしてある部屋まで来ると自分でそのドアを開けて入って、そこにあったソファーに座った。

「しばらくお待ちくださいませ。店長が参りますわ」
「ん・・・急でごめん」

「とんでもございません。お越しいただきましてありがとうございます。花沢様」

・・・なに?また何の会話?この人そんなにお金持ちなの?いや、英徳の学生ってだけで大半はセレブだけど、こんなに特別扱いされるものなの?そういえば車も外車だもんね・・・。

「ぷっ!」
「はっ・・・また聞こえた?また何か言ってた?」

「いや・・・特別扱いか。そうかもね・・・騒がれるのが嫌なだけなんだけど」


しばらくしてやってきたのはすごく美人な人で歳は40ぐらいかしら・・・。でもプロポーション抜群でお洒落な人だった。店長さんが来るって言ってたからこの人が店長さんなのね?

「類様、お久しぶりですわね。お母様はお元気ですか?」
「ん、元気にしてるよ。今はアメリカに行ってるみたい。忙しそうだよ」

「さようですか・・・ほほ!会社の方も好調なご様子、何よりです。今日はどうされましたの?」

ここで店長さんはちらっと私の方を見た。でも、その時の目は花沢さんに向けたものとは違う・・・少し冷たいものだった。
私の頭からつま先までサラッとその目が動いて何かを確認してるみたい。感じ悪る・・・私の顔が歪んだ。

「この子に大学の入学式で着れるスーツ、持ってきてやって?色は・・・何色がいいの?牧野」
「は?え?・・・ここでスーツ買うの?お店じゃなくて?」

「ここは店の裏・・・表にいけば立派なブティックだよ」
「うそっ!そうなの?」

「そうですわね・・・こちらのお嬢様なら濃紺がお似合いかと思いますわ。主流は黒ですけどそれだと少しお顔の感じと合わないかと。中のブラウスを薄めのブルーのフリルタイプにして、細くていらっしゃるからフレアスカートなどいかがでしょう。タイトよりもお似合いと思います。すぐにご用意いたしますが日にちの関係で既製品なりますが宜しいのですか?」

既製品じゃなかったら何になるの?まさかオーダーメイド?!そんなの3万円じゃすまないでしょうっ!

「うん。仕方ないね。いいでしょ?牧野」
「も、もちろん!大丈夫です!」

店長さんが部屋を出て行ってから数分後、数名のスタッフさんらしき人がいくつかのスーツを持ってきて並べて、店長さんがそれを私に合わせていく・・・お値段が気になるんだけど何故か値札ってものがない。
聞いたらいいんだろうけど聞く勇気がない。私の背中に汗が流れていくんだけど・・・。

そして私の意見は全然聞かれないまま花沢さんと店長さんが「これにしましょうね!」って決めてくれたのはすごく可愛らしい濃紺のスーツだった。
触った感じが私の買ったものとは全然違う・・・これって、これっていくらなのーーっ!!

「それでは靴は・・・?」
「牧野足のサイズは?」
「23.5」
「じゃあそれで」
「かしこまりました」

えええーーっ!今、なにげに答えたけど私、靴まで買う余裕はないんだけどっ!しかも今からバイトで稼がなきゃいけないのに!
慌てて店長さんにお値段を聞こうとしたら、花沢さんの方が先に答えた。

「ねぇ、これ・・・いつものようにしておいて?この子には3万円って言ってあるから」
「・・・・・・はい。わかりましたわ。いつものように・・・で、ございますね」

えっ!ホントに3万円なの?これで?

2人を同時にキョロキョロと見てしまったけど何食わぬ顔して淡々と作業は進んで、あっという間に高級なケースに入れられたスーツが用意された。それを店長さんが車まで運んでくれて、これでお買い物は終わったらしい。


「ありがとうございました。またお越しくださいませ。お嬢様、素敵な大学生活を送ってくださいませね」
「はい、ありがとうございます!」

こうして、何が何だかわかんないうちに私の入学式用スーツが手元に来た。いや・・・今はまだ買ってもらったって感じだけど。


***********


「あの、このスーツ本当に3万円なの?どうみてもあの店長さんの態度見てたら違うような気がするんだけど?」
「3万円って言ったでしょ?だからそれでいいし、いつでも構わない。卒業するまででいいよ」

「え!そんなわけにはいかないでしょう?えっとね・・・バイトが4月から3つ入ってるからお給料がどうしても月末になるの。それでもいい?もしかしたら3ヶ月かかるかもしれないけど」

「・・・いいけど、そんなにバイトするの?夜中まで?」
「ううん、曜日によって違うだけ。遅くても9時までかな・・・深夜はやらないわ。それに1日に2つも掛け持ちしたら倒れちゃうよ」

「勉強は・・・牧野、何学部なの?」

帰りの車の中で牧野が指を折りながら何かを計算してる。
それを横目で見ながら運転していた。どうやらバイト代の事みたいだったけど3つも同時にバイトをするって聞いて驚いた。

「こう見えて実は外国語学部で特待生なの。通訳になりたいのよね!仕事で海外に行けるなんて夢みたいでしょ?小さい時からの憧れなのよ~!」

「・・・・・・そう?日本が1番いいよ?」
「え?花沢さん、海外に行くこと結構あるの?今までどこに行ったの?」

「数えてないけど50カ国ぐらいかな・・・?もっとあるかも。子供の時からでしょ?親が連れて行きたがるからね」
「・・・・・・」

あ・・・やっぱり黙った。口、開いたままだ。
想像したとおりのリアクションに思わず笑ったら、ハッと我に返って口元を押さえてる。

「50カ国って・・・そんなに国名言えないかもしれない、私」
「そう?行けば覚えるよ。でも言葉は覚えてないよ?さすがにアフリカの言語とかはね。外国語学部なら分かんない事があったら教えてやるよ。いつでもおいで?特待なら成績落とせないんだろ?」

「え!花沢さんも外国語学部なの?」
「まさか。5カ国語喋れるから今更だよ。俺は国際経済学部」

「・・・・・・」

あ・・・また黙った。


ぷっ!なんだか面白い。どうしたんだろう・・・俺、今日よく喋ってる。




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2018/04/30 (Mon) 17:34 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんばんは!

いや、行ってるかもよ?アマゾンの奥地とか。
子供の時の夏休みの自由研究でアマゾンに生えてる植物の採集とかね!
アフリカの砂漠でサソリを探すツアーとか(笑)
アラスカで雪の結晶の撮影とか!

50カ国・・・私は7カ国行ったぞ!フランス、イギリス、スイス、イタリア!って書くとお洒落だけど、
マレーシアでは迷子になってインド系の人混みに混じって大変な目に遭いました。
シンガポールでは銃を突きつけられたしね。あきらみたい(笑)

その台詞ね(笑)
最後まで書いて読み直したら類がすごく喋っていたから足しました(笑)
「どこが人と付き合えないんだ?すっげー喋ってるよ、この類・・・」って。

2018/04/30 (Mon) 21:54 | EDIT | REPLY |   

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