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plumeria

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もうここに来てどのくらいたつんだろう。
総二郎からお茶を習い始めてから半年近くになるのかなぁ・・・
全然上達なんてしないんだけど、お茶の事はまだわかんないんだけど
それでも総二郎の住んでる世界に少しでも触れたくて・・・こうして頑張ってるんだけど。

時々わからなくなる・・・
私はここに居ていい人間なのかどうか、総二郎の側にいていいのかどうか。

家元も家元夫人もとてもよくして下さる。
お弟子さん達も、職人さん達も可愛がって下さる。
私の居場所は確かにここにあるって言うのはちゃんとわかってる。

でも・・・何かわからないんだけど、ここから出て行くようにと私に話しかけてくる声がする。
その声はどこから聞こえるんだろう。

確かにあの声は前にお茶室で聞こえてきた声だ・・・
総二郎が無理矢理私を連れてきたって・・・そう言ってきた声だ。

誰なの?その声の人は・・・

月の綺麗な夜にそんな事を考えてたら総二郎が横に来た。
また、この人に余計な心配をかけてはいけないから・・・咄嗟にお月見だと嘘をついた。
本当に月は綺麗だったんだけど、自分に起きている不可解な事を考えていたなんて言えなかった。

ちょっとだけ愚痴をこぼしたら笑って慰めてくれた。
そしてそんな私に総二郎がキスをくれる・・・とても優しいキスを。


******


唇を離して、牧野の顔を見たら今日の家元な話をまた思い出した。
もうすぐこいつを正式に俺のフィアンセとして公表できる・・・次の正月には願いが叶うかもしれない。
そう思うと自然と顔が緩んだ。

「もう寒くなってんだから上着くらい着とけよ。それじゃなくてもこの家の作りは冷えるんだから」

「じゃ、もう部屋に入るよ。・・・ねぇ、総二郎」

牧野は立ち上がると俺の方に向き直った。

「どうかした?」

「前みたいに・・・手を広げてよ・・・おいでって言ってよ」

牧野の言葉に驚いて、俺の方が固まってしまった。
今までは俺が言えば寄ってきてたのに、なんで今牧野の方からそんな事を言うのか・・・
ここは母屋だから、前みたいに誰もいないって訳にはいかないから
牧野に手を差し出してやる事は確かに少なくなってたんだけど、それが寂しかったってのか?


「悪かったな。最近サボってて・・・来いよ、牧野」

前みたいに両手を広げてやると嬉しそうに腕の中に入ってきた。同じように肩に頭を乗せて眼を閉じた。

「お前、ここが安心するって言ってたのにな。ごめんな」

「うん。やっぱりここが一番いいよ・・・」


明日の明るい時間にきちんと報告しようと思ったけど、このまま言ってしまおうか
少しでも早くこいつの不安や寂しさを取り去ってやれるのなら・・・

「牧野・・・家元がさ、次の正月にお前を正式に俺の相手として後援会に公表していいってさ・・・。
俺はその話をもちろん受けるけど、お前もいいよな?さっき話したお袋の着物も、西門の紋を入れた着物だ」

「・・・え?お正月にって?」

「そう。俺の横にお前を座らせるんだ。家元夫妻と並んでな。それって・・・そういう意味だ。これは俺が頼んだんじゃない。
家元からの許しが出たんだ。もちろんその後に何か言うヤツがいたら戦うのは俺だからお前は心配しなくていい。
前から話してたことが現実になるだけだ。今度からは違う稽古が始まるけどな」

「違う・・・お稽古って?」

「今からは準備ももちろんだけど、家元夫人の仕事を手伝わないとな。ただの付き添いじゃなくて・・・
俺も最近家元の代行を始めたばかりだ。2人で少しずつあの人達の後を継いで行こうな?」

牧野はただ泣きながら俺の腕にしがみついていた。
なぁ。牧野・・・ちょっとは安心したか?俺は絶対にお前の前からは消えないから・・・

その半乾きの髪を撫でながらしばらくの間、こいつの体温を感じていた。


本当に肌寒くなってきたので俺の部屋に戻った。
すっかり冷えてしまった身体をホットミルクなんていう子供の飲み物で暖めてる。
さっきまでの甘い雰囲気なんてもうどこかに忘れてしまったんだな?・・・それも、いかにも牧野らしい。


「総二郎、もうすぐお誕生日だよね。何か欲しいものある?お買い物一緒に行こうよ」

「あぁ・・・そういえばそんな日がくるな。俺は何にもいらないけど、お前と出かけるのは久しぶりだな」

「じゃ、今度お仕事のない日に行こうね。楽しみにしてるから!」


そんなの、休みなんて事務所に言わなきゃ取れないっての。
お前が行きたいならいくらでも休みいれてやるよ。そのぐらいしか今はお前にしてやれないからな。


******


そして、今日は久しぶりに仕事のない日曜日。約束どおり二人で買い物しようと出かけていた。
もちろん一方的に俺がこいつに買ってばかりのデートだけど、それが楽しくて顔が緩んだ。

「俺はお前がいたらいいから何にもいらないの。それよりさ、ほら!これもいいんじゃないか?
似合うと思うけどな!あっ、こっちもいいよなー!俺としちゃこれくらい色っぽいヤツ着て欲しいよなー!」

「総二郎の欲しいもの聞いてるんだよ?私の服なんて気が付いたらいつも部屋に届いてるじゃない!
それも、思いっきりそっちの好みの服がっ!」

「いいじゃん!そうしたいんだから。彼氏の気持ち無視しちゃ、バチが当たるぞ」

そう言って、ムッとしている牧野に服を当ててみては怒られた。

昼飯は牧野の好きなイタリアンの店に行って、最後のデザートまで思いっきり楽しんだ。
ついでにその店でクリスマスディナーの予約を取った。

「そういえばさ、俺3日は仕事が入ってるから東京にはいないんだ。前の日から大阪の方に行くんだけど
お前、一緒に来るか?」

「大阪?そうなんだ・・・でも、私は家で待ってるよ。3日のうちに帰ってこれる?次の日になる?」

付いてこないんだ・・・ちょっとガッカリしたけど仕方ないよな。強制はしたくないから。

「寂しいだろうから、3日の夜には戻るよ。そんなわけだから俺の誕生日なんて気にすんなよ?
まぁ、志乃さんにしっかり稽古でもつけてもらえ」

「ひっどいなぁー!もう一人で着れますー!結構上手に帯も結べるようになったのよ?知らないの?」

「二人の時は俺が結んでんだから、お前がやったの見たことねーもん」

「そうでしょうよ。解く方が得意のエロ門だからね!でも解きにくい結び方だって出来るもん!」

「バカだな!そんなの尚更他のヤツに解いてもらわないといけないんじゃね?それって俺だろ?
なんなら俺の着物の解き方も覚えとくか?つくしちゃん!」

ふん・・・お前が少しは言えるようになったって、俺には勝てないって。真っ赤になって言葉を探してるようだけど。


けど、こうやって笑い合って、話し合ってると本当に心の中が暖かくなってくる。
自然体で笑うなんて昔じゃなかったから・・・わざわざ「西門総二郎」を作らなくてもいいんだって。

照れくさい言葉を口にしても、嘘じゃない分この俺が本当に照れてしまうんだから。
あぁ、マジで俺、今までで一番楽しんでるかもしれねーな・・・


「どうしたの?総二郎・・・すごく幸せそうに笑ってるけど、いいことあったの?」

「目の前に幸せが座ってるからな!」


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2017/04/05 (Wed) 14:04 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

Sさま、またまたこんばんわ~!

来いよ・・・何て言われたらもう、体当たりしますよっ!私はっ!
書いてて、ニヤニヤしちゃうわ~!
時々考えるんですよね、ド真剣に。
私は総二郎の腕と、類の腕ならどちらを取るのかと・・・。

今さならがらCP絞れば良かったか?いやっ!選べないっ!
我ながらアホだな~って思いながら・・・。

ドンドン今から闇の中へとご案内します。
ソロソロキマスヨ・・・

2017/04/05 (Wed) 20:44 | EDIT | REPLY |   
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2017/04/06 (Thu) 08:58 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

花様!きゃーっ❗恥ずかしい‼

でも、よく一気読みされましたね?
来ていただいてマジで嬉しいです‼

なんだか類つくの方がみたら蹴りを入れられそうなお話になっておりますけど。恐いですか?
多分、これからが本番ですから!

そろそろクレーム覚悟で書いてます❗

なんて、言ってますがそんなに大したことが書けないので
なんだこれ?って終わるかも。

もし、良かったらまた、来てくださいね🎵
私もお邪魔しますから!

ありがとうございました‼

2017/04/06 (Thu) 09:28 | EDIT | REPLY |   

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