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とうとう来てしまった土曜日・・・その日は朝からぼーっとしていた。
隼人さんとの約束は7時。このマンションまで迎えに来てくれることになっていた。だから支度はお昼からで大丈夫。それにこのデート?にそこまで力なんて入んない。特別なことはしない・・・ましてやエステや美容院なんて。


珍しく朝ご飯が喉を通らない。
ほんの少し昨日もらったお惣菜を口にしながら珈琲だけ飲んで、またベッドにダイブした。

幼馴染みが揃うって言ってたなぁ・・・美作さんが教えてくれた人達かしら。えっと・・・世界を飛び回る暴れん坊と寝てばかりの切れ者・・・だったっけ?全然想像出来ないけど。

いいなぁ、楽しそう。
西門さんがお見合いする前だったら喜んでそっちを選んだのかもしれないね。美作さんとも普通に話せたかもしれない。

「もしかしたら西門さん、みんなにお見合いの結果とか話すのかしら。今回はだって・・・成功したって事だもんね?」


机の引き出しからこの前買ってもらったピアスを出した。
今日はダイヤの揺れるタイプのものにしようかな・・・なんて気分は乗ってもいないのにそれを取りだして自分の耳に刺した。

あの時は西門さんが刺してくれたっけ。彼の指が耳に当たるからドキドキしたよね・・・その時の光景を思い出してしまう。
こんなに綺麗なピアスなのに、自分で刺したらワクワクしないのは何故だろう。


**


夕方になってこの前買ったワンピースに着替えた。
確かにそこまで大人っぽくはないけど桜子さんも納得してくれただけあって自分にはまずまず似合ってるような気はする。
レースアップの紐をギュッて絞ったらあまりにも胸がないのが強調されたから慌てて緩めたけど。

メイクはそれなりに頑張ってみた。少しだけいつもより念入りに・・・濃すぎないように、それでいて上品に、なんて呟きながら時間をかけた。

「よし・・・こんなものかな。まぁ、隼人さんと付き合うわけじゃないし。気まぐれで誘われただけだしね・・・」

同じく買ってもらったダイヤのネックレスをつけて髪を整えて、仕上げに唇にグロスをほんの少しだけ。指には何も光る物がない。残念だけどおもちゃなんてつけては行かれないから仕方ないわね・・・なんて溜息が出る。

ここまで終って全身を鏡で見た。ドレスもアクセサリーも問題ないのに、その鏡に映った私の顔だけが嬉しそうじゃなかった。


時間は6時45分・・・下で待つのも早すぎるかしら?でも待たせるよりはいいよね。
そう思って玄関に行って、これも買ってもらったパンプスを出した。10センチヒールは私を自然と背伸びさせる。
それに足を入れると何となく床が遠く見えて、自分が大人になった気分がするから不思議だ。

「今日は酔わないぞ!よし・・・今日は意識があるうちに帰ろう!」

グッと拳を握り締めて自分に言い聞かせてドアを閉めた。
飲みに行くのにこんな決心していくのは自分だけじゃないの?ってブツブツ言いながらエレベーターに乗って下に降りた。


マンションの前に出たと同時についた1台の車。
そのシルバーの大きな車は私の目の前で止まり、後部座席の窓が開いて隼人さんが顔を出した。

「牧野さん、時間厳守なんだね。それとも待たせた?」
「いいえ、まだ約束の時間前ですから。少し早めに降りただけです」

「そう?でも時間まで部屋で待ってて欲しかったな」
「え?どうしてですか?」

「そんな素敵な格好で待たれたら誰かに盗られそうで怖いから・・・って事だよ」

そんな見え透いたお世辞でも何故か顔が熱くなって、多分赤くなってる。「乗って」って言われて急いで反対側に回って隼人さんの隣に座った。
今日はラフなジャケットに薄手のセーターで仕事着じゃなかった。やっぱり首にはネックレスが光っててすごく大人・・・西門さんと2つしか違わないなんて思えないほど落ち着いて見えた。体格のせいかな?・・・西門さんほど細くないから?
それなのに私はティーンズ用のワンピース。言わなければわかんないけど流石に自分で恥ずかしかった。


「そうやってみると本当に綺麗だね。初めて見た時は学生だと思ったぐらい若く見えたのにな。そんなに君を変えてしまった男って誰だろう・・・妬けるな」

「え?な、何言ってるんですか?私は確かに失恋しましたけど、その人が変えてくれたわけじゃないです。その人、ほとんど話したことない人でしたから」

「失恋した男と変えてくれた男が同一って限らないだろ?人の心って不思議だから同時に2人の男が入ってくることだってあると思うよ?今は、そのもう1人の男の事が気になってる・・・違うの?」

「・・・そんな人、いませんって」
「じゃあ、俺が立候補してもいいわけだね?」

ハッとして隼人さんを見たら、少し細めた魅惑的な瞳で私の事を見てる。どこまで本気なのか、からかわれてるのかわからなくなって自分の手を擦り合わせるようにして動揺してしまう。
このぐらいのことでドキドキしてるのを態度に出すから子供だって言うのに・・・なにか上手くこれを交わす言葉があるはずだって思うけど頭の中は真っ白で何も浮かんでこなかった。

「急に無理なんて言わないよ。今日・・・少しだけ近づこうよ。君は時間かけて欲しそうだから合わせてあげるよ」

「は、はい。あの・・・でも、まだ恋は・・・」


そう言った途端、私の頭の中には彼の顔が浮かんだ。
今日はどこで飲むんだろう。一緒に集まる女の人って他にもいるのかしら・・・それよりも何時に帰るんだろう。

朝帰りは・・・イヤだな。

隼人さんとは反対側の窓の方に顔を向けて、店の照明が輝きだした薄暗い街が流れていくのを見ていた。


****


車が着いたのは西麻布にある隠れ家のようなバーだった。
入店には暗証番号がいるようなセレブ感満載のお洒落なお店で、入ったらすぐに席に案内されて上品な男性が「お嬢様はお預かりするコートがございますか?」なんて聞いてくる。

「いえ、ありません。ありがとうございます」
「畏まりました。軽くお食事をと聞いておりますのでご用意いたします。それまでおくつろぎ下さいませ」

お洒落なインテリアに少し暗めの照明・・・落ち着いた店内に上品な店員さん・・・すべてが私の知らない世界。
美作さんと行ったカクテルバーよりもう少し大人の匂いがするお店だった。


「どうかした?緊張してる?別に俺、牧野さんを取って食おうなんて思ってないよ?」
「あ、いいえ!そうじゃなくて。私、少し前まで普通の生活・・・いえ、それ以下の生活だったのでこんな場所に慣れなくて。隼人さんこそイヤじゃないですか?こんな場違いな私とじゃ恥ずかしくないですか?それに私、何を話していいかもわからないから・・・」

「ははっ!気にしないで?大丈夫、俺が色々聞いてあげるからそれに答えてよ。それだと出来るだろ?」
「はぁ・・・多分?」

これってこの前の私みたい。
『美作さんの事聞いてもいいですか?』・・・結局聞いたのが食べ物と色と好きな女性のタイプ。
その時に美作さんが答えてくれた事なんて、今は全然覚えてもいなかった。
好きな女性が何故年上なのか、それさえ半分ぐらいはお酒と一緒に流れていったもの・・・綺麗なお母さんと妹さんがいるっていうことだけは覚えてるけど。


このお店の奥の方がパーティー可能な個室みたい。
何人かが楽しんでいるのかドアが閉まっていても少しだけ声が聞こえていた。こんなお店なのに若い子たちがいるのかしら?
チラッとそっちの方に目を向けた私に隼人さんがいきなりとんでもない質問をした。

「牧野さん、総二郎のことどう思ってるの?」
「ぶっ!!」


えぇーっ!第1問目がそれなの?
私は驚いて飲みかけたお水のグラスを落としかけた!




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2018/04/25 (Wed) 13:47 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんばんは~!

いやん!つくしちゃん、なんやかんや言ってお洒落してねぇ!
そんなとこ見られたら超ヤバいよね(笑)
ってすぐそこに・・・?あ~!怖いっ!

でも期待通りに「ぶっ!」と吹き出すつくしちゃんが好きです。

ごめんねっ!一日2話だとたくさん打てないの💦
このぐらいが限度なので日にちがかかってしまって・・・。
(え?だれ?日数稼ぎって言ったの(笑))

ここからはドタバタ進むけど、楽しくしてるつもりなので(笑)←意味わかる?
宜しくお願いします。

2018/04/25 (Wed) 20:15 | EDIT | REPLY |   
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2018/04/26 (Thu) 12:59 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは。

そんな訳がない・・・(笑)
いや、いいの。へたれ総ちゃん全開にしてるの・・・それだけです(笑)

2018/04/26 (Thu) 18:38 | EDIT | REPLY |   

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