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plumeria

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寮に入って二日目の朝、今度は久しぶりに弾いたピアノのせいで演奏会の夢を見た。

それが大失敗に終わって控え室で花沢さんに怒られる場面・・・泣いても謝っても許してくれなくて、演奏会が終わった後なのに何回も練習させられるんだけど、いつも同じ所で失敗する私。

『あれだけ言ったよね?ドレスを買ってあげたんだから頑張れよって!それなのに間違うの?』
『頼んでもないのに買うからでしょう?いいわよ、バイト代で払うから!3万円、1回で払えばいいんでしょ!』

『何言ってんのさ!3万円なわけないじゃん!30万だって足りないのに・・・牧野のバイト代待ってたら人生が終わるよ?』
『ええっ!そんなにこのドレス高かったの?酷い・・・払えないってわかってて高いものにしたのね!花沢さんの意地悪!』

『ふん!今頃わかったの?』


・・・・・・


ハッとして・・・再び顰めっ面でベッドから起き上がった。

「・・・またこんな夢?なんでろくな夢しか見ないのかしら・・・昨日の別れ際に花沢さんに変なことを言われたから・・・?」

身体を提供するだなんて、あんなに綺麗な顔でサラッと言われてもどう反応していいかわかんないじゃない。
そんなつもり全然なかったし・・・初めは少し思ったわよ?でも、そんなのあり得ないって思ったんだもん。今まで彼氏すらいない私がそんなこと・・・って実はどういう仕組みなのかわかっていないんだけど。

でもさ・・・と、言うことは恵子はそういうバイトをしてるって事?その・・・50過ぎたおじさんと、しかも知らない人と会って話した後に、そういうコトをしてるの?
まさか・・・それを私にさせようとしたの?

自分が世間知らずなのは知ってるけど、そういうバイトはもっとお金が高いと思っていた。だから2万円って金額は本当に話すだけだと思ったんだけど。そうじゃないのかな・・・基準ってのがわかんない。

「あーっ!考えてもわかんない、やめたやめた!今日も天気がいいなぁ・・・お洗濯しよっ」


昨日の話もさっきの夢も忘れることにした。
ぜーんぶ洗い流すつもりで朝一番に洗濯機を回して、その後に朝ご飯を作った。

私は朝はご飯派。パンは不経済だし飽きちゃうけど、ご飯とお味噌汁だったら小鉢を変えれば飽きないし。珈琲買わなくてもすむし、お味噌汁は晩ご飯にも回せるもんね。

「あれ?そういえば花沢さんって朝ご飯・・・どうするんだろう。男の1人暮らしって何食べるのかな?」

炊きたてのご飯を眺めてたらそんなことを考えた。
あの人が朝からお味噌汁つくってご飯食べてるのは想像できなかったけど、昨日のお礼もあるし・・・。

時計を見たらもう8時。ここの寮は隣の部屋の音が聞こえにくいのか花沢さんが静かなのか、昨日の夜も全然気配を感じなかった。だから寝ているのか起きているのかわかんなかったけど・・・おにぎりを作ってみた。
おかずは卵焼きだけで申し訳ないけどお味噌汁もお椀に入れて、それを小さなトレーに乗せて玄関を出た。

パン派だったらどうしよう・・・「もう済ませたから要らない」とか言うかも?
でも後から取りに来たりして!初日のことを思い出して1人で笑ってしまう。


301号室のインターホンを鳴らして待ってたら、結構待たされた末にボサボサの花沢さんがすごく機嫌の悪い顔で現れた!

「うわ・・・寝てたの?ごめんなさい!お、おはよう・・・」
「・・・なに?こんな時間に」

「こんな時間って・・・もう8時半だよ?いつもこんなに寝てるの?っていうか、そんなんじゃ朝ご飯まだだよね?はい、これ!」
「・・・え?」

まだよく開いてない目で眉根に皺寄せて・・・その綺麗な指先がトレーを持った。
そして不思議そうな顔でその上のものを見てる。ようやく頭が起きたのか目を擦った後で私の顔を見た。

「これ、なに?」
「朝ご飯だよ?花沢さんが毎朝どうしてるか知らないんだけど、私は朝はご飯派なの。だからついでに作ってみたの。嫌だった?それともパンしかダメなら私のお昼にするから気にしないでいいよ?」

「・・・・・・」

あれ?なんでそんなに無表情なの?私、なにか可笑しいこと言ったかな?
この長い沈黙は何?まさか・・・おにぎり見たことないとか?卵焼き見たことないとか?そんなことないよね?

「ねぇ・・・この黄色いの、なに?」
「た・・・卵焼き」

「この茶色い飲み物は?」
「お・・・お味噌汁」

「・・・・・・」
「まさか、初めて見るの?」

そして何故か無言でバタン!とドアは閉められた。もちろんトレーは花沢さんが持って入ったけど。
私は今のやりとりが理解できなくて、一昨日の菓子箱の時と同じように301号室の前で呆然と立ち竦んだ。


「なんなの?・・・昨日の花沢さんとエラい違いなんだけど」

そして自分の部屋に戻るときに確認したんだけど、まだ303号室には誰も入っていなかった。
どうかここには普通の人が来ますように・・・そう願うしかなかった。


***********


お洗濯が終わってベランダで干そうかと思ったとき、やっぱり視線は花沢さんの部屋の方に向かった。

「ちゃんと食べたのかな。やっぱりパン派だったのかしら。余計なことだったかな・・・」

そんなことを言いながら洗濯物をパンパン叩いてハンガーに掛けていく。
ここは男女兼用の寮だからあんまり洗濯物が他の部屋から見えないようにって言う理由で、出来るだけ室内干しをするようにとの注意があった。だけどこんなに天気がいいのにそれを利用しないなんて勿体ないから張り切って外に干していた。
しかも鼻歌が出ていたみたい・・・調子よく干していたら何処かから視線が・・・。

ん?と思って横を見たら花沢さんがベランダに出てて、私の方をじーっと見ていた!

「うわあっ!なにっ!こ、声ぐらいかけたらいいのに!驚くじゃない!」

「・・・・・・さっき、ありがと」
「は?さっきって・・・朝ご飯?食べられた?」

「うん・・・ちょっと待ってて」

そう言うと一度引っ込んで、もう一度顔を出したときには手にトレーを持っていた。ここで返すの?なんて思ったけどそれを口にしてまた妙な返事が来たら悩みそうだったから、花沢さん側のベランダに近づいた。

隣とのベランダの距離は1メートルぐらいしかなかったから手を伸ばせば受け取れる。
花沢さんが片手でひょいと出してくれたトレーを両手で受け取ったら、そこにあったお皿は綺麗に何もなかった。

「花沢さん、食べられたんだね!」
「うん・・・ごめん、朝・・・頭が動かないから。何が起きたか、何を食べたかわかんなかったけど黄色いの・・・美味しかった」

「黄色いの・・・そ、そう!それはよかったわ!」
「うん・・・」

卵焼きって教えたのに。

「茶色い飲み物の中に何かが入ってた。あれも飲んだけどいいんだよね?」
「え?そ、そうね!あれはお豆腐とわかめだから身体にいいのよ?」

飲み物じゃなくて汁物・・・この人が本気で言ってるのかふざけているのか確かめるのも怖かったわよ。

そのうち花沢さんが真面目な顔して私の後ろ側を見ているのに気がついた。
ん?今度は何があるんだろうと思って振り向いたら・・・そこには私の下着が風に乗ってひらひらと・・・っ!

「きゃああぁーっ!あっ、ごめんなさいっ!天気がよかったから外で干したくて・・・見た?もしかして見た?」
「・・・見てない。ちょっとしか」

ちょっとしかってーーっ!!見たんじゃないのっ!

慌ててトレーとお皿を下に置いて、今干したばかりの洗濯物をガバッと纏めて室内に放り込んだ!そしてキョトンとしてる花沢さんをそのままにして部屋に飛び込むとバタンと窓を閉めた!

・・・心臓がドキドキしてる!まさかあんな格好いい人に自分の下着を見られるだなんて思わなかったっ!


洗ったばかりの下着をチラッと見たら・・・あぁっ!もう少し色っぽいものなら良かったのに!
真っ白のなんの飾りもないパンツとブラ・・・せめてピンクとかブルーとか・・・可愛いものなら良かったのにーっ!

「はっ・・・何も言わずに窓、閉めちゃった!・・・可笑しく思ったかしら」

そーっと・・・もう一度開けてみたけど、もう花沢さんはそこにはいなかった。


こんなので私、ここで暮らせるのかしら?



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2018/05/02 (Wed) 00:21 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは。

私の中では花沢家では味噌汁ではなくお吸い物(高級)のイメージですね。
和食自体が少ないって感じですから、つくしの持って行くような味噌汁は未経験って感じ?
多分出たとしても器が違ってるとか具材が高級とか?

黄色いの(笑)実は私は毎回焦がすので綺麗な黄色で出来ることが少ない(笑)
綺麗に作ろうと思えば結構慎重に集中しなくちゃいけないでしょ?
あれが苦手で、すぐに色んなことしながら作るから焦げるんですよ。

料理は苦手だなぁ(笑)誰か作って欲しい・・・あすさんに頼もうかなぁ(無理だけど)


類のお洗濯はそのうち出てきます。ははは!この時点では洗濯機は動いてませんね。
掃除機はお掃除ロボかな?

ぷぷぷ!やっぱりこの人、一人暮らしは出来ないみたいです。

2018/05/02 (Wed) 12:12 | EDIT | REPLY |   

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