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数日後、大学の入学式の日になった。
私は花沢さんに、今の時点では買ってもらっているスーツを出して袖を通した。やっぱりシルエットが綺麗・・・私が買ったものとは全然違う高級感。
鏡の前で何回もくるくる回って確認したけど、なんだかちょっとお嬢様になった気分!素敵な大学生活が始まりそうでウキウキした。

でも、よく考えたらここで大問題・・・。私はきちんとした鞄を用意していなかった。
ちょっとくたびれた鞄しかなくて、靴もスーツもすごく格好いいのに何故かそこだけが残念・・・。でも、仕方ないかって思って持っている中でも1番マシなものを選んで玄関に向かった。

新しい靴をそこに並べてじーっと見ると何だかここでも顔が崩れちゃう。
あの日のびっくりするような買い物の仕方を思い出してクスクス笑った。あの店長さん、私のことを「お嬢様」って言ったのよ?
その靴に足を入れるといつも買うような堅さじゃなくて皮が柔らかいっていうか優しいっていうか・・・履き心地が良くてここでも嬉しくなった。

「靴はいいものを選びなさいって言うけど本当ねぇ・・・いいことがありそう!」

さぁ、出よう!としてドアの取っ手に手をかけた瞬間インターホンが鳴ったから、驚いてすぐに開けたら花沢さんが目の前に立っていた。


「・・・返事もせずに相手も確かめずに開けてどうすんの?こっちがびっくりしたんだけど!」
「あっ!ごめん、花沢さん。あのね、もう靴を履いていたから」

「それはいいけど、じゃあ今度から誰かを確かめて開けな?危ないから」
「うん、わかった!ありがとう・・・で?どうしたの?」

花沢さんは私に何か紙袋に入ったものを渡してくれて「あげる」・・・ただ一言そう言った。
中に何が入ってるんだろうって思って覗いてみたら、白い綺麗な包み紙に包まれたものがある。それを丁寧に開けてみたら黒いバッグが入っていた。

えっ!・・・まさかさっきの独り言が隣に聞こえて、それで急いで準備してくれたの?だって5分ぐらいしか経ってないのに?!

「また、なに変なこと言ってるの?あんたの独り言が壁通して聞こえてこないし。持ってないと思ったから・・・入学祝いね」
「えっ!今度はお祝い?なんで?」

「・・・近所づきあい?・・・かな」
「・・・はい?」

しばらくそのバッグを持ったまま玄関に立ち竦んだ。
この美男子の思考回路がわからない・・・こういうのも近所づきあいのひとつ?

確かに昔は隣に住んでたおばちゃんが小学校に入学した時にお祝いだって言ってお赤飯持ってきてくれたけど。
それは長いこと一緒にいたからであって、出会って一週間経っていないお隣さんから入学祝いにバッグをもらっていいんだろうか。しかもこれ、思いっきりブランドものだし。

「あの・・・さすがにもらうわけにはいかないでしょ?いや、スーツ代は払うわよ?バイト代が入ったらだけど。でも・・・私も詳しくないけどこれってとんでもない金額のものだよね?私、こんなのは貰えないよ」

「そう・・・じゃ、ホントのこと言っていい?」
「ホントのこと?」

「それさ、貰い物なんだ。だけど使わない。ずっと俺の部屋の隅に置かれてて一度も動いたことがないんだ・・・だから使ってもらうと助かる。そういうこと」

よく見たら確かに男性が使っても良さそうなデザインのもので私には大きいけど、花沢さんには小さいのかもしれない。

「本当は牧野にはもう少し女の子っぽいデザインのものがいいんだろうけど、さすがに女物は持ってないから。使ってやってよ・・・じゃないと捨てるから」
「えぇっ!捨てるの?そんな勿体ないこと・・・じゃあ使うわよ!」

「良かった!」って、まるで自分が何かを貰ったかのように笑う花沢さん・・・その笑顔に見惚れていたら結構な時間が経ってしまっていた。
急いで行かなきゃ入学式から遅刻しちゃう!慌ててバッグを変えてドアを閉めたら、彼はまだそこに立っていた。

「ありがとう!じゃあ、行ってきます!」
「ん、行っておいで。ねぇ、俺の名前・・・さんって付けるのやめてくれない?」

「えっ?じゃあなんて呼ぶの?」
「類でいいよ」

「呼び捨て?うーん・・・じゃあ花沢類って呼ぶね!」
「類でいいのに・・・」

花沢類ってフルネームで呼ばれることに少し不機嫌になったようだけど、それを無視して手を振りながら階段を降りた。
なんて軽くて歩きやすい靴・・・ちょっと大人っぽいスーツ、そして自分には不似合いなんだけどブランドもののバッグ!

階段を降りきって意気揚々として外に出たけど、そこで異様な光景を目にして足が止まってしまった。
いつかみたいに数人の女の子がソワソワしながら立っていて、その時と同じようにスマホを手に持って上の方を見てる。そこになにがあるんだろうと思って見上げたら花沢類が頬杖ついて私の方を見ていた。

もしかして花沢類を見てるの?

彼とこの女の子たちを交互に見ていたら、今度は大きな声が上から聞こえてくる。


「牧野!早く行かないと遅れるよ!・・・走れ!」
「あっ!はーい!行ってきまーす!」

今度は私の方が見上げてそう答えたら、そこにいた女の子たちから一斉に刺々しい言葉がかけられた。

「なに?あの子・・・花沢様の何なの?どこから来た子?見たことないけど?」
「それに全然綺麗な子じゃないじゃん!なんで類様に声かけられるのよ!」
「馴れ馴れしい子。1年なの?・・・許せないんだけど!」


は?私が何かしたのかしら。花沢様って・・・類様ってなに?あの人達は学生?
このよくわからない状況に少しだけ戸惑いながら、私は大学までの道を走った。


*********


英徳大学の入学式はさすがに豪華だった。
みんな正装っていうより盛装で、これだけ上品なスーツを着ていてもどっちかっていうと地味な方・・・。
そしてほとんどが英徳の高等部から上がってきてるから知り合いだらけ。私のように外部から来た人は少ないからポツンとしてしまう。

そんな中で「牧野!」と、何処かから私の名前を呼ぶ声が聞こえた。

あれ、何処から?ってキョロキョロと見回したけど誰だかわかんない。
男子の声だったと思うけどって声の主を探していたら、ポン!と後ろから肩を叩かれた。びっくりして振り向いたら中学の時の同級生がそこにいて、昔と変わんない笑顔を見せてくれた。

「よっ!牧野じゃん。何してんの?こんなところで・・・まさかここに入学したのかよ」
「うわっ、久しぶり!陽翔(はると)じゃない!あんたこそどうしたの?ここの学生?」

それは齋藤陽翔。同じ中学に通ってた男の子で高校に上がるときに親の転勤で引っ越した子だった。
結構見た目がカッコ良くて、性格も良くて人気者。運動神経も抜群で頭もまずまず・・・本当に文句なしの子だったのに、大学生になったらもっといい男になっていて驚いた!

「あぁ。俺はここの医学部に入ったんだ。牧野もまさかここに?でもお前んち、苦しかっただろ?大丈夫なのか?」

「よくそんなこと覚えてるわね!大丈夫よ、頑張って特待で入学したから学費は免除なの。自分の生活だけなんとかすればいいからさ!良かったぁ・・・1人でも知り合いがいて!でも、医学部?そっちこそ大変じゃない!」

「ははっ!まあな・・・俺の両親、引っ越したあとすぐに離婚してさ。2年前に母さんが再婚した人が医者なんだよ。だからこれが条件・・・って感じかな。まぁ、いいんだけどさ」

「そう・・・なんだ。大変だったんだね」


女の子も変わるけど、男の子もスーツにネクタイだと少し大人だ・・・学ランの印象しかなかったからドキドキするけど、話していたらあっという間に中学時代に戻っていくようだった。

「俺、まだ引っ越しが済んでねぇから自宅から通ってんだ。この辺に越してくる予定だからそのうち飯でも食おうぜ?」
「うんうん!そうしよ?私も今はこの近くに1人暮らしだから。楽しみにしてるよ」

そう言って陽翔とは別れた。
こんなセレブ大学では誰も友達になれないかと思ったけど、たとえ男子でも知り合いがいて良かった・・・この時は本当にそう思っていた。


**


入学式が終わってから、校内放送で事務室への呼び出しがあった。
何があったんだろうと思って事務室に行ったら、2月に会った事務長さんが出てきて少し怖い顔で私の前に立った。

「牧野さん、私の言葉を覚えていますか?」
「はい?何のことですか?」

「301号室の方との接触は禁止したはずですが、あなた・・・話したり会ったりしていますよね?」

「花沢さんですか?・・・でも、花沢さんから許可もらってます。話していいって・・・」

事務長さんの顔が一層引きつって、その眼鏡の奥の目が睨み付けるように光った。

「そういう問題ではないのです。花沢様がどう言われようと、大学側が話してはいけないと言えばいけないのです!守れないのであればあの寮を退去してもらうしかないですが?」


ここでも聞かされた”花沢様”・・・彼は一体何者なの?
どうして彼と話しちゃいけないの?



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2018/05/03 (Thu) 15:15 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんばんは!

あはは!楽しそうっ!
よかったですねぇ!是非行ってくださいよ!鬼ちゃん連れて(笑)
いいなぁ、そんな計画があるだけで。

我が家は何にもないです。
娘は帰ってこないし(って来週帰るんですけどね)旦那は8連休だし。
私は13日が舞台なので少々忙しいし(パソコンも忙しいし)

なので、現在娘が帰ってきたら更新ピンチなので必死です(笑)
すぐ「何してるの~?」って来るからね!

花男知ってるから嫌なんですよ・・・バレたら速攻引退しますから。ははは・・・マジで。

花沢さんって書くの、すごい違和感なので早く変えたかったんですが、今までそんな感じじゃなかったので
やっと変えられました!これって結構ストレスなんですよ。

何故なら・・・花沢さんがよく半沢さんになっている(笑)
毎回一回ぐらいは半沢さんってなってて、それが花沢類になると起こらない(笑)
ここはマズいでしょ、さすがに・・・。

だからこれで一安心!

まだ恋は始まってないですねぇ!
ゆっくり進んでいくと思います。そんな話になるのは先ですね・・・って何話書く気だ?(笑)

2018/05/03 (Thu) 22:10 | EDIT | REPLY |   

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