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お昼時だったからリビングではなく、一緒に食事をしようということになりダイニングの方で話すことになった。

そしていつになく緊張してお昼をいただき、そのあとのお茶の時間になってから昨日の事を西門さんが家元と家元夫人の前で報告した。家元夫人は西門さんの怪我した右手を見て「商売道具がっ!」と言って嘆くし、私の足を見て「いつかの私みたい!」って笑うし・・・。
どうしてそうなったかって聞かれたら、”偶然街中で出会った”から始まり”高いヒールで足を挫いた私を見知らぬ男が介抱しようとしたので、その男から奪い取るために闘った名誉の負傷”・・・っていう作り話になっていた。

見知らぬ男って・・・花沢さんの事だろうか?
すごく適当な作り話なのに真面目に聞いて素直に納得した家元と家元夫人・・・西門さんに「よく頑張った!」って褒めてたけど。

そして本題に入ったら・・・。

「本当に?本当なの?つくしちゃん!総二郎さん・・・」
「本当だって!なんでこんなことで嘘つくんだよ。だいたいお袋が1番初めに望んだんだろうが!双眼鏡までこいつの部屋に置いてストーカー行為させて・・・とんでもない親だな!」

「・・・何のことかしら?」
「えっ!あれは家元夫人が用意したんですか?」

「それ以外の誰が考えられるんだよ!」

そりゃもう真っ赤になって顔が上げられない・・・なにがって双眼鏡で覗いていた事がお家元にバレたんだもん。それなのに西門さんの恋人になりましたって報告・・・。
まさか双眼鏡を準備したのが家元夫人だとは思わなかったけど、志乃さんはクスクス笑うし、チラッと見たらお家元は半分呆れてるし。

「あら、じゃああの部屋を出てこちらにお部屋を準備しましょうか?ねぇ、総二郎さん」
「いや、あそこはあのままでいいや。で、ここにも牧野の部屋用意してくれよ。俺の隣でいいからさ」

「なんて事言うのよ!いいわよ、私の部屋はマンションだけで!そ、そんなここにお部屋持つなんて・・・」

「あら!お部屋なら志乃さんだって持ってるわよ?」
「部屋ぐらい腐るほどあるんだから心配すんな。で、マンションもあのままだから引っ越しもなし。いいな?」

「え?あの、でも・・・私、明日から何処に帰ればいいの?マンションでいいの?」

身体は一つしかないんだからあっちにもこっちにも部屋なんてなくていいのに。それにまだ西門さんの隣の部屋とか無理だし。
絶対にそれで済むはずがないもの。私の部屋に来るか、彼の部屋に呼ばれるか・・・って事だよね?
そんなの緊張して寝られない。・・・だって、まだ、その・・・そういう関係には進んでないし!毎日今日みたいな朝を迎えるようなことになれば心臓が持たないし!


「総二郎さん・・・いやぁね!あなたって人は!」
「・・・・・・は?何がだよ」

「そういうことでしょ?マンションはそのままって・・・そんなこと考えなくても私たちは気にしませんよ?ねぇ、お家元」
「あ?あぁ・・・総二郎がそうしたいなら別にいいんじゃないかな。まぁ、そこは・・・色々とあるだろうから」

「流石親父、理解あるな!昨日はダメだったからさ」

「・・・えっ!そうなの?」
「って言うか、あんなデカいベッド用意したのもお袋だろうが!そこまで気を回すなっての。マジで引いたわ!」

「・・・何のことかしら?でも快適だったでしょ?」
「まぁな。落ちないってのは安心だもんな!」

一体何の会話をしてるのかしら、この親子は・・・!よくもそんな話を明け透けと!
ダイニングで座っていたからテーブルで足下が見えないはず・・・隣の西門さんの足を思いっきり蹴り飛ばしたら「何すんだよっ!」って怒鳴った。

家元夫人もここまで話しておきながら急にお茶を啜るし、家元もコホン!と咳払いをして腕組みをする。私だけが眉間に皺を寄せて隣を睨み付けたけど、軽めのウインクで誤魔化された。


「で、今後だけど・・・」

急に西門さんが真面目な声を出して2人に話しかけた。

「牧野のことはどういう手順で公表だ?記者会見・・・それとも文書?ホームページだけで報告じゃダメか?」
「・・・それなんだが」

今度はお家元と家元夫人が顔を見合わせた。
私の眉間の皺は続いていたんだけど、今度はその態度を見て西門さんまで顔を歪めた。何だろう・・・今度は何が問題?
西門さんも何か思い当たるのか一緒になって腕組みをして家元をじーっと見てる。誰も喋らなくなって部屋の空気が重くなった。


「やっぱり爺さんか!」
「・・・まぁ、そういうことだな」

爺さん?爺さんって誰?何処の爺さん?私だけが意味がわかってないから3人の顔を交互に見て眉間の皺が倍になった。
その時、腕組みを解いた彼がテーブルの下からスッと手を伸ばしてきて私の片手をギュッと握ってくれた。

ドキッとしたけど・・・温かくて落ち着く。
『大丈夫、守ってやるから』って昨日の言葉が思い出された。

すぐにその手は恋人繋ぎってのになってる。でも、西門さんは知らん顔して痛めた右手で頬杖なんてついてるし。
何だかそれが嬉しくなって今度はコツンと彼の足を蹴ったつもりが、お家元が「痛っ・・・」って言ったから焦って動きを止めた!

それを見て西門さんが「お前・・・馬鹿か!」って言った。
えぇ・・・多分、西門流のお家元の足を蹴った女は日本中探しても私ぐらいでしょうよ。


***********


西門流には現家元がトップにいるわけだが、実はそこよりも裏で権力握ってる「長老」が何人かいて、その一番上には親父の父親、つまり先代の家元がいる。
俺の爺さんで現在は京都で楽々隠居生活をしているが西門流のあらゆる最重要項目にはこの爺さんの許しが絶対条件。

始めからわかっていたがやはりここでも牧野の事をまずは爺さんに認めてもらわなくちゃいけない。
それはどうやら避けられそうにない。これには親父やお袋の根回しも無駄・・・説得には協力してくれるだろうが自分達で体当たりするしかなかった。

って事は、最低限俺の半東ぐらいは出来なきゃいけねぇ・・・本格的に茶事の稽古を始めるしかない。


爺さんが頷いた後は後援会の連中の説得。これは牧野に好意を持ってくれている人間も多少はいるから時間をかければ問題ないかも知れない。それに牧野の後ろ盾となる人物が必要だと言うこと。これもお袋が必死になって探すだろう。

一般家庭から西門に入るとなれば初めてのことだ。誰もがそこを突きたくなるし、反対論を出すヤツはまた何処かから新しいお嬢を持ってくるとも限らない。
牧野には「見合いが来ないようにするためには恋人が必要だ」とは言ったが、見合いじゃなくてもわざわざライバルを登場させる可能性は十分にある・・・そのぐらい面倒な家だからな。


「1度爺さんに会わせるか・・・って事は稽古しなきゃな。絶対牧野に茶を点てさせるだろ?」
「そりゃそうだな。それでは仕事はどうする?事務をしてもらってるんだろう?」

「そうねぇ・・・この際事務所は西村さんにお任せしてつくしちゃんには本格的に茶道をしていただきましょうか。どうせ、事務所はそこまで人がいなくても大丈夫でしょう?西村さん、つくしちゃんのおかげで庭師さんと将棋してるぐらいだから」

「えっ!時々事務長がいなくなっていたのは将棋しに行ってたんですか?」
「・・・ほほ、まぁ、ほら!腰痛が酷いから」

全然説得力なし。初めから必要ない事務員を雇うから西村さんの仕事がなくなったんじゃねぇか!
不思議そうな顔してるからお袋の前だけど全部話してやった。

「あのな、お袋は初めっからこうなることを期待してお前を無理矢理の西門に引き留めたんだ。本当は社員だって急募でも何でもなかったし、実は西門には社宅もねぇの。あそこは建ったばっかりの新築マンションだ。で、速攻お袋がお前を住まわせるために一部屋買ったんだよ。でも、なんでかって言われたら困るから社宅だなんて言ったんだ。双眼鏡のことはもうわかっただろうけど、実は昼飯もお前と俺をくっつけようとしたお袋の企みだ。俺よか先にお前に一目惚れしたんだろうよ」

「えっ!社宅じゃないの?」
「ほほほ、実はそうなの~。面白いもの、たくさん見えたかしら?」

聞いてやるなっての!俺の半裸や抱擁シーンしか見てねぇんだから!
「まぁ、それなりに・・・」なんて牧野も赤い顔して答えるな!全く、この2人は・・・!

社宅のことも知らなかった親父はここでも訳わかんなくて難しい顔をしていた。
ま、お袋の性格は知り尽くしてるから問題はないが自分だけがこの謀に参加してなかったのが面白くなかったんだろう。

すぐに本題に戻り、今後の稽古についての話し合いになった。

「総二郎、私たちは反対はしない。つくしさんが来てくれればこの西門流も新しい、時代に合ったものに変わるかもしれん。だが、忘れてはならないのは継いでいかなくてはならない大事なものもあると言うことだ。西門として後世に残さなくてはならないものをしっかりお前達2人が繋いでくれるのなら問題はない。まずは明日からつくしさんに稽古をつけなさい。それといろんな方々が認めてくださるまでは正式な婚約者ではなく、候補の一人になる。早く落ち着きたいならそのつもりでしっかりとな」

「そうねぇ・・・私のお仕事にもつくしちゃんに同行してもらいましょう。この私の側にいるということはそれなりの立場にいるという”お知らせ”みたいなものもあるのよ?まずは女性を味方につけましょう!何処の世界も殿方より女性の方が本当は強いのですから!」

両親の言葉に2人で頷いて顔を合わせる。
まだ不安そうな目をしてるけどこいつなら根性出してついてくるだろうと信じてる。それを繋いでる手の力を強めることで伝えた。

これで報告は終了。
両親の前だけど牧野をひょいと抱きかかえた。それを見て志乃さんが急いでドアを開けてくれて、また両親は呆れ返った顔を見せたがそれはそれで面白い!

「じゃ、病院に行ってくるわ」
「きゃあぁーっ!自分で歩けるって!あっ・・・お家元、家元夫人、今後とも宜しくお願いします!」

「はいはい!足が治ったら覚悟なさいね?今までのようにはいきませんよ。総二郎さんも手当てしてもらってね」
「総二郎、今後はお前にも厳しくするからな!」

「あぁ、わかってる。大事なもんが出来たからな。牧野の事、宜しく頼む。親父、お袋・・・ありがとう」


散々小細工したはずのお袋が泣いてる。
でも、ドアを閉めたら「バンザーイ!」って声が聞こえて俺は牧野を抱えたまま転けそうになった!


「なんか・・・驚いちゃった。反対されるかと思った」
「だから言ったろう?驚くって・・・まぁ、これからの方が大変だ」

「うん・・・頑張る」

いつもの廊下を牧野を抱きかかえて先に自分の部屋に向かった。
渡したかったもの・・・それを早く牧野につけたかったから。




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2018/05/11 (Fri) 14:49 | EDIT | REPLY |   
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2018/05/11 (Fri) 15:08 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様 こんばんは。

喜んでいただけて嬉しいです!
やっとここまで来ましたが、そうなのです・・・ラストは「爺さん」です。
この爺さんさえ倒せば勝利ですねっ!

事件って感じのものは起きないのですが、少しだけ邪魔が入りますよ?
でも、楽しく進んでいく話なのでまったりと読んでいただければと思います。

いよいよ、終わりが・・・(まだだけど)近づいてきました!
最後まで応援宜しくお願いします!

2018/05/11 (Fri) 23:29 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんばんは!

笑っていただけました?家元夫人(笑)
このお話の家元夫人、楽しいでしょ?書いててホントに気が楽です~!

ははは、ちょっと家元の足を蹴るのは強引でしたかね?
どうしても書いてみたかったのですが・・・まぁ、西門家のダイニングがそんなに狭いのか?って方が気になる所ですが。
ここを誰も指摘しないので助かったわ・・・(笑)

バンザーイ!って聞こえた瞬間、総ちゃんが転けたら楽しかったですが、そこはF4ですから堪えないとね。
大事な人、抱えてますから。

爺さんが片付いたら終わる・・・はず(笑)
この爺さんも曲者だったりしてっ!

もう少しだけお付き合いくださいませ。
コメディにしちゃ長編ですよね(笑)大丈夫かな・・・こんなんで。

2018/05/11 (Fri) 23:36 | EDIT | REPLY |   

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