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plumeria

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「花沢類、自分だけの速度で生きてきたでしょ?後ろを見てよ!追いつかなくて走ってる私がいたでしょ?」


大学で言われたこの言葉は当たっているだけにかなりショックだった。
独りっ子のせいにはしたくないけど使用人に囲まれて育ったからそれを振り切りたくて、いつもみんなを置いて黙って行きたいところに進んでいくようなことをしていた記憶がある。

それをいつも叱ってくれたのはお婆さまだった。

『あなたが寂しい思いをしているのはわかるけど、それでも人は1人では生きていけないの。表情のない大人に見えるかもしれないけど感情は誰にでもあるのよ?類がもう少し心を開けば相手の表情が違って見えてくるかも知れないわよ?』

優しいお婆さまの声は頭には入ったけど、それを実行することが出来なかった。
俺はやっぱり屋敷中の大人を振り切って、見ないようにして暮らしてきた。もちろん・・・両親のことも。

俺のこの部分を指摘してくれた人はお婆さま以来かも知れない。
幼馴染み達は基本個人プレー、干渉しないのがルール。踏み込むところと入り込まないところを無意識に判断してるから。


「そろそろいいかな・・・10分経った」

車から出て寮の入り口に向かう。
俺が戻ってきたらいきなり姿勢を正して頭を下げる守衛。彼の目の前に行って立ち止まったら逆に驚いてアタフタし始めた。
歳は父さんよりは少し下かな。こんな年齢の人が俺みたいな若造に怯えるように接するだなんてどんな気分だろう。

それをさせてしまう花沢ってブランド・・・俺にとって枷のようでしかなかったけど今の状況ではこれを利用するしかなかった。

「あんた・・・何でもかんでも大学に報告すんの、止めなよ?些細なことは見逃した方が自分の為だよ?」
「は?い、いえ!私は自分の仕事として言われたことをしているまでですから!」

「・・・そう。でも、賢くなきゃその仕事、失うことになるよ?」
「はい?」

「よく考えて報告しな?それだけ・・・」

真っ青になってたけどこれも報告かな?この男が頭のいい奴だったら助かるけど、バカ正直だったら墓穴掘ったかな。

エントランスから入って階段を上がっていく。踊り場から覗いてみたら守衛の男の姿はもう何処にもなかった。
やっぱりバカ正直の方だったか・・・この連絡はおそらく大学を経由して花沢にいくんだろうなって思いながら部屋に戻った。

そしてすぐにベランダに向かったら牧野はそこに立っていた。「お待たせ」って言っただけなのに赤くなってる。さっきまで隣に乗っていたのになんでその反応?
俺が両手を広げたらキョトンとしてまた目が大きくなった。その目、何回見ても面白い。

「・・・え?なに?」
「え?だってこっちに来ないとわかんないでしょ?」

だって冷蔵庫の中見るんだから当たり前じゃん。ベランダで解決するわけないよ。だけど玄関からも入れないだろうからここから来るしかないでしょ?
「落とさなければいいでしょ?」って言ったら慌てて下を確認してる。

「・・・ここ3階なんだけど」
「そうだよ?だから・・・はい。掴まって?」

信用されてないんだね。でも、こう見えても身体は鍛えてるからあんたぐらいの大きさの女の子は抱きかかえられるんだけど。暴れなかったら落とさない自信はあった。それに牧野はこんなことで騒がないような気がしたから。
やっぱり少しだけ考えたけど、すぐに足を上げて・・・でも、その時に見ちゃいけないものがチラッと・・・。

「着替えてくれば?パンツ見えてる」
「・・・・・・はい?えっ!きゃああぁーっ!なんで見るのよっ!」

「えっ!見たくて見たんじゃないよ!そっちが足を上げるからだろ?」
「だって足上げなきゃ、ここ出られないじゃん!き、着替えてくる・・・待ってて!」

広げた両手、なんか気不味くなって腕組みしてしまった。はぁ・・・ホント言えばちょっと驚いた。


***********


「ジーンズ・・・いや、短パンの方が動きやすいか!もうっ・・・なんでスカートだったんだろうっ!」

急いで短パンを出して着替えてた時、自分のパンツの確認・・・ヤバい!何処まで見えたんだろう。今日も飾りひとつない白だ。
いや、そんなことはどうでもいいわ!とにかく早く着替えてベランダに行かなきゃ!
ささっと短パンをはいて再びベランダに出たら花沢類はまた腕組みして星を見上げていた。

そして私が出てきたらまた両手を広げてくれる。
ここ・・・繋がっていたら良かったのに。そんなことを思いながら片足をベランダの壁の縁にかけて、そこに登ったと同時に花沢類の手を取って、両足あげたら勢いよく引っ張られて彼の部屋のベランダに降りた!
やっぱり怖かったから着地するときは彼に抱きつくようにして蹌踉けて、ドンッと胸に顔が当たった!

「あっ!ごめん・・・大丈夫?」
「なにが?全然平気だけど・・・牧野こそ大丈夫?怖かった?」

「そりゃ怖いでしょ!いつもこんなことしてる訳じゃないんだから!」
「あはは!平気かと思った!」

あっ!・・・こんなに笑うことあるんだ!歯を見せて笑うのは初めて見た。
私がそれに驚いてると、すぐに普通の顔に戻って「どうかした?」って真面目に言う。・・・もう少し笑った顔が見たかったなって思ったけど「何でもない」って首を振った。


「じゃ、冷蔵庫なんだけど・・・」
「もうっ!いくら冷蔵庫に入れててもね・・・」

そうそう、目的は冷蔵庫の中身だったって思いながら窓から部屋に入ったら、そこは私の部屋とは全然違っていた!

聞いてはいたけど。事務長からも西門さんからも・・・でも、想像以上だった。

ものすごく大きなサイズのベッドが真ん中にあって、豪華なソファーがあって壁には埋め込み式のテレビ・・・その横にはオーディオ関連のものがずらり。3部屋広げただけあって柱はあるものの推定50畳ほどのワンルーム・・・。
隅には机があってパソコン関係のものが並んでて本棚には訳のわかんない経済書籍満載・・・当然だけど天井にはシャンデリアが輝いていた。

「何してんの?こっち・・・」
「あぁ、はいはい!」

何だか奥の方にはすごく綺麗な扉がある。あんなもの私の部屋にはないけど?って思って聞いてみた。

「ねぇ、花沢類。そこはなあに?」
「え?どれ?・・・あぁ、トイレ。使っていいよ」

「えっ!トイレのドアがあんなに豪華なのっ?!」
「え?そっちは違うの?」

トイレなんて無地で柄ひとつない扉だよ。こんな唐草模様みたいな装飾なんてないし、ゴールドラインなんてないから!
チラッと見たら玄関にはシューズクローク・・・広さも半端なかった。

『いろんな意味で不公平なのです』・・・確か説明受けたとき、事務長が言ってたけどこのことなのね?
確かにびっくりするほど特別待遇。それも全部が不必要・・・羨ましいとは思わないわよっ!


問題のキッチンは流石にそこまで広くはなかったけどシンクも設備も私の部屋とは全然違うし、業務用かと思うような冷蔵庫がドンッ!と置かれている。
料理もしないと思われるのに何故食器洗浄機内蔵タイプのシステムキッチン?しかも超豪華なオーブンレンジがあるんだけど。
横を見たらポケッとした顔の花沢類が私を見ている・・・この人がキッチンでタマネギ刻むとか絶対にないわよね?

「・・・この中が匂うの?」
「うん、臭い・・・ミネラルウォーター出すのに息止める・・・」

「じゃ、開けさせてもらうわね?」

そう言って勇気を出して冷蔵庫の扉に手をかけて、バンッ!と勢いよく開けた!

そこにはすごい量の食材があって確かに微妙に匂う!でも、食品がありすぎて何が匂ってるのかもわかんない!しばらく見てたけど私もその匂いに我慢できなくて1回閉めた!
どうやら冷凍していないお肉やお魚がある気がする。それに誰が作ったのかわかんないけど変色しているお惣菜みたいなものが奥にある。
綺麗に並んでるんだけど見たことがないような不思議なものが多くて1度見ただけじゃ何が腐ってるのかわかんない・・・でも、言えることは一つ!

「花沢類!ゴミ袋・・・ゴミ袋出してっ!」
「えっ?何処にあるの?」

「知らないわよ!ここあなたのお部屋でしょうっ!早く出して!」
「・・・わかんない」

「えぇーーーっ?!地域指定のゴミ袋!わかんないの?」
「見たことない」


この後再びベランダから自分の部屋に戻ってゴミ袋を取り出し、またベランダから花沢類の部屋に侵入して大掃除が始まった。




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2018/05/11 (Fri) 14:24 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんばんは。

えっ?!こっちのお話はすごく真面目に書いてるのに(笑)
誰が作ったかわかんないヤツ(笑)

花沢のシェフが作ったもののつもりでした~!

この部分の類目線のお話は次でございます。
そうね、類が受け止めてくれないと困るので彼が大変なんですよ。

私の7階のはね、同僚が住んでました。女性です。
で、ふざけてベランダから行ってただけで、色っぽい話ではございませんでした。

ただね、通報されたんですよ。それでやめました(笑)
7階なのによく見つかったなぁ・・・って今でも思います。

3階って結構外から見えると思うんですが・・・そこは触れずにお願いします!

2018/05/11 (Fri) 23:15 | EDIT | REPLY |   

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