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大学に入って数週間、ようやく外部から入った子で友達も出来て、ランチの時に陽翔以外の子と食べるようになっていた。
そんなときはさりげなく花沢類のことや西門さん達のことを聞かれるけど、教えてあげられるほどの情報もないし、ベランダ越しに行き来してるだなんて大学にバレたら大変!だから、何も知らないって事で話さなかった。

って言うかホントにほとんど知らない。そこまで趣味や夢について語り合ったこともない。話したと言えば「星」ぐらい?
後はホントに雑談だもん。

変わった所ならいくつか見たけど、そんなことは知りたくないだろうし。
「あんな顔してるのに実は超がつく世間知らずで日常生活能力が乏しいのよ!」って言ったらどう思うのかしら。
いや、話しても信じないかもしれない。お饅頭事件やスーツ事件。極めつけは冷蔵庫異臭事件にゴミ出し事件。


「でもいいなぁ・・・あんなに素敵な人とお隣なんでしょ?ね、寮生以外も入れるの?」
「うん、多分入れるよ。うちの大学じゃない子も入ってきてたし。ただ守衛さんがわかんないだけかもだけど」

「花沢さんの部屋には彼女とか来ないの?家の掃除とか、お洗濯とか料理とか!」
「・・・来てないと思うわ。詳しくは知らないけど。うん、知らないけど。ホントに知らないけど」

「なんで3回も言うのよ」

仲良くなった亜利沙と円香。
2人とも普通の家庭の子だから英徳育ちの学生と上手くいかなくて怯えてたらしい。カフェテリアに入れなくて中庭でお弁当食べてるうちに仲良くなった子達だった。学部は西門さんと同じ文学部。

たまにはここに陽翔も来るけど、どうやら2人とも陽翔と私が付き合ってるんだと思ってたみたい。
陽翔が来ると気を利かせて何処かに行ってしまうこともあった。だから違うよっていうと驚いていた。

「齋藤君は絶対につくしの事が好きだと思うのよ。だってさ、いっつも一緒にいると優しそうな顔になるじゃん?医学部の子が言ってたけどそこだといつも険しい顔してるらしいよ」
「そう?全然わかんないけど。それに彼女がいるみたいよ?はっきりしないんだけどね・・・」

「もうその子と別れてつくしと付き合いたいんだよ!何も言われないの?」
「・・・別に何も?言われても困るし。中学から知ってるのに今更付き合う?なーんかピンと来ないけど」

「幼馴染みと結婚だってあるじゃん!絶対につくし狙われてるって!」

普通ならここで「そうかも?」なんてドキドキするのかもしれないけど、不思議とそんな感じはなかった。だってもう”そういう関係”の人がいるって本人から聞いたんだもん・・・それで私に気があるって言われてもね。

それに何となく・・・気になる人がいるし。
いや、気になるんじゃなくて、世話しなきゃいけない人?って感じかな・・・。


「あっ!ちょっと、つくし!ほらほら!」
「え?なに・・・あっ、西門さん」

円香が私の服を引っ張って指さすから、そっちに顔を向けたら西門さんと美作さんがニコニコ笑いながら近づいてきた。毎度、軽めの笑顔だこと・・・もう、見慣れてしまったから私はそこまでドキドキしないけど2人は大興奮。
西門さんが隣に座ったら亜利沙は真っ赤になって持っていたお茶を落とした。円香の隣には美作さんが座って、こっちもにっこり笑ってウィンクしてる。

「牧野、絶対この辺で飯食ってるんだな。今度奢ってやるからカフェで一緒に食おうぜ?彼女たちもどう?」
「ええっ!私たちもいいんですか?うそーっ!」
「行きます!西門先輩に誘っていただけるんなら行きますっ!」

「・・・もう、毎回女の子にそんなこと言って。本当にいつか刺されちゃうよ?西門さん」
「あはは!牧野、もっと言ってやってよ、こいつ、いつか痛い目に遭いそうだろ?」

「美作さんもでしょ?いつも一緒じゃない」
「あきらの方がタチ悪いって!こいつ、人のもの盗るのが好きだから!」
「人聞きの悪いこと言うな!お前と違って俺は付き合ってる期間は短くてもその間は1人だけだから一途じゃん?」

話してる内容はこんなのでも亜利沙も円香も全然聞いてない。
2人の顔だけ見て、その美しさに見惚れてる。まぁ、気持ちはわかるんだけど。

こういう時必ず校舎の何処かから刺すような視線が来る。
亜利沙も円香も感じてないんだろうけど辺りを見回したら数人の女の子が塊になってあちこちにいる。で、私たちを睨んでる。すごく怖いけど、もうこれにも慣れた。
初めの日にこの2人が「仲良くしてやって」って言ったからそれ以来私には誰も手を出さない。そこまで仲良くもしないけど。


そんな中、私の視線の先に彼が現れた。花沢類だ・・・。


この人は西門さん達とは違って校内をウロウロしないからあんまり会うことがなかった。
外国語学部と国際経済学部が離れてるっていうのもあるけど、こんなに目立つのにほとんど見かけない。だから、今日この時間に会えたことに驚いた。

花沢類もこっちに気がついて、いつもの無表情で近づいてきて私の前に来たら「空けて?」って言って、少し横にずれたらそこに座った。突然の花沢類の出現に円香も亜利沙も固まって口が開いたまま。

「珍しいじゃん、類。どうしたんだ?まさか飯食いに来たのか?」
「ん・・・珈琲飲んできた。さっき大学に来たばっかりだから」

「また教授に怒られるぞ?大森教授、お前がレポート出さないって溜息ついてたし」
「レポート?あったっけ・・・覚えてないや」

相変わらずやる気のない返事・・・これがいつもだからなのか西門さん達も別にそれ以上は声もかけずに円香達を相手に楽しそうに話をしていた。もちろん花沢類は何も言わずに私のお弁当の中身を覗いてる。

「卵焼き・・・」
「食べる?取りなよ」

「ん、1つね。これは何?」
「チーズが入ったミニコロッケ!昨日の夜作ったんだよ。食べてみる?」

「うん、それも1つ」
「ちゃんとプチトマトも食べて?はい」

私たちの小さなやりとりに誰も気がつかない。
花沢類の綺麗な手が私のお弁当に伸びてきて、おかずをつまんでは口に運ぶ。この人、あれからちゃんと作ってるのかしら?聞いてみたいけどここでは止めておいた。

そうそう、お洗濯ってどうしてるんだろう・・・何かが干されたのって見たことないし。
いやいや、彼女じゃないんだから口出しちゃダメだって!

そんなことを考えてたら最後のおにぎりがなくなっていた。ハッと隣を見たらモグモグしてる。
「だって残してたから」って言うけど、残してたんじゃないわよ!あなたが隣にいるから気になってただけじゃん!・・・って、この一言も言葉には出来なかった。

この間も4人は楽しそうに「お酒飲める?」なんて話で盛り上がっていた。2人ともそこそこ可愛いし、西門さんは円香達を気に入ったのかしら?「来週にでも飲みに行こうよ」なんて美作さんはお店まで調べてる。
そのうち、花沢類はスッと立ち上がって何も言わずに何処かに行こうとした。

「あ、花沢類、何処に行くの?」
「・・・1人になれるとこ」


他の誰にも聞こえなかったかもしれないぐらい小さな声で聞いた質問。彼の返事も多分私にしか聞こえなかっただろう。
1人になれるとこ?それは1人になりたいって事?
西門さんと美作さんの「じゃあな!」の言葉に返事もせずにスタスタと歩き出して、校舎の中に入って行った。

私は彼の行き先が気になって4人に「ごめん!」って謝るとお弁当箱を抱えて席を立った。


私の足は花沢類が消えて行った校舎の方に自然と向かってる。
沢山の人が歩いてる廊下だったけど、すぐにその後ろ姿を見つけた・・・足が長いから歩くのも速くて追いつけない。
でも、今は内緒で追いかけてるからその姿を見失わないように距離を置いて、でもどれだけ人にぶつかって怒られても目だけは彼のことを見続けていた。


そのうち花沢類は音楽堂の方に向かった。
そこは音楽部しか使わない、この大学では比較的人が少ない場所。こんな所で何をするんだろう・・・って思いながら足音をさせないようについていくと、そこの3階の一番奥にある非常口のような扉を開けてそこに消えて行った。

「えっ!ここまで来て外に出るの?なんで?・・・そこに何があるんだろ」


不思議に思って扉まで行ったけど、この扉にはガラス窓がないから外の様子がわからない。
開けてもいいんだろうか・・・って悩んでいたらガチャ!ってその扉が開いて、目の前に花沢類が立っていた。

「あっ!・・・あの、ごめん!えっと・・・」
「・・・絶対にあんただと思った。足音消すの、下手くそだね」

特に怒るわけでもなく、彼はドアを開けたままその非常口の踊り場に出て外の景色を眺めていた。
私がそこに出たら「ドア、閉めといて」って言うから急いで閉めて、ゆっくり近づいてみた。

「ここ・・・俺の避難場所。誰にも言ってなかったのにな。牧野にバレちゃった」
「ごめん。そんなつもりなかったんだけど、1人になりたいっていうから・・・何処で1人になるんだろうって何となく気になって。あの、私帰るね、1人になりたいから来たんだし。ここのこと、誰にも言わないから」

「うん、そうしておいて。総二郎達にも内緒ね」
「わかった・・・」


「でも、あんたはまた来ていいよ。俺がいるかどうかはわかんないけどね」


背中越しに花沢類がクスって笑った声がした。



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2018/05/13 (Sun) 23:45 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、おはようございます。

ほほほ、草食動物(笑)
総ちゃんは肉食でしょうかね・・・うんうん。

陽翔君は・・・そうですねぇ。
もう少し進まないと正体がわかんないって感じでしょうか?
まぁ、スパイス要員ですからね(笑)

ちっちゃい山本が出てきたって感じ?(笑)

非常口で何させるか?
そりゃ・・・色々ですよ(笑)あれやらこれやら・・・お外ですけどね♥
・・・ってこの話はそんな色っぽいシーンはないような気がする(笑)

・・・え?それはダメ?・・・ふーん・・・やっぱり逃げられないか。

2018/05/14 (Mon) 09:12 | EDIT | REPLY |   

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