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plumeria

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ゴールデンウィークに入ってからもバイトの時間以外はとにかく試験勉強をしていた。

わかんなくなったらメッセージを送ると窓から入ってくる家庭教師。この人も何処にも行かずに寮で過ごしてて、たまに夕方になったら何処かに行く。
時々私をバイト先まで送ってくれるけど、その後の行き先については何も言わなかった。
ただ、私が帰る午後9時ぐらいにはちゃんと電気がついてる。それを見てホッとしながら自分の部屋に帰っていた。


この前もらった食材は私たちのお昼ご飯になってて、家庭教師で来ている時は私の部屋で、そうじゃない時はベランダからいつものトレーが行き来していた。水色のお皿は・・・相変わらず使う勇気はなくてしまったまま。別のお皿に乗せて出していた。

「はい!今日はお魚の煮付けとサラダに酢の物。いい?これはお味噌汁だからね?飲み物じゃないからね?」
「もう覚えたって。スープなんでしょ?」

「そう言われたらスープに間違いはないんだけど・・・まぁ、いいや、残さないで食べてね!」
「このトレー、あとで返しに行くからそれまでに復習しときな?その時試験に出ると思うとこ見てあげるから」

「ほんと?!うん、待ってる!」

・・・会話だけ聞いたら恋人みたいだけど私たちの間には1メートルの間がある。しかも地上3階ほどの。


あとで来てくれるんだって思うと急いで自分もご飯を食べて、簡単に片付けて勉強道具を広げた。
その時、花沢類と反対側の303号室の壁の方からドンドンと音が聞こえて誰かがいる気配がした。初めて気がついた・・・303号室側は音が聞こえるのね?もしかしたら301号室だけ防音設備なのかしら・・・何も聞こえないんだもの。

「あれ?やっと誰かが入るのかな?ゴールデンウイークにお引っ越しかぁ・・・男だったよね?どんな人だろ・・・」

何となく前に会った彼女のことが頭を過ぎる・・・あの子が今度から来るのかな?ちょっと煩くなりそう。
まさか学生寮でお泊まりとかないよね?あったらどうしよう・・・。

「やだっ!物音が聞こえるって事は声が聞こえるの?そんなの気になるんだけど・・・って、何考えてんの?私ったら!」


でも、あの子の彼氏ってどんな男の子だろうと思ってほんの少しドアを開けて覗いてみた。
303号室のドアが開いてて確かに荷物が運び込まれてる。あの女の子の声かしら、女性の声がちょっとだけ聞こえるけど男性の声は聞こえなかった。一方的に女の子が話してるみたい・・・そしたら急に喧嘩腰の口調で「返事ぐらいしなよ!」って怒鳴った。

「煩いんだよ!もう帰れよ、ここには来るなって言っただろう!」

初めて聞こえてきた男の子の声・・・何処かで聞いたことがある声だった。


気になって玄関から私が顔を出したとき、同時に出てきた303号室の顔はやっぱり陽翔だった!
陽翔も私を見てびっくりしてる・・・驚きすぎてお互いに声にならなかった。あの彼女が陽翔の言ってた1年前からの・・・そういう関係の彼女なの?!
お互いの人差し指がお互いを指してる・・・私もだけど陽翔まで口開けてる。やっと言葉を出したのは陽翔が先だった。

「・・・牧野?お前、ここだったのか?」
「う、うん!陽翔こそ近々引っ越すってここだったの?学生寮だとは思わなかった!」

「あ?あぁ、一応申し込んだら抽選で当たってたんだけど、母さんの入院とかがあって今まで出来なかっただけ。なんだ、しかも隣なんだ!マジ偶然だな、宜しく頼むわ!」

「うん、こちらこそ。でも毎日バイトでいないんだけどね!」

宜しく頼むって言われてもあの彼女に手を出すなって言われてるんだけど。いや、出す気もないけどさ。
私の声を聞いたからなのかすぐに陽翔の後ろからあの綺麗な女の子が顔を出して私のことを睨み付けた。そして陽翔の前に出てきて仁王立ち。それを鬱陶しそうに陽翔が見下ろしていた。

「あなた、陽翔のこと知ってるの?なに話してたのよ!」
「いい加減にしろって!由依こそ帰れよ、もうここはいいから!」

「何よ、私の言葉には返事すらしなかったのに、なんでこの人には話しかけてんのよ!どういう知り合い?」
「牧野は中学ん時の同級生。偶然入った大学が同じで何回か校内では話してるんだ、それも由依には関係ないだろ!」

「関係ないって何よ!私以外の女の子と仲良くしないで!」
「そういうところが迷惑だって言ってるじゃん!」

「・・・・・・」

ど、どうしたらいいんだろう、私。

何だかこの2人の喧嘩の材料になってる気がする・・・そこまで険悪になられても困るんだけど。
それに陽翔の言ってることが正しいのよ?私たちは中学の同級生で友だち。それ以上でもそれ以下でもないの。仲良くしないでって言われても、普通にしてるだけだし、特別な感情はないってば!

その由依って呼ばれた彼女を面倒くさそうに部屋に押し込んで、陽翔は「ごめんな!」って言って自分も入ろうとしたその時・・・


「牧野?どうかしたの?大きな声聞こえた・・・」

私の部屋の中から出てきたのは花沢類!

窓を開けたままにしてたからそこから入ってきたんだろうけど、この状況で部屋から出てこられたら私たちが一緒に過ごしてたみたいじゃないのっ!
やっぱりその声を聞いた陽翔が閉めようとしたドアを止めて私たちの方を見た。

「あっ、花沢類、ごめんね。303号室の人と引っ越しの挨拶してたの、それだけ!」
「そうなの?皿はキッチンに置いたけどよかった?今日も美味しかった・・・酢の物ってハマるかも」

「えっ!そ、それはよかったわね!酢の物、また今度作ってあげるから!」

うわーっ!!今度は同棲してるみたいな会話じゃないのっ!なんでこんな場面でそんなこと言うのーーっ!この人はっ!
両手で彼の身体を部屋に中に押し込もうとしたら陽翔の方がバタンとドアを閉めた。

中に入ったんだと思ったら、ドアを閉めて私たちの方を睨んでる・・・花沢類はいつもの無表情で陽翔の方に視線を向けた。


「あんた・・・花沢の?」
「・・・え?陽翔も花沢類のこと知ってるの?英徳じゃないのに?」

花沢類の身体を持ったまま陽翔の方を振り向いたら、その顔は怒ったように眉間に深い縦皺寄せて眉が吊り上がってる。あの時と同じだ・・・私が絡まれてるときに相手に見せた怖い表情。昔の陽翔にはなかった冷たい瞳・・・。

「花沢の後継者、花沢類ってあんたか」
「そうだけど。随分な挨拶だね・・・俺と会ったことある?」

「あるわけないさ。そんな立場じゃないからね。でも、あんたの名前は知ってるよ」

「・・・陽翔?どうしてそんな言い方すんの?一応先輩だよ?」

この大学で花沢類のことを”あんた”って呼ぶ人なんていない。
それにこんな態度で接する人もいない・・・今度は花沢類が怒るのかと思って見上げたけど、彼の方は平然としていた。こんな時、人に無関心なのはいいのかしら?なんて思ったぐらい。

「そうだね・・・先輩だった。でも、なんで牧野の部屋から出てくるわけ?まさか・・・そういうこと?」
「何言ってるのよっ!そんなわけないでしょう!花沢類は301号室でお隣さんなの。私が連休明けに試験があるからフランス語を教えてもらってたのよ。それだけよ!」

「え?301号室・・・花沢物産の跡取りが学生寮?」
「そ、そうなの。社会勉強ってことよ!ここ、花沢類の家が寄付した学生寮なんだって。だからここにいるの」

なんで私がこんなに必死になって説明してるんだか!本人はポケーッとして涼しい顔してんのに!


でも陽翔の方はもっと厳しい顔になった。
なんでそんな顔するの?陽翔・・・どうしちゃったの?

「牧野、勉強しよう。時間なくなるよ?あんた、今日はファミレスでバイトがあるんでしょ?」
「あっ!そうだった・・・うん、早く終わらせなきゃ!じゃあね、陽翔」


「牧野・・・!」

何か言いたそうな陽翔を見ないようにして、花沢類の背中を押しながら自分の部屋に戻った。
バタンと後ろ手に閉めたドア・・・陽翔の部屋のドアが閉まるのを確認するまでそこから動けなかった。


しばらくしたら303号室のドアが開いて、バタンと閉まったからホッとして部屋の中に入った。キッチンには綺麗に残さず食べたお皿が置かれててそれをささっと片付けてリビングの方に行くと花沢類は私の教科書にチェックなんて入れてる。

「ごめんね、花沢類・・・あの子、なんであんな風に喧嘩腰なのかわかんないんだけど」
「別に気にしてない。知り合いなんだ?」

「中学の同級生で齋藤陽翔って言うの。高校は別だから入学式の時に出会って驚いちゃった。何回か外国語学部に来てくれてご飯食べてるけどね。陽翔は医学部だから校舎が離れてるんだけど、向こうも知り合いがいないから懐かしかったんだろうね・・・なんか、色々家庭が複雑みたい。ちょっと変わっちゃったな」

「へぇ・・・そうなんだ。家庭が複雑なのはあいつだけじゃないけどね。」
「うん、まあね」

「牧野、中学って何処?」
「え?私は朝日ヶ丘中学・・・それがどうかした?」

「ううん、別に・・・」


家庭の話になると花沢類も感情がなくなる。
元々読み取れない心がもっとガードが固くなって、入れそうかなって思う隙間が塞がれる。

陽翔も花沢類も笑うと素敵なのに。

「何ぼーっとしてんの?あんたのノート、ここ間違ってるよ?」
「えっ!何処?重要なとこ?」

「ここ、覚えときな?絶対に試験に出るから」
「はいはい!覚えます!だからもう一回教えて?」


「だからさ・・・フランス語ってのはね」

花沢類の甘いフランス語が心の中をザワザワさせる・・・これって勉強になるのかしら。




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2018/05/19 (Sat) 00:50 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは。

えっ!そんな反応ですか?嬉しいの?(笑)
・・・ってかミエミエの展開ですがね。ここで揉めてくれなきゃお話が終わっちゃうんだもん!

ってこの類君が陽翔に喧嘩売られて買うんでしょうか?「要らない」って言いそうですけど(笑)

まだまだラブ度が低いなぁ・・・こっちも早いとこラブ度上げていかないといけませんね!


え?色紙の話?

ふざけてるでしょ?それでね、家に帰ってから「お母さん、この写真いる?」って言うんですよ!
松田君じゃないのに要らないっしょー!!💢
勝手に筋肉鍛えてたらいいじゃんっ!

ほんと、筋肉馬鹿だから!なんで他にもいたのにそこなんだか!

2018/05/19 (Sat) 14:54 | EDIT | REPLY |   

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