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その週の木曜日。
俺は大学が終わってから寮に戻り、そこで騒々しい光景を憮然とした表情で見ていた。

「類様、お困りのことはございませんか?何か足りない物などは?」
「別に何もない。加代、そういうときは俺から頼むから放っておいてくれない?どうせこれも母さんの指示でしょ?」

突然寮にやってきたのは加代で、また冷蔵庫には大量な食材が詰め込まれた。数人の使用人を引き連れて部屋の掃除や夏物だと言って服を総入れ替えされた。
これじゃ屋敷の時と何も変わらない。過干渉な母さんの自己満足としか思えなかった。

「それにしてもきちんと食材を使っていらっしゃるのですね。ご自分でされているのですか?」
「・・・どういう意味?それも報告材料?もしかして何か探ってるの?」

「そんなことはございませんよ。身の回りのことはご自分ですると仰って出て行かれたのですから伺ったまでですわ。ただ、ここに入られる女性がいらっしゃるのであればご報告しなくては・・・と、個人的には考えますわ」
「特別な人はいない、そう言っておいて。そして余計な詮索もしないようにってね」

「類様・・・」

加代は小さい時から俺を見てるから本当は気がついてる。
この部屋のちょっとした変化・・・使った形跡のある調理器具や食器の動き。牧野に言われて準備したものもあるし、減った調味料なんかも確認してるだろう。

そしてこの俺がそんなものは使わないってことも。
さりげなくその目はこの部屋に女性の物が増えてないか、って探してる。それが何処かの令嬢なら問題ないんだろうけど、普通の子だったらどうする?


「加代・・・そんなに俺の部屋が気になるの?心配しなくても真面目にやってるよ。それとも管理人から何か言われた?」

「いえ、ここの管理人は大学の職員ですわ。花沢に報告義務はございませんから私たちが聞くこともありません。類様が大学生活を有意義にお過ごしなら私は何も申し上げる事はございません。ただ、お願いすることが出来るのでしたらご両親様とは仲良くしていただきたいですわ」

「仲良く・・・ね。努力はするよ。可能な限りでね・・・」

ベッドに座ったまま不機嫌な態度をとっていたらそのまま使用人を引き連れて加代は帰って行った。
何を報告するんだろう・・・どんな報告をされても構わないけど、彼女だけは守らなければ、そう強く思った。


その時に都合よく入ったメール・・・総二郎が”避難”してくるらしい。


***********


レンタルビデオ屋のバイトが終わって急いで寮に向かっていたら1台の赤い派手な車が私の横を通り過ぎた。
花沢類の車も大きくてピカピカしてるけどこの車もよく光ってるわねぇ!って思いながら歩いていたらその車が急に停まって窓から人の手が出てきた。

・・・ん?なんだあれ?ってよく見たら、助手席から出てきたのは美作さんの優しい笑顔!
仕事が終わった後の疲れていた私にはなんて癒やしなのかしら。別に呼ばれてもないのにその車に近寄ってしまった。

「美作さん、こんばんは!どうしたんですか?また花沢類の所?」
「うん、そう。総二郎が西門から逃げてるから」

「へ?自分の家から逃げてるの?」
「そう、いつものことなんだ。”そういう人”が来るとね」

「はぁ?よくわかんないけど逃げたくなるような人が来てるのね?」

運転席を見たら西門さんが今日も調子のいい笑顔を向けてて、別に逃げてる風でもない。むしろご機嫌みたいに見えるんだけど?って首を傾げたら、美作さんが1度車から降りて後部座席のドアを開けてくれた。

「どうせ寮に行くんだから乗りな?」
「え!いいの?助かります~!少しでも早く晩ご飯が食べたいんだもん!」

「ははっ!色気ねぇな、牧野。そんなんじゃ彼氏が出来ねぇぞ?女が腹減ったぁ、なんて言うなって!」
「だってホントだもん!こんな時間まで働いてみてよ!お腹空くんだから・・・」

私が乗ったら美作さんがドアを閉めてくれて、車は軽やかに寮に向かって走って行く。それにしても花沢類の車よりも車高が低くて音がすごい!音楽もロック調でとても茶道家が運転してるとは思えないんだけど!
花沢類の車は静かで音楽すらかかってない。運転中もそこまで話さないし・・・って、なんで比べてるんだろう。

変なの・・・私。


そして寮に着いたら来客用の駐車場に車を入れて、平然と中に入って行く。
私がその車から出てきても守衛さんは何も言わないし、彼らが花沢類の部屋に入ってもおそらく何も言わないんだろうから、心配せずに階段を上がっていった。

そして3階についたらクルッと振り向いた西門さんが私に言った。

「牧野も来いよ。類の部屋」
「えっ!入れないよ!だって守衛さんが見てるんじゃない?」

「俺達が入るんだから一緒に入れば?わかんないでしょ?」
「わかるわよ!胸から上ぐらいが見えるんだから。いいから2人で行ってきたら?私は自分の部屋が目の前だもん」

今立ってるのは階段を上がってすぐの所で守衛さんからは見えない場所。
そこで2人はじーっと考えて・・・急に閃いた!みたいな顔して私に手招きした。

「牧野、四つん這いで類の部屋まで行け!俺達が開けたらそのまま入れば守衛は気づかない・・・どうだ?」
「えっ!そんなことまでして行かなくても・・・」

「いいじゃん。1人でも女の子がいれば楽しいし。よし、すぐそこだから頑張れ!」
「えーっ!本気なの?」

このあと私はホントに通路で四つん這いになって花沢類の部屋まで向かったわよ!横には西門さん、後ろには美作さんがくっついてて「念のためだ!」って隠してくれてるみたい。
そしてインターホンを鳴らしてロックが解除されて、そこの玄関に入ったら奥から出てきた花沢類にしゃがんだまま話しかけた。

「ただいま・・・花沢類」
「・・・あんた、何やってんの?」

「よっ!類。悪いな」
「総二郎・・・牧野に何させてるの!ほら、もう立って?バスルームに行って洗っておいで」

美作さんがドアを閉めてくれたらやっとそこで立ち上がって、花沢類に腕を掴まれてバスルームに連れて行かれた。そこで手と足を洗うように言われてバスタオルまで出された。
服は汚れてるわけじゃなかったからシャワーで膝から下を洗い流して、ふわふわのバスタオルで拭いた。

そのタオルのいい香り・・・どんな柔軟剤使ってるんだろう?って思うぐらいいい香りとこの質感・・・うっとりしていつまでも匂いを嗅いでたら花沢類が迎えに来た。

「いつまで洗ってんの?それとも何かあった?」
「ううん!このタオルの香りがよかったから楽しんでた!」

「ぷっ!変なの。ね、ちょっといい?」

手招きされたのはまたキッチンで、あの冷蔵庫の前で立ち止まってる。また何か腐らせたの?って思って嫌な顔したら「そうじゃない」って扉を開けられた。
そこにはまたすごい量の食材が詰め込まれていて、びっしりと隙間がないほどだった。

「うわっ!またどーすんの?これ・・・何か作る?」
「・・・うん。でも、作るの牧野だけど」

「それはいいけど、しかし凄い量だわ!何があるのか見ることから始めなきゃ、何が作れるのかわかんないわ」
「あのさ・・・卵焼き、食べたい」

「・・・今?」
「うん、今」

そんなに甘えた子犬のような目で見られたら嫌だって言えない。仕方なく中から卵を出して準備を始めた。
あの2人は適当にお酒なんて出してテレビを見てる。西門さんが困ってなさそうだったのもわかるわ・・・誰だってのんびり出来る隠れ家があれば嬉しくなるものよね。


「花沢類は暇なの?お手伝いできる?」
「何したらいいの?」

「冷蔵庫の中のもの、1度見たいから全部出して?」
「・・・わかった」

彼が中身を出してくれている間に卵焼きの準備をする。フライパンを出してコンロの電源を入れて・・・味をつけた卵汁を流し込んで。その横で時々覗き込む彼は卵の形を丸めていくと驚いたように見てるから手が止まる。

「ほら、手を動かして!あっ、ネギがある!花沢類、ネギちょうだい?」
「どれがネギ?これ?」

「それはほうれん草でしょ・・・こっちだって!」
「あぁ・・・こんなに細いんだ?」

「ネギ入りのも作ってあげるね」


この部屋で包丁の音がするのはあの日以来だろうか。
この人の部屋に入る女の子は・・・私だけだろうか。

何も言われてもないクセにこの状況に「特別」ってものを感じて、1人でニヤけてる・・・そんな自惚れた自分がいた。




kenka10.jpg

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2018/05/24 (Thu) 13:39 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんばんは。

ってか、爆笑っ!!久しぶりのこの会話!
お腹痛いーーーっ!!!💦

確かに前、話しましたよね?この話には書けそうにないって(笑)
でも、そんなのダメって言いませんでした?

もう、毎回そんなことばっかり言ってるからわかんなくなりましたねぇ!

この類君がどうやってソコに持っていくと思います?
このシーンをもし書いたとしたら笑わない?あの激甘な「雪」でさえ笑ったのに?

だいたいこの類君・・・出来るの?(笑)


「牧野、じゃ、始めようか?」
「え?・・・そんな言葉で始まるの?もっと・・・こう、甘い感じで・・・」

「甘い感じ・・・それ、必要?」
「必要だよっ!女の子にはそういうのが大事なんだから!」

「あるのとないのとでやること変わるの?」
「え?それは類のテクニックでどうにかして欲しいわ・・・」

「・・・やっぱりわかんない。やめていい?」
「えっ!止めるの?ここまで来て?」

「うん、服着ていいよ。じゃ、俺ベランダから帰るね。バイバイ!」


・・・ほら!終わった!

2018/05/24 (Thu) 22:41 | EDIT | REPLY |   
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2018/05/25 (Fri) 10:39 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは。

あははっ!もーっ!!
想像しちゃったじゃないですか!

でもさ、この類の会話は「わかってない」って感じ?
アブノーマルってわかっててやってるんだよね?

わかってて○○○○突っ込んで・・・で、それでぐりぐりしたりして遊ぶんだよね?

・・・・・・違うの?(笑)
ツンデレってのは「わかってる」前提?

「牧野・・・声出さないって約束できるなら続けるけどどうする?終わる?」
「が、我慢する・・・」

「ん、わかった。それと泣くの止めてよね。イケないことしてるみたいでしょ?」
「ごめん!泣かないから・・・」

「じゃ、俺が動くからあんたはシーツでも噛んどいて」
「んっ・・・そうする」


これは?これはただのS?(笑)

なんのコメント返しなのーっ!!(笑)

2018/05/25 (Fri) 18:50 | EDIT | REPLY |   

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