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plumeria

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<side陽翔>
金曜日の朝、レポート提出のために少し早めに大学に向かおうと思ってドアを開けたら、301号室から丁度あいつらが出てきた。
西門と美作・・・やっぱりこいつらが騒いでたんだと少しだけ顔が歪んだ。

でも、そいつらも俺を見て止まった。
一瞬険しい顔をして・・・どうしたのかと思ったらその後ろからひょいと顔を出したのは牧野だった。

朝っぱらから男の部屋から牧野が出てきた?しかも、この男達に囲まれて花沢の部屋から・・・って事は牧野は301号室にこいつらと一緒に泊まったのか?!

牧野もびっくりした顔で俺の方を見てる。
そして西門と美作は何故か牧野を隠すように自分たちの後ろに回した。そして最後に出てきたのは花沢類・・・!

「牧野・・・お前、そいつの部屋に泊まったのか?こいつらと一緒に?」
「え?あ、まぁ・・・泊まったと言えばそうかもだけど・・・」

「わかってんのかよ!自分のしてることがどれだけ危険なのかって!こいつらの噂を知らねぇって事はないだろうが!」
「陽翔?・・・なんでそんなに怒鳴ってんの?私たちはそんなんじゃないよ?」

「お前がそんなんじゃないって言ってもこいつらはどう思ってんのかわかんねぇだろう!馬鹿野郎っ!こっちに戻ってこい!」

思わず声に出した「戻ってこい」って言葉。
自分でも驚いたけど牧野をあいつらの世界に渡したくはなかった。

どうせ遊ばれてるんだ。世間知らずで自分たちの世界と掛け離れた所にいる牧野を見て笑ってるだけだ。牧野になら何をしても、その後で騒がれても全部揉み消せるから都合がいいんだ・・・こいつらはその程度の考えしか持っていない奴らだ!


「お前、何1人で喚いてんだ?俺達の噂って何だよ・・・俺達といて危険ってどういう意味だ?」
「西門さん、ごめんね、あの・・・陽翔、謝りなよ!」

「・・・こいつらは自分たちのその時の感情だけで人を傷つけて、それを悪いともなんとも思ってないんだ。家業のジュニアだってだけで何しても周りから許されるって思ってる勘違い野郎なんだよ!」

こいつらにこんな言葉をぶつけたらどうなるか・・・。
わからないわけじゃなかったけど、もう止めることが出来なかった。西門の後ろで美作に守られるようにして立ってる牧野。その後ろから無表情な顔で俺を見ている花沢・・・こいつらが牧野を取り囲んで無理矢理俺との間にバウンダリーを引こうとしてるかに見えた。

牧野は俺の側の人間だ!守るのは俺の方だ・・・!
気がついたら俺は拳を握りしめて301号室の前に向かって走っていた!


***********


陽翔がすごく怖い顔して私たちの方を睨んでる。今までで1番怖い顔・・・。
そして私が花沢類の部屋に泊まったことが許せないみたいで「馬鹿野郎!戻ってこい!」って怒鳴られた。でも、その意味がわかんない。
私たちは恋人でも何でもない、ただの友人だよ?陽翔には彼女がいるんだよ?

それなのになんでそこまで怒るの?・・・どうしちゃったの?陽翔、私はこの人達に傷つけられてなんかないよ?
西門さんがすごい怖い顔で陽翔を見てる、美作さんがいつもと違う目で前方を睨んでて指を鳴らしてる。

花沢類は・・・変化ないんだけど、今、何考えてんのかしら・・・?


「・・・こいつらは自分たちのその時の感情だけで人を傷つけて、それを悪いともなんとも思ってないんだ。家業のジュニアだってだけで何しても周りから許されるって思ってる勘違い野郎なんだよ!」

「へぇ、言ってくれるじゃん。僻みまくったヤツだなぁ。自分にそこまでの力がないからって絡むのはやめて欲しいんだけど?」
「誰が僻んでるんだ!そっちこそ図星だから余計に腹が立ってるんだろう!」

「図星・・・?俺達は別に誰も傷つけてないと思うけど。何でも許してくれって頼んでるわけじゃないのに、勝手に特別視するのは世間の方だろう?それに甘えて好き勝手してるわけでもないし」
「いや、あんた達は自分の事がわかってないだけなんだ!与えられたものが多すぎて周りが見えてねぇんだよ!」

よくわからない理屈を並べて陽翔が大声を出し続けてる。
その手が持ってた荷物を放り捨てたと同時に硬く握られて、足がこっちに向かって走り出したとき、花沢類が私の腕をグイッと掴んで自分の背中側に回した!
そして両手を広げてガードされて、その勢いで301号室のドアにぶつかって身体が止まった。

「そのままで・・・こっち見るな、牧野」
「花沢類・・・!」

でも陽翔の足音がすぐそこまで来てて西門さん達に殴りかかってるんだって事はわかったから、急いで前に出ようとしたけど花沢類の身体で守られてて身動きがとれなかった!

「もうどうでもいいから牧野を離せーっ!この野郎っ!!」

「・・・いい根性だけど」
「俺達には敵わねぇと思うが?」

陽翔の怒鳴り声と同時に2人の冷静な声が聞こえる。でも、私には何が起きてるか全然わからなかった。見えてるのは花沢類の背中だけ・・・広げられた両手で視界は遮られていた。
そのうち誰かが誰かを殴った音や、何かを蹴り上げたような音が2~3回してから誰かがドサッと倒れ込んだみたい。その音と同時に花沢類が身体を退けてくれたから急いで前に出てみたら・・・陽翔が通路に横たわっていた。

「きゃああぁーっ!陽翔!ちょっと、大丈夫?陽翔っ!」
「・・・くそっ・・・っ!いてぇ!」

「何処か怪我したの?あんた、勝てるとでも思ったの?馬鹿は陽翔だよ!」
「・・・お前が甘いんだよっ!・・・昔から鈍いんだから・・・」

鈍い?私が鈍いってどういうことよ・・・。

顎の辺りを摩りながら眉を顰める陽翔の前に座っていたけど、私の目を見ようとはしなかった。反対側を向いてバツが悪そうに俯いたままだったから、少し手を伸ばしたらそれをバシッと振り払われた。

「牧野、心配すんな。手加減してるから」
「そうそう!あきらが本気出したら命がないからな。俺は仕事柄手を怪我できねぇから足だけ使わせてもらったけど、危険な場所は避けてっから安心しな!」

陽翔の左頬が少しだけ赤くなってるけど、何処からも出血はなさそうでホッとした。
汚れた服をパンパンと手で払って片腕を押さえながら陽翔は立ち上がった。

「もうっ!・・・元はと言えば陽翔が喧嘩なんか吹っ掛けるからだよ!わかってんの?状況も知らないのに変な想像したり、人のこと悪く言うのはやめろって言ったでしょ!」
「・・・うるせぇよ!俺はただこいつらみたいなヤツが大っ嫌いなだけだ。牧野・・・騙されんなよ!」

「陽翔!ちゃんと謝りなさいよ、陽翔ーっ!」
「・・・知らねぇ!」

今度は脇腹を押さえながら自分が投げ出した荷物を拾って階段を降りていった。
足音は小さくなっていって、やがて寮の外に出て、振り向くこともなく大学の方に歩いて行く。

複雑な高校時代がこんなにも陽翔を変えてしまったのかと思うと悲しかった。
でも、複雑なのは陽翔だけじゃないと思うよ?この人達だって楽しいだけじゃない。裕福なのかもしれないけど、本当は複雑で苦しいみたいだよ?・・・陽翔、ちゃんとこれからの未来を見ようよ・・・そう、心の中で呟いてた。

通路の手摺りに寄りかかって陽翔の消えた方向を見ていたら花沢類が声をかけてきた。


「牧野、時間がないと思うからあんたも急ぎな。着替えたりしなきゃいけないでしょ?」
「あっ、そうだった!シャワーぐらいしないと学校に行けないよーっ!」

「あはは!それなら昨日類の部屋で風呂に入ればよかったじゃん!」
「1人が寂しかったんなら一緒に入ってやったのに・・・照れ屋だな、牧野」

「何言ってんのよ、西門さんも美作さんもっ!真面目に大学生しないからさっきみたいな言われ方、するんだからねっ!」

私は3人にそんな言葉を残してから自分の部屋に飛び込んだ!

もう時間がほとんどないから慌ててシャワーを浴びて、適当にその辺にあった服に着替えた。ヘンテコな格好してる気もするけど鏡を見る時間も惜しい!化粧だってしてる暇はないし、生乾きの髪を振り乱しながら大学までの道を走った。

「もーっ!なんでこんな事になったのー?西門さん達に掴まったのがいけないのよーっ!遅刻しちゃうーっ!」


大声で叫んで走りながら頭に浮かんだのは・・・私を庇うように立ってくれた花沢類の大きな背中だった。




daisy-2491832__340.jpg
バウンダリーとは「心の境界線」です。
本来は上手く引けば良いとされる他人との付き合い方のことです・・・。
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2018/05/28 (Mon) 08:13 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ゆきたろう様 こんにちは。

そうなんですよね・・・。
陽翔君、自分も楽しかった昔に戻りたいんでしょうね。つくしちゃんと・・・。
それなのに好きでもない彼女と別れられない情けない自分も大っ嫌いなんですよ。
親のこと、進路のこと、悩み多き大学生ですね。

で、色んな怒りが全部類君に向かってるって感じでしょうか?

いつか立ち直ってほしいものです。


うんうん・・・。あ、私の仕事だ(笑)
どうにかしてやらなきゃ!・・・あはは!頑張ります!

2018/05/28 (Mon) 11:36 | EDIT | REPLY |   
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2018/05/28 (Mon) 12:56 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんばんは。

ふふふ、守る類君好きです~!何気に働いてはいないんだけどね(笑)
背中で守るか抱き締めて守るか悩んだんですが・・・この場合は背中だよね!

だってもし(あり得ないけど)2人が倒されて陽翔が向かってきたら類君が闘うんだもんね!
長い足で一発だろうけど。

てか、あきらが何処かから拳銃出しそうだけど(笑)


ふふふ・・・こう見えて私、新人育成担当として心理学をやっておりましたので多少こういう言葉を知ってるだけです。
実生活になんの役にも立ちません!

しかも私は自分自身が人付き合いの下手なヤツです(笑)

よく言われるのよ・・・何考えてるかわかんないって。
そういう時はただ妄想の世界に入ってるだけなんだけどね・・・。
妄想の世界に住んでるときはリアルの人と話すとお話が途切れちゃうから「話しかけないでオーラ」が自然と出てるみたい。

心に境界線、いつも作ってます。ははは!

2018/05/28 (Mon) 23:32 | EDIT | REPLY |   

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