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<sideあきら>
ほんの少しだけ齋藤の新しい父親の病院って言うのを調べてみた。類が何かを気にしていたけど、経営上何か問題があるんだろうかと思って。
だけど特に評判にしても、経営状態にしても問題はない。至って普通の病院だった。
問題って言うほどのことはないが、経営者が最近結婚して陽翔が医学部に入ったから跡取りが出来たってことぐらい。それまでは独身だったから引き継ぐ人間がいなかった・・・そのぐらいだろう。

「あきら様、何か緒方病院に不審な点でも?」
「いや、そういうわけじゃない。ここの連れ子が英徳にいるだけだ」

「問題でも?」
「ははっ!血の気が多くて元気がいいってことだけだ。別にたいした問題は起きてないよ」

「忠告しましょうか?」
「・・・いや、そんな必要はない。資料ありがとう、参考になったよ」


秘書から緒方病院に関する簡単な資料だけもらって美作商事の会議室を出た。
まさか、この後に秘書が余計なことをするだなんて思いもせずに・・・。


************

<side陽翔>
数日後、親父からかなり怒ったような口調で電話があった。後ろで母さんの声もしたけど、それは親父の声に消されて何を言ってるのかもわからなかった。

「どうしたのか?俺が何かやった?真面目に大学に行ってるけど?」
『大学に真面目に行こうが行くまいがそんなことはどうでもいい!陽翔、お前は何をしたんだ!』

「だから!何のことだよ!」
『美作商事のご子息に何かしたんじゃないのか!』

美作?美作とならあの時に殴り合ったけど・・・って言うか俺が一方的に殴られたんだけど。確かに初めに向かっていったのは俺で、1年先輩のあいつに暴言吐いたのも俺だ。
あいつらがジュニアだって知ってて構わずに拳を向けたが、それがなんで親父に怒鳴られる材料になったんだ?

『お前も知っているだろうが私の病院は敬愛会という医療グループの中に所属していて、そこの代表である総合病院は美作商事の系列病院なのだ!・・・意味がわかるか!』

「え?・・・何か言われたのか?」
『血の気の多いご子息がいらっしゃるようですが、教育の方はきちんとされているんでしょうか?・・・そう言ってきたんだ!』


親父の話だと美作商事の方から大学病院を経由してうちの病院まで、俺の事で問い合わせがあったらしい。それに大学にも俺の素行について調査が入ったと。
今日だけで大学側と病院側から美作あきらに対して何かしたのか、っていう半分脅しのような電話があったようだ。

『美作様のご子息に何をしたのだ!陽翔!』
「何でもないよ。ただの喧嘩だけどやられたのは俺の方だからね。あいつは何一つ怪我もしてないさ・・・いちいちそんな事で調べることの方がおかしいんだよ!」

『馬鹿を言うな!そんな事って言うが、それだけで十分うちの病院は潰されるんだ!2度とご子息を怒らせるな!土下座でもして謝っておけ!』
『あなた、そこまで言わなくても陽翔はそんな子じゃないわ!』

母さんの声・・・一応俺を庇ってるんだ。父さんのことはあっさりと捨てたクセに・・・。


「わかったよ。この先は何もしない。だけど謝ることもしないから。じゃ・・・」

やっぱりそんなもんだ。
あいつらはちょっと気に入らなかったら親の権力を利用して、俺じゃなく無関係な家の方に圧力をかけてくる。

父さんの時と似てる。花沢は父さんの会社が関わってもいなかったのに同じ親会社の下請けだったってだけで、精算してしまいたい工場数に合わせるために適当に選んで解除リストに乗せた。
無関係だったのに・・・最後には弁護士に圧力をかけて訴訟を起こさせないようにした。


「誰が土下座なんてするか!」

書きかけのレポートを両手で握り潰して壁に投げつけた!

その投げつけた先にある顔は美作でも西門でもない・・・花沢類、あいつのことが憎かった。
牧野があいつの横で笑ってるのが許せなかった。


**********


あの日以来303号室のドアが開く音がする度にドキッとしていた。
陽翔が出て行った、陽翔が戻った・・・いつもそれを気にする自分の事が嫌だった。

たまには出ようとすると同じタイミングでドアが開く音が聞こえたら私の方が止まってしまう。耳を澄ませて階段を降りきったと思ったら静かに開ける、そんな感じが続いていた。その度に息苦しくなる。

あれ以来花沢類ともベランダで会わなかった。話し声が陽翔に聞かれそうな気がして怖かったから。
花沢類が私の部屋にベランダ越しに来てるだなんて知られたらどんな風に怒り出すのか分からない。そもそもそれに怒ること自体が分からないんだけど。

何故ならあれからも由依さんはここに来ている。陽翔の部屋から時々女性の声がするから、そんな時は考えたくなくても考えてしまう。あの日のように2人は・・・抱き合ってるんじゃないかって。
心とは裏腹に耳だけが敏感になるのが嫌で布団に潜り込んで耳を塞ぐ時もあった。

でも、あの声を聞いたのはあの日だけだった。それでも頭は私に陽翔の裸を想像させる・・・その裸の陽翔に由依さんが近づいて・・・!


「ああっ!もう、ダメだってば!そんなこと考えちゃダメなのよっ!・・・・・・はっ?」

ガタンと椅子から立ち上がったのはいいけれど、今はイタリア後の授業中だった!ジョバンニ教授の眼鏡がキラリと光って、頬杖ついたまま睨まれた。

「Quindi le mie lezioni non sono buone?」
(そんなに私の授業はダメなのかね?)

「Mi dispiace Stavo pensando a qualcosa di diverso.」
(すみません、違うことを考えていました)

「Per favore, vieni nella mia stanza più tardi. Facciamo un rapporto speciale scritto」
(後で私の部屋に来なさい。特別にレポートを書いてもらおう)

「Capisco・・・」
(分かりました)

周りからはクスクス笑う声が聞こえてきて、私はストンと椅子に座った。イタリア語のレポート・・・ヤバいわ。完全に花沢類に頼まなきゃ・・・。

*

「よっ!牧野、どうした?一段としょぼくれた顔して!ただでさえ少ない幸せが逃げるぞ?」
「西門さん、美作さん・・・今日も明るいわねぇ。羨ましいわ・・・」

「あれ?牧野は落ち込んでるの?話聞こうか?」

帰り道で美作さんと西門さんに出会って、バイト先まで車で送ってもらうことになった。
もうさっきのことで頭が痛くてがっくり肩を落としてたら、西門さんにガシッと肩を抱かれて前に倒れそうになった!

「うわあっ!何するのよ!やめてよ、大学でこんなコトしたらまた虐められるじゃないの!」
「あれ?もう虐められないだろ?ちゃんと言い聞かせてるから」

「そうだけど、実際は結構睨まれてんのよ!もう、よーく周りをも見てからやってよね!」
「誰もいなかったらいいのか?それじゃ総二郎の車の中とか超危険じゃん?」

「どうしてそんな事ばっかり言うのよ。私はそれどころじゃないんだからね?」
「あれ?マジで落ち込んでんのか?」

このあと西門さんの車の中でレポートの話をしたら大笑いされ、でも意外なことにここに神様がいた!
美作さんがファミレスのバイトの時間内にお店の中でレポートを仕上げてくれるって!

「ホントに?でもさ、美作さんや西門さんが耐えられるかどうか分かんないメニューしかないのよ?珈琲も絶対に美味しくないわよ?花沢類にも飲ませなかったもん」
「まぁ、社会勉強と思って飲んでもいいけど。その店、類が来たことあんの?」

「うん。1回だけね。えっとね・・・8時までなんだけど、それまでに出来る?」
「余裕だな。イタリア語だろ?完璧だから、俺」


もちろんこの日も私以外のバイトの女の子の目はそのテーブルにしかいかなかった。花沢類と違うのは誰が行ってもいいって事だから目が合う度に誰が行くのかで大騒ぎ。そうだよね・・・なんたって今度は2人だから。

そして案の定、不味そうな顔して飲むのはこの店で1番高い珈琲。そうだよね・・・それでも口には合わないのよね。


バイトが終わったら今度は寮まで送ってくれた。

「本当に暇だったの?ごめんね、レポート書かせたのに送ってもらって・・・でも、何にもお返しできないからね?」
「ははっ!牧野から何かしてもらおうなんて思わないって!別にこれぐらいなんともないから気にしないでいいよ。それじゃ、おやすみ」

「うん、おやすみなさい。美作さん、西門さん」
「隣のガキに見つかるなよ?また暴れるぞ?」

「・・・わかってるよ。ありがとう」

寮の目の前には行かずに少し手前で降ろしてもらって歩いて帰った。
見上げたら花沢類がベランダの手摺りに縋って私の方を見てるから、両手を大きく振って合図してみた。でも何の反応もなくていつものように手を振ってくれない。

「あれ?暗いから見えなかったのかな?」

私は急いで階段を駆け上がって自分の部屋に入ってから急いでベランダに出てみた。
やっぱり花沢類は手摺りの上に腕組みしたまま立ってて、ぼーっと空を眺めていた。私が出てきたことが分かってるのに顔を背けてる・・・機嫌が悪いのかな?

303号室をチラッと見たらカーテンが閉まってて薄暗い。だから小さな声で話しかけてみた。

「花沢類、どうかしたの?何かあったの?」

そう言ったらやっと私の方を見た。ちょっと拗ねたような顔して・・・。

「さっき見えなかった?私、手を振ったんだよ?」
「見えたよ・・・」

「え、そうなの?無視したから見えなかったのかと思った!」
「・・・総二郎の車に乗ったんだね」

「・・・え?」

「おやすみ・・・」


それだけ言うとプイッと部屋の中に入ってしまった。
花沢類・・・どうして怒ってるの?





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2018/05/29 (Tue) 00:44 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは。

あきら君、たまには良いところをお見せしようかと思いましてね(笑)
何食べたんでしょうねぇ、ファミレスで。

総ちゃんにファミレスの「梅昆布茶」飲んで欲しいわぁ!怒るんでしょうね!

ふふふ・・・
総二郎の車から降りてくるつくしちゃん。

車内で何やってるんだ!って心配したかな?
ヤキモチって言葉すら知らなさそうな類君ですが、この後どうすんでしょうね(笑)

2018/05/29 (Tue) 11:56 | EDIT | REPLY |   

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