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親父さんが倒れて急に日本を離れる事になった司が、俺達の前で牧野に言った一言。

『4年後、迎えに来るから待ってろ』

牧野はそれに泣きながら答えて見送って、俺達3人はそんな2人を少し離れた所から見守った。
もう・・・5年前のことだ。でも、司は迎えに来なかった。


牧野は知ってるかどうかわかんねぇけど、司はアメリカに行ってすぐに「道明寺ホールディングス」を動かすことに夢中になり始めて、毎日戦闘気分であらゆる現場や会議なんかに顔を出してお袋さんを喜ばせてる。
噂ではあいつの中に「恋愛感情」ってものは希薄になったと・・・それこそ日本に置いてきた”普通の女”の事は頭の隅の方に追いやってるんじゃないかと・・・。

それは当然類やあきらも情報として持っていて、1人で待ってる牧野の事をやたら気にしていた。


でも言えなかった。
司の気持ちが今はお前に向いてない・・・だなんて。

いや、本当言えば俺達だってわかんなかった。あいつと話すことが出来なかったから。本当は牧野を迎えに来たいのか、それとも自然に感情が消えて行くのを待っているのか。
牧野なら黙って待たせていてもいいと思っているのか・・・今すぐ迎えに来たくてウズウズしてるのか。


「・・・どうする?連絡してみる?」

類が言い出したのは俺達が大学を卒業する少し前、約束の4年が過ぎて半年たった頃だった。

「連絡してどうするんだよ。俺達の言うことをあいつが大人しく聞くと思うか?それに今どこにいるかすら掴めねぇほど世界中飛び回ってる。連絡そのものに何日かかるかわかんねぇかもだし、類もそのぐらい情報持ってるだろ?」

「・・・牧野、ずっと待つんだろうね」
「・・・気持ちがあるんなら待つだろうさ。そういうヤツだろ?牧野って」


「総二郎はどう思う?」

「さぁな・・・。分野が違うから司の状況がわかんねぇわ。それに俺には関係ねぇし」

「・・・冷めてるね、総二郎」

花沢や美作に就職しないかって裏で話したのなんか知っていた。
そして牧野はそれを両方とも笑って誤魔化した事も。道明寺の跡取りの恋人が他企業に入るわけにはいかねぇもんな。
冷めてるね・・・か?そう見えるんならそれでも別にいいけど。


結局、俺達は2人のことは何もしてやれずに大学を卒業して、類とあきらは俺に牧野のお守りを押しつけて海外に行った。

あんまり冷たい態度は取ってやらないでよ、なんて類は怒ってたけど。



***



牧野が司と付き合うための「修行」みたいなもんで茶道をやり始めたのは、ちょうどあいつがアメリカに行く少し前頃だった。
2人並んで西門に来て、親父の前で特別に俺から茶の稽古を受けさせたいと言いやがって、親父は司の言うことに逆らえるはずもなく俺が教える羽目になった。

「西門さん、宜しくお願いします!」
「総二郎・・・しっかり教えろよ?詳しくなくてもいいから見た目で誤魔化せる程度にな!」

「そんな言い方で弟子入りすんのはお前らくらいだ。言っとくけど俺は手加減しねぇからな・・・誤魔化すとか真っ平だ。それを言うなら他を当たれ!」

「なんだと?てめぇ・・・俺に向かってよくもそんな事が言えるな!」
「道明寺やめなよ!西門さんの言うとおりだよ。茶道するのに誤魔化すとか言わないの!」

「・・・当たり前だ。司こそ勘違いすんな。ここはお前の会社のような世界じゃねぇ。それがわかんねぇなら帰ってくれ」

自慢じゃないがお前達が企業の跡取りなら俺はこの家を継ぐ次期家元だ。
その立場にある俺が適当に弟子を取って誤魔化しの茶なんか点てるか!
睨み合いを続けた俺達の間に立って、牧野が泣きそうな顔で司を押さえているのを見たとき・・・胸の中でチクッと針のようなものが刺さった気がした。

だから余計に司に大きな事を言ったのかもしれない。



司が行ってからも週に1度の牧野の稽古はずっと続いた。

初めの頃は稽古の途中、休憩の時に司の話をよくしていた。
聞きたくもないのに・・・牧野がやたら楽しそうにあいつの話をするから何度か言ったことはある。

「牧野、司の話をしに来たんなら帰れ。まだ稽古は終わっちゃいねぇだろ」
「あっ!ごめんなさい・・・お稽古、お願いします!」

「・・・雑念が多いからお前の茶には余計な味がするんだよ。茶を点てながら男のことを考えるな」
「そんなことないもん・・・西門さんの意地悪!」

何が意地悪だ!稽古中に他の男のことを聞かされる俺の事なんて考えたこともないだろう!いや・・・別にいいけどよ。


そうやって牧野は西門に通い続けた。
どのぐらい経ってからだろう。牧野が全然司の話をしなくなったのは。司が行って2年ぐらいした頃か?

その頃からこいつらは連絡をあまりしなくなった。
それは俺だけじゃなく、類もあきらもわかってて、大学の中じゃ俺よりもこの2人が牧野の心配をしてたっけ。俺はそんな3人を横目で見ながら、時間が来たら大学を出て遊びに行った。

でも金曜だけは早くに自宅に戻った。
金曜は・・・牧野の稽古だから。


「花沢類も美作さんも何度言っても心配してご飯に誘うのよ?テーブルマナーだって言うんだけど、あの2人に教えてもらったら緊張して食べられないっつーの!」

ある日、稽古が終わったら牧野がそんなことを言った。
だから何気なく俺も言ってみた。この時はそんなに深い意味はなかったんだけど。

「じゃあ俺と行くか?そこまで堅苦しくない店なら牧野でも気が楽だろ?」
「・・・え?西門さん・・・と?」

「なんだよ。不服か?マジ、ムカつく・・・俺の誘いを断った女は今まで1人もいねぇけど、まさかその1人目になりてぇのか?」
「そんなことない!・・・えっと、じゃあいつ行く?」

「・・・は?」

あれだけ類とあきらの誘いを断ったくせに俺の誘いには乗るのか?正直この時は驚いた。
でも顔を見たら真剣そのもの。仕方なくこの頃からたまに牧野を飯に連れて行くようになった。

フレンチからイタリアン・・・和食の料亭に中華。
牧野の希望半分、俺の趣味半分・・・気の利いた会話が牧野相手だと何故か出来なくて「美味いな」って言うぐらい。
それでも司と食いに行っても恥ずかしくない程度に色んな事は教えてやった。

ただ、この2人きりの食事会の時は何故か大学でも見せない表情をこいつに向けてる自分がいた。
牧野が照れる角度はこの辺り・・・それがわかると毎回その角度で見つめてやる。そうしたら必ず真っ赤になって固まる。

そんな事で遊んでしまう自分のことが・・・実はよくわからなかった。


司のことを一切言わなくなった牧野は、今ではどう思ってるんだろう。
そして俺は・・・何となく抱えてきたこの気持ちの整理をどうつける気だ?



***



「さて、今日は金曜か・・・あいつが来る日か。何するかな・・・」


牧野のために茶室の準備をする。
あいつ専用の茶碗を出して、今日の予定を考えていたらお袋がそこにやってきた。

「総二郎さん、実はあなたに急なお仕事が来てるの。来週の金曜日から3日間の予定だから、今日牧野さんが来たら来週のお稽古の中止を言っておきなさいな」

そう言って手渡された”急な仕事”ってヤツの日程表。それを見て驚いた。

「は?・・・こんな内容なのにまた急な・・・欠員補充か?」

「裏千家の方がご病気らしいわ。前回はうちが行ったから今年は裏千家の方が行くようになっていたのよ。だけど今年のメンバーは若手の後継者って事になってるから向こうにはそういった年頃の方が他にはいないらしいの。これも仕方ない事だから頼んだわね」

「・・・わかった」


牧野に稽古の中止を言わなきゃいけない・・・それなのに牧野の方から偶然稽古を休むって話が来た。

「あのさ、私・・・来週のお稽古休むから」
「へぇ、珍しいな。男でも出来たのか?」

「違うわよ。あいつに会いにアメリカに行くの・・・そろそろはっきりさせたくて」

それを聞いたとき、俺の手は止まった。

司とはっきりさせる?・・・それって、決心したって事か。
どっちに?自分から向こうに飛び込む気か・・・それともその反対か?


「そうか、気をつけて行ってこい」
「うん・・・そうする。ごめんね、お稽古、初めて休むね」

「気にすんな」


お互いにはっきりさせる方が優先・・・そう言うことだ。




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2018/07/20 (Fri) 14:11 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: No title

yaka様、こんにちは。

うふふ!全然違うでしょ?
どうなることやらですね・・・この総ちゃん。

長いこと大騒ぎな話でしたから拍子抜けした感じですかね?(笑)

いやいや、あんなの長く続けられないですって!
また思いついたら書きますね。

で・・・茶と華と(笑)
紫桜君が見たいんですかぁ?・・・困ったなぁ。ちょっと考えますね。
類君が大変なので頭が回らないのよ💦

お時間下さいね♥今日はありがとうございました!

2018/07/20 (Fri) 14:16 | EDIT | REPLY |   
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2018/07/21 (Sat) 13:55 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: 猛暑

彩花様、こんにちは♥

初めまして!コメントありがとうございます。
ガラリと変わったでしょ?

って・・・え!あれも初めから読んだんですか?ヤバいっ!!(笑)
大変だったでしょう?ごめんなさいねぇ!初めから小分けしてカテゴリ作れば良かったんですが、そんな事を今まで全然考えなかったので。

でも、こんな猛暑で寝不足はいけません!
私の話はしばらくこのままあると思うので(笑)
時間のあるときに読んで下さいませ。今日は寝て下さいね~💦

本当にありがとうございます。
これからも宜しくお願いします。

2018/07/21 (Sat) 15:59 | EDIT | REPLY |   

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