FC2ブログ

plumeria

plumeria

大学が休みになってからすぐ、私は渡米の準備をした。
今まで貯めたバイト代、こんなことに使うとは思わなかったけど。

飛行機のチケットは取り敢えず行きのものだけ買って、あとはあいつと会ってから決めようと思った。
でも、このままアメリカに滞在しろなんて言われるわけもない。言われても・・・それに返事が出来るかどうかがわからなかった。


1度ちゃんと向き合って話さないと自分の素直な気持ちが表に出てこない、そんな気がする。
素直になったらなんて言うんだろう・・・小さな鞄に荷物を詰めながら溜息をついていた。持っていくものは3日分ぐらいの着替えと日用品だけ。それと・・・離れる前にもらった指輪とネックレス。1度も出番がなかったあいつからの贈り物。

あいつに渡す手土産なんてものは想像できない。欲しいものなんて全然思い当たらなかった。
そもそも欲しいものなんてあるの?あるんだった品物じゃないわね・・・何でも持てるんだもん。小さな国なら丸ごと買いそうで怖いくらいだ。
『私の笑顔に会いたかったでしょ?』・・・そう言ったらどんな顔するかしら。睨まれて背中向けられたりしてね!

5年前のあいつなら・・・『あぁ、会いたかった!』って笑って抱き締めてくれるのを想像できたのになぁ・・・。


先週送ったメール・・・『来週になったら1度アメリカに行く。話し合いしようよ』。
これにすぐに返事はなかった。3日後に返ってきたメールには『ホテル・メープルに部屋を用意した。連絡があるまでそこで待て』。

嬉しいとも、楽しみとも書かれてなかった。
いや、私も「会いたいから行くね」なんて可愛い言葉は使ってないんだもの、当然かもね。


**


そしてアメリカに行く当日、電話が鳴ったから画面を見たら・・・西門さんだった。
なんだろう・・・こっちには少しドキドキして電話に出た。

「もしもし・・・どうかしたの?」
『・・・お前、今から出るんだろ?』

「うん、もうすぐしたら部屋を出るよ」
『降りてこい。下にいる』

下にいる?その言葉に驚いて電話を耳に当てたまま窓際に行ったら真っ赤な車のドアに凭れかかって足を組んでる彼がいた!
うわ・・・すごい不似合いな場所に超イケメンが高級車で!そのズッコケそうな光景に耳から電話を離さずに窓を開けて声を出した。

「ちょっと!何してんの?送ってくれるなんて言わなかったじゃん!」
「はぁ?来てやってんのに文句かよ。いいから急げよ。時間、何時だ?」

「えっ?えっと・・・あと2時間あるよ」
「馬鹿野郎!国内線じゃねぇんだから早くしろ!」

馬鹿野郎って・・・なんなの?あの態度。
それでも急いで鞄を手に持って部屋を飛び出した。あんまり慌てたから窓のカーテンすら閉めてない・・・でも、西門さんを待たせてるのに戻るわけにも行かずに階段を駆け下りた。

相変わらずニコッともしてくれないくせに助手席のドアは開けてくれる。ペコッと頭だけ下げて乗り込んだら閉めてくれるのも彼だ。この扱いをどう受け止めていいのか・・・。
すぐに運転席に乗ってきて車は空港に向かって走り出した。

エアコンはかけずに窓を少し開けて片手ハンドルで、空いてる片手で髪なんか掻き上げてすごい色気・・・薄い色のサングラスをかけて綺麗な手にはシルバーのブレスレッドが2つ・・・右手薬指の指輪はお茶をしないときの彼の定番だ。
ここからは見えないけど左耳につけてるピアスも2つ・・・もうひとつ閉めたらいいのにって思うシャツのボタン・・・何故かそこに目が行く自分が嫌だわ。

風が車内に入るから彼のフレグランスが微かに薫る・・・私も持ってる彼のお気に入りのフレグランスだ。


「いつ・・・帰るんだ?」
「わかんない。あいつと話が出来て、これからのことが決まればね・・・」

「司、アメリカにいるのか?」
「さぁ?ホテル取ってるからそこで待てって言われてる」

「・・・くくっ、相変わらずだな、お前達」
「仕方ないじゃん。私っていうより向こうでしょ?訳わかんないの」

「お前もだろ?・・・自分の事、よくわかってないの」
「・・・え?」

いきなり直球で私がグサッとくることを言うから西門さんの顔を見てしまった。
この時だけすごい横目でニヤッと笑いながら私を見た。そしてほんの少し目を細めてまた前髪を掻き上げる。1度ゆっくり閉じた目を開けた瞬間、ゾクッとするほどの怪しい光が見えた気がした。

ヤバい・・・そのスローな動きはヤバいんだって!


「そ、そんなことないわよ!私は自分のことだもん、ちゃんとわかってるわよ!」
「そうかぁ?じゃ、日本に帰さないって言われたらどうするよ?」

「えっ・・・そ、そりゃ、そりゃ・・・いや、大学があるから帰るんじゃないかしら・・・卒業したいし」
「・・・大学ねぇ。道明寺に入るんなら必要ねぇのに」

「・・・ここまで来て中退はしないっていうことよ。でも・・・そんなこと言われないよ。多分・・・いや、絶対」
「ふぅん・・・」


放っておいてよ・・・本音を言えばあいつがどうしたいのかわかんないから全然予測が出来ないんだから。
ただ、私はこの状況が続くのが嫌なのよ。

終わるなら終わらせたい・・・続くのなら・・・・・・続く?
そう考えたら途端に頭の中が真っ白になる。西門さんの言うとおり、私は自分のことがよくわかってないのかしら。

一体何をしにアメリカに行くんだろう・・・決着をつけたいって、自分はどうしたいんだろう。
いっそ道明寺のことが大っ嫌いだって言えればいいのに。会ってないから・・・話せてないからそういう気持ちもないのかもしれない。


そうしてるうちに車は空港に着いた。


「・・・ありがとう。行ってくるね」
「あぁ、司に宜しくな。揉めるなよ?泣いてもお前、向こうじゃ独りだからな」

「泣かないよ!そんな歳じゃないって。帰ったら電話するね」
「迎えに来れるかどうかはわかんねぇぞ?」

「そういう意味じゃないよ!バスでも何でも自宅までぐらい1人で帰れるよ。バカ!」
「・・・そっか。じゃあな」

バタンとドアを閉めたら私がまだここにいるのにあっさり走り去っていく。
真っ赤に光る西門さんの車が見えなくなるまでその場に立ち尽くした。

見送りなら中まで入りゃいいじゃないの、そんな独り言を言いながら。


********


『総二郎様、今はどちらですか?』

「・・・今空港に着いたところ。お前、どこだ?」

『国際線駐車場の入り口ゲート近くの交差点付近にいます』

「わかった。そこに向かう」

電話は西門の若弟子の1人だった。
言われた場所に行くと道沿いの非常帯に西門の車が既に駐車していて、横に弟子が2人立っていた。
その車の後ろに停めると深々と頭を下げてる。そして俺が自分の車を降りると、西門の車の後部座席に置いていた小さな鞄とジャケットを取り出し俺に手渡した。

「お荷物はこれだけでよかったですか?向こうには出迎えの人間がいると思うので」
「ガキじゃあるまいし心配すんな。最後のパーティーが終わったら少しだけ遊んで帰るわ」

「・・・あまりごゆっくりも出来ませんよ?スケジュールは詰まってますし」
「いいんじゃね?久しぶりのアメリカだし。じゃあ、事故んなよ」

「お車、お預かり致します」
「行ってらっしゃいませ」


悪いな、牧野。
お前の1便あとで俺も同じ場所だ。

目的は違うけどな。




astronomical-clock-5706__340.jpg
関連記事
Posted by

Comments 4

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/07/21 (Sat) 13:53 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは

yuka様、こんにちは!

連日ありがとうございます。

ほんとですか?大人な感じ?むふふ・・・嬉しいな!
多分前のがとんでもなかったんですよ・・・実は終わったあと、私も気が抜けましたから(笑)

ドタバタしたのを書くのは早いんですが、こんなのが1番時間掛かります。
字だけで表現するって難しいですよね~!

同じような感じになってくるし。
話数が増える度に「これ、前も書かなかったっけ?」ってなります。あはは!

だから同じようなものは続けて書けない・・・。


始まったばかりなので展開をお待ち下さいませ。
悲しいお話しではございませんよ♥エロでもないけど。

2018/07/21 (Sat) 15:55 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/07/23 (Mon) 16:22 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんばんは。

お話しの方はまだわかんないでしょう(笑)
ボチボチお付き合いくださいませ。

つくしと司のことが終わってから総ちゃんが動く感じですかね・・・(笑)
まだお互いに何も始まっていないので。


暑いですねぇ・・・正直頭が働きません(笑)

そんな時にお出掛け・・・今はヤバくないですか?
お子さんがいらっしゃるからどうしても夏は行事があるでしょうけど十分に気をつけてくださいね?
お休みは十分にとらないと、ほんとに倒れちゃうから。

で・・・(笑)

ホントにされちゃったのね?申し訳ないけど笑ってしまいました!
そのお金は・・・どこに行くんでしょうね(笑)

2018/07/23 (Mon) 22:55 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply