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先日お袋から言われた仕事は政府主催のアメリカで行われる「国際文化交流会」ってヤツで、今年は各界の若手後継者が自分たちの継承する伝統文化をニューヨークで披露するって内容だった。
偶然だが牧野が司に会いに行く日と俺の出発日が同じ。何気に聞き出していた時間の1つ後の便のチケットを手配した。

素直に話して一緒に行けばいいような気もするが・・・それは面白くない。

何が面白くないって・・・牧野は一応婚約者に会いに行くんだから。


はっきりさせたいって言葉の本音は俺にはわからねぇ。
万が一、司が牧野を呼び寄せて、牧野がそれに応えたら?俺がアメリカにいることがわかっていたら、その場に立ち会えって話になるかもしれない。
そんな場面に居合わせるのなんか真っ平だ・・・面倒臭い!

まぁ、その可能性は低いとは思うけど。



空港に入ったら何故か牧野の姿を探してしまった。
わざわざ時間をずらしたんだから探さなくてもいいのに、目が自然とさっきの服装の女を探ってるのには自分でも驚いた。

「立ち止まってたら目立つな・・・もう、この辺にはいないかもだけど」


俺の便にはまだ時間的余裕があるからすぐそこの喫茶店で珈琲でも・・・と思ったら牧野を見つけた。
もう出国ゲートに向かうんだろう、立ち上がってこっちに顔を向けそうだったから慌てて背中を向けた。そしてわざと人混みの中に入るようにして足早にそこを離れた。

「ヤべっ・・・見つかったかな・・・」

しばらくして振り返ったけどもう牧野の姿は何処にもなかった。


喫茶店に入ってからスマホで司の動きを調べながら車の中での会話を思い出していた。


『・・・くくっ、相変わらずだな、お前達』
『仕方ないじゃん。私っていうより向こうでしょ?訳わかんないの』

『お前もだろ?・・・自分の事、よくわかってないの』


俺はどうなんだ?牧野にそう言った割には自分の事がよくわかってねぇのは同じなんじゃねぇの?
若弟子に自分の車を預けて荷物まで持ってこさせる、そんな小細工をしてまで牧野を迎えに行った自分の行動にも笑えるってのに・・・。

スマホの中の幼馴染みは相変わらずいい男だ。
顔つきが変わった。元々強いイメージしかなかったけど、それはまだ少しガキ臭い部分があって、我儘で暴れん坊だった子供の頃の延長みたいなもんだった。
それなのに今は・・・危なっかしい表情が抜けてすっかり企業人になりやがって。肩を怒らせて歩いていた男がやけに落ち着いて見えるじゃねぇか。

どんな女でも惚れそうじゃね?今の司を目の前で見て牧野が惚れ直したら・・・それもありか?


そう思った瞬間スマホの電源を落とした。何故かすげぇイラッとした。

4年間ってだけでムカついたのに、それを1年も延ばして放ったらかしやがって・・・。見た目だけ変わったってやってることは自分勝手じゃねぇか。


「時間か・・・仕方ねぇ、行ってくるか」


もう牧野は空の上のはず・・・その青い空に浮かぶ流れるような白い雲を見上げて、今、あいつが何を考えてるのかを考えていた。
ワクワクしてんのか・・・ドキドキしてんのか・・・それとも俺と同じ、面倒臭いのか。



*************



ジョン・F・ケネディ国際空港に着いたらすぐに手配していたリムジンでホテルに向かった。

向かうホテルは道明寺系列のメープルホテル。
政府主催の仕事の時は決まってこのホテルだったが、どの部屋を予約するかは各自の自由とされていた。俺は勿論、西門が年間契約している最上階の部屋に泊まる。


当然牧野もここだろう、そう思いながらホテルのロビーに入ると、正面にこのクソ暑いのに黒いスーツを着て厳つい顔してる日本人が立ってるのが見えた。
どう見てもこいつ、司んとこの人間じゃね?そんなヤツがロビーにいるって事は・・・まさかもう司が来てんのか?

フロントでチェックインしてからその男に近づいた。
そいつは俺の視線に気が付いて恐ろしい顔のままこっちに向き直った。だが、俺の顔を知っていたのかもしれない・・・瞬間驚いた顔をしたがすぐに姿勢を正して一礼された。

「・・・やっぱり、あんた道明寺の人間か?もしかして司、ここにいんの?」
「西門様ですね。いえ、司様はまだアメリカにはお戻りではありません」

「へぇ・・・じゃ、なんでこんな所に立ってんの?あんた、結構怖い顔してるから目立ってるぜ?」
「はっ・・・申し訳ございません、元々こんな顔ですから。本日は道明寺家以外の方が来られるのですが、予定時間を過ぎても来ないので気になりまして」

「・・・まだ来ない?」

「西門様、なにか・・・?」


あれ?・・・あいつ、まさかと思うけど既に迷子になってんのか?もしや空港で・・・うわ、ドジなヤツ!
1便後の俺の方がなんで先に着くんだ?

マジ世話が掛かる女だな・・・仕方ねぇから電話でもかけてやるかとスマホを取り出した。
ここに来てることは話してないから何て言おうか・・・スマホの画面だけ出して通話をタップする指が止まった。その時にこの男の視線がエントランスの方に動いた。

「あぁ、シャトルバスが到着したようです。もしかしたらあれに乗っているのかもしれません。このホテルにシャトルバスなんて滅多に来ないですからね」
「シャトルバス?・・・大勢で乗り合わせてくるヤツか」

「そうです。普通ここにはリムジンしか来ませんが、たまに利用する方もいます。失礼、見てきますので」

くくっ!そう言うことか。牧野なら財布の中身見ながらシャトルバスを選びそうだ。

司のヤツ、そこまでの手配をしてやらなかったのか。
牧野の性格すら忘れたのか?こいつは楽な道ばっか選ぶような人間じゃない・・・最悪歩いてくるかもしれねぇのに。


「悪いけど俺がここに来たことは誰にも言わないでくれる?あんたが誰を待ってるか知らねぇけど、司にバレたらまた引っ張り回されるかもしれねぇから!俺は仕事で来てるんだけど夜はさ・・・やっぱり遊びたいじゃん?」

「・・・畏まりました。西門様とはお会いしてないことに致します。ご心配なく」

「宜しく!」

急いでホテルの2階に上がってそこの柱の陰からロビーに入ってくる人間を確認していた。
そのうち今の男の横にくっついて、このホテルに全然似合わない牧野が入ってきた。あの貧相な格好でオドオドしやがって、そんな鞄なんて胸で抱えなくても誰も盗りゃしないって!

「ぷっ!・・・日本だと気にならなかったけど、マジで浮いてんな、あいつ・・・。服ぐらい買ってやりゃ良かったかな」


司が泊まらせるんならここの最上階。俺と同じ階だから急いで先にエレベーターで部屋に向かった。


**


俺の部屋は司の部屋よりも少し小さいがこのホテルでは最高級クラスの部屋だ。
1人でしか寝ないのにキングサイズのベッドにゲストルームが3部屋。勿論リビングの窓は床から天井まで繋がってる全面ガラスでマンハッタンの街を見下ろせる。

久しぶりに入ったこの部屋で荷物を置いたらすぐに仕事関係者からのメールが入った。


着いた早々だが今日これからこのホテルの大宴会場でオープニングセレモニーがある。
点前はしないが簡単な挨拶と顔合わせのようなもの。書道や華道のように作品展示出来るようなものが数点出されて、後は政府関係者の話を聞いて、招待客が数名参加するぐらいの退屈なセレモニーだ。

明日と明後日の仕事は場所が変わってこのホテルでは行われない。
この期間にもし司と牧野が会うことになっても俺とは出会わないだろう。



今・・・すげぇ近くにいる牧野。

あいつがどんな顔して司の部屋にいるのかを考えたらやっぱり何故かイラッとする。

着物に着替えて鏡を見る・・・いつもの俺の顔になってるか?
いや、残念だが少し嫉妬深い目をしてやがる。

「やべ・・・ピアス外してなかった。仕事する気になってねぇな・・・」


左耳のピアスを外して右手の指輪も外した。
もう1度鏡を見直して茶道家、西門総二郎に戻る。気持ちを入れ直してこの部屋を後にした。




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2018/07/23 (Mon) 15:24 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは🎵

meimei様、こんばんは。

あっはは!素直じゃないですか?素直ですよ~!
いや・・・素直じゃないか。

まだ総ちゃんからしたらつくしはフリーじゃないですもん。

無理矢理奪い取るタイプじゃないですからねぇ、今後の動きを見ててください。

たまには私も真面目に書くんですよ(笑)
ただし、調子に乗るとギャグに走るので要注意です!

今日はありがとうございました。

2018/07/23 (Mon) 22:40 | EDIT | REPLY |   
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2018/07/24 (Tue) 08:13 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんばんは。

このお話、総ちゃんをめっちゃ大人に書きたくて始めたんです。
それなのに既に嫉妬してるし(笑)

長いこと巫山戯た総ちゃんを書いたせいで、格好いい総ちゃんが書けなくなりました・・・。
でも、この次の話がシリアスだからどうしても気分変えたいのにっ!

意外と後遺症があるな・・・「喧仲」(笑)

この話が終わる頃には格好いい総ちゃんを取り戻しますっ!!

2018/07/24 (Tue) 22:48 | EDIT | REPLY |   

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