FC2ブログ

plumeria

plumeria

雨の中で急に倒れた牧野を抱きかかえて車に乗せ、急いで向かったのは花沢の系列病院。
耳が聞こえないという症状から耳鼻科の医師と・・・何故か精神科の医師が診察室に入った。

そして牧野を診察した後で俺が呼ばれた。
本来は家族にしか出来ない説明を特別に・・・殆ど俺が強要したんだけど。
牧野は俺が入っていくのとは別の出口から、車椅子に乗せられて診察室を出て行った。今日は様子を見るために入院すると聞いたから、特別室を手配させてそこに入るように指示した。

診察室には数人の医師と看護師がいて、椅子に座ってカルテに記載しているのは精神科の医師のようだ。


「どんな様子なの?耳・・・異常があった?」

「いえ、おそらくですが耳の機能ではなく精神的なものではないかと思われます。実はここに来て検査中に聴力は回復していました。なので話は聞けましたよ。雨の音・・・それが怖いとそればかりを繰り返しましたね」

「雨の音・・・」

「何か思い当たりますか?ご本人は話そうとしないので無理には聞いておりません。もしその雨の音に関する事象が1ヶ月以上前ならPTSD(心的外傷後ストレス障害)だと思われます。雨に関するなにかのフラッシュバック、そういうものではないでしょうか?」


思い当たることならある。もう何年も前に。
それから雨が嫌いになって、その日は不安定になる・・・今まではそれだけだったのに。

PTSDは大きな心理的ストレスを実際に経験すること、あるいはそういった場面に遭遇することなどを通して発症する。
原因となるものは「大きな自然災害」「戦争などで生命の危機を感じる」「交通事故や航空事故」「性的犯罪」「身体的暴行・いじめ」「家族の悲劇的な死」・・・要因は様々だ。

実際にPTSDを発症するかどうかは遭遇した事象そのものから判断することはできない。同じような出来事を経験しても、心理的なストレスとして感じる程度は人それぞれで、PTSDを発症する人間とそうでない人間は出てくる。


「それでこんな事が起こるの?牧野が雨に関する事で酷いストレスを受けたのはもう随分前・・・その間に何度も雨は体験してる。確かにすごく嫌がって部屋から動かなくなるけどね」

「それこそ個人差ですね。ある日急に起きることもあれば突然起こらなくなることもある。その人の心の中の問題です。そこが完全に回復しないと一生抱える人もいます。もしくは1度起こしても2度と起こらない人もいるんです。聴力に異常を起こすというのは珍しいですが、音が関係しているのならあり得ます」

「今後は?」

「本人と相談ですが持続暴露療法、眼球運動脱感作療法などの心理療法的なアプローチと、薬物療法を併せて行いますが、それらが全部必要な訳ではありません。今日一日では今後の治療方法の決定は出来ないでしょうね。少し話し合わなければ・・・」

医師によるとこの牧野の突然の難聴は原因とされる状況から回避しようとしているらしい。
つまり牧野は雨の音を聞きたくなかったということ・・・だから自分の聴力を自分で抑え込んだんだ。

1度こうなると自分の存在に否定的になる人もいるという。
自分に罪があるように感じたり、世界中が危険だと感じられたり、誰も信用できない・・・楽しさなどを感じにくくなるらしい。
そして常に感情が張りつめ、その結果睡眠障害が起こったり、怒りっぽくなったり、逆にちょっとしたことでびくつくなどの症状がみられる。


笑顔が最大の魅力の牧野から・・・笑顔が消える?
そんなことは考えられなかった。

「1番いいのは原因となった状況をあえて想起、または体験させることです。そしてそれが危険ではないと思わせることで症状の軽減、発症しなくなるという治療方法です。そして、これは1人で行ってはいけません。だからといって誰でもいいわけでもない。1番いいのは専門家ですが、患者さんが信頼している人でなくてはいけませんね」

「ありがとう・・・牧野の所に行ける?」

「はい、もう大丈夫でしょう。もし、何か発作が起きればすぐにお知らせ下さい」


俺は牧野が待つ特別室に向かった。

雨はここまではその音を響かせていない・・・病院の中は静かだった。


************


気が付いたら病院にいた。
花沢類が連れてきてくれた総合病院の診察室。初めに入った時には何も聞こえなかった。

彼と離されて数人の看護師さんとお医者さんに囲まれて、耳が聞こえないからどうしようかと思ったらホワイトボードが出され、ペンを持たされた。
筆談・・・私との会話は筆談でするからとお医者さんがそこに書いた。

第一問は「耳は聞こえませんか?」

私は震える手で「聞こえません」と書こうとしたら何か小さな音が聞こえだした。

「どうしましょうか?精神科のドクターも呼びましょうか?」
「そうだな。まずは聴力の検査からだけど、どの程度聞こえないかがまだわからないから・・・」

人の声・・・ここにいる人の声が微かに聞こえた。


「あ、あの・・・聞こえました。今まで・・・聞こえなかったんですけど・・・」

「あら!牧野さん、聞こえるの?」
「じゃあ会話は可能かな?少し耳の検査をしようか?聞こえる?」

「はい・・・聞こえます」


この後に精神科のお医者様が来て色んな事を質問された。
話し方がとても穏やかで優しい笑顔で、ゆっくりと・・・私が言葉を詰まらせても焦らなくていいと温かい手で背中をさすってくれた。
気持ちが落ちついてから今日の事を話した。


自分は雨が嫌いなこと。
空が曇ると落ち着かなくなること。
雨が降り出すと自宅から出られなくなること・・・学校だと1人で帰れないこと。


「これまではどうしていたの?雨・・・1年間だと結構降ってるよ?」
「・・・小降りの時はなんとか頑張ります。酷くなったら学校を休むこともあります。どうしてもの時はタクシー使ったり、友達に頼んだりします。それでもこんな風になることはありませんでした」

「そう・・・今日は変わったことがあったの?」
「変わったこと?・・・あぁ・・・」


傘に入りました・・・花沢類の傘に。
でも、その言葉は出せなかった。花沢類が悪いわけじゃないし。

「話せるようになったらでいいよ。今日はここに泊ろうね。明日は晴れるらしいからね・・・」
「はい・・・」


歩けないわけじゃなかったけど車椅子に座らされて病室を出た。
違うドアから入っていく花沢類の姿をチラッと見掛けたけど、私は顔を背けた。


花沢類は知ってるから。
もうわかってるから・・・私がおかしくなった理由なんて。


彼の手配で特別室が用意されてて、まるで何処かのお屋敷のリビングみたいな部屋に入った。
そこから外を見たらまだ雨は降っていて、窓ガラスに雨粒がぶつかっていく。

もう真っ暗なんだね・・・。
窓についてる雨粒で外の照明がキラキラしてる。凄く・・・綺麗だ。


しばらくしたらノックする音が聞こえて彼が入ってきた。
いつもと変わらない、優しい笑顔の花沢類・・・静かに歩いて私の側に来て横に立った。


「今日はここに泊るんだって」
「うん・・・そうみたい。ごめんね、急に具合が悪くなって」

「そんなこと謝ることじゃないでしょ?いいよ・・・俺もここに残るから。牧野を1人にはしないからね」


傘の中の続きかしら。
花沢類が抱き寄せてくれた腕が今は私の肩の上にある。


・・・すごく温かい手が





the-186295__340.jpg
関連記事
Posted by

Comments 4

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/06/21 (Thu) 13:31 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2018/06/21 (Thu) 14:34 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんばんは。

あっ、ホントだ(笑)
両方びしょびしょだ!気が付かなかった。・・・梅雨だからねぇ・・・。

この話は今からボチボチですかね。
つくしちゃんに変化が出てきますのでちょっと待っててね♥

私も一年中傘を差さない女です(笑)ふふふ、傘、苦手。

2018/06/21 (Thu) 23:40 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さゆ様、こんばんは。

とんでもございません、嬉しいですよ。
ただ、お返事が遅くなるので申し訳ないと思ってます。

あはは!娘さんがいらっしゃるんですね?
私の娘は松潤がすきで、つかつくです。はい(笑)全然私とは違うんですよね。

小栗さん(笑)

なんか別の役を演じてても「類、頑張ってるなー・・・」って思うんですよね(笑)いや、小栗さんだよ?って思うんですけど。
だからauの三太郎見ると「総ちゃん、頑張ってるなー・・・」って思います。いやいや、松田君だってば!もう病気ですよね・・・。

私の会社で以前、「売上げ達成しなかったら」の罰ゲームですごいのあったんですよ!
10個ぐらいあったんですがその中に・・・


『花沢類の”ま~きの”を皆の前で言う』


若い子が考えたんですが、朝見たときに心臓がバクバクしました!マジで~!!って。
結局、その罰ゲームが18歳の新人で「花沢類」を知りませんでした。興味なかったのね・・・。

その知らなかったことに激怒しましたが、私の正体を知られるわけにもいかず、知らん顔してました。

花沢類を知らない・・・恐ろしい・・・。

2018/06/21 (Thu) 23:58 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply