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「ご隠居様、宗家の総二郎様がいらっしゃいましたよ」
「うむ・・・入りなさい」

爺さんの渋い声が聞こえて、開けられた障子の前で頭を下げていた。そしてまずは初めの挨拶・・・ここですでに喉に声が詰まった。

「コホッ!あ、失礼しました。お爺さま、お久しぶりでございます。総二郎です。お元気でいらっしゃいましたか?」
「儂が病気になったらすぐにそっちにも連絡がいくだろう。何もないということは元気ということ。わかりきったことを聞かなくても宜しい」

「・・・それはすみませんでしたね。一応ご機嫌伺いしておかないといけないかと思っただけですよ」
「機嫌を伺わないといけないぐらい顔を見せないのが気になるならもっと頻繁に京都に来ればいい。儂に会いたいだろう?」

「・・・相変わらずお口が達者でいらっしゃる。ですが、このような話が続けば本来の挨拶が出来ません。そろそろご勘弁いただけませんか?」

くそジジイっ!どうしていい歳してイチイチ言い返すんだ!
その思いが顔に出そうなのをグッと堪えて部屋に入ると俺の後から穂華も入ってきて俺の隣に座った。

「・・・なんでお前がそこに座るんだ?穂華は挨拶終わってんだろ?」
「あら、宜しいじゃありませんか?ねぇ、お爺さま」

「うむ、穂華は総二郎のことが気に入っておるのだからそこにいて良かろう」
「・・・お爺さま、穂華1人が気に入ってるだけで俺・・・失礼、私にはこの度紹介したい人がいると申し上げておりますが?」

「そうじゃったかな?・・・おぉ!あの石庭に大の字で寝た女子おなごかな?」
「は?大の字?」


爺さんが竹中さんに「あれを」と、言うと部屋の隅の方から何やら持ってきた。どうやらアルバムのようだけど・・・?
と、思った瞬間思い出した!まさかあの写真を爺さんに送ったんじゃねぇだろうな!

「ははは!これには流石の儂も笑ったわ!こんなもの送ってくるとは大したもんじゃなぁ!総二郎」
「お爺さま!見せていただけますか、ちょっと・・・その写真を!」

爺さんが「ほれ!」と言って差し出したアルバム・・・確かにそれはあの時に撮ったつくしの振袖姿。別に可笑しくねぇし、さりげなく修正の跡も見られるがなかなか可愛く撮れてんじゃん?って思ってめくっていった。
途中からは水色の振袖に替えたからそれも綺麗なポーズで収められてる。

特に問題はないが・・・って最後の1枚をめくったら!

「うわあっ!なんだこりゃ!どうしてこんなものを貼り付けてんだーっ!!」
「あら、どんな感じですの?・・・まぁ!」


そこに写ってるのはつくしがみんなに言われて石庭に近づきすぎて後ろ向きに転けたヤツ!しかも俺が助けようとしたのに振袖が重すぎて上から押さえ込むようにして一緒に倒れ込んでるとんでもない写真だった!
確かにつくしは大の字・・・で、俺が顔面から石庭に・・・。

「面白いことをしよるのぉ、総二郎。見るからにそこは儂が一番大事にしておった石庭だろう?よくもまぁ、そこに寝そべるような女子を選んだものじゃな。その子よりお前の度胸に感心したわ!」
「お、お爺さま!これには事情があるのですよ、巫山戯て撮ったわけではございません!彼女が皆に下がれとか下がるなとか言われて訳がわからなくなってですね・・・!」

「写真1枚撮るのにこのように訳がわからんようになるような女子はろくな茶も点てられんだろう?違うかの?」

「・・・茶に関してはまだまだ勉強中ですが真剣に取り組んでおります。そこはご理解いただきたい。確かに一般家庭の娘ですから、何も知らないまま西門で茶を始めたというのは間違いないのですが筋は悪くございません。私が指導しておりますが、何年かしたらいい茶を点てると信じております」

爺さんがニヤッと笑った。すげぇ気味が悪い・・・。

「まぁ、いい。このお嬢さんはこちらに来てから儂の目でしっかり判断させてもらうとしよう。それでは今日はこれから花街かがいに繰りだそうかの。総二郎も久しぶりじゃろ?馴染みの舞子はなんと言ったかな?」

「馴染みの舞子などおりませんって!そのようなことを彼女の前で言うのもおやめ下さいね。楽しんでおられるようですが・・・」
「お前をからかうのは昔から儂の楽しみなのでな。ほっほっほっ!」

楽しんでたのか!この爺さんは!
隣で涼しい顔をしていた穂華は「私は花街は苦手ですわ」と知らん顔したので、爺さんと一乗寺の古狸数匹と一緒に祇園の街へと向かうことになった。

もしかしたらつくしが1日遅れてくるのは正解だったかも・・・既に俺はこの時点でクタクタだった。
それなのに明日はつくしをここに連れてきて爺さんに挨拶させて明後日には正午の茶事。その次はつくしの茶会、最後は関西西門を集合させての野点・・・。

流石の俺も心痛で身体が持たねぇかも・・・。


このあと隙を見てお袋に電話を入れたが出なかったから親父に電話して文句を言った!

「なんで爺さんにあんな写真を送ったんだ!おかげで大笑いされたじゃねぇか!」

『・・・何をそんなに怒ってるんだ?私は詳しくわからんが写真屋が「全部送るんですか?」って聞いてきたらしいから母さんが「全部送ってくださいな」って答えておったぞ?時間がなかったから写真屋が直接京都に送ったし、つくしさんはせっかくだから全部送ってくれって言ったらしいし・・・何かあったのか?』

「1回自分たちで確認しろよ!会う前から印象ぶち壊してどーすんだよっ!」

『逆より良くないか?実物を見て喜ばれた方が・・・』
「そんな問題じゃねぇよっ!!」

実物が不安だから写真送ったようなもんじゃなかったのか!どいつもこいつもっ!!


**********


西門が贔屓にしているお茶屋はその街ごとにいくつかあった。

京都では”花街”のことを”かがい”と呼び、祇園甲部・宮川町・先斗町・上七軒・祇園東の5つの花街を総称して”五花街”と呼んでいる。どこも舞妓・芸妓がいて、置屋・お茶屋があるが歴史も成り立ちも違うわけだ。

今から行くのは先斗町らしい。
鴨川と木屋町の間、三条から四条に至る通りにあって、ポルトガル語の「ポント」(”先”の意味)が由来といわれ、夏には納涼床が出るところだ。ここの芸子が踊るのは尾上流。因みに上七軒は花柳流、祇園は藤間流。
街ごとに踊りまで違うってのも不思議な気はするんだけど、特に派閥があったり嫌がらせがあったりなんて野暮な事はない。

のんびり、まったりと見える世界だがすげぇ厳しい修行をして今日まで京舞を継承している”伝統芸能の担い手”、それが舞子・芸子だ。簡単に「芸者遊び」などと言う言葉で飲んで遊んで騒ぐって場所じゃなくて、全然空気感は違うんだけどこの人達の客のもてなしを心から楽しまなくてはいけないって思っている。


それなのにこのくそジジィはっ!


「ほれほれ、これが儂の孫の総二郎じゃ。見た目だけはイイ男であろう?昔の儂とそっくりなのじゃよ!」
「ほんに・・・お兄さん、素敵なお顔どすなぁ。ふふっ・・・こっちが照れてしまいますぅ~」

「照れる必要などないない!触りたいなら触らせてやろうか?」
「嫌やわ~!そんな触るやなんて~!」

「・・・お爺さま。ここはそのような場所ではございませんよ。まだそんなにお酒も入っていないのにお巫山戯になっては彼女たちに失礼です」

こんな座敷で触る触らないの話を出すなってんだ!こんな事、このお茶屋の女将に知られたら追い出されるってのに!
まぁ、そこはこう見えても西門の爺さんだから着崩れたり、ホントに触ったりなんてことはしないんだけど。あくまでも冗談の範囲・・・で、あって欲しいが、今度は野球拳なんかを始めやがった!

歳を考えろ!何歳になると思ってんだ!
そして京都の連中は誰も止めない。もう止めても無駄だとわかってるのか、それとも一緒になって遊んでるのか?

野球拳と言っても芸者遊びの野球拳は服を脱ぐわけじゃない。
じゃんけんに負けたら酒を飲むだけ。

「それじゃ儂が負けたら総二郎が酒を飲むからの。それでよいな?」

「はぁ?!私がお爺さまの代わりに飲むんですか!やめて下さいよ、そんなの!」
「勝てば良かろうが!」

そう言ってものの見事に20連敗しやがった!なんでこの俺が爺さんが負けたからって酒を飲まされるんだっ!
だから嫌だったんだ、この爺さんとこんな所に来るのは!

絶対にわざと負けてやがるな・・・ここの舞子・芸子と下話が出来てるとしか思えねぇぐらい負けてんじゃねぇかっ!

「おかしいのぉ・・・なんで勝てんのじゃろうか」
「お爺さまがグー、チョキ、パーの順番を一切変えないからです。わかってやってますよね?」

「ほう・・・成長したのぅ、総二郎」
「・・・えぇ、一応25歳ですから」


丁度この時間にお袋とつくしがエステで自分磨きしてるだなんて思いもせずに俺は芸子相手に大酒飲んでいた。
マジで気分が悪いのに美味くもない酒を飲んで、目の前で狂ったようにじゃんけんする爺さんを眺めながら・・・。




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2018/06/11 (Mon) 12:56 | EDIT | REPLY |   
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2018/06/11 (Mon) 13:06 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんばんは。

総ちゃん、かなり遊ばれておりますね!
そうなんですよ、怖いから嫌なんじゃなくてふざけた爺さんだから嫌なんです。

自分が遊ばれるのがわかってるから。
この爺さんにつくしちゃん・・・そりゃ何も起きないわけがない!

これからしばらくは京都珍事件でお楽しみください。ははは!


え?西門家楽しい?
よくもこんな設定で100話越えしますよね・・・。

自分で自分が信じられません。ギャグしか書かなくて100話越え・・・。
ヤバすぎる(笑)

2018/06/11 (Mon) 19:58 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんばんは。

あっはは!ここにいた!一見さんお断りにあった人!(笑)
ホントにそうなんですねぇ・・・面白い!お弁当だけってそこで食べるの?
その弁当持って外に出るの?

それなのにその値段・・・流石京都ですね。
私も子供のアパート探しで京都に行ったときにわかんないから適当に入ったお店が「隠れ家風京料理の店」って書いてあって、調べもせずに母と娘と入ったんです。

ホントに暗くて狭くて古くてねぇ・・・でも、お値段はかなり高くて3人で軽く10000円は超えました。
お昼ご飯の軽食のつもりだったのに、確か1人が4500円か5000円でした。
母に払わせられないので私が出しましたけど。

夜もね、何処に行ったらいいのかわからないから京都駅近くの和食店に入ったら・・・高かった(笑)

ヤバい・・・京都。


あっ!プル千代姐さん、この時ご指名でしたから♥
もちろん行きましたよ♥総ちゃんと朝まで飲みました。嫌やわぁ~!それ以上聞かんといて~♥


あっ!そうそう!
3枚のお札発見しましたので準備してます(笑)
今週中には読めるようにしますねー♥

2018/06/11 (Mon) 20:07 | EDIT | REPLY |   
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2018/06/11 (Mon) 20:51 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんばんは~!

総二郎さんったら噂通りのお人でプル千代、身体が壊れそうでしたわぁ~。
あんなの毎日やったらホンマに早死にしますわ~。

詳しゅう説明を・・・どすか?

堪忍しとくれやす~。
2人だけの秘密ですのんや~♥

(アホか、私・・・)

2018/06/11 (Mon) 21:13 | EDIT | REPLY |   

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