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毎年必ず牧野からメッセージカードが届く。
新年と俺の誕生日の2回。もう今年でメッセージカードは20枚になった。

そのカードは全部机の引き出しに入れたまま・・・見返すこともしないけど。

俺が贈るのは牧野の誕生日だけ。
その時に思いついたものをカードと一緒に贈った。意味深なものは贈ったりはしない・・・マフラーだったり帽子だったり、時には可愛らしいぬいぐるみだったり。
贈る言葉も毎年同じ・・・『誕生日おめでとう。素敵な1年になりますように』・・・毎回1輪だけ薔薇の花を添えて。

そしてお返しにその薔薇を持った牧野の写真がメールで送られてくる、それだけが楽しみだった。
それも1度見ただけで見返しはしない。幸せそうな牧野の笑顔は俺の頭の中に残ってるから。


きっと総二郎は毎年それを見て嫌な顔しただろうけどね。



**



「そろそろ日本ですね。10年ぶりですか・・・懐かしいでしょう?」
「そうだね。でもすぐに北海道に飛ぶから君はそのまま日本本社の方に向かってくれる?俺は少しだけ休暇をとるようにしてるから」

「はい、わかりました」


今日、俺は10年ぶりに日本に戻ってきた。
もう2度と牧野には会わないって決めてフランスに行ったけど、毎年書いてくれる「会いたい」って文字にとうとう我慢出来なくなって。それに2人に4人目が生まれて「見て欲しい」って初めて書いてあったから。

それとは別に、もう1度その姿を見たくなった人物がいる。俺は空港でその”彼”と待ち合わせていた。


俺が出産に立ち会った牧野の最初の子供・・・蒼。

この子が総二郎の代わりに西門に戻るだなんて思わなかった。牧野の元を離れて茶道を選ぶだなんて・・・やっぱりあいつの息子なんだなって思った。
名寄では毎日蒼を抱き締めていた牧野・・・今は1人じゃないけれど、それでもあの時支えだった蒼を自分の手元から離すのは辛かっただろうと思う。たとえそれが”希望”を持った別れであっても・・・。

その彼を連れて北海道に・・・牧野に会いに行くことにしていた。


羽田に着いて入国手続きを済ませて、その足で国内線に向かった。
待ち合わせの場所はこの辺りだったはず、と辺りを見渡したら・・・そこに彼は立っていた。

蒼には俺がわからないだろうけど、俺にはすぐにわかった。総二郎そっくり・・・強いて言えば総二郎よりは穏やかな顔つきってぐらいで目元は幼い頃の総二郎そのままだった。
少し不安そうに辺りを気にしている彼の傍に近寄っていったら蒼も俺に気がついた。

「ごめん、待たせたね。蒼・・・だよね?」
「花沢さん、ですか?」

「そう、宜しくね。いきなり呼び出してごめんね。本当はこんな時期に北海道に戻ったら総二郎に怒られるんでしょ?」
「はい・・・夏休みに1度とお正月にしか会えないことになっていますから。でも、俺・・・僕も妹に会いたいので。生まれたのはクリスマスイブだったのでお正月休みも一緒にって家元が北海道に帰らせて下さったんです。でも、あれから半年経ってるから・・・」

「きっと大きくなってるね。俺は君以外の子供に会うのが初めてだよ」

「僕は会ってるんですか?ごめんなさい、記憶になくて・・・」
「あはは!そりゃないよ。だって生まれた時だからね。俺は君がこの世に生まれてきた瞬間に傍にいたからさ」

すごく驚いた顔して蒼は俺のことを見ていた。
あの小さかった蒼がこんなに大きくなって・・・俺の指を握り締めてたこの手は、今では未来の西門を背負う手になったんだね。


「驚かせてやろうね。心配ないよ、総二郎が何か言いだしたら俺が止めてあげるから」
「お父さんと仲がいいんですか?」

「くすっ・・・うん、すごく仲がいいよ。趣味が一緒、って感じかな?」
「そうなんですね?お父さんはあまり東京の話はしなかったから」

そうだろうね・・・蒼に聞かせるにはまだ早いかな。色んなことがありすぎた俺達だからね。
でも、蒼が大きくなって恋をして将来に悩んで、もし苦しい選択が必要になったら、きっとその時には2人の経験がお前の力になってくれるよ。

身長はまだ150㎝を超えたぐらいだって・・・その小さな肩を抱いて北海道に向かう飛行機に乗った。


**


新千歳に着いてから牧野にメールを入れた。
「新千歳に着いたよ。今から行くからね」・・・蒼のことは何も書かなかった。
返事はすぐに来た。「待ってるよ!場所は大丈夫かな?迷子にならないでね?」だって。迷子になんてならないよ、タクシーなんだし、強い味方がいるんだから。

俺がその画面を蒼に見せたら、彼まで「お母さんらしい!」って笑っていた。

そして運転手に住所を告げて、2人で黙ったままタクシーの窓から見える景色を眺めていた。
蒼は懐かしかったんだろう、窓に手を当ててキラキラした目で田畑が続く光景を嬉しそうに見ていた。車で1時間もかからないとは聞いていたけど、走ってる間に景色が急激に変わることはなかった。

こんなに長閑な所なんだね・・・総二郎と2人で選んだ”生涯の地”は。


「花沢さん、もうすぐです」
「そうなの?へぇ・・・結構緑が多い所なんだね」

「はい!昔は妹と一緒によく虫取りに行きました。花もお母さんとお父さんが沢山植えてて花畑があって・・・あ!見えてきた!」

蒼の言葉で俺も少し前方に目をやると大きな門構えの屋敷が見えてきた。
確か以前は西門の別荘だったと聞いてるからこのぐらいの規模はあってもおかしくはない。この辺りでは一際目立つ日本家屋の前でタクシーは停まった。


小さな子供が2人、庭で遊んでるのが見える。
何人かの着物姿の人間がウロウロしてる・・・話には聞いていたけど、ここで総二郎が茶道を教えてるんだって思うと不思議だった。

東京の西門とは比べものにならない殺風景な土地。吹いてくる風に土の匂いが交ざってるような自然に囲まれた家。
落ち着いた暮らし、そんな空気が流れていた。


車を先に降りたのは蒼だけど、俺の後ろに隠れて何故か前に出ようとはしなかった。
くすっ・・・まだ総二郎が怒ると思って怯えてるんだね?そういう所は牧野に似てるのかな?


「行こうか、蒼。大丈夫だって!」
「は、花沢さんが先に行ってください・・・僕はあの・・・」

「ここまで来て入らないとか言わないでよ?ほら、自分の家なんだから!」


その時、蒼にはすごく残念だけど後ろから声が聞こえた。しかも彼が1番恐れていた人物の声。


「類?・・・それに、お前・・・蒼か?」


その声に2人同時に振り向いたら総二郎がすごく驚いた顔して立っていた。手には牧野に頼まれたのか買い物の袋を持って、それになんの花かわかんないけど数本の花を抱えて。
10年以上会ってないのにまるで昨日も会ってたかのような不思議な感覚。懐かしい・・・っていう言葉は浮かばなかった。

「あぁ、総二郎。久しぶりだね、元気だった?」
「・・・え?あぁ、俺は変わんねぇよ。お前も相変わらず飄々としてんな。思ったより早かったな」

「そう?時間通りだよ。総二郎が田舎慣れして時間がのんびりしてんじゃないの?」
「はっ!お前に言われたかねーや!」

俺達のこんな会話を蒼は固まって聞いていた。
こうしてみると同じ顔・・・思わず噴き出しそうになるのを必死で我慢したよ。でも蒼の方は多少震えてる気がしたけどね。
総二郎はまたゆっくり歩き出して俺じゃなくて蒼の前で止まった。

「どうした?なんでここにいる?」
「あ、あの・・・」

「家元になんて話したんだ?まさか家に帰りたいって言ったんじゃないだろうな、蒼」
「そうじゃ・・・ありません。帰りたくて我儘言ったわけではありません」

「じゃあどうして類とここに来てるんだ?」

蒼は顔を真っ赤にして俯いてしまったから俺が説明しようかと思ったら総二郎に手で遮られた。

「お前の口から聞きたい。どうして今、この時期に戻った?約束では今度の8月のはずだ。こうやって何かある度に帰っていたらそれが逃げ癖になる。そう言ったはずだが?」

「蒼・・・自分の気持ちをきちんと伝えな?これは怒られてるわけじゃない、話し合いだよ?」

総二郎の言葉に俺も付け加えてやったら、1度大きく深呼吸した後で蒼はキッと顔を上に向けた。


「花沢さんから毬莉を見に行くから一緒に行こうと東京の本邸に連絡をいただいたんです。お父さんが言う通り、次に帰るのは8月のお休みだと決めていました。でもお父さん達と久しぶりに会う花沢さんとみんなが同じ時間を過ごすのであれば、自分もその場にいたいと思ったんです。僕はこれから先、自分の家族と過ごす時間はすごく少ないんです。それは覚悟して東京に行きました。でも・・・やっぱり特別な時は一緒にいたいと思ったんです。ですから8月はここには帰りません。その代わり今回はお許しいただけませんか?」

「類は俺の幼馴染みだ。お前との繋がりはないだろう」
「でも、花沢さんがうちの家族は特別だと言いました。それなら僕にとっても特別な人です」

11歳の必死の願い・・・総二郎は子供相手でも真剣に聞いていた。
そして、フッと軽く笑って頭を撫でてやった。


「決心が揺らいでないのであればそれでいい・・・お母さんが喜ぶから行ってやれ」


お母さん・・・牧野のことを子供の前ではそう呼ぶんだね。
覚悟はしていたけど少しズキッとした。


家族になったんだって・・・改めて感じてしまうから。




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2018/06/06 (Wed) 13:33 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは!

えみりん様、こんにちは。

ふふっ!蒼のイメージはこんな感じなんですよね~♥
総ちゃんに似てるのは蓮だから。(性格が)

お利口さんの長男って感じにしてみました。

本編では最終話に少しだけ書いた類の再会シーンです。
泣けるって感じじゃなくて爽やかに?(笑)

推定年齢35歳辺りの類君と総ちゃん。
私はほとんど25歳前後の話しか書いてないので30過ぎたのが想像できないから
会話は全然変わってない(笑)

まぁ、お許しを。


梅雨入りしましたねぇ!
入ったばかりで言うのもなんですが、梅雨明けを想像して嫌になりました。

夏が来るのねぇ・・・。

あっ!そうそう・・・ひよこ、の話ですが。
私はですね、少し変わっておりましてね・・・。

まず皮だけを取り(笑)中身を先に食べてから中身のないひよこを作り、そのあと皮を折りたたんで食べます(笑)
わかるかなぁ・・・?

2018/06/06 (Wed) 18:23 | EDIT | REPLY |   
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2018/06/06 (Wed) 23:59 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは。

自分で書いてて言うのも何ですが・・・見返さないってすごくないですか?
私、嬉しいことあったら何回でも見るもん!

写真もそうだよね!イベントで書いたイラストで気に入ったものがあったら毎日自分で見てニヤニヤするもん!
それが好きな人の写真なのに1回見たらもう見ない・・・絶対に嘘だ!

実は類の部屋には牧野の写真が押しピンでコルクボードにバンバン貼られてるはず・・・(ストーカーかっ!)


総ちゃんの買い物袋・・・(笑)
一応イメージではお洒落な紙の袋が理想ですが、住んでるところが田舎なのでやっぱりスーパーのビニール袋ですかね!
お花はねぇ・・・近くの家から珍しいお花をいただいたって感じで書いてます。

それでも格好いいのよっ!!

喧仲書きながらだから、こんな総ちゃんは痺れますわ!(笑)


実はね・・・1話また延びた・・・(笑)

2018/06/07 (Thu) 17:20 | EDIT | REPLY |   

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