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plumeria

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すげぇ胃が痛い・・・。マジで目眩がする。
どうしてだ?今まであれだけ稽古してどうして湯を溢す?

それもこれも俺の隣にいるこの人が関係してるとしか思えない・・・この人を見てからつくしがおかしくなった。
だけどこの席でそれを聞くわけにもいかず、俺は最後まで静観するしかないのに爺さんまでがくしゃみして・・・それも絶対にわざとだろう!

そして最低なのが芸者発言・・・!
爺さんが遊んで俺は酒を飲まされただけなのに・・・しかも誰が朝までだっ!自分がジジィだからさっさと眠くなって帰ったくせに!
つくしまでが素に戻って俺の事を睨んだが、そんな顔は茶室では厳禁だろう!


「とにかく・・・お茶をいただきましょうか」

急に声を出したのは詰の佐々木さん。
正客しか言葉を出さないはずが皆で喋ってとんでもない茶席になってないか?そう思うのは俺だけか・・・?

つくしは気を取り直して爺さんに茶を出す作法に入った。
右手で茶碗の右横をとり左手に受けて、右手を少し手前に持ち替え膝の右横に仮置きする。仮置きした茶碗の前に膝を回し、右手で茶碗をとって、左手に受け掌の上で茶碗の正面が真向こうになるように外回しに4分の1ずつ2回ほど回す。茶碗の正面を向こうにして客へ差し出す。

「お点前ちょうだいいたします」

爺さんが言葉を出して茶を飲み、その間は静かに待つ。
作法に基づいて茶碗を返し、その後の次客の俺と詰の佐々木さんと続いてそこは問題なく終わった。薄茶は何度でもいただくことが可能で亭主側から終わりを告げることがない。
だから佐々木さんが飲み終えたら普通は爺さんがこの後の点前をどうするか俺達に聞くはずだ。

だけど何も言わない。あれ?と思って爺さんを見たらニコニコしたまま待ってる。
つまり、2巡目・・・どーしてそういう意地悪をするんだっ!このくそジジィ!

つくしもまさか2巡目に来ると思ってなかったのか眉を傾げて爺さんを見ていた。いや・・・その顔はやめろって!
俺が目で合図したら軽く手でVの字出してる・・・2回目?って聞いてるんだな?

だから俺もVの字をして返したら、そこだけ爺さんが見てて「何をしとるんだ、総二郎!」って怒鳴られた。
爺さんが止める合図を出さないからこうなるんだろうが!

つくしにも薄茶は何回でも要望に応えるものだとは教えていたけど、基本は時間なども考えて1回で終わるはずだと話していた。まさか身内の茶会でこんな事が起きるとは・・・。

まぁ、それも正客の爺さんもやることだ・・・つくしはもう1回深呼吸して茶を点てた。
今度は点前も順調に進んでさっきよりは手際よく、佐々木さんまで出し終えると「今度こそ!」みたいな目で爺さんを見た。

「皆さん、充分にいただかれましたかな?」

やっと言いやがった。思わず間髪入れずに「充分にいただきました!」と答えたら俺の方に向かって嫌な顔をしやがった。当たり前だ、こんなこと早く終わらせて別邸に帰りたいんだ!

ここで亭主のつくしはもう一度聞くんだが、これは作法の一部。

「もう一服、いかがですか」
「充分にいただきましたので、どうぞお仕舞いください」

爺さんがこの言葉を出して初めてつくしは道具を仕舞い始める・・・なんかここまでがいつもより超長いんだけど。

水指の水を茶碗に入れて茶筅すすぎをしてその水を建水に捨てる。茶杓も清め茶のついた帛紗ももう一度帛紗捌きをして帯に戻す。水指から二杓、水を釜に入れて蓋をする。そして最後に水指にも蓋をする。

つくしはここで1度、大きく深呼吸した。
運んできたときと同じように今度は道具を水屋に下げ、水指を持って茶道口に座り、一礼して襖を閉めて点前はこれで終了。

本来はここから躙戸を出て見送りがあるが、今日はここまでで茶室で爺さんの話を聞くことにしていた。
だからここからは正客、次客、詰という立場を離れて俺はつくしを呼びに行き、爺さんと佐々木さんは並んで座った。


*********


「ダメだ・・・もうダメ。完全にアウトだわ」

水指を水屋に下げてからその場に倒れ込んだ。
思い出せないほどドジをした気がする。何がいけなかったかって・・・なんで小次郎お爺ちゃんがそこにいるの?
もうその顔を見た瞬間、これまでのお稽古すべてが吹っ飛んだ・・・何一つ思い出せなかった。

あれだけ総二郎に教えてもらって、家元と家元夫人に励まされたのに全部台無し。志乃さん、絶対に大泣きだわ。これってどうなるのかしら。試験じゃないから点数なんてつけられないだろうからすごく簡単に合格か不合格・・・100%不合格でしょーっ!


そう思ったら立てない。
水屋のド真ん中で倒れていたら茶道口の襖が開いて総二郎が入ってきた。

「つくし・・・うわっ!何してんだ、お前!そんな所で倒れるな!起きろっ!」
「・・・もうそっとしといて。いいの・・・ごめんね、総二郎。頑張れなくて・・・」

「いや、それは・・・確かにとんでもない茶席だったが、終わったことは仕方ねぇ。ほら、今から爺さんと話すからこっちに来い」
「お話・・・?もういいよ」

「そんなわけいくか!ほら、行くぞ!」

総二郎に無理矢理立たされて着物の乱れをチェックされた。
もう自分では何も出来ないほど疲れ果てて頭が真っ白・・・「目を開けろ!」ってパンパン叩かれたけどそれでも目が開かない。
だから半分引き摺られるようにして茶室に戻った。


今度は総二郎と私が並んで座り、向かいにはお爺さまと小次郎お爺ちゃんが並んでる。
2人とも怖い顔ではなかったけど、呆れたような薄笑いを浮かべていた・・・そりゃ、そうだわ。


「本日は牧野の茶席にお付き合いくださいましてありがとうございました。幾分緊張のせいで不手際がございましたこと、私からもお詫びいたします。言い訳ではございませんが彼女は本来もう少し要領よく出来るのですが、このような結果になったことは師匠である私の責任でございます」

「・・・申し訳ございません」

総二郎が私のために頭を下げてくれてる。
それを見たら「申し訳ございません」は総二郎に向かって言ってるような気がした。


そしてお爺さまが一言。

「そうじゃな・・・確かに初めて数ヶ月の茶ではあったな。今日の茶は穂華が子供の時に点てたものと似ておったわ。まだまだ未熟、とてもこれでは西門の息子の嫁にはなれまいて。総二郎、そういうことじゃな」

「お爺さま、確かに今日の出来では言われても仕方ございません。だからといって穂華を、とも考えません。もし今回でお許しいただけないのならもう1度出直して参ります」

「ほう?総二郎は茶席が上手くいかなんだらやり直しを願い出るのか?そんな茶道家は聞いたことがないが?」

「出直しますというのは彼女の修行の成果をいずれまた見ていただきたいという事であって、今回のやり直しという意味ではございません!まだ早過ぎた・・・ということでしょう。それに今日の茶席は本来の目的と多少違います。牧野の紹介なのですから」

「紹介なら尚のこと・・・それに集中出来ないお嬢さんには無理ではないかの?西門はそんなに甘い場所ではないぞ?」

お爺さまと総二郎の言い争いがエスカレートしてる。
でも、私は自分の目の前にいる小次郎お爺ちゃんのことが気になって仕方なかった。

今でもニコニコしてる。痛がってた腰は大丈夫なのかしら?今はすごく姿勢がいいんだけど。
そんな私の視線に総二郎が気付いて、小次郎お爺ちゃんのことを聞いてきた。


「そう言えばつくし、茶室に入って1番初めに言ってた『小次郎お爺ちゃん』って誰のことだ?」
「え?あぁ・・・こちらの詰の方の事だけど」

「・・・何言ってんだ?こちらは穂華の家の縁の人で佐々木武蔵さんだけど?」
「は?違うわよ!このお爺ちゃんは私が東京駅でお土産探すのを手伝ったお爺ちゃんで、しかも京都駅から嵐山に連れてってくれた人だよ。ねぇ、お爺ちゃん、私のこと、覚えてるよね?」

「京都駅でお前を車に乗せたっていう人?あの・・・佐々木さん、これは一体・・・?あなたが何故つくしを連れて行かなくてはいけなかったのですか?」
「小次郎お爺ちゃん、どうしてここにいるの?一昨日何も言わなかったよね?」


お爺ちゃんは自分の口元を押さえるようにしてクスクス笑ってた。
お爺さまも不思議そうな顔をして私たち3人を見てる・・・なに?この雰囲気。もしかして小次郎お爺ちゃん、東京の時も私のことを騙してたの?

「東京の土産・・・?なんの話をしとるんじゃ?それより、武蔵・・・今日の茶会はどうじゃったな?」
「ははは、ご隠居様の仰る通りの出来でしたな。まだまだ・・・というところでしょうかな」


どういう事?このお爺ちゃんは・・・何者なの?




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2018/06/25 (Mon) 13:09 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんばんは。

えーっ!そんなにどんよりした?
あはは、そうかぁ・・・そりゃ悪かった(笑)

まぁ、つくしちゃんの出来はこんなものですよね。
だって初めての茶会ですもの、完璧には出来ない上にお爺ちゃんズの攻撃受けてるんで。

ただ、これで終わってしまったので、ここからが勝負です!
小次郎お爺ちゃんの一言で何かが変わるかも?

待っててくださいね!

2018/06/25 (Mon) 23:02 | EDIT | REPLY |   

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